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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十一章 ウルールカ女王国の第一王女
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EP.03 沙耶とバトりました

 -2095――――月陸歴1515年7月26日



 メンサボの町にいた領主はクソだった。領主がクソなら国も期待出来ない。きっと腐敗しているだろう。

 よって俺達は東の森を抜け、ウルールカ女王国との国境を目指す。ウルールカ女王国も腐敗していなければ良いんだけどな。

 だが、女王国という名は男心をくすぐる。可愛い女の子ばかりなのだろう。きっと楽園に違いない。

 そうこれは目の保養をしたいだけで、決して浮気ではない。ナターシャ以外に絶対に手を出すつもりはない。俺はロクームとは違うのだ。だから決して浮気ではない。はい大事なとこなので二度言いました。


「……アーク」

「どうした? ナターシャ」

「そんなに女性国家が楽しみかい?」


 なんか目元のハイライトが消えたぞ。それに他の二人も冷めた目で見て来ている。


「な、に!? ま、まさかまた口に出ていたか?」

「口に出ていなくても顔に出ていたさぁ」

「気持ち悪いくらいにニヤニヤしてたよー」

「美女三人いるのに他に目移りするなんて最低よ」


 うわ! 三人から非難の嵐。


「いや、二人は幼女だろう?」


 どうでも良いツッコミをしてしまう。


「じゃあ美女一人に美幼女二人じゃ満足しないの?」

「いや~……一人は娘みたいなものだし、もう一人はがっかりおっぱいだしな~」

「またそれを言うの? 忘れなさいって言ったよ!?」


 沙耶が薙刀を抜き、俺に向ける。

 いや事実今のお前、真っ平じゃん。まあ十六歳の状態でもBしかなかったけど。と言うか十四歳からの二年で成長したように思えなかったけど。ついでに自分で美幼女とか言うなよ。


「矯正!」


 ペッシーンとまたビンタを喰らいました。


「理不尽だ」

「鼻の下を伸ばしてるからよ」


 そう言う沙耶も、まだ薙刀を俺に向けているし。


「丁度良いわ。アーク、私と模擬戦しなさいよ?」

「はっ? いや、今のお前じゃまだ相手にもならないぞ」

「えぇ。だからハンデ頂戴?」

「どんな?」

「其処を動かないでよ。あ、木が邪魔だから右に三歩くらいズレて」


 まあ森の中だしね。俺は言われた通りにズレる。沙耶は俺を中心に半径三メートルくらいの円を薙刀で描き始めた。


「アークは、この範囲から出ないでよ」

「他にルールは?」

「死ななければエーコちゃんが治してくれるし、殺し以外何でもあり」

「いや、痛いだろ? お前まだこう言う世界に慣れていなくて打たれ弱いんじゃないか?」

「ふふ~~ん」


 なんかドヤ顔してるな。


「無い胸張ってどうした?」

「煩いよっ!! ともかく多少は平気よ。魔侍の恩恵で痛覚鈍化を習得したから」

「ほ~~~」


 関心したけど、でもそれ鈍化されるだけで無効にする訳じゃないから、結局かなり痛いんだけどな。


「って訳で見られて、挙句に小さいだの価値ないだのつまらぬ物を見ただの暴言の返礼をしてあげるよ」

「いや、後半の二つは言ってないぞ」

「煩いよ! ナターシャさん、合図お願い」

「分かったさぁ……では、始め!」


 距離にして五メートル沙耶は離れていた。四歩前に出て円ギリギリのとこに行けば二メートルになるだろうけど、沙耶が態々離れたのだ。何か仕掛けるのは目に見えている。

 よって、それを見極める為に俺は円の中心で腰を少し落とす。何をするのか分からないので、武器は抜かない。


「はぁぁぁ……!」


 縮地? 俺の真似したな。だが遅い。しかも予備動作があるせいでバレバレだ。

 沙耶は薙刀を突き出し突っ込んで来る。俺はそれを最小の動きで躱す。


「ぬ!?」


 刃先が爆風を纏っている? 風の魔法剣及び魔法薙刀において風は魔力コントロールが繊細だ。

 確り制御していないと風の力で斬りたい相手を吹き飛ばしてしまう。つまり沙耶は制御しきれていないのだ。

 風の力で縮地もどきを使い更に風の魔法薙刀を同時に使う。まだ練習不足って事だな。

 俺は最小ではなく四歩右にズレ円の内側ギリギリに移動する。吹っ飛ばされ円から出たら俺の負けだ。

 いや、もしかしたらそれを狙って態とか!?


「はっ!」


 その証拠に俺とすれ違う瞬間、沙耶は風をコントロールしてちゃんとした魔法薙刀にした。そして軽くこっちに向ける。それだけで、頬が軽く斬れた。

 なかなかやるな。

 では、こちらも。沙耶がすれ違い後方に行った瞬間小刀を抜き振り向きざまに振るった。並の者ならこれで終わりだ。


「なっ!?」


 しかし、沙耶は風魔法により空高く飛んでいたのだ。

 縮地の真似のようなもので突っ込み、すれ違った瞬間、空高く飛ぶ。上手い具合に風を操っているな。


「炎刀留っ!」


 そして空中から炎の魔法薙刀の斬撃飛ばしを行って来た。俺はそれを軽々斬り咲く。

 だが、それは囮だった。沙耶は風の魔法を背中に当て体を吹っ飛ばし俺に迫る。縮地もどきの空中版か。

 突き出された薙刀を最小で躱す。着地の瞬間が尤も隙だらけだからな。そのまま斬り付けてやろう。


「またか」


 しかし、それは叶わない。沙耶は着地と同時に空にまた舞い上がる。そして空で軌道を変え、右や左、下、上など横無尽に駆ける。ってガッシュかよ!

 ガッシュもFFOのプレイアブルキャラの一人で、ユニークスキルは立体軌道。空中を縦横無尽に駆けるキャラで、相手するのが面倒なキャラだった。

 それの簡易版と言える動き。ガッシュのは速く、並の者では目で追うのも困難。しかし、沙耶のはそれに比べ遅い。しかも無理に軌道を変えているので、姿勢が悪い。

 ぶっちゃけ俺が飛び上がれば速攻終わる。円の外に出るなと言われたが、飛ぶなとは言われてないしな。でも、そんな決着は面白くない。


「はっ!」


 そう思っていたら、真上から炎の魔法薙刀にして一気に突貫して来た。そんな無理な軌道するから攻撃も直線的過ぎる。


「よっと」


 俺は軽く薙刀を弾く――それでも炎を纏っているので、こっちは闘気を籠めてはいる――。これで薙刀の次に落ちて来た沙耶を捕まえれば終わりだな。


「え!?」


 しかし落ちて来たのは薙刀だけだ。途中で手を離したな。炎の薙刀は目眩まし。炎を大きくする事で自分の体を見えないようにしたようだ。

 しかしだ。俺にそれは下策。何故なら気配完知で直ぐ分かるからだ。

 俺はそっちを見もせず小刀だけを向ける。


 ギィィィィィンっ!!!!


 金属がぶつかり合う音が響く。沙耶に脇差を使うスキルがあれば良かったんだけどな。残念ながら今のところない。なので小刀を向けてるだけで力もほとんど入れずに抑えられた。

 そして俺はもう一振りの小刀を抜き、沙耶の首に当てた。


「まだ続ける?」

「……私の負けよ」

「それまでさぁ」


 ナターシャの止めの言葉も入る。


「面白い動きをしていたけど、脇差のスキルがない時点でアウトだな」

「そうなのよ。振るっていて気付いたわ。薙刀のように振れないって」


 沙耶がげんなりしたように溜息を付く。


「それと俺の縮地をパクりやがって」

「あれは違うよ。似たようなのになったけど、アークのような素早い動きがしたかっただけよ」


 通りで予備動作がゼロじゃなかったわけだ。


「それに、あんな神業はアークにしか無理よ。予備動作ゼロ? 頭おかしんじゃないの? 無理に決まってるよ」


 あ、試してみてはいたんだ。つか、頭おかしくて悪ぅござんしたね。


「だが、まあ荒いが悪い動きではなかった。確実に強くなっている」


 魔法薙刀の斬撃飛ばしも出来るようになってたしな。あれは闘気の扱いが上手くないと出来ない技だ。尤も闘気の斬撃そのものを飛ばすよりはマシなんだけど。


「恨みは返せなかったけどね」


 苦笑し肩を竦める沙耶。


「あ、そうだ。アークにお願いがあるのよ」

「何だ?」

「脇差の使い方教えて?」


 小刀の長さは一尺(約30cm)、小太刀は二尺二寸(約66.7cm)。そして脇差は一尺から二尺の長さ。形は似たり寄ったり。

 沙耶の脇差は一尺七寸(約51cm)なので小太刀のように教えれば良いのだろう。ただスキルとしては小太刀術に分類されるか脇差術に分類されるか、はたまた別の何かになるかは発現されるまで分からない。

 まあそれは良いとして問題は……、


「俺が教えるとなれば小太刀のような扱いで教える。それに俺の場合『型』なんてものは独自のものだ」


 そう俺の小太刀や小刀に普通の型のようなものはない。敢えて言うなら我流だ。


「それは良いよ。私なりアレンジするから」

「分かった。暇な時にちょくちょく教える」

「ありがとう」


 そう言って沙耶は花が咲いたように微笑んだ。


「つうか、着物で無理な軌道してたせいで、お前の面白味の全くない下着が見えていたぞ」


 ニヒと揶揄うように笑う。


「感謝したのが馬鹿らしいよ。アンタのそう言うとこ、ほんとムカ付くよ!」


 さいですか。

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