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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十一章 ウルールカ女王国の第一王女
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EP.15 転生者に出会いました

「この度は護衛の方ありがとうございました。無事にサイールの町に到着しました。此方、依頼料です」


 そう言って商隊のリーダーに護衛料金を渡される。これを冒険者ギルドに持って行き仲介料を払わないと違反になるので面倒だ。

 と言うか、いつの間にルマの村からサイールの町に到着したかって? こまっけー事は良いんだよ!!

 だってー、特記すべき事なんてなかったしー。


「わたしの真似しないでー」


 何か聞こえたがスルー。

 集団暴走(スタンピード)が起き、またロリコン野郎の仕業かと思い探したりとか、盗賊に襲われたりとか、商隊の馬車が壊れ修理したりとか、ほんと何もなかった。

 何処が何もなかったのよ!?


「私の真似しないでよ」


 また何か聞こえたがスルー。

 盗賊ボコったお陰で、沙耶が直ぐに血に慣れたと言うのは、良き点か。最初は吐きそうになっていたのに。まったく慎ましいの胸だけだったって話だな。


「聞こえてるわよっ!!」


 またまた何か聞こえたがスルー。


「あと今回は沢山助けて頂いたので、此方宿の紹介状です。良かったらご利用ください。この辺では珍しい浸かるお風呂もございます」


 紹介状を渡された。何処の宿屋も、あっても蒸し風呂だから珍しいな。しかも俺等が利用するのは大抵桶を貸してくれる安宿ばかり。


「えっ!? お風呂!?」


 ビックリしたー!! 流石は静ちゃん。お風呂ネタに食い付いたぞ。


「〇び太君はいないよ?」


 一応突っ込んでおこう。


「……良い、よ。そん、な……ネタ。あ~……い、きなり騒い、で恥ず……かしい」


 モジモジしだしてるし。それをケンが微笑ましく見守っている。


「お前、〇び太に改名したら? で、眼也は武」

「「何でだよっ!?」」


 息ピッタリに突っ込まれた。


「確かにケンケンは心の友だが、虐めてないぞ」

「恥ずかしいから心の友とか言うの止めてくれないか?」


 仲が良い事で。

 そんな馬鹿話をしながら冒険者ギルドに向かっていたのだが……、


「てめぇ、よくも騙しやがったな?」

「会長がお怒りだ!」

「だから、アレはそうなるって分かり切ってる事でしょう~?」


 何やら揉め事のようだ。

 少女を大人の男三人が囲んでいる。周りの連中は見て見ぬ振りか。

 少女は緑色の髪をショートカットで切り揃え、7:3分けにしている。目は黄緑。服装は普通の平民って感じのみずぼらしいものだ。

 う~ん。気になるな。え? 可愛い女の子だから気になるのかって? そうそう……って、ちっげーよ。

 確かにそれなりに可愛いが気になるのは珍しい髪型ってとこだ。転移者以外で分けている人は珍しい。髪に癖を付けるの面倒だし、そう言う事はしないのだろう……。まあたまにいるけど。

 それに大半の女はロングヘヤーで、ポニーテールにスカーフを巻いている。ショートは珍しい。いても、分けておらずそのまま前に垂らしている。

 こっちの世界の人間ではないが、ナターシャは背中の後ろで、エーコはサイドテールを三つ編みで髪を結いでいるが、分けてはいない。

 沙耶の場合はポニーテールだが、解くと真ん中分けになっている。つまり地球の日本出身は髪を結んでいても、解いた姿を見られても良いように髪に癖を付け分けていたりするのだ。

 従って珍しい。って訳で鑑定………………ふむふむ。面白い!!


挿絵(By みてみん)


「……リセア」


 と、サフィが呟くと少女の元に駆け寄る。え? あの子リセアって名前じゃなかったよ?


「お止めなさい! 一人を相手に大人数で囲むものではありませんよ」


 そうして少女を庇うように立ち塞がる。


「どけ! お前とは話していない」


 そう言ってサフィを掴み掛かろうとした。その手を俺はバシっと掴む。

 って必要なかったかも? サフィは扇子を右腕がないので左手で構え、払い除けようとしてたようだ。


「何だ? てめぇ」

「あ、失礼。俺の連れが暴言を」


 そう言って手を離す。


「ところで何を揉めていたので? 『騙しやがって』って声が聞こえたので、この少女に非があるのかなと思い声を掛けてみたんだが?」


 少女は鑑定の結果、面白いが罪があるのなら突き出すしかない。


「あ~、そいつが花を咲かすスキルを持ってるって言うから、うちの商会の会長が庭の木の花を咲かせてくれてって頼んだんだよ」


 あ、丁寧に説明してくれるんだ。


「それで?」

「咲くに咲いたが、直ぐ枯れちまって。その女は騙したんだ」

「そりゃ枯れるだろ」


 何を当たり前の事を言ってるんだ? まあ丁寧に説明してくれたしこっちも丁寧に説明してやるのもやぶさかでじゃないな。


「あん?」

「例えばの話をして良いか?」

「何だ? 言ってみろ」

「人間で例えて、五歳児を五十歳に一気に成長させられるとしよう。だけど成長させたせいで六十で死に、十年しか生きられなかった。本来なら五十五年生きられたのにだ。その花を咲かせた木も同じって事だよ」

「聞いてねぇよ!」

「寿命を縮めるって最初に言いましたよ」


 少女がそう言う。うん、なら君は悪くないね。


「寿命とか意味分からねぇよ」

「それを理解していなかった方に非があると思うけど? それでも納得出来ないなら、領主の下に行き話を聞いて貰う?」


 実は、この町には領主が住んでいるのだ。


「ちっ! わーったよ。おい! 次から寿命ってのを詳しく説明してからやるんだぞ」

「分かりました」


 口は悪いが忠告までして行くなんて、ただのゴロツキじゃなかったんだな。


「あの……ありがとうございます」

「たまたま通り掛かっただけだから。サフィも大丈夫か?」

「えっ!? えぇ。大丈夫でございます」


 さて、そろそろこの少女の鑑定結果を白日の下に晒すか……って何か悪い奴みたいに言ってしまった。

 そんな訳で、ドンっ!



 名前:セイラ

 年齢:十四歳

 レベル:10

 種族:人族

 職業:庭師

 HP:1300

 MP:150

 力:160

 魔力:160

 体力:100

 俊敏:130

 スキル:ナイフ術Lv5、短剣術Lv2、栽培LvMAX

 称号:転生者

 装備:鉄のナイフ (攻撃力100)

    普通の服 (防御力10)

    普通の靴 (防御力5、俊敏5)



 転生者ですよ、転生者。初めて見たわ~。通りで分けるという髪型をしてる訳だ。日本での生活の癖だなこれ。


「ところで、君は転生者だね?」

「何故それを~!?」


 セイラが驚きに目を剥く。


「俺、鑑定持ち、OK?」


 おっとカタコトになってしまった。


「……OK。って、鑑定持ってる人に初めて会いました~」

「あ、敬語はいらんよ。やっぱり日本人?」

「はい……いえ、うん! そ~」

「享年はいくつか聞いても?」

「二十六だった~」

「あら、まだ若かったんだな」

「そうなんだよ~。彼氏とこれからって時に。付き合い立てだったんだよ~っ!!」


 おお!? 凄い勢いで喋り出した。


「あ、すみません。こんな話が、出来る人いなかったんで~」

「そう? あ、此処にいる沙耶、ケン、静、眼也は転移者だよ。俺はちょっと訳有りでこんな髪と目をしてるけど、一応日本出身」

「本当ですかっ!?」


 再び驚きで目を剥きだす。目玉飛び出ないか?


「せっかくだから沙耶達はセイラと話して来たら? 日本談義に花を咲かせるのも悪くないでしょう? 談義なら枯れないし」

「それ洒落になってないさぁ」


 ナターシャに突っ込まれてしまう。そして、皆してクスクス笑い出す……サフィを除き。


「あの私の名前は、鑑定で知られてるようだけど、貴方は~?」

「ああ、悪い。俺はアーク。こっちがナターシャで、こっちはエーコで、こっちはサフィ。他はさっき紹介した通り」

「宜しくさぁ」

「宜しくー」

「……あ、えっと宜しくお願いします」


 うん、やっぱ様子がおかしい。


「五人は日本談義でもしてて。俺は冒険者ギルドの前に例の宿を確保しておくから」


 って訳で、風呂有り宿屋に向かう事にしました。


「先に冒険者ギルドじゃなかったのかい?」

「うん? ちょっと話がある。本当はケン達とも話したかったんだけど転生者を逃すのは惜しいから、四人と一緒にいさせた」


 ナターシャの問いに答える。


「転生者が何で惜しいのー?」

「十四年間こっちの世界にいたんだぞ? 転生者と普通の一般人の違いとか聞けるかもしれないし、何か面白い情報がありそうだからな」


 エーコの質問にも答える。

 そうして宿屋に到着したので紹介状を見せた。


「紹介状をお持ちになったと言う事はスイートルームで宜しいでしょうか?」

「「すいぃとるぅむ?」」


 宿屋の人の言葉にナターシャとエーコが首を傾げる。もしかしたらこの世界は、転移者が沢山いるだけはあって英語が通じるのかも?

 メンサボの町でも『スムーズ』と言う言葉が通じたしな。


「では、スイートを二部屋お願いします」


いつものように二部屋取る。まあ今からO・HA・NA・SHIなので一部屋しか使わないけど。


「ナターシャ、茶」

「来て早々態度でかいさぁ」


 すんません。

 ナターシャが淹れてくれたお茶をずず~と啜り喉を湿らすとサフィを見た。


「それでサフィ……いや、サフィーネ様と呼んだ方が良いですか? もう記憶が戻られていますよね?」


 王族っぽいし、此処から敬語だ。


「えっ!? どうして?」

「「えっ!?」」


 サフィーネが目を丸くする。ナターシャとエーコも驚く。


「様子がおかしかったので、失礼ながら鑑定させて頂きました。『称号 記憶喪失』がなくなっていましたので気付きました」

「……そうですか」

「貴女様は王族ですか?」


 そう聞くとサフィーネが立ち上がる。


「今まで大変お世話になり、また王族と知りながら普通に接してくださりありがとうございました。私の本当の名は、サフィーネ=メル=ウルールカ。この国の第一王女です」


 そう言ってスカートの端を掴み流麗にお辞儀を行う。


「マジか!? 失礼しました。家名がウルールカなので王族だと思っておりましたが、王女殿下とは……大変失礼しました」


 そう言って俺は頭を下げた。


「止してください。公の場では困りますが、基本的には今まで通りにしてください。それと私が王族と知っているのはアークだけですか?」

「では、失礼して普通に話す。眼也もだ。眼也には俺が口止めした。皆で共有してしまうとサフィーネの耳にも入る恐れがあった。下手な事が耳に入ると拒絶反応が起き、記憶が戻らない可能性もあったので」

「聡明なご判断です。それについても感謝を」

「それでサフィーネ。一体何があった?」


 俺はそう言って、サフィーネの言葉を待った。

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