EP.11 セイラと商業ギルドに行きました
「此処は?」
なんか一つ大部屋があるな。ベッドが四つ並ぶ部屋。其処は布団が確り置かれていた。
他にセイラの部屋と同じようにキッチンが備え付けられている。
「わたし達の部屋だよー」
「ああ。この町に滞在してる時は、ここに泊まればお金掛からないのか」
「そうだよー」
「お・ぬ・し・も・わ・る・よ・のぉ~」
「まーねー」
「アンタらは何を言ってるのよ?」
沙耶は相変わらず突っ込むな~。
「でも、さっき沙耶は欲情してたし、夜な夜な慰め……」
「しないわよ!?」
パッシーンっ!!
悪ノリ過ぎたか。頭を殴られた。
「だいたいそんな経験ないよ!!」
「誰もそんな事は聞いてない。って言うか、それじゃあエーコのが大人だな」
「えっ!? エーコちゃん……」
「言わないでよーっ!!」
沙耶が目を丸くし、エーコは目を剥き怒鳴る。そしてセイラが顔を赤らめた。
「沙耶は子供だったのか」
「だから煩いよっ!!」
「セイラは前世の彼氏とのあれこれを思い出した?」
「してないわよ~!!! する前に……って、何言わせるんだ~~~!!!!」
「アーク、いい加減にするさぁ」
ナターシャの眉が吊り上がり、なんかビンタの素振りをしているし。
「すみません」
「ともかく、ありがとうね~。約束通り働ける場所をくれて~。それにこんな良いとこを~」
「サプライズ誕生日プレゼント成功」
パッシーンっ!
エーコとハイタッチした。
「いや、驚いたけど~、半分サプライズなってなかったから~」
あ、そうだった。
「それに建物に関わったのエーコちゃんだよね~? お金出したナターシャさんだよね~? アークは~?」
「ひでぇ」
「冗談だよ~。ありがとうね~」
「惚れた?」
「前世の彼氏のが百倍良いよ~」
「さいですか。じゃあ商業ギルドに行って、仮登録してしまおう。誕生日に開店だ」
「オッケ~~」
って訳で商業ギルドを向かう。成人間近なら仮登録できて、成人後自動で本登録になる有難い規約もあった。
「それと十日くらいしたら米とか他にも食材来るからメニューを決めて、次回からの食材注文はセイラの采配だからな」
「うへ~! いきなり大変だね~」
「ガンバ~。オーナー特権で売上の一部が貰えるからバシバシ稼げよ」
「余計なプレッシャー掛けるんじゃないよ!!」
また沙耶さんから鋭いツッコミが来た。
「あ、その前に孤児院行きたいから着いて来て。沙耶も」
「何でよ?」
「会わせたい人がいる」
「分かったよ」
「エーコは、大工のとこに行って『食事処 アサシンズ』の看板の注文しておいて」
「分かったー」
「ナターシャも着いて行って。終わったら自由行動で良いから」
「分かったさぁ」
そんな訳で別れて行動する事になった。時間は有限。有効活用しないとね。
「そう言えば保存は~? 十日後食材が来ても、半月くらい店開けれられないよ~?」
「其処はナターシャの時空魔法がある。なんと時を止める収納魔法を覚えた」
その名も次元収納魔法! えっへん。
「アークが威張るとこじゃないでしょ~」
「そうさねぇ」
って訳で、孤児院に来ました。
「院長、ちわっす」
「これはアークさん、こんにちわ」
「例の件だけど、サフィーネ王女殿下に聞いたら問題なさそうだよ」
「えっ!? 王女殿下とお知り合いですか?」
院長が目を剥く。
ちなみに例の件とは、孤児達をコキつか……もとい、お手伝いで雇う件だ。
「ええ、まあ」
「あの……こないだのメルシェーの事はどうかご内密にして頂けませんか? 人手が減る困るので」
なんか気まずそうに言って来たぞ。
「あれは、そっちの問題でしょう? 国に迷惑を掛ける行いじゃないんだからサフィーネ王女殿下に言う必要はないっしょ?」
「ありがとうございます」
院長が頭を下げる。って言うかビビリ過ぎ。まあ俺が虐めたのが原因だけど。
「それと今日はライオス君に用事があって来たんだけど、一緒に散歩して来ても良い?」
「えぇ、構いませんよ」
そしてライオスを呼んで来て貰い、散歩しながら話す。
「やあライオス君。元気にしてた?」
「はい」
「沙耶、この子はライオス君。セイラと入れ替わりで旅をする事になる。孤児院から引き取る予定」
「そうなの?」
寝耳に水と言わんばかり目をパチクリさせ……、
「宜しくね。沙耶で良いから」
「ライオスと申します。以後お見知りおきを、沙耶さん」
「……ねぇ、その歳で確りし過ぎじゃない?」
「そうですかね?」
沙耶もそう思ったか。
「私はセイラだよ~。宜しくね~」
「此方こそ宜しくお願い致します」
挨拶もそこそこに空き地にやって来た。
「ライオス君、これ」
そう言って短剣を渡す。まだ小さいからね。剣は持たせられない。
「もう鍛えて頂けるのですか?」
「いや、まだ。今日は武器に慣れて貰うだけ」
「分かりました」
「でだ、沙耶。相手してやれ」
「え?」
「ちなみに沙耶をぶっ刺しても良いけど、沙耶から攻撃は無しね」
「何でよっ!?」
沙耶が目を剥く。
「いや、脇差で受け流しの鍛錬も兼ねてるんだよ」
「そう言う事ね」
「ライオス君は、例え斬り付けても回復魔法があるから、気にせず短剣を振り回しな」
「分かりました」
「ってな訳で、俺とセイラは、商業ギルドに行って来るから。念の為、<草>。沙耶持っておきな」
「分かったよ」
そんな訳で、セイラと商業ギルドに向かう。
「てか、セイラと二人っきりなんて初めてだな」
「そうだね~」
「セイラと~、デートか~」
「変な事しないでね~。それと私の真似したでしょ~?」
そう言って胸を抱くように俺から離れる。
「胸の話でイジって欲しいの? 沙耶のお株を奪いたいのか?」
「違うわよ~~っ!! って言うか沙耶さん嫌がってるでしょ~~っ!!」
セイラが目を剥き怒鳴って来た。
「あれは、ツンデレだからな」
「違うと思うな~」
「てか、沙耶さん何だ? 享年も含めればセイラのが年上だろ?」
「享年を含めないで~~。沙耶さんの実年齢は、私より上だしね~」
でも、ちゃんと沙耶と呼んでるな。他の面々はサヤなのに。流石は転生者。
「にしても四十年間も未経験なんだよな」
ニヒと笑い揶揄う。
「享年を含めないで~~っ!! そんなんだから沙耶さんに嫌われるのよ~~」
「あれはツンデレだ」
「違うって~!! それとアークには、初めてを捧げないからね~~。初めてどころか百回目だって無理~~」
「いらんわ! キモいわ!!」
「どうしてキモいってなるのよ~~っ!!」
「お前、未経験って言われて何想像した?」
「え?」
セイラが顔を真っ赤にしだす。
「捧げるとか、めっちゃエロい事を妄想しただろ? キモいっちゅーねん」
「じゃあアークは、何が未経験だって言いたいのよ~~!?」
「男への供物」
「いや~、意味分からないよ~」
セイラが苦笑いを浮かべる。
「前世の時の彼氏へ、手料理を食べさせた事ないんだろ?」
「あ、その話~」
「てか、そうなると初めての供物は、俺だったんだな」
「あんたのそう言うとこ、ほんと嫌いよ~!!」
沙耶の真似かい。
「で、セイラちゃんは、一体どんな妄想したのかな~? ねぇねぇどんな妄想?」
「煩いよ~っ!」
「それも沙耶の真似か? もしかしてユリ?」
「違うわよ~。あ、でも~共通の敵がいるって事では~、共感できるかもね~」
「共通の敵?」
「アーク」
「俺かよ!?」
「ごめんごめ~ん。アークには感謝してるよ~」
胡散臭っ!
「あ、信用していないでしょ~?」
「いや、感謝されるような事した覚えないし」
「お店とか」
「嫌々じゃん」
「不安なだけだよ~。用意してくれた事には感謝してるよ~」
「ほんとかな~~?」
ジト~っと見詰める。
「ほんとだよ~」
「惚れるなよ」
「それは絶対にないよ~。絶対にないよ~~」
さいですか。って言うか、二度言うなよ。
「で、やって行けそうか?」
「頑張るよ~」
「無理そうなら止めても良いぞ」
「あそこまでしてくれたんだよ~。本当に感謝してるし~、頑張るって~」
「まあセイラの能力を買って大枚はたいたんだけどな」
「それって栽培のスキル~?」
「料理スキルも、な」
「そんなスキル持ってないよ~」
分かってるわ! ゲーム的に言うならシステム外スキルだっつーの。
「冗談冗談。ありがと~」
「ってな訳で、セイラとのデートコースが片道終わってしまったな」
「まだ片道残ってるとか~、げんなりだよ~」
「酷っ!」
「冗談だってば~」
そう言って満面な笑みで笑うセイラであった。
うん、やる気になってくれて何よりだ。なんせ俺も日本料理を食べたいしな。
ってな訳で、商業ギルドに到着した。