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EP.20 サフィーネ一行が到着しました

「メハラハクラ王国は、とことん腐敗しているな。ケンは自らあそこを出たのに、攫ったとかデマ情報を流していたし」


 平台馬車をレイアースが津波で流しながら進む。それに並行するように走りながら俺は言った。


「そうですね。遺憾ながら」

「これ戦争とかに発展しないか?」

「それはお母様の手腕に掛かっておりますわ」


 疲れたように言うサフィーネ。サフィーネもそれを危惧してるのだろう。しかし……、


「それにしてもアークがいて、良かったですわ。通常の護衛隊では、壊滅していたかもしれません。それどころか私を守り切れなかったでしょう」


 と、直ぐに明るく振る舞い両手の指を絡めながら言う。


「どうかな? あれ、やり方が間違っている」

「と、言いますと?」

「シップウとか言う女は空飛べるんだぞ? コタロウって男を抱えて空から一方的に爆撃すれば良いのに……。それをしなかったんだから、サフィは多少怪我を負うかもしれないが、撃退は出来た筈だ」

「なるほど。自分達の優位性を捨て地上から攻撃していましたので、そうかもしれませんね」

「メハラハクラ王国のように、丸で転移者を道具のように使うとこは、上手い運用が出来ないのがお決まりだな。数にあぐらを掻いてるんだよ」


 前に似たような事があったし。


「まぁ。アークは似たような経験があるのですか?」


 サフィーネが目を丸くする。


「ああ。他の世界の話だが、転移……いや、瞬間移動と言うようなスキルを得てる奴がいたんだけど、怪我人を後方に下げるとか良い運用があるのに、ただの肉壁としか見ていなかったしな」

「肉壁? そのように英雄候補を扱えば周辺諸国の格好の餌食だと思うんですが……」

「そもそも世界が違うし、英雄候補として扱われていない。その国は戦争の道具として召喚したんだしな」

「なるほど。なんて国なんでしょうね」


 辟易としたように言う。


「それと、この世界のようにスキルとして、はっきり分からないんだよな。だから沙耶が自分の能力が分からず、これもただの肉壁。調べて精霊と契約し易いのだと分かれば、有利になったのに」

「ほんとよ。あそこの国は酷かったよ」


 怒りを滲ませながら言う沙耶。


「サヤさんは、それで異界から呼ばれたのですか? 随分良い人材を捨て駒にするのですね」

「だから、数にあぐらを搔いてるんだよ。メハラハクラ王国も同じだな」

「そうですね。この世界では大切に育てるのが常識なのですが、人数がいれば多少失っても良いと思っているのでしょう。唾棄すべき行動ですね」


 同じく怒りを滲ませるサフィーネ。


「それにメハラハクラ王国は、スキルだけを見て使える使えないを判断してるからな。使えないと判断した者は、さっさと城から追い出すようにしてたとか。転移者の真骨頂は、スキルじゃないのに」

「それは私にも分かります。過去に戦闘向きのスキルではなく、生産系のスキル持ちだったのに魔王討伐できたと伝承にありますからね。スキルが全てではないのでしょう」


 うん? その言い方だと知らないのか?


「転移者って成長率が良いんだぞ? そのお陰で魔王戦で有利になる」

「噂程度には存じてるのですが、確かめようがないのが現状なのですよね」


 そう言ってかぶりを振る。

 マジか。この世界は、やっぱり闘気があまり知れ渡ってないしな。闘気以外にも詳しく鑑定できるスキルもあるだろうけど、それを他者に伝えていないのか?


「ですが、アークが知ってるって事は、アークにも思い当たる節が?」

「俺達に依頼した神の代弁者が教えてくれた。ちなみに俺とナターシャとエーコは、此処に来る前から十分鍛えていたから、早々能力が上がらなかったけど、沙耶はメキメキと強くなってるぞ」


 正確には星々の(スターライト)世界の時の精霊なのだが、説明が面倒なのでウルールカ女王国には神の代弁者と言ってあった。

 ついでに時の精霊ではなく他の精霊に聞いたのだけど、その辺りを話しても余計にややこしくなるだろう。


「えぇ。そうね」

「なるほど。それに加え、サヤは精霊と契約し易いので、スキル的にも有利ですね」


 沙耶が肯定し、サフィーネが得心が行ったかのように頷く。

 そんな話をしていたら、夜を迎えてしまう。


「野宿になりますね。貴女達大丈夫ですか?」

「姫様が気にしていないのに、どうして我等が気にしましょう?」


 サフィーネが、侍女達に呼び掛けるとエリセリカが答え、他の侍女も頷く。


「ちなみに誰か光源魔法(ライト)って使えるか?」

「それなら私が使えます」


 エリセリカが挙手して答えた。


「なら……<収納魔法(ストレージ)>」

「これは?」


 サフィーネが目を丸くする。いや、沙耶以外全員だ。


「この中で寝れば良いだろ? ただ暗いので寝るまでは、光源魔法(ライト)があった方が良い。俺は外で寝る。魔獣が襲ってくれば勝手に目を覚ますからな」

「えっと……これってエーコが、よく作ってる岩の蔵……ですよね?」


 少し困惑気味に言うサフィーネ。

 そうエーコが上位大地魔法(アースクエイク)で、作った蔵だ。

 いずれこれに家っぽくする為に、魔石による明かりを付けたり家具を入れる予定だったりもする。


「そうだが?」

「何故いきなりこんなものが出て来るのでしょう?」

「アークにそんな事を突っ込んでもダメよ。常識の外にいる人よ」


 失敬な。


「単純にエーコに作って貰って、それを収納魔法(ストレージ)で、しまっておいただけだ」

「驚きました。収納魔法(ストレージ)を、このように使う方は初めて見ました」


 サフィーネの言葉でウンウンと首を縦に振る侍女達。

 まあテンプレだな。異世界系ラノベとかこれをするのが普通になって来てたし。


「だから常識の外なのよ」

「俺が常識の外なら、沙耶は蔵の外で寝る? さっきから失礼な事ばかり」

「事実でしょうよ。てか、つまんないわよっ!! まぁ私は外でも良いけど。王女殿下と同じとこで寝るのも、どうかと思うし」

「いいえ。一緒に寝ましょう。サヤは友人なのですから」

「ありがとう」

「<収納魔法(ストレージ)>」


 収納魔法(ストレージ)で、毛布を取り出す。


「残念ながら、俺の収納魔法(ストレージ)じゃ、まだ大した量を入れられない。だから毛布しかないが使いな」

「ありがとうございます。アーク」

「「「ありがとうございます」」」

「何で私のは無いのよ!?」


 サフィーネと侍女達は礼を言うが沙耶をキレ出す。


「失礼な事ばかり言うからだろ。ごめんなさいは?」

「……ごめんなさい」


 渋々謝って来た。


「ペッタンコでごめんなさい、だろ?」

「関係無いでしょうよっ!?」

「はいはい。<収納魔法(ストレージ)>……ホレ」

「ありがとう」


 そうして女性陣は岩の蔵の中に入って行く。俺は宣言通り外で寝る。魔獣が襲ってくれば勝手に目を覚ますしね。こういう時は、ダークの肉体は素晴らしいと思う。そういう訓練をしていたし。

 翌朝、サフィーネ達が起きて来て、岩の蔵から出ると茫然としだす。俺はその気配に気付き目を覚ます。


「ぅはあ~。おはよう」


 欠伸をしつつ挨拶する。


「……アークがこれをやったのですか?」


 サフィーネ達が目を点にして見てる方に視線を向けると魔獣の死体が無数に転がっていた。


「見たいだね。寝ながら狩ったようだから、気付かなかったけど」

「寝ながらって……」


 マジで記憶にないな。流石はダークの肉体だ。

 にしてもドレスが皺もなく綺麗だな。その恰好で横になったのだろうに。いや、脱いだのかね?


「なんにせよ、まさか今回の移動の際に横になって寝れると思いませんでしたわ」


 まあ本来なら馬車で座ったまま寝る予定だったのだろうな。

 その後、何も問題無く昼にはダレスの町に到着した。


「アークのお陰で無事に辿り付けました。ありがとうございます」

「これからどうするんだ? 一応セイラの店の三階が住居になってるけど」

「いえ、既に新たな代官が到着しており、その代官が前代官の屋敷を整えている筈です」

「そうか。で、いつ見に来れそう? やはり当日か?」

「明日は予定がございますので、30日に一度拝見させて頂けませんか?」

「分かった。セイラにはそう伝えておく」


 月光世界(ルナ・ワールド)では、全ての月が30日までしかない。つまりはこの30日というのは大晦日になる訳だな。

 そうしてその大晦日に、サフィーネが『食事処 アサシンズ』にやって来た。勿論その頃にはナターシャとエーコも転移者を王都で引き渡し、此方にやって来ていた。

 お店に優雅な飾り付けをしたので、それを説明すると目を見張り大変喜んでくれた。

 その後、二階の明日のパーティー会場を確認。またステージでのサフィーネの挨拶などの打ち合わせを行った。

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