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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十一章 ウルールカ女王国の第一王女
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EP.06 万里の長城のようでした

 -2083――――月陸歴1515年8月8日



「エーコ、お帰り~」

「エーコちゃんお帰り」

「静もお帰り」


 二人が宿屋に戻って来たので、俺と沙耶とケンが声を掛け、迎い入れる。


「ただいまー」

「……ただ……い、ま」

「で、どうだったエーコ?」


 二人で討伐クエストに行って貰った。まあ基本はエーコの魔法を見て貰うのが目的だ。

 そして、帰りに静に魔法の手解きをするのが、ここ数日の日課だ。俺も沙耶とケンの鍛錬を日課にしている。

 ってか働けよというツッコミは無しで。確かに俺達三人は此処最近全く稼いでいませんハイ。

 とは言え、いつまでもカエサル村にいれば追ってが掛かる可能性もあるので、明日には出発しないとな。


「良い感じだよー。飲み込みが早く才能あるよー」

「ほ~神童様のお墨付きか」

「その称号を言うの止めてよー。恥ずかしいよー」


 エーコは顔を赤くしながら頬を膨らましそっぽ向く。それがまた可愛いーーー。


「……エ、ーコ、師匠……の教え、方……が良い、から」


 頬を染めモジモジと恥ずかしそうに言う静。てか、師匠呼びなのか。


「そうかなー? でもー、才能あるのはほんとだよー」

「……魔、法少女に……憧れ、て……たから……」


 増々顔を赤くし、耳まで真っ赤だ。


「魔法少女になりたいとか思ってたのか? 分かるなぁ。俺もヒーローとか憧れてた時期があったから」


 ケンの奴、気を使ったな。恥ずかしがる事ないよと言いたいんだろう。ヒーローに憧れていたっていつの話だよ?

 俺はもうそう言う時期があったけど小学生までだったし。


「ち、違う……助け、に来て……欲し、かった」

「あ~」


 ケンがやってしまったとバツの悪そうな顔している。

 たぶん静ってオドオドしてるし、自分に自信なさそうだし、虐められていたんだろうな。


「でも、家は? 家なら安息出来たよね?」


 微妙な空気をフォローしようとして沙耶が口を開く。


「………………」

「えっ!?」


 静の目元のハイライトが消える。それに沙耶が焦りだす。これ家でも訳ありだな。


「……家は、冷え、きって……いた」


 あーこれどうすんの? 空気悪っ!


「……あ、確かに、魔法少女……になり、たい……と思うよう……になったかも」


 悪くなった空気を払拭するかのように自分から口を開きだす静。


「……中学の、あたり、から……ずっと。魔法、少女……が、いない、なら、私が、なりた、いって……」


 言い切った後、再び顔を真っ赤にしだす。


「それで魔導ってスキルを獲得したんだな」


 静の言葉を笑わずに返すケン。かなり静に過保護のような気がするなコイツ。そんなにあっちの具合が……ゲフンゲフン。


「まあ魔法少女って言うには、もう歳があれだけどな」

「余計な事言わないの!」


 しみじみ呟いたら沙耶に頭をはたかれた。

 それはともかく、エーコが認めるくらいだし鑑定してみるか。



 名前:しずか=むむい

 年齢:16歳

 レベル:14

 職業:魔術師

 HP:900

 MP:400

 力:100

 魔力:400 (600)

 体力:80

 俊敏:70

 スキル:炎魔法Lv4、風魔法Lv2、土魔法Lv2、水魔法Lv5、雷魔法Lv1

 称号:魔導、魔法少女、転移者



 すごっ! 俺達と出会って十日くらいしか経っていないのに、かなり強くなっている。しかもレベルがほとんど上がっていないのに。

 まあステータスを上げるにはレベルが全てじゃないけど。反復練習とか模擬戦とかでもステータスは上がる。これエーコにかなり叩き込まれたな。

 それと称号が増えてる……、


「ゴッホゴッホっ!!」


 思わず()せてしまった。お茶飲んでたし気管に入ったかも。


「いきなりどうしたのよ!?」

「汚いなー」


 俺のいきなりの噎せ返りに沙耶が目を剥き、エーコが台吹きで飛ばしたお茶を拭いてくれた。


「いや……静に新たな称号が付いたから」

「何!? すげーな静」


 ケンが手放しで褒める。


「……でも……内容、が恥ずか、しい」

「どんなのー?」


 エーコが俺に聞いて来る。師匠みたいなものだし気になるのだろうな。


「称号名 魔法少女。魔法少女に憧れ続ける限り魔力1.3倍。魔導と合わせると1.5倍だよ」


 つまり( )書きの数値は魔導と魔法少女の効果込みの数値って訳だな。


「……これ常時発動だから、ある意味エーコの神童より凄いかも」


 更に俺はそう続ける。エーコの神童は一定時間二倍だからな。尤もエーコの場合常時発動の大魔導士がある。

 内容は他の称号と併用は出来ないがMP魔力が1.3倍になるというものだ。併用は出来ないが、魔法少女のように条件はないしMPまで1.3倍というとこがおいしい。


「は、恥ずかしいから言わないで!!!」

「「「「っ!?」」」」


 うわっ! ビックリした。静が珍しく怒鳴り、はっきり物を言ったよ。


「大丈夫だよー。わたしも神童とかあるからー、恥ずかしいよー」


 エーコがフォローする。じゃあ更にフォローするか。


「更にエーコは、魔眼って言う中二病スキル持ちだしな」

「中二病ー?」


 エーコはキョトンとしだすが、沙耶、ケン、静は分かってのかエーコから目を反らす。


「さて話は此処までだ! 帰って来たぞ」


 外から声が聞こえる。尤もダークの肉体を使っている俺だからこそ聞こえるのだけど。


「今日もありがとうございます。ナターシャさん」

「構わないさぁ」

「それで、ナターシャさん。良ければ男が使っている部屋に来てくれませんか? アークに頼まれていた事があって」

「アークが? そうかい。じゃあお邪魔するさぁ」


 そうしてナターシャが部屋の扉を開けた。


「「「「「誕生日おめでとう!!!」」」」」


 そう今日は八月八日でナターシャの誕生日なのだ。十七歳になる。本来の年齢は二十八歳だけど。

 この世界に来て一ヶ月先に誕生日が伸びたけど、確り祝わないとな。

 しかも飾り付けもバッチリ。ってやったの全部エーコだけど。

 光源魔法(ライト)を基本とし炎魔法や水魔法に土魔法を微妙に混ぜ色とりどりのの光の玉を飛ばしている。どんだけ繊細な魔力コントロールをしてるんだか。


「え? え?」

「ナターシャさん、おめでとうございます」


 ナターシャは目を白黒させる。こんな大勢に祝われた事なんて、それこそ子供の時以来だろうな。一人で暮らす期間が長くなり、その後俺とエーコが一緒に暮らし出したので二人で祝う事はあったけど。

 眼也も後から部屋に入って来てナターシャを祝う。


「ケーキも用意したよー」


 エーコがケーキを取り出す。


「皆、ありがとうさぁ」


 そう言って微笑むナターシャ。

 実は、眼也に頼んで少しゆっくり目に帰って来て貰っていたのだ。


「あ! これ俺からのプレゼント」


 そう言って小包を渡す。


「アーク、ありがとうさぁ。開けて良いかい?」

「ダメっ!!」

「えっ!?」

「そう聞かれるとダメと言いたくなるのが男心だ」

「「「反抗期か!?」」」


 沙耶、ケン、眼也がシンクロしたぞ。三人同時に突っ込まれた。


「……開けるさぁ」


 中に入ってたのは、親指と人差し指と中指にハメるカイザーナックルのようなもの。

 実はオリハルコンの鍛冶師をしていたラクーダに作って貰った。お金の管理をしているのはナターシャだが、お小遣いを貰っていない訳ではない。投擲用の武器を買うと言えば数が数だけに結構な額を貰えるからな。それで作って貰った。

 え? 結局ナターシャの金だって? こまっけー事は良いんだよっ!!!


「エレメント・アローの矢を精製する時に補助してくれる魔道具武装アーティファクト・ウエポンだ」

「へ~~。アークにしては良い物くれるじゃない」


 してはって何だよ。意趣返ししてやる。

 俺はナターシャに近付きそっと耳打ちする。


「本来の年齢では、また一歩三十路に近付いたな」


 パッシーンっ!! パッシーンっ!!


「失礼さぁ!!」


 はい、いつものビンタです。それも往復ビンタを喰らいました。

 物資調達もケン達をある程度鍛えるのも終わったし次の日旅立ち、二日程で国境が見えて来た。


「凄いな……」


 この風景は壮観だ。上に登れば絶景なのだろうな。尤も高さは20mくらいしかないけど。


「まるで万里の長城よ」

「確かに」

「ああ」

「……そう、だ、ね」


 俺がポツリと呟いた言葉に沙耶、ケン、眼也、静が続く。


「万里の長城ってー?」

「まんまこんな感じのが地球の日本のお隣の中国って国にあったんだよ」


 エーコの疑問に答える。正確には万里の長城は最大でも高さ9mしかない。これの半分以下だ。

 そう国境は万里の長城のごとく続いているのだ。魔法がある世界なので、国境線を決めた時に土系魔法で全ての国境に万里の長城のような城壁を作った……らしい。

 らしいってのは、メンサボの町で調べて知識としては知っていたが、実際に見た事なかったからな。

 そして国を越えるには、一部だけ万里の長城が途切れている場所……関所で国境越え料金を払って国境を越えられるというわけだ。

 そんな訳で俺達は衛兵達が四人立っている関所に訪れていた……。

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