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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十章 月光の世界へ (第二部 開始)
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EP.29 女王国を目指す事になりました

「なっ!? ……がはっ!」


 距離にして5mを一瞬で移動しドテっ腹に掌打。

 またつまらぬものを殴ってしまった……なんっつって。

 




 縮地――それは俺が編み出した技だ。





 前にゼフィロスという強力な敵と戦った時に、己の未熟差を痛感した。夕方くらいから戦い、次の日の朝まで戦いが長引いた。もし、そのまま続けていれば体力の問題で負けていただろう……。

 ゼフィロスは、予備動作から此方の攻撃を完全に読んでいた。


 予備動作が大きいと例えば腕を振り上げれ攻撃が来る、足を上げれば蹴りが飛んで来る等、推測が可能となる。

 達人同士の戦いとなれば予備動作に見せ掛けた動きと視線誘導で思考誘導も可能になるだろう。

 その予備動作をゼロにする事で、瞬間移動したと錯覚させる事も可能だ。

 事実俺の動きにロクームは目を見開き対応出来ずにいた。エリスも目を丸くし驚いていた。


 まあ最大スピードよりは遅いし、ロクームもスピード主体で戦うので、普通に走り込めば目で簡単に追えただろう。しかし予備動作をゼロにした事で、瞬間移動したと錯覚したのだ。

 その種は、風魔法によるものだ。風魔法を背中から当てるようにして、風の力で自分の体を吹き飛ばした。

 しかし、これは口で言うのは易し。止まりたいとこで止まり、直ぐ攻撃に繋げるのは苦労した。

 暇な時間に何度も練習した。失敗の度に止まれず行き過ぎたりとかしてしまった。

 俺は、これがしたくて風忍を選んだ。いや、正確にはこれの発展型のを目指してるのだが、これもやりたかった一つには変わりない。

 それにこれは、魔法名を言わずに出来るってのが大きいな。エーコが魔法スキルについて調べてくれたお陰だ。


「がはっ!」


 掌打を喰らって直ぐにバックステップで下がり再び5mくらいの距離が開いた。

 腐ってもラフラカを倒した英雄の一人だ。一発で動きが悪くなる訳ないな。だが、それでもお腹を抱えている。ダメージはかなり入っただろう。


<縮地>


 再び予備動作ゼロで一瞬で距離を詰め今度は胸部に掌打。続けて右フック、左フック。


「がはっ! ぐふっ! うっ!」


 トドメのアッパー。ロクーム相手に武器は必要無いな。


「………」


 どうやら既に意識はないようだ。じゃあオマケの回し蹴りを喰らわす。


「くっ!」


 エリスの方へ、態々吹っ飛ばしてやる。エリスは咄嗟にロクームを抱きかかえる。


「やはりこうなったか……」


 エリスは大きく溜息を付く。

 そして、この戦いで領軍はポカーンとしている。何が起きたのか思考が着いて来ていないのだろう。


「沙耶、今のうちにズラかるぞ!」

「え? えぇ。分かったよ」


 そうして俺達は、走り込み東門から外に出た。其処で少し離れた所で、二つの気配が町の城壁を飛び越えているのを感知した。

 ナターシャ達だな。俺達は直ぐ様合流の為にそっちの向かう。


「合流出来たようだな」

「それは良いけどさぁ……これからどうするんだい?」

「ウルールカ女王国に向かう。国境が近いクルワーゾ騎馬王国に行きたいとこだが、小競り合いが続いてるようだし、どんなトラブルが起きるかわからない。かと言って、ブリテント騎士王国やアルーク教国とかは、国境が遠い」


 ナターシャの問いに即答で答える。一応この辺の地理は調べていたしな。


「分かったさぁ」

「わたしもそれで良いよー」

「私も良いと思うよ」


 三人は賛同してくれた。

 よし! ウルールカ女王国に行けるぜ。女王国だぜ。国名からわかる通り女人国家。どんな綺麗な人が女王をやってるのか楽しみだぜ。

 いや、女王が婆と言う可能性もあるが、きっと王女とかは美人に間違いない。なんせ王族は顔が良い者同士が結ばれる事がテンプレだ。それにより子々孫々美形が誕生する。

 いやーマジで楽しみだ。どんな可愛い娘ちゃん出会えるか……。

 是非ともお近付きになりたいぜ。


「サイテー」

「アークも男よね」


 エーコと沙耶が冷めた視線を向けて来る。何故? いきなりどうしてそんな態度に?


「……アーク」


 ナターシャはナターシャで、目のハイライトが消える。何? 俺何かしたか?


「矯正!」


 ペッシーンと、久々のビンタが来た。痛い。だが何故だ?


「そんな女王様に会いたいのかい?」

「え? 何故だ? 心を読んだのか?」

「全部口に出ていたさぁ」

「出てたー」

「思いっきり出てたよ」


 ナンテコッター! 俺とした事が一生の不覚。


「まあともかくウルールカ女王国に行くぞ」

「女王様に会いにかい?」


 まだ冷めた目で皆して見て来るし。


「会いたいと思っても簡単に会えないだろ? とりあえず小競り合いをしておらず、国境が近いの事実だしな」


 そうして居た堪れない思いをしながら、歩き始める。


「もし追手が来た場合、相手するの面倒だから攪乱を兼ねて東の森を抜けて行くぞ」

「「「………」」」


 三人共冷たい。


「そう言えばさ、転移者って魔王に勝てるのかな?」


 暫く歩きポツリと沙耶が呟く。この世界では英雄召喚と称し、転移者を呼び出しまくってるようだしな。

 ちなみにメンサボの町で調べたので、この世界では一定の周期で魔王が生まれる事を知った。

 だが、今の俺達は魔王に興味は無い。一定の周期で誕生するのが、この世界の理なら知っておいて損はないとは思っているが。

 なので、沙耶も同じように考えているのか、そんな事を聞いたのだろう。もしくは勇者召喚と名前は違うが、同じように呼び出されたので、他人事には思えなかったのかもしれない。


「転移者特典があるからな難しくはないだろ」

「魂が疲弊しておらず能力……この世界ではスキルを獲得すると言うアレ? 私の場合は精霊に好かれるってのよね?」

「それだけじゃないだろ」

「他に何があるのよ?」

「まず翻訳」

「あ!」


 気付いてなかったのかーい!!!!


「どう言う事だい?」


 ナターシャもか。だけど沙耶が三つの世界を体験してるんだから気付きそうだけどな。


「世界が違うんだから言語が違うやろ。だけど転移者特典で自動で翻訳され読み書きも自動で出来るようになる」

「そうだったのかい?」

「でも、それだけじゃ魔王に勝てるとは思えないよ」

「それと成長率だな。俺やナターシャ、エーコは成長しきってるから伸びは悪いが、呼び出されたばかりの者は、急成長してるように思える」

「……確かに」


 沙耶にも思い当たる節があったのだろう。実際沙耶の成長は目を見張るものがある。


「だから、戦闘に役に立たないスキルを獲得したとしても、成長次第で十分強くなれるな」

「なるほどね。となるとデビルス国は馬鹿ね」

「だな。成長次第ではスキルがどんなのでも強くなれる可能性があるってのに……って訳で戦闘準備。魔獣が迫っているぞ」


 東の森に入ったので、魔獣が多い。気配完知で迫って来てる個体も感知した。

 さてさてさーて、魔獣狩りをしつつウルールカ女王国を目指しますかね。

 にしても、この世界に来て一ヶ月程で逃げる事になるとは思わなかったぜ。

 そんな訳でそれぞれ戦闘に入る。俺も狩るか。忍術レベル4で覚えたもう一つの魔法を試すのも兼ねて。

 まだ試してなかったんだよなー。って訳で……、






「<風魔手裏剣>」






 掌に五枚刃の風の手裏剣を四つ作り出し、それを投擲した。


 ザクザクザクザクっ!


 四体の魔獣を屠る。これ使えるな。俺向きの魔法だ。MP消費も少ないし。


「それのどこが風魔(・・)手裏剣なのよ!?」


 はい沙耶さんから鋭いツッコミを頂きました。そんなの俺が一番わかってらーーい!!

 風魔手裏剣とは、風魔忍軍を元ネタにした架空の手裏剣だ。日本人だった沙耶もそれくらいは知っていたのだろう。ナターシャとエーコは、何の事か分かっていないだろうけど。

 だが、俺が使ったのは()()法による手裏剣だ。しかし、使い物になるなら名前なんて良いやろ。

 草と書いてファミリアより、よっぽどマシだな。

 まあそんな訳で、俺達は月光の世界(ルナ・ワールド)に来て早々に逃げ出す事になってしまった……。

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