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EP.14 アルフォード=フィックス (三)

 昔、武術を神と言われた男がいたそうだ。その男は闘気を極め、一定範囲の空間全てを掌握する等、普通の者にはできない事をやってのけた。

 武術の神は、人が到達できる限界まで到達したと言われている。それ故に、その男は畏怖と敬畏を込めてこう呼ばれた……、


 闘神と――――。


 その闘神は、闘気を極めた弊害で町にいると、人々の動きが全てわかってしまい、暮らし難くなった。

 例えば強盗、強姦等の犯罪が起きれば、手に取るようにわかり、見過ごす事ができないでいた。他にも男女の交わりも、わかってしまうので、居心地が悪かった。

 気付くと畏怖や敬畏と言った目を向けられるようになり、俗世を離れる事になったのだ。


 そんな闘神を探し出し弟子入りを申し込みに来た王族の小僧がいた。当時九歳の彼が態々闘神の下に来たのには理由があった。

 小僧には、双子の兄がいた。兄の方が頭も良いし、次代の王は兄だろうと思った。しかし、決して弟は馬鹿なわけではない。いや、むしろ頭の回転は兄より優れていた。

 知識の兄に知恵の弟と言うべきか、皮肉な事に兄弟に両方が備わっているのではなく、才能が分かれてしまったのだ。


 小僧は、頭の回転の良さ故に、次代は兄で決まると考えた。別に自分が王になりたかったわけではない。ただ、兄が王になるなら、自分は何をすれば良いのかと考えたわけだ。

 そして、考えた結果、小僧は国を兄が支えるなら自分は、その兄を支えようと考えた。兄が潰れたら、国は立ち行かない。ならば、兄が潰れないようにするのは自分の役目だと考えた。

 そうして、頭の回転が良いお陰で闘神の居場所を突き止め、弟子入りを申し込んだと言うわけだ。

 闘神も小僧の熱意に負け弟子入りを認めた。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 ドカドカドカボコっ!!


「流派、闘神はっ!」


 当時小僧だった弟子をボコしながら口上を述べる闘神。


「心身強く、強者であれっ!」


 弟子は、闘神の攻撃を防ぎもせず、殴り返しながら同じく口上を口にする。

 師である闘神から、防がない避けない殴り合いをしろと言われたからだ。闘気を極めたなら、それが可能だと。

 仮に『ぐふっ!』や『ごばっ!』等のやられた声を出し、口上を止めれば、即座に失格の烙印を押され破門にすると言われた。


 ドカドカドカボコっ!!!


 右へ左へ上へと、闘神は目まぐるしく移動し、それに喰らい付く弟子。殴り合いは、激しさを増して行く。


「全身の身体を持って!」


 尚をも続く闘神の口上。

 更に拳だけではなく蹴りも飛んで来る。


「全てを打ち砕けっ!」


 拳は全て喰らうが、蹴りは躱す。

 闘神は、拳ばかりに集中するのではなく、いつ飛んで来るかわからない蹴りは確実に躱せと言われた。

 実直にそれを遂行する弟子。また弟子も蹴りを繰り出すが、闘神もそれを躱す。


「それ即ちッ!」


 ドカドカドカボコッッッ!!!!!!


「「闘志を、ばぁぁぁぁく散させろぉぉぉッッ!!」」


 熱い! 熱過ぎる!! アークがいれば、こう言ったであろう。『G〇ンかよっ!!』と。

 弟子は涙する。何故なら、元来の頭の回転の良さから察していた。これを最後まで行えねば破門。最後まで行えば修了すると。

 いずれにしろ、これで闘神に師事するのは、今日までだと。


「この五年間、良くぞ儂の修行に着いて来れた!」

「はいぃぃぃ!!」


 もう弟子は号泣していた。


「闘神の修行は、此処までだ。これより、汝の定めた通り兄を支えると良い」

「ありがとうございましたぁぁぁぁッッ!!!!」


 弟子は、土下座をし感謝の言葉を叫んだ。


 それが十四歳になったアルフォード=フィックス。エドワードの弟だった――――。


 この後、兄を支える為にアルフォードは、反帝国組織の中核となり、己の拳でどんな困難もぶち破り戦い続けたのは、また別の話だ……。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「「「「「「アルっ!」」」」」」


 その場にいた全員が驚きの声でアルフォードの愛称を呼ぶ。エドワードの双子の弟だ。


「皆、お揃いか……久しぶりだな! 一年ぶりか?」

「お、お前。一体今まで何を? ……何が兄貴が城を支え……」

「ホレ!」


 エドワードが、言い掛けてたがアルフォードは何かを放り投げ遮った。


「ん? ……何だこれは? ……はっ!? こ、これは黒曜石じゃないか!?」


 大陸崩壊により数々の資源が失われが、アルフォードが渡したのは、どうやら貴重な資源だったようだ。


「言ったろ? ……兄貴が城を支え、俺がその兄貴を支えるって」


 精霊大戦後もアルフォードは、貴重な資源を探し回っていた。

 兄を支えるなんて大層な誓いを立てたが結局は、この肉体を使う事以外できないと、アルフォードは考えていた。


「……それで、お前これを探してたのか?」

「ああ。俺の特技はこの肉体だけだ! だから城にいても兄貴を支えるどころか足引っ張ると思ってな」

「……アル」


 アルフォードの頭の回転の良さがあれば、決してそんな事はないと思うエドワード。


「で、その石ッコロは役に立つのか? 俺じゃ良いとかわかんねぇ」

「役に立つどころの騒ぎじゃないぞこれは……失われし資源の一つだっ!!」


 興奮気味に答えるエドワード。


「じゃあついて来な! 案内する……まだまだ大量にあったぜ!」

「行きたいのは山々なんだが……」


 しかし、エドワードは口ごもる


「ん? どうした?」

「実はアル……」


 ロクームは、今までの事を説明した。


「じゃあ尚更来いよ! 皆一緒にな」

「何故だ?」


 エドワードは、訝しげに問い掛ける。一同も同じ気持ちだと目が雄弁に語っていた。


「今の話に出て来た奴かどうかはわからんけど、怪しい扉ならあったぜ!」

「本当かでガンスか!?」


 と、ロクームが食い付く。


「ああ……あまりにも怪しいから兄貴に相談してから開けようと思っていたんだ」

「場所は何処だ?」


 これはエリスか? 相変わらず口調は硬いが、ロクームと結ばれて一段と奇麗になったなと感慨に耽るアルフォード。とは言え、今は案内が先だと考えていた。


「此処から北に半日歩いたとこにある洞窟だぜ」


挿絵(By みてみん)


「待てよ……そんなところに洞窟はない筈だ」


 エドワードがそう言う。確かに今まではなかった。


「それがあるんだよ……俺も驚いた!」


 あの大戦以降、島が沈んだり洞窟が浮上してきたりと不思議な事ばかり起きているから、おかしな話ではない。だが、灯台下暗し。まさかあんな近くに洞窟ができるとはアルフォードも驚いていた。


「決まりでガンスな! あきらかに怪しいでガンス! その洞窟」


 と、ロクームとコソ泥魂に火が付いた。


「儂はさっき此処に着いたばかりで疲れのじゃ……悪いが留守番してるのじゃ」

「じゃあ、わたしもー」


 と、ラゴスとエーコが残る事に決めたようだ。


「エリスも残ってくれでガンス」

「私も行く」

「此処にはルティナがいるでガンス。何かあった時に守って欲しいでガンス」

「もっとはっきり言えば良いだろ! まぁ良い。わかった」

「はっきり言ったらお前素直に頷かないだろ?」

「ああ」


 ロクームとエリスは話し合い、エリスも残る事になった。

 会話に違和感を感じ訝しげに首を傾げるアルフォード。


「じゃあメンバーは、兄貴とロクーム。そして案内に俺。この三人で良いか?」

「……俺も行く」

「ん? 知らぬ顔だな。俺はエドワードが弟アルフォードだ」

「……アークだ」


 なんか微妙な空気が流てるな。何かあるのか? と、アルフォードは不思議に思う。


「宜しくな」

「……ああ」

「じゃあこの四人で決まりだな?」

「ワンワンっ!」


 その時とハンターがアークに擦り寄った。

 ダークでもないのにハンターが懐くとは珍しいな。雰囲気が、どことなくダークに似てるかもしれないな。と、思うアルフォード。


「あっ! ハンター!」

「クゥ~ン」

「えっ!? 行きたいのー? わかったー。行ってらっしゃいー」


 慌ててエーコが声を掛ける。ハンターは振り返り、つぶらな瞳で行きたいを訴えている。エーコはそれを察し、行くの許可した。

 アルフォードは。やはり珍しい。ダーク亡き今、ハンターがエーコの以外に着いて行くとわなと、思った。


「じゃ四人と一匹だな」


 アルフォード、兄貴が城を支え、俺がその兄貴を支える。そう誓ったは良いが俺にできる事はあまりない。其処で大陸崩壊で様々な失われた資源を探す。または、その代わりになる物を探す旅に出た。

 そして、フィックス城の近くに新しく出来た洞窟に変わった石を発見し、それは失われし資源か聞きに一度帰ったと言う事らしい。

 と言うわけで、アルフォード達四人と一匹は黒曜石がある北の洞窟に向かう事になった。

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