EP.23 魔族を連行しました
「キサマあああっよくもぉぉぉ……ッッ!!」
バックスの殺気が増す。
「知るか。バレバレなお前が悪い」
「良いのか? 人質がいるのだぞ」
エーコと沙耶ね。
「何故攫った?」
さっさと片付けても良いけど一応聞いておこう。激昂してる奴程チョロいしな。ペラペラ喋ってくれそうだ。
「オリハルコンだ! ニンゲン共に使われないように隠しておいたのに!!」
だったら取り尽くせば良いだろ。馬鹿なのか?
「オマケに念の為に引き寄せたジャイアント・ヤモリも片付けやがって」
思った通りペラペラ喋ってくれてるよ。
ジャイアント・ヤモリは、こいつの仕込みか。つまり、ジャイアント・ヤモリを使ってこの町を壊滅的にしようと思ったのね。
つか、計画が杜撰だな。オリハルコンはともかくあの魔獣ならギルマスのガリラウスでも倒せただろうに。
「ふ~ん」
そう言いながら左手で抜いた小刀を下から振り上げ右腕を斬り飛ばした。
「ぐっ! 人質が……がっ!」
はい顔面に掌打一発。ついでに返す刃で上から振り落とした小刀で左腕斬り飛ばしてやりました。弱い。弱過ぎる。
「人の話を……ぐはっ!」
言わせないよ?
右足を斬り飛ばし、そのバランスを崩し倒れてしまう。
そしてバックスは親の仇を見るように凄い形相で睨んで来た。まあ実際それだけの事をしてるんだけど。
「オーコワイコワイ! と言えば満足かな?」
「キサマあああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!!!」
「うるせーよ!」
ドカっと踏み付けた。
「<中位回復魔法>」
回復魔法で右腕、左腕、右足の切断面の止血してやる。綺麗に斬り飛ばしたからくっつけながら回復魔法を唱えれば腕と足は、完全にくっつくがそこまでしてやるつもりはない。
「何だ!? 今の魔法は……」
まあこの世界にはない魔法だしな。
「だが、やはり人質が……」
「どうでも良い」
最後まで言わせないよ? バックスの言葉を切って捨てる。
「なん……だと……!?」
「来い!」
「がががががががががが……」
茫然としているバックスの角を掴み引き摺る。そうして冒険者ギルドに連行した。
其処で敗北……もといハイボークに出くわす。
「貴様は……何だそれは?」
俺を睨み付けるとバックスに目を向ける。
「見て分からない? 魔族だけど?」
「貴様は魔族の間諜か!?」
パっと下がり剣に手を掛ける。
「馬鹿なの? 魔族をこんな扱いしてるのに何故そんな発想になる?」
こいつ俺への怒りで、まるで何も見えてないな。流石は形だけCだな。
「ああ、馬鹿だったな。ジャイアント・ヤモリは、この魔族の仕込みだったのに気付かないなんて」
はいいつもの余計な一言です。
「なに!?」
茫然としだすハイボークを放置し受付嬢の下に向かった。今日もアメリアか。
「魔族を捕まえた。ギルマスに会える?」
「え!? はい。少々お待ちください」
アメリアが目を丸くし、直ぐに奥へ引っ込みだす。そして戻って来るとそのままギルマスの執務室に案内された。
「今度は魔族か。話題に尽きないなお前は」
開口一番に失礼な事を言われたよ。
「と言う訳で、コレ引き渡す」
「何が『と言う訳』じゃ!?」
そりゃねぇ説明無しでと言う訳もクソもないよな。仕方無いので、何があったか説明した。
「事情はわかったが……良いのか?」
「何が?」
「じゃから、あの嬢ちゃん達だよ」
「沙耶は心配だがエーコがいるしな。ギルマスは完全に鑑定出来ただろ? エーコが早々遅れを取るとは思えないな」
ガリラウスの言葉を嘲笑い肩を竦める。
「確かにエーコはワシより強いかもしれないが……じゃが八歳だぞ」
正確には十四歳です。あと数ヵ月で元服です。ああ、この世界や前の世界ではな。地球ではあと六歳だけど。
十五で元服という事は地球の者より精神的に早熟って事だ。
「問題ないな」
「お前がそれで良いなら良いが……ギルドとしちゃ強者を亡くしたくないんじゃがな」
知らんがな。
って訳で撤収。俺はギルマスの執務室を後にした。