EP.23 ヴァ〇ファーレを召喚しそうでした
「どうした?」
「大変だったんだよー。動くなと言われてー、体を勝手に洗われたりしてー」
そう言うエーコは、少し肌が綺麗になっている。エステ効果って奴か? それに薄く化粧までされてマジ可愛い。普段から愛くるしいエーコに磨きが掛かっていた。
それに初めて着るドレスがより一層エーコを輝かせる。水色を基調としたドレスで、エーコの桃色の髪と合わさり、格別なハーモニーを生み出していた。
「サフィ、ガラスケースないか?」
「ちょっとー! 聞いてるのー!?」
「ガラスケース? 何をするのですか?」
「エーコを入れて、俺以外に見せないようにする」
「何言ってるのーっ!?」
増々エーコが怒り出す。
「せっかくいつもより、可愛いくなってるのに怒ったら勿体無いぞ」
「だからー、動けなくて大変だって話をしてるんだよーっ!!」
「ケン、眼也、目を潰しせ」
「「何でだよ!?」」
「俺のエーコが、こんな可愛いくなってるんだぞ。見んなっ!!」
「「理不尽だ!!」」
「変な事ばっか言うなーっ!! は~~~~もういいよー」
エーコが大きく溜息を付く。
「今日のパーティーは、これでお開きだ。このまま寝台に行くぞ、エーコ」
「なんでーっ!?」
「アークっ!!」
ナターシャからビンタが飛んで来るが、俺はそれを左手で掴む。
「えっ!?」
「邪魔するな! 今日は、これからたっぷりエーコを愛でるのだ」
「意味分かんないよー」
「アークが暴走してるよ」
「アークがおかしくなったさぁ」
「あらあら、エーコの魅力にやられてしまいましたか?」
「おい! ケン、眼也、何でまだ目を潰していないんだ!?」
「「だから、理不尽だっ!!」」
「……エー、コ……師匠、は魔…性の、女に……なっ、た」
「さぁエーコ。寝台に行くぞ。朝まで寝かさないからな。サフィ、ガラスケースはまだか?」
「そろそろ正気に戻った方が良いですよ? アーク」
「もういい加減にしてーっ!!」
「アーク、落ち着きなよ」
「エーコじゃなく、あたいを寝台に連れ込みなぁ」
「エーコを寝台に連れ込まないなんて選択肢があるか? いやないっ!!」
「意味分かんないよー」
「……もうロリコンよ」
「エーコたん専用ロリコンだ。文句あるかっ!!」
「ある(よー)(さぁ)っ!!」
口々に何か言ってるが、誰が何を言ってるのか分からん。俺にはエーコしか見えていない。
「<下位水流魔法>」
「ぶべべべべべ……」
水が落ちて来た。
「少しは、頭冷えたー?」
「はっ!? 俺は何してた?」
「正気じゃなかったよ」
げんなり疲れたように言う沙耶。
「いや、エーコが可愛いのが悪い」
「おかしくなったー、アークが全て悪いよー」
「ちょっと侍女達が張り切り過ぎましたね。エーコが見違える程に美しくなっていますわね」
「それは嬉しかったけどー……」
「コラ! サフィ、どっかのロリコン野郎のようにドレス切り裂くぞっ!!」
「え? え?」
サフィーネが目を白黒させる。
「エーコを美しいとか俗っぽい言い方するなっ!!」
「では、なんと?」
「可愛いだっ!!」
「何が違うのよっ!?」
「良いか、沙耶? 可愛いは正義だ!!」
「意味分かんないよー」
「正義である可愛いと言えない邪悪姫のドレスは引き裂くっ!!」
「……アークが壊れてしまいました」
「アークっ! いい加減にするさぁっ!!」
またビンタが飛んで来たが受け止めた。
「今日のアーク、タチ悪いさぁ」
「で、いつまで見てるんだ? ケンと眼也。俺のエーコだぞ。俺の!! 俺に勝てない男が見るのは許さーーーーんっ!!」
「そんな人はー、滅多にいないってーっ!!」
「これは、何の騒ぎじゃ?」
「あ、お母様。エーコを着飾ったらアークが壊れてしまいまして」
「ガラスケースは、まだか!?」
「アーク、女王陛下の御前よ」
「女王陛下がいるんだよー」
「アーク、女王陛下さぁ」
「アーク、そろそろ正気に戻った方が宜しいですよ?」
「はっ!? これは女王陛下、お目汚しを大変失礼致しました」
女王様がいるのに気付き跪く。
「良い良い。それより、エーコよ。生誕おめでとうなのじゃ」
「ありがうございますー」
エーコも跪く。
「まぁ妾がいては、緊張でパーティーも楽しぬじゃろう。一言述べに来ただけじゃ。今日は心行くまで楽しまれよ」
「ははっ! 有難きお言葉」
そのまま女王様は去って行った。
「一時はどうなるかと思ったさぁ」
「アークがいつも以上にー、壊れたからねー」
「アークがおかしいのはいつもよ。でも、今日は酷かった」
なんか三人が疲れ切ってるが気のせいだろう。
その後、和やかにパーティーが開催され……あれ? まだ開催してなかったの? え? 俺のせい? 知らねーよ!! 何の事だ?
そうしてパーティーが終わると離宮に戻った。
「エーコ、改めて誕生日おめでとう」
「おめでとう(さぁ)」
「ありがとー」
「これプレゼント」
そう言って、ハンスから買ったプレゼントが入った木箱を渡した。
「開けて良ーい?」
「ダメ」
「何でよ!?」
「沙耶、開けて良いかと問われたらダメと答えたくなるのが男心さ」
「ただの天邪鬼じゃないのよ!?」
「開けるねー」
そう言って木箱を開けるエーコ。
「これ何ー? 服ー? 変わった形だねー」
「巫女装束と言われるものだな」
「でも、サヤさんのに似てるかもー」
「そうよ。同じ和服ね」
「沙耶が縫い上げてくれた。だから大きくなっても着れるぞ」
あの大魔導系の服は、性能が良かっただけに着れなくなり残念に思う。まあ今のエーコなら着れるだろうけど、魔導士の村に置いて来たらしく手元に無い。有ったとして、まさか異世界転移且つ若返るなんて誰が予想してよう。なので、持ち歩いている訳がない。
「そうなんだー」
「さあ着替えて見せてくれ」
「なら、あんた出て行きなさいよ」
「何で?」
「女の子が着替えるんのよ?」
「女の子でもエーコだろ?」
「はぁ!? エーコちゃんでも女の子でしょうよ?」
沙耶は何を呆れ返ってるのだ?
「いや、一緒に住んでたんだぞ? 裸はないが、下着姿でうろつく事もあったし、なんとも思わないぞ」
「えっ!? ナターシャさん、本当?」
「本当さぁ」
「エーコちゃんもそれで良いの?」
「裸は嫌だけどー、下着姿くらいなら平気だよー」
そう言って、今の服を脱ぎ始める。どうでも良い事だが、エーコのプリーツスカートは、ゴムで腰に固定される。なにせ星々の世界にはファスナーというものが存在していないからだ。
「信じられない」
沙耶が目を丸くする。
「あ、ちなみに沙耶も何とも思わないぞ。エーコのように可愛いとすら思わないぞ」
「煩いよ! 私は絶対に目の前で着替えないよ」
「目に毒だしね」
「アンタ、ほんとムカ付くよ」
さいですか。
「あ、やっぱり裸になれば、慎ましくて可愛いと思うかもな?」
ニヒと揶揄うように笑う。
「アンタのそう言うとこ、ほんと嫌いよっ!!」
「あたい以外の女の裸を見るなんて許さないさぁ!!」
ペッシーンっ! といつものようにビンタを喰らう。
そんな話をしていたら、エーコが着替え終わった。ちなみにだが、最近は沙耶の和服を見慣れているのだろう。自分で着付けが出来ていた。
「これ動き易いねー」
「エーコ、周って周って」
「何でー?」
「和服は周ると見応えあるんだよ。袖のとこが広いだろ? それがヒラリとするんだ」
「そうなんだー」
そう言ってクルリと回る。
「おお~」
「エーコ、似合うさぁ」
「エーコちゃん、似合うよ」
「ありがとー」
エーコが照れたように笑う。
ちなみにだが、袴部分は青色だ。そして白衣には水の渦巻きのような五つ紋――背面の中央上部の背紋、 両袖の後上部に袖紋、両胸に抱き紋――が施されている。更に桃色の帯まであるので、普通の巫女装束とは違うかも。
なんか、ユ〇ナっぽいな。ヴァ〇ファーレを召喚しないか?
とは言え、ユ〇ナの巫女装束のように脇が丸出しでエロちっくない。その部分は普通の巫女装束だな。
「ついでだ。沙耶も周れ」
「何でよ?」
「見たいから以外にあるか?」
「はいはい」
沙耶が周る。
「エーコ、これもあるぞ」
これはセット装備なのだ。確り武器もあった。紋と同じように水が渦巻いたようなのが先端にある杖だ。
「これはー?」
「アンタね! 周れって言ったのに無視!?」
沙耶が目を剥く。
「え? ああ、可愛いぞ。エーコ、それは錫杖と呼ばれる武器だな。水魔法強化の特性がある」
「適当過ぎるでしょうよっ!?」
「うーん。鉄槌があるよー?」
「それ、後ろ帯に方に持って行ってみな?」
「こう? ……あ! 縮んだー?」
「聞いてないし」
そう普段は邪魔にならないように後ろ帯に縮んで装着されるのだ。
ちなみに性能だが……、
水流の錫杖 (魔力200) 水魔法強化、条件縮小
水流の巫女装束 (防御力1500、魔力100)
水流の足袋 (防御力200、魔力50)
水流の草履 (防御力1500、魔力100、俊敏50)
セット装備効果:水流【錫杖を除く】(魔力200、防御力100、俊敏300) 水魔法強化
と、なっている。やっとエーコにも、まともな装備が用意出来た。大魔導装備より魔力の上がりが低いし、エーコが最近好んでる光属性の強化じゃないのが玉に瑕だが。
「何だ? 沙耶、熱っぽい視線を向けられ可愛いって言われたいのか?」
「適当だって言ってるのよ!」
「いや、真剣に可愛いなんて言ったら、ナターシャに変な誤解されるだろ?」
「今更さぁ」
「え? ……絶対思ってないでしょうよ?」
沙耶が頬を染め、ボソっと呟く。あと、ナターシャもボソっと呟いていたので、ビンタはなさそうと判断し、沙耶の頭を撫でてやる。
当然目を丸くし出した。なんか今日の俺のテンションおかしいな。まあどうでも良いっか。
「いや、前に思ってるって言っただろ。まあ信じないならそれで良いよ。それよりお前は、誕生日いつなんだ?」
「え? 3月8日よ」
まあ早生まれって事は知っていたけど。
「ふ~~~~~ん」
「何よ? 言いたい事があるなら、はっきり言いなさいよ」
「3月8日で、さやなんだと思って」
「そうよ! 文句ある?」
「いや、はっきり言えって言ったから言ったんだけど?」
「それでも腹立つのよ。気にしてるんだから」
いや、それもう理不尽だろ。
「それに言わなくても知ってたでしょうよ?」
「え?」
何の話だ?
「前に着物くれたでしょう?」
「それが?」
「あれが3月だったよ」
「たまたまだよ。って言うか、誕生日なんて早生まれって事しか聞いてなかったし知る訳ないじゃん」
「てっきり胡春に聞いたのかと思ったよ」
「そもそも誕生日知っていれば、もっと良い物をやったよ。お前にピッタリなパットとか」
「煩いよっ! アンタのそう言うとこ、ほんと嫌いよっ!!!」
さいですか。