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EP.15 魔導研究所 (三)

 日が暮れた頃に北にあった洞窟に到着した一同は、携帯食を口にした後、突入した。

 エドワードとアルフォードが先頭をきり、ロクームとアークという初めて見る奴だが、何処と無く懐かしいと、アルフォードが感じている者が、少し離れたとこから後を着いて来ている。

 ハンターは、アークに懐つき、そのすぐ後ろから着いて来ていた。

 ハンターの様子からやっぱりダークか? と、訝しがるアルフォードだが、なわけないか思い直す。が、その側らか……、


「ダーク」


 と、ロクームが呼ぶ。

 アルフォードは、それに混乱した。


「……何だ?」

「今回はいきなり始末するのは無しでガンスな」

「ああ……吐かせてからだな?」

「そういう事でガンス」


 本人も反応しているよ。どういう事だ? と、アルフォードは、更に訝しげに首を傾げた。


「……おい、兄貴」


 小声でエドワードに話し掛ける。


「ん? どうした?」


 エドワードにアルフォードに合わせ小声で返す。


「あいつ……アークってんだろ?」

「……ああ」

「でも今、ロクームがダークって……」

「似てるからだろ?」

「ああ。なるほど」


 アルフォードは、そうか似ているから、つまり渾名って奴だな。そう納得した。


「にしてもアル。お前、何が良いかわからないって、もしかして、怪しいもんがあったら手やたり次第、私のとこに持ってくるつもりだったのか?」

「そんなわけないだろ。一回一回、フィックスまで持って行ってたらキリがない」


 時にはサバンナの方まで行っていたのに、態々帰るなんて面倒な事はしてられないと、思うアルフォード


「それもそうだな」

「ガハハハハハ……そんなの道具屋に持って行けば一目瞭然だぜ!」


 アルフォードは自信たっぷりに繋ぐ。


「でも、怪しくないけど使える資源もあるでガンス! 実は見逃してたでガンスかもよ?」

「あっ!」


 ロクームの言葉に固まってしまうアルフォード。

 うぉぉぉ……失敗したー!! 確かに今まで、そんな物が有ったような、無かったようなと、頭を抱え出すアルフォード。しかしアルフォードは深く考えない性格なので……、


「それはそうとロクーム。さっきアークと話してたいきなり始末するのは無しって何の事だ?」


 と、話を変える。

 ちなみにだがロクームはアルフォードを揶揄って言っただけだ。アルフォードは、エドワードより知恵があり、閃きに優れているとロクームも認めている。そんな奴が、貴重な資源に全く気付かずスルーする筈がないと。


「エルドリアにあった怪しい模様の扉の先で、喋る魔物が魔導実験をしていたんでガンスよ」

「あ~。情報を聞き出す前に倒したわけか?」


 頭の回転が良いアルフォードは、即座に察したようだ。


「その通りでガンス。だから、アルもいきなり始末するなでガンスよ」

「わかったぜ」


 そんな話をしてると黒曜石があるフロアに到着していた。


「こ、これは凄い!」


 開口一番に驚きの声を上げたのは、エドワードだ。


「この量は、何でガンスか?」


 続けて驚くのはロクーム。

 黒曜石と呼ばれていた石か一面に広がっているのだから驚くのも無理からぬところだ。


「ふっ……これでは失われし資源とは思えんな」


 アークが、薄く苦笑を浮かべ呟く。


「で、怪しい扉は?」

「あそこだ」


 エドワードに聞かれアルフォードは、その扉を指差した。


「あれはエルドリアのと同じでガンス」


 と、ロクームが声を上げる。

 どうやら来て正解だったようだ。


「じゃあ中に魔導研究所のようなものが?」

「ああ、たぶんでガンスが……開けるでガンス!」


 エドワードに問われロクームは答え、ドアノブに手を伸ばす。


 ガチガチ……。


「どうした?」

「開かないでガンス……しかも、鍵穴すらないでガンス」


 エドワードに問われロクームがさてどうしようと言わんばかりに天を仰ぐ。


「……おい、アル」


 アークはアルフォードに声を掛けられる。


「親しき者はアルと呼ぶがアーク。お前は今日会ったばかりで、いきなりアルか?」

「……ああ、すまない。アルフォード」

「がはははははは……別にアルで良いぜ。で、何だ?」


 アルフォードは、豪快に笑い愛称呼びを許す。元々細かい事を気にする性格ではないのだ。ただいきなり『アル』呼びで面食らっただけなのだ。


「闘気技を」

「どけーっ!」


 そして、アークの短い言葉で得心を得たので叫ぶ。


「えっ!?」


 ロクームは直ぐ様、横に飛ぶ。


「オォォォラバスタァァァっ!!」


 ドゴォーンッ!! と、けたたまし爆音が響く。

 アルフォードの拳から闘気の塊を放出し力押しで破壊した。アルフォードは、魔法は使えなかったが、闘気だけは自在に扱えた。

 闘気は、生物の体内に宿るもので精霊は関係なく、精霊がいなくなった後でも普通に使えるので、今でも役に立ってるとアルフォードは、感じていた。

 ちなみに闘気とは言わば体内エネルギー。闘気を操る事で身体能力を爆発的に高めたり大技を繰り出したりが可能になる。


「相変わらず無茶苦茶だな」

「……だが余計な手間が省けた」


 と、エドワードが毒づくが、アークは楽ができたと言う感じだ。


「で、何で俺が闘気技が使えるかわかった?」

「……ん? その鍛え抜かれた肉体と覇気を見ればわかるだろ?」


 おお! そうかこの肉体でわかるか。お前良く見てるな。と、嬉しく思うアルフォード。

 そして、アルフォード達は壊れた扉から中へ侵入した。中はカプセルが立ち並ぶ。ラフラカの魔導研究所を連想される光景だ。

 あそこでは、かつて魔導の研究が行われいた。精霊をカプセルに入れ、魔導の力を吸い出し、他の生物に注入すると言う(おぞ)ましい研究をだ。

 ただ、此処ではカプセルに魔物が入れられ、魔導の力を供給している感じに見えた。つまりは、此処から出て来た魔物は、魔法を使って来るという事になるのではないかと予想する一同。


「……エルドリアと同じでガンス」


 ロクームが呟く。


「ナニモノダ!?」


 カプセルの外にいた白衣を来た機械型魔物のアイアンオーガが気付かれた。あれだけ、ド派手に侵入すれば当然であろう。

 アイアンオーガは、メインサーバーらしき機械の前に立っている。どうやら数は一体。

 此処の研究所を管理しているのは、一目瞭然。

 それにしても本当に喋れるのだなと、感心するアルフォード。


「侵入者! 侵入者! ……排除! 排除!」


 アイアンオーガは、(やかま)しく叫び突然、アークに襲いかかってきた。

 スッ! と、アークは鮮やかに躱し、背後に周って左腕を首に回し押さえ付け、右手に持った小刀を首に突き付ける。

 流石ダークに似ているだけあって、動きもそっくりだと思うアルフォード。


「……此処で、何をしている?」


 声を低くしてアークが聞く。魔物には、無意味だろうが、脅すように言ったのだ。


「魔物ニ魔導ノ力ヲ与エテイル」


 やっぱり。


「誰がやらせている?」


 アークが再び問う。


「ダームエル様ダ」

「……なん…だ…と?」


 アークが戸惑う。それはエドワードも同じだ。


「どうした兄貴にアーク?」


 エドワードが問いかける。


「……何でも無い」

「いや、私の思い過ごしだろう」


 そう言い、アークはかぶりを振る。まるで何かを振り払うように。

 エドワードも、思い過ごしと言うが、そうは思えない。弟だからこそわかると、アルフォードは思った。


「……そのダームエルはどこにいる?」


 そして、またアークが問う。


「シルカ! 排除! 排除!」


 まともな答えが返ってこない。


「じゃあ、どうやって精霊の力を手に入れた?」


 エドワードが質問を変えた。


「過去カラモッテキタ」

「「「「は!?」」」」


 耳を疑ってしまうような謎めいた一言に一同、目を丸くする。


「……過去から持って来たとはどういう事でガンスか!?」


 誰もが気になっている事をロクームが聞いた。


「ダームエル様ハ過去ニ戻リ、ラフラカ(・・・・)ゴト精霊王ノ()ヲ手ニシテキタノダ!」

「つまり、ダームエルって奴の中で、今でも精霊王が生きているって事でガンスか」


 ロクームが呟く。


「通りで、魔法が復活したわけだ」

「……のようだな」


 得心が行ったと言う感じで言うエドワードにアークが賛同した。


「それで、どうやって過去に戻った?」


 再びエドワードが問うた。


「ソンナコト知ルカ! 排除! 排除!」


 と言うと、アークを振り払う。


「くっ!」


 アークはよろける。その隙をつき……、


「<中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)!!>」


 アイアンオーガが中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)を唱え、ボォォォォっ! と、巨大な炎がアークを襲う。


「ちぃっ!!」


 咄嗟にアークが腕でガードしようとした。

 しかし、それをハンターがアークを突き飛ばすように庇う。


「クゥ~ン」


 ハンター唸る。

 魔法が炸裂した為にハンターが燃え上がる。何故ダークではないのに庇ったのだ? とアルフォードが不思議に思っていると……、


「ゥウ~~ワンワンっ!!」


 ハンターが駆けた。炎に包まれながらも、アイアンオーガに突っ込み炎が燃え移るが、機械型のオーガなので、大したダメージにはならない。しかし……、


 ジュィィィィィっ!! 

 

 エドワードの対魔物用チェンソーが唸りを上げる。ハンターの突撃に合わせたのだ。


「クゥーン」


 ハンターは、その場に倒れてしまう。


「ハンターっ!」


 直ぐ様、アークは駆け寄り、他の面々も続いた。


「……無茶しやがって。<下位回復魔法(リカバリー)>」


 アークが下位回復魔法(リカバリー)をかける。


「「「えっ!?」」」


 それに一同が目を剝く。


「……何だ?」


 アークが首を傾げる。


「いや、魔法は失われていたでガンス」


「……奴等に使えて俺等に使えない道理はない」


 まあ確かにそうなるなと、一同納得した。


「さて。整理しよう」


 改めてエドワードが話始める。


「ルティナの睨んでた通りこれは作為的な物であり、それをやったのはダームエルって奴だ」

「そして、ダームエルは何をしたのか知らないでガンスが、過去に跳んだでガンス」

「……そして、ラフラカごと精霊王の力を手に入れた」


 ロクーム、アークと続く。


「で、どうするんだ?」


 アルフォードが、問い掛けた。


「まずは城に戻り皆と相談だな」

「そうなるな」

「……ああ」


 エドワードが答え、ロクームとアークが賛同した。

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