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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十章 月光の世界へ (第二部 開始)
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EP.25 決闘を申し込まれました

 魔族を一人生きて捕まえると小金貨一枚貰えるらしい。始末すると値が下がる。

 つまりはだ……、


 俺、グッチョブ!


 まあ何でも魔族が暗躍していたらなら、何かしらの情報を得られると考え生きたまま捕縛して欲しいと思っているのだろう。

 それはともかく思わぬ臨時収入も得たし、翌日ナターシャを連れて鍛冶場に行く事にした。

 俺達の防具は沙耶のを覗いて貧弱だ。沙耶も良い防具を装備してるが武器が微妙。なのでせっかくオリハルコンが手に入るようになったので、臨時報酬で良い武具を作って貰えないかと思ったわけだ。


「本当にエーコ達は大丈夫かい?」


 昨日から俺はエーコ達なら全然平気と言っているのだが、やはりナターシャは心配のようだ。

 そりゃエーコは弟子だし、沙耶は実力的にだいぶ俺達に劣るからな。


「問題無い。エーコ達なら此処にいる」


 そう言って地面をパンパンと蹴る。


「地面?」

「恐らくこの下に空洞があり。そこでエーコ達は出口を目指している。まあいざとなったらこの地面を破壊するだけだ」

「それなら安心だねぇ」


 かなり過激な事を言っているが、現在唯一の良心と言うべき沙耶がおらず、誰も突っ込まない。


「それでナターシャは特に欲しい武具とかないんだよな? サブウエポンくらいあっても良いと思うが……」

「あたいの次点攻撃は魔法だからねぇ。防具も自動反射マントがあれが十分だし」


 そうナターシャは俺の治時代のダチである武から貰った自動反射マントがある。そのお陰で一番防御力が高いのだ。一体何の材質を使ってるのやら。


「良いじゃねぇか! まずは俺のを装備を作ってくれ!」

「ダメだ! ワシはオリハルコンを見つけた者か、こいつならオリハルコンの武具を使いこなせるだろうって思える見込みある者に最初に作ってやりたい。残念ながらお前程度に作っても装備を十全に発揮出来ない」

「そんな事ない! これでも俺はランクC冒険者だ」


 形だけ(・・・)な。

 にしても騒がしいな。鍛冶場の出入口で揉め事が起こってるようだな。


「なんだろうねぇ? 行ってみようかい」


 ナターシャに促され、急いでその場に向かった。

 そうして形だけランクCのハイボークが俺を視界に入れると憎悪に染まった双眸で睨み付けて来た。いい加減コイツうざくなってきたな。


「おおお! おお、お前さん……」


 何か鍛冶職人の人、壊れてないか?


「その実力、素晴らしい。是非お前さんの武器を最初に作らせてくれ。勿論お代はいらねぇ。

 お前さんに合う素晴らしい一品を作ってやる。

 こう見ええても俺は人を見る目はある。お前さん等なんだろ? オリハルコンを発見したのは?

 さあどんな武器を作って欲しいか言ってくれ。ワシがぜってー良いもん作ってやる」


 え~~~~うん。何かまくし立てられたぞ。そしてハイボークはそれを聞いてあんぐり口を開けた。それは横から職人を掻っ攫ったようなものだしな。

 まあ、そこまで言うなら鑑定するか。



 名前:ラクーダ

 年齢:七十五歳

 レベル:80

 種族:ドワーフ

 職業:聖魔鍛冶師

 HP:7000

 MP:640

 力:1500

 魔力:550

 体力:3000

 俊敏:400

 スキル:槌術Lv6、闘気Lv1、聖魔鍛冶LvMAX

 称号:マスタースミス、神眼



 聖魔鍛冶師ね。字面から凄そうだが、いまいちわらかん。そして神眼となまた大層な名のスキルがあるな。


 神眼:鑑定遮断、鑑定偽装、闘気を突破し鑑定できる。また武具の詳しい性能を見極められる。


 なんかとんでもないものを持っていやがるな。


「あー、気持ちは嬉しいんだが、俺は既に武器を持っているんだ」

「何だと! 貴様、この世界指折りのラクーダ様手ずから武具を作ってくださるのだぞ! それを何様……くっ!」

「黙れ! お前とは話していない」


 あまりにもウザいハイボークに強めの威圧をして黙らせる。


「ほー、どんなのを持ってるんだ? 場合によっては改修でも良いぞ」

「これだな」


 闇夜ノ灯(やみよのあかり)を抜いて見せる。


「おおーーーこれは!!! 手に取って見て良いか?」

「どうぞ」


 俺は刀身を掴み柄を差し出す。


「では、失礼して……」


 ラクーダは暫く黙り込む。やがて口を開く。


「何だこれは? 材質は現存する数が少なく幻とされているアダマンタイト。それに特殊な刻印がされている。アダマンタイトの魔道具武装アーティファクト・ウエポンを拝めるとは……」


 何か感動して泣き始めたぞ。そんなすげー武器だったのか。


「くっ! せっかくお前さんに良い武器を作りたかったのだがな……。これより上の物はワシには無理だ」


 ガックリ項垂れ、闇夜ノ灯を返してくれる。


「じゃあ仲間の作ってくれないか? 一人武器が貧弱の奴がいるんだ」

「ああ。お前さんの仲間ってなら特別今回だけ半額でも良い。だが、やはりお前さんのを作ってみたかった……」


 うーん。職人のプライドって奴か?


「ちなみにあんたが作れるのは武器だけか?」

「ラクーダ様に向かってアンタ……ぐっ!」

「黙れ!」


 はい。またまた威圧。学習しないな、この形だけCは。


「武器だけじゃないぞ。防具もだ。それにワシは聖魔鍛冶師だから魔道具武装アーティファクト・ウエポンも作れるぞ」


 どうやら話の流れから特殊な能力の武具はこの世界では魔道具武装アーティファクト・ウエポンと呼ばれるらしいな。


「なら手甲を頼めるか? 特殊な能力を付与出来るなら、防御力は勿論、俊敏も上がるような奴を。俺はスピード主体だからな」

「おー分かったぜ。お前さんのは無料(タダ)で作ってやる。それとお仲間のだったな? そっちの嬢ちゃんか?」


 そう言ってナターシャを見る。


「いや、今別行動している」

「そうか、じゃあそいつを連れて来てくれ。どんな良い武器を作っても、そいつの手に馴染まなきゃ意味ないしな」

「分かった」

「じゃあワシは手甲を作るとしよう」


 そう言って鍛冶場へ入って行った。


「おい!」


 形だけCよ、まだいたのか。形だけCは俺に向けて手袋を投げ付けて来た。これってあれか? 決闘の申し込み。


「なっ!」


 俺が大人しく拾うわけないだろ。踏ん付けてグリグリしてやったぜ。はっはっは……。


「きさまああああっ!! 礼儀を知らんのか!?」

「形だけに口だけの奴に対する礼儀って何?」


 全く分かりませんって態度で首を傾げた。


「またアークの悪い癖が出たさぁ」


 だまらっしゃい。


「ぬぬぬ! 黙って俺と決闘しろ! どうせお前は武器頼りなんだろ? そのアダマンタイトの魔道具武装アーティファクト・ウエポンは無しでな」

「は? 何で俺が形だけCを相手しないといけないの?」

「アーク、いい加減鬱陶しいから相手してあげるさぁ」


 ナターシャも鬱陶しいと思い始めたか。まあこめかみに青筋が立ってるしな。

 しゃーねな! 踏ん付けた手袋を蹴り飛ばし形だけCに返した。


「貴様! マナーを知らんのか? 手で拾い返すものだぞ!」

「は!? お前の汚らしいのを触って俺の手が腐ったらどうするんだ?」

「クソ! まあ良い! 明日早朝ギルド前で待つ。まさか逃げるなんて真似しないよな? 俺を形だけ呼ばわりするくらいだしな」


 そう言って去って行った。は~~マジめんどくせー。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 そして翌日。


「逃げずに来たな」

「負ける要素が欠片もないからな」

「だったら、さっさと武器を抜け! 当然あの魔道具武装アーティファクト・ウエポンは無しだからな」


 自分の有利に進めたいようだな。しかもギルド前にしたせいでギャラリーが多い。俺に大勢の前で恥をかかせたいのかね。

 って訳で、俺は投擲用のただの鉄の短剣を抜いた。


「はっ! ただの鉄じゃねぇか! 俺のはこれだ」


 金色に輝く盾と同じく金色の剣を仲間から受け取っていた。それオリハルコンか?


「ラクーダに袖にされたんじゃなかったか?」

「他にもオリハルコンを加工できる職人はいる。どうだ? 怖気付いたなら降参しても良いんだぞ」


 嫌らしく笑っていやがるな。てか、一日で武具を作れるものなのか?

 それか前々から持っていたのかね。ただ、オリハルコンで出来ているだけの武器で、魔道具武装アーティファクト・ウエポンが欲しくてラクーダに頼んでいたのかな?


「武具の性能で実力が決まると思ってるから形だけCなんだよ。そんな事も分からんの?」


 そう言って肩を竦める。


「なんだとー!」


 ハイボークが突っ込んで来た。馬鹿がっ! 俺はスっとその場から消える。


「どこ行った? 逃げたのか!?」

「こっちだ」


 ハイボークの後ろに回り軽く背中を押す。


「沸点が低い。直ぐ直情的になってどうする? それでも冒険者の端くれか?」

「煩い! どんな小細工をした?」

「小細工? お前がトロいだけだろ?」

「このー」


 ハイボークはシールドバッシュを仕掛けて来た。これを避けるのは簡単だが、また小細工とか言われるしな……。

 って訳で蹴る。蹴って盾の軌道をズラす。


「馬鹿め! はぁぁぁぁ……!」


 シールドをズラした態勢だから隙だらけだと思ったんだろうね。でも、たかが蹴りでシールドの軌道をズラした時点で気付けよ。実力の差が全く分かっていない。

 ハイボークは、隙と見て斬り掛かって来る。俺が態と作った隙と知らずに……、


 ガッキーンっ!


 鉄の短剣でオリハルコンの剣を叩き折った。


「なん……だと……」


 半ば茫然としだす。

 やった事は単純。鉄の短剣に闘気を流しただけだ。これで威力も強度も格段に上がる。武器頼りにしてる奴が、オリハルコンを使ったからって強くなる訳じゃない。

 その点は、鍛冶師のラクーダの見込み通りって事だな。


「お前何をしたー!? また小細工でもしたのか?」


 は~~。どこまで残念な形だけCなんだよ。


「もーめんどくせー」


 そう言って鉄の短剣を捨てる。


「だったら素手でやろうか? ついでに目を瞑って相手してやる。掛かって来い」


 俺は目を瞑り、挑発するように手でクイクイと来いとジェスチャーした。


「上等だ! オラオラオラー!!」


 半ばで折れたオリハルコンの剣を振り回して来るが、気配完知で全部お見通し。最小の動きで躱す。


「はっ!」


 そして両手でハイボークの胸に掌打。続けて拳の応酬で同じ場所に叩き込む。


「がはっ!」


 吐血を起こすハイボーク。あばらが何本か逝ったな。


「バ、カな……」

「お前さ、最初に絡んでたエーコはギルマスから、実力だけならランクAかBだって言われたんだぞ。その仲間である俺が同じような実力があるのは当然だろ」

「な、に……!?」

「最初に言ったよな? 『相手の実力も測れないで喚いてるだけとか、形だけのランクC』だって」

「ク、ソ……」


 そこでハイボークは意識を失った。

 ハイボークは敗北した。ハイボークだけに……まんま過ぎてつまらんな。


「誰か、この馬鹿を回復してやって。俺にはそこまでしてやる義理はないしな」


 正確には、他の世界の魔法をあまり見せたくない。

 って訳で、俺はそのまま冒険者ギルドに入って行った。勿論ナターシャもいたので一緒にだ。

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