EP.05 ハンスさんと再会しました
ブクマありがとうございます
お待たせ致しました
再会致します
まあこんな物だろう。仕上げは大工を雇ってして貰うとして、まずは手配しないとな。
そんな訳で……、
「じゃあ商業ギルドに戻るぞ」
「分かったー」
そうして商業ギルドに戻る。が、途中で思わぬ人と遭遇した。
「あ、ハンスさーん」
「おや、エーコさん。こんなとこで奇遇ですね」
メハラハクラ王国で魔族に強制転移させられた時に地下空洞をエーコと沙耶と共に探索した行商人だ。にしても今日は槍を持っている。あの時は無手だったのに……。
「丁度良かった。ハンスさん、商談があるんだが今時間あるか?」
「貴方は、エーコさんやサヤさんのパーティメンバーでしたか?」
「ああ。アークと言う」
「そうですか。あの時は、エーコさん達にはお世話になりました。えぇ、少しなら問題ありませんよ」
柔和な笑みで物腰柔らかに答えてくれる。
「エーコ、悪いが商業ギルドに行って大工の手配を頼む。可能なら明日下見して欲しいと伝えてくれ」
「分かったー」
そうな訳で適当な喫茶店に入りハンスと商談に入る。
「ところでハンスさん、気になっていたんだが、槍使えるのか? メンサボの町でエーコと一緒にいた時は、武器持っていなかっただろ?」
「えぇ。行商人をしていると魔獣に襲われますからね。ただ町に入り商談する時は威圧と取られかねないので宿に置いて来てるのですよ。今は、到着したばかりなので槍を持っておりますけど」
「そうなのか。それは悪かったな。さっさと、宿を取ってゆっくりしたかっただろ?」
「いえいえ。エーコさん達には助けられましたからね。このくらい問題ないですよ」
人が良すぎないか? 騙されたりしないか?
「そう言ってくれると助かるよ。ところで行商人なら詳しいかもしれないから聞くけど、米って何処かで手に入らないか?」
「それならジパーング聖王国で手に入りますよ。たまに注文を受けて行きますので」
うわ! やっぱり、まんま日本人が絶対建国に関わってるだろと思われる国で米が手に入るのか。予想通りだな。
「じゃあ商談なんだが、そのジパーング聖王国に行って、米を大量にと稲の種を頼む。それとジパーング聖王国ならではの食材、調味料も頼みたい」
「大量ですか? 私一人では運べない量では困ってしまうのですが……。私が商隊を組むようにすれば宜しいのでしょうか?」
ハンスが困惑気味に汗を流し、手拭いで拭う。
「其処で手付金で、これをやる」
そう言って、地球で言う運転免許証の二倍くらいの大きさの収納魔道具を渡す。
「こ、これは収納魔道具!? こんな高価な物を頂けません!!」
ハンスが目を剥く。
「これって、そんな高価なのか?」
「中金貨一枚はしますよ」
日本円で1000万!? バリストン様、気前良すぎだろ。
「でも、これって商人に取って、かなり重宝されるものじゃないのか?」
「そうですね。喉から手が出る程、欲しいものですね」
「なら、販路が確立するまで専属になるか、毎回の商談の時に収納魔道具の分を少し払って貰うとか」
「いえ、払うにしても何十年かかるか……」
冷や汗が大量に流れ、手拭いで何度も何度も拭いている。
「小金貨一枚で良いよ」
「はっ!? それはいくら何でも安いでしょう!?」
泡を食ったように言って来る。やっぱ人が良すぎない? 騙されたりしないの?
「って言われてもな。俺達にそれ必要ないんだよ。なのに三枚あるしな」
「三枚も!? いや、それでも必要ないって事は……」
「<収納魔法>」
言い終わらぬうちに収納魔法を唱え、残りの一枚を取り出す。もう一枚はセイラが持っている。
ちなみに収納魔法は、俺も空忍になって習得したのだ。
「ほら、収納魔法使えるし、必要ないんだよ」
「まぁ貴方がそれで良いなら、私に取っても好機ですし。ちなみに納期は?」
「一月以内は可能か?」
「えぇ。それくらいの時間があれば問題なく」
「じゃあ、<草>。これを身に付けておいて」
「これはエーコさんが付けていたお守りですね?」
「正確には俺が、何処にいるか把握する為の魔法」
「なるほど」
ハンスが得心が行ったと言う感じで頷く。
「普段はプライベートとかあるからポケットとかに入れておけば、俺に知られる事はない。ただ一月後に、またこの町に来た時に身に付けていてくれ。そしたら二日以内に接触する」
「分かりました。では、ご注文は米、ジパーング聖王国特産の食材や調味料が大量に。それに稲の種ですね?」
「ああ」
「ちなみに稲が必要って事は育てるのですか?」
まあ稲で米を作った方が安上がりだしな。
「ああ」
「気候が合わないかと思いますよ?」
「ああ、それも問題ない。仲間に成長を促せる奴がいるから。失敗しても次回から注文しなければ済むしな」
「は~~。先程から呆れて、ものが言えませんね」
そんな呆れる事かな。
「それで、今回は料金などはそっちで設定して良い。でも次回から、詳しい注文や値段は事前に話し合うと言う事で良いか?」
「えぇ。それで構いません。それからこの収納魔道具ですが、アークさんのご注文以外に使用しても?」
「ああ、好きに使ってくれ。こちらの注文さえ確りしてくれれば、それで良い」
「ありがとうございます」
「それと、他の人に内緒で、俺だけにこっそり渡して欲しいものがあるんだけど」
「何でしょうか?」
俺は、とある注文をした。
「それですとピン切りですね。安物から高価なものと」
「じゃあ予算小金貨二枚から四枚で、出来る限り性能重視で頼む」
「かしこまりました」
次の日の午前中に大工の人達がやって来たので、これからの段どりを話し合う。
「これは、なんでぇい?」
大工の人達が外観を見て目を丸くする。
「外観はこっちで作った。内装とか装飾とか細かいとこをお願いする事になる」
「ははん。こいつはたまげたなぁ」
「まずは、入口。こんな感じの門にしたい。出来るか?」
そう言って、沙耶に描いて貰った紙を渡す。沙耶の描いた紙、大活躍だな。
「外注に頼む事になるが可能だな。と言うか、外観が出来てるなら大半が外注だな」
この世界では……いやこの国では、なのか? 他の国は知らないが、この国では大工に頼めば内装や、庭など全てを請け負ってくれる。
いちいち他のとこに頼みに行かないで済むので楽だな。
「じゃあ頼む。次に入口から入って左右は花壇にしたい。そっちも外注で頼んでくれ」
「分かったでぇい」
大工の一部がメモ書きしている。まあ打ち合わせに来てるのだから当然か。
「じゃあ中に入ろうか」
「入口の扉はウチで、やれば良いか?」
「ああ」
「おい! 寸法図っておけ」
「へい」
当然扉の部分はすっぽり空いている。
俺と話してる大工が下っ端と思われる大工に指示を出した。
そうして、そのまま中に入る。
「暗ぇな」
「<光源魔法>」
まあ岩の中だしね。日の光は届かない。そこでエーコは気を効かせて光源魔法を唱えて明かりを灯す
「魔石ならいくつかあるから、それで明かりを付けてくれ」
魔獣から取れた魔石はこういう時に役に立つ。
「だがよ、配線はどうすんでぇ? 完全に塞がっていたら通しようがないぜ」
この世界は電気やガスはない。しかし、魔獣の魔石から似たような効果を出せる。それを日本で言う電気の配線のようなもので結んだりする。大工達は、注文すればそこまでやってくれる。
「それは、この娘が言われたとこに魔法で、穴を空けるから問題無い」
そう言ってエーコを示す。
「なるほどねぇ。お嬢ちゃん、光源魔法を軽々使っていたし魔導士として優秀なんだなぁ。もしかして、外観作ったのもお嬢ちゃんか?」
「まぁねー」
エーコが照れたように笑う。
「こりゃ驚いたなぁ。その歳で、てぇしたもんだ」
「ありがとー」
「で、内装とかもやれば良いか?」
「ああ。基本は任せるが、細かい采配は、このエーコが指示出す」
何でも屋エーコです。って言うか、俺マジで役立たずかも? エーコばかりに仕事を押し付けているし。
その後、細かいとこ等も指示を出した。
「どれくらいで出来そう?」
「まぁ外観出来てるからなぁ。二週間ってとこだな」
「分かった。宜しく頼む」
「じゃ、明日から作業に入るぜ」
「ああ」
「それと俺たちゃ西地区の三番街に店構えってからぁ、何かあったら来なぁ」
「分かった」
そうして大工達は帰って行った。
「じゃあエーコ、後を頼むな。俺は、今日中には王都メルーシに戻る」
「分かったー」
「一人で寂しくない?」
「そんな子供じゃないよー」
頬をプク~と膨らまし顔を赤らめそっぱ向きだす。
「八歳じゃん」
「実年齢はー、もう直ぐ十五だよー」
「そうだねー」
「わたしの真似しないでー」
「それと伝心魔道具を一台渡しておく」
「ありがとー」
あとは従業員の確保だな。