EP.06 孤児院は酷い状態でした
「それでどうするのー?」
「何が?」
「セイラお姉ちゃん一人じゃ大変でしょー?」
「従業員のアテはある」
エーコも従業員が気になってたようだ。
そんな訳でやって参りました。孤児院です。実は近くに孤児院がある物件を選んでいた。
いや~孤児院って十五になったら出ないと行けない。そして従業員として雇うなら十五歳未満。
つまり、お手伝い扱いで賃金が安い。え? あくどい? 細っけ―事は良いんだよ!!
「ちわーっす」
三〇屋でーす。
孤児院の門をくぐり挨拶する。
「はーい。どちら様ですか?」
だから三〇屋だって言ってるだろー。
「言ってないよー」
ボソっと横から聞こえるがスルー。
「貴女が院長?」
「そうですが?」
三十くらいの女性。結構若いな。一応鑑定…………三十八歳? 随分若く見えるな。それに変なとこはないな。これで虐待院長とか称号があれば追い出す算段をするとこだったぜ。
でも、見た目が瘦せこけてるな。経営が良くないのかな?
「寄付に来ました」
「まぁ。これはこれはありがとうございます。最近寄付も減って困っていたのですよ」
「そうなのか?」
「えぇ。どうぞ中へ」
そう言われ建物の中へ誘われる。ん? 建物酷くね?
そうして庭から建物の中に入るのだが……、
「こりゃ酷い」
「えぇ。年々経営費用が減らされて困っているんですよ」
「エーコ、直ぐに大工の手配と食材を買って来てくれ」
「分かったー」
エーコは大慌てで飛び出して行った。
いやだってさ、子供達が痩せこけてるんだぞ。これじゃあコキ使え……もとい、お手伝いをして貰えない。
服もボロボロ。建物もボロボロ。これじゃあ寝床もまともじゃないな。
「あの、お連れの方は?」
「ちょっとお使い。それより孤児院を見て周っても?」
「えぇ。構いませんよ。リリアナ?」
「はーい」
二十代後半くらいの女の人がやって来た。一応鑑定……二十一歳? こっちは老けて見えるぞ。
「彼女が案内してくれます」
「……もっと若く見える娘はいないの?」
おっと本音が出てしまった。リリアナがめっちゃ睨んで来てるじゃん。
「……はぁ、分かりました。では、メルシェー!」
「は~い」
仕方ないなと言わんばかりに他の人を呼ぶ。今度は随分若いな。鑑定……十六歳か。
「へい! 彼女、俺と遊びに行かない?」
ちょっと悪ノリしてみました。
「……あの、院長。この人、誰ですか?」
なんかこっちは、汚物でも見るような蔑みの目で見て来る。
「寄付をしてくれるみたいです……あの、ナンパなら他所でして頂けますか?」
「え? この孤児院内を周っちゃいけないの?」
「紛らわしいッッ!!」
あ、リリアナって娘に怒鳴られた。はい、ごめんなさい。ふざけ過ぎました。
「メルシェー、お願い出来ますか?」
「……分かりました」
めっちゃ嫌そうだな。それにしても当然だけど子供達に見られているな。客がそんなに珍しいのか?
中でも一人凄い気になる黒髪の少年がいた。鑑定……、
バッチーンっ!!
弾かれた!?
まだ十歳かそこらだろ? 鑑定遮断持ちかよ。
まあ、それは後回しだな。そんな訳でメルシェーと孤児院を周った。
「……此方は幼少組の部屋です」
三歳くらいまでの部屋かな?
「……此方は遊具部屋です」
玩具も汚なっ! 積み木とか割れてるじゃん。
「……此方は寝床です」
やっぱり寝床も酷い。
それと先程から態度も悪い。いや、最初に悪ノリした俺が悪いけどさ。無表情で淡々と周ってる感じだね。
「……職員の部屋は構いませんね」
「見せて」
「………」
めっちゃ嫌そうだな。
「見・せ・て」
「……変な事しませんか?」
「どんな事だよ!?」
見張りがいるのに盗聴器仕掛けるのか? そもそも盗聴器なんてこの世界にあるのかよ?
「……分かりました」
凄い渋面で言われた。
「……此方です」
「ふむ。子供達と同じような感じか」
つまり、寝床がボロボロ。具体的にベッドが、ぱっと見でわかる程、傾いていて、薄そうな布団だ。今は十月で、そこそこ寒い。そして、これからどんどん寒くなるだろうに。
「当然でしょう!? 子供達が良い環境じゃないのに私達が良い環境にする訳ないでしょう!?」
あ、怒鳴られちゃった。
「減点」
「は?」
「俺は寄付しに来たと院長から聞いたでしょう? 怒鳴って機嫌を損ねれば寄付されないって事だよ?」
「……あ!」
「若いね」
ふっと笑ってしまう。メルシェーは顔を赤らめ俯き……、
「……若い者を指定したのは誰ですか?」
「それも減点。そもそもさ、寄付しに来た人には多少媚売っておくのが正解だよ。半分悪ノリであんな事を言ったけど、もう半分はそれを暗に伝えようとしたんだけどね。なのに君、ずっと態度悪かったね?」
「………」
あ、黙りこんじゃった。ちょっと虐め過ぎたか。俯いて固まってしまったメルシェーを放置して一人で戻る事した……。