EP.21 血染めのサフィになりました
「ただいま~。こっちも終わったみたいだね」
そう言って俺は皆の下へ戻って来た。
「もー、どこ行ってたのー? 大変だったんだよー」
エーコが頬を膨らましおかんむりだ。
「エーコを食いたいって言うロリコンがいたんでな」
そう言ってロリコン野郎を放り投げる。
「うへぇー」
エーコが気持ち悪そうにげんなりしだす。
「エーコの初めては俺が貰う予定なのに何言ってるんだろうね?」
「アークこそ何言ってるのー!?」
エーコが顔を赤くしながら目を剥く。器用だな。
「アーク!」
ペッシーンっ!!
はい。いつものビンタです。
「エーコにまで、手を出す気かい!?」
ありゃちょっとしたジョークなのに皆してドン引きして俺から距離取ってるし。
「え? エーコのバージンロードの横は俺以外にないっしょ?」
「紛らわしいよー」
「まあともかく依頼完了だ。サフィ」
「はい。ありがとうございます。ロリコンアーク」
「おい!」
「ふふふ……冗談です。是非エーコの隣を歩いて上げてください」
そう言って扇子で口元を隠し優雅に笑う。
「さて、皆さん此処からは手を出さないでください」
サフィーネの空色の双眸が真剣なものへ変わる。
「起きてください」
そう言って扇子でロリコン野郎をはたく。
「起きなさいっ!!」
「ぅん……うう」
「やっと起きましたね」
「あ、サフィちゃん無事だったんだね。やっぱり僕と楽しみたかったの?」
「キモいわ!!! このロリコン!!!!」
おお!? サフィーネがキレた。
「サフィちゃんもそんな事言うんだ? ならっ!!」
そう言ってナイフを抜く。しかし……、
カッキーンっ!!
良い音したな。扇子で弾き飛ばしたぞ。
まあ俺達と旅をして、だいぶレベルが上がったし、こんなロリコン野郎に遅れは取らないだろう。
「何!?」
「ソレ二度と悪さができないように取らせて頂きます。<風槍魔法>」
「ぎゃあああああっ!!!!」
扇子を振るった際に飛び出た<風槍魔法>で、タマ取られた。痛そう~~。男として終わったな。
「よくも異世界ハーレムライフをーーーーっ!!!!」
目がめっちゃ血走ってるな。しかもおかしな事も口走ってるし。
「貴方なんかのハーレムに入りたいなんて事を言う危篤な人いる訳ないでしょおおおおが!!!」
サフィーネ、だいぶお怒りですな。と言うか、王女殿下にあるまじき言動だぞ。良いのか?
「煩い! お前からケチが付いたんだ。全てお前が悪い。黙って女は皆犯されてろ!! その為にしか存在していないだろうが!!」
うわ! 今の発言まずいぞ。ナターシャ、エーコ、沙耶、静、セイラの眉がめっちゃ吊り上がってる。マジで怖い。
「そうですか。うふふふ……<風槍魔法>」
こっちはこっちでニコやかに扇子から魔法ぶっ放して怖いわー。
「僕の腕があああああっ!!」
「これで私とお揃いですね」
うん。右腕が吹っ飛んだしね。と言うか、至近距離で魔法打ち過ぎっしょ。お陰でサフィーネにも血が掛かってるぞ。
「どうせもう使えないでしょうからこっちも。<風槍魔法>」
「ぎゃああああああ!!!! どうしてくれるんだ!!!??? 女の〇〇〇をイジってやる為にある大事な手だぞ!!! 世界の損失と言っても良い」
こいつマジでキモいな~。女性陣の目が怒りを通り越して冷ややかになってるじゃん。
「黙りなさい!!! <風槍魔法>」
「うあああああ!!!! 僕が何をしたって言うだあああああ!!!」
更に左足を飛ばす。拷問だな。と言うか、サフィーネが狂乱していて血を浴びてるので、『血染めの〇フィ』を思い出してしまった。あれも壮絶だったな。あ! てか、同じ王女じゃん。
「さあトドメです。さようなら。<風槍魔法>」
あ、急所狙ってる。そう気付いた俺は、小刀で風槍魔法を斬り咲く。
「……どうして止めるのですか? アーク」
めっちゃ睨んで来たな。ロリコン野郎を見る目より怖いんですけど?
「逆に聞くがどうして殺す必要がある?」
「私は時期女王になる身。早いか遅いかはありますが、人を裁く立場にあるのです」
怒りで完全に我を失ってるな。まあ憎き相手が目の前にいるんだからそうなるか。
「ナターシャ、気に食わないと思うが回復してくれ」
とりあえずロリコン野郎をナターシャに投げる。此処でエーコに投げないのは八歳のロリだからだ。ロリコン野郎に少しでも接触するのは気に食わない。
「さてサフィ。それは執行人の役目ではないのか?」
「私がいずれそう言う立場になると言っているのです。良いからソレをよこしなさいッッ!!!!」
パッシーンっ!
はい、ビンタです。俺がされたんじゃないよ? 俺がしたんだよ。あ~~味方の女に手を挙げたのは初めてだな。罪悪感が凄い。
「っ!?」
「冷静になれ! 女王は自ら手を下すのか? 違うだろ? 法を決め判決を言い渡す立場だろ? そして死刑執行人は別の奴だ。違うか?」
「……はい」
サフィーネが項垂れる。
「それでも納得行かないか?」
「……はい」
あ、泣き始めちゃった。ポロポロと雫が零れる。
「お前がリセアって人を救った時、相手を殺したのか?」
「えっ!? どうしてそれを?」
サフィーネが目を丸くする。
「何が?」
「どうして私がリセアを助けた事を知っているのですか? お話した覚えはないのですが」
「お前、セイラを庇う時、何て言って飛び出した?」
「……リセア」
「そうリセアって呟いて、飛び出したんだ。そして記憶が戻った。なら、リセアを助けた時と同じ状況だったんじゃないか?」
「ご明察の通りです」
「そのリセアは喜ぶか? リセアに誇れるのかお前は? リセアを助けた手で今度は人を殺めようとしてるんだぞ」
「ぅぅぅうわあああああ!!!」
あ、泣き崩れちゃった。座り込み大泣きだ。
そんなサフィーネにそっと手を伸ばす。そしてナターシャを見る。ナターシャはコクリと頷いてくれる。ナターシャのお許しが出たのでサフィーネを抱きしめる。
って言うか、あれだよな。今日のお前が言うなスレは此処ですかって奴だ。
ダークの体を使っている俺が何を偉そうに説教垂れているんだろ。アークになった後も、やり過ぎて殺した事もあったしな。
「他意はない。女の子が……いや、王女殿下が人前で涙を溢すのを隠す為だ」
そう言って優しく頭を撫でる。てか、めっちゃこっ恥ずかしい事言ってるなー俺。
それにしても、前に沙耶に同じ事をしたな。一度経験があるので、抱きしめる事が出来たけど、沙耶の時は戸惑ったんだよな。
女の子が泣いてるのにどうしよう? どうしよう? って感じで。ゲームばかりしてた俺だけどギャルゲーをやって来なかったから、どうすれば良いかわからねぇ~とか、あの時考えていたんだよな。まあ二度目はすんなりだったけど。
「あああ……ぅあああ……リセアぁぁぁあああ……」
まだ泣いてるのか。それだけ溜まっていたのかね。それともリセアって人の存在は、それだけ大きかったのかもしれない。
そして五分くらい泣き続けた。
「失礼しました。お見苦しいものを見せまして」
「<下位回復魔法>」
回復魔法で腫れた目を治す。その後……、
「え? 何が? 皆、何か見たか?」
そう呼び掛けると全員首を横に振った。
「ふふふ……ありがとうございます」
顔を少し赤く染め、まるで憑き物が取れたかのように柔らかく微笑むサフィーネだった……。