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EP.12 ラゴスとエーコ (三)

ブクマ&評価ありがとうございます

いきなり☆5評価とは、ビックリです

オリジナルのアーク・ザ・ストーリーでは、いきなりそんな評価を貰っていなかったので嬉しい限りです

 ユピテル大陸の東にある孤島に魔導士の村がある。


挿絵(By みてみん)


 大陸で唯一精霊契約により、魔法を行使できる事を知っている一族が住む村だ。尤も、ルティナのお陰で反帝国組織が、精霊契約を知り、魔法を行使できるようになるのだが。

 精霊大戦の折、魔導士を独占したいラフラカにより、当然襲撃を受けた。それも二度だ。

 一度目は中期。幸いにもと言ってしまったら犠牲者に悪いが一人しか犠牲にならなかった。

 二度目は末期。一度目は、気付かずにじわじわと死に至らしめると言う手段が打ったのだが、通じなかったので、直接襲撃を掛け、少なからずの犠牲者が出た。

 それを期に村で魔力の高い、とある二人が、反帝国組織に所属する事になる。


 一人は、既存の魔法にアレンジを加え新たな魔法を使う天才。ただ、歳が歳だけにバリバリ動けるわけではないのが、玉に瑕なのだが。

 容姿は、歳により白髪のボサボサ頭。口下の白い髭を10cmくらい伸ばした当時七十歳だった老人。

 目は茶色をしていた。と言うか、魔導士の村において赤系の色は魔力が総じて高いと言われている。この老人も、その例に漏れなかった。


 老人の名は、ラゴス=マゴス。年甲斐もなく浪漫を求める爺だ――――。


 もう一人は当時八歳だった幼女。

 彼女の母は、村一番の美少女だと評されていたが、魔力に優れていたわけではない。なのに彼女は類稀なる強大な魔力を持って生まれた。

 村の者から先祖返りと称される程に。それは瞳に如実に表れており、左は薄紫色、右は赤色のオッドアイ。

 村で、魔力が最も高いと言われるのは紫色の瞳を持って生まれて来る子だ。この幼女は、それに近い薄紫色していたので、先祖返りと称されたわけではない。この薄紫の瞳は魔眼だったので、そう称された。


 髪は母の血を色濃く受け継ぎ桃色をしていた。また、その母は最初の犠牲者になった者だ。故に彼女は、ラゴスの下で育つ。ラゴスは孫娘のように可愛いがった。

 そして、ラゴスと言えば天才。その天才の下にいたので、その才は遺憾なく発揮され、反帝国組織に所属する頃には、大半の魔法を習得していた。

 この二人が反帝国組織に所属した一年後に精霊大戦は終結した。

 この二人……いや、幼女の力が終結に導かれた大きな要因の一つだったと言うのは、また別の話だ。


 この幼女の名は、エーコ=アローラ。アークス=アローラの娘である――――。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 時は流れラゴスとエーコは、フィックス城に訪れていた。

 と言うのには、理由があった。ラゴスとエーコは魔導士の村に住んでおり、誰もが魔法を使え、精霊等の不可思議な存在に敏感なのだ。

 それ故に魔法が復活した事に直ぐに気が付いた。早急に原因の究明と処置が必要とされるが、二人だけでは、どうしようもできない。其処で精霊大戦時に共に戦ったエドワードが国王を務めるフィックス城に訪れたと言うわけだ。


「お~い。大変だじゃ」

「みんな、久しぶりー」


 謁見の間にラゴスに続きエーコが顔を出す。

 ラゴスとしては、危険だからエーコには来るなと言ったのだが、無理矢理着いて来たのだ。


「ラゴスでガンスか」

「それにエーコちゃん」


 と、ロクームの言葉にエリスが続く。


「二人共、どうし……」


 エドワードが何かを言い掛けると……、


「ワンワンっ!」


 エーコが飼うハンターという名の犬が、吠えてエーコの後から現れ、エドワードの言葉を遮った。

 ラゴスとも暮らしている犬なのだが、エーコにしか……いや、アローラの血の者にしか懐かないと、ラゴスは嘆いている。

 そのハンターが駆け出す。その先に向かうのは先を見たラゴスは、生きておったのじゃな、アークス!? と、驚き目を剥く。


「クゥ~ン」


 そして、ハンターがじゃれつくようにアークの足に顔を擦り付ける。


「ふっ……」


 そして、アークもまた満更でもないといった感じな様子で、ハンターを撫でる。


「すっごーい! わたし以外に懐かないんだよー」


 エーコが驚きの声を上げる。どうやらエーコは、アークがダークである事に気付いていないようだ。

 当然だ。彼はあの大戦の時、決して私達の前で、顔全体を覆う鉄仮面を外す事はなかったのだから。たぶん彼の素顔を知る者は皆無だったと思う。と、エリスは内心呟いた。

 しかし、それは間違いだった。唯一顔を知る者が一人いる。それは未だに目を剥いているラゴスだ。エーコにも素顔を見せているが、当時一歳だったので記憶がないのだろう……。


「ハンターが懐くなんてー、貴方誰なのー?」


 エーコがアークに語り掛ける。


「……俺はアーク。偶々ロクーム達と知り合って此処に来た」


「お、おい……」


 ロクームが何かを言おうとしたが、エリスは右腕で制止させ、首を横に振った。

 エドワードは言った。『ダークは、あの大戦後、死を選んだ……そして、此処にいるのはアークだ! それで良いじゃないか』と。

 エリスもそれで良いと思い、それならそれで、態々アークがダークだと言う必要はないと考えたようだ。


「え、え~っとー……」


 エーコが戸惑いの声を上げる。今のエリス達の行動に不審を抱いたのだろう。


「……それで二人共どうして此処に?」


 それを誤魔化すようにエドワードが話を戻す。こういう時は機転が効く。


「そうじゃた……大変じゃ! 大変じゃっ!」

「コラー! 落ち着けー、じじぃー!」


 ラゴスが焦った様子で要領得ないので、バキッ! と、エーコが強烈な蹴りをラゴスの背中に入れる。

 ラゴスは、それに吹き飛ばされ、その場に倒れてしまう。


「ぐっ! ……年寄りを労らんか」


 痛みに藻掻きながら、声を発する。


「あのねー……魔法が復活したみたいなんだよー」


 それを無視し、エーコが代わり説明した。


「何だでガンス。それか」


 ロクームがつまらなそうに呟く。

 ロクームもエリスもアークも、目の前で魔法を見せられ、且つエドワードが既に知っていたので、もう慣れたと言う面持ちだ。


「えっ!?」

「なぬっ!?」


 驚き目を丸くするラゴスとエーコ。


「それにしても良く魔法が復活した事に気付いたな。そっちも魔物が魔法を使ったのか?」


 エリスが関心しながら問い掛けた。


「いや、儂らは魔導士の村に住んでいるのじゃ」

「だからー、そういう事には敏感なんだー」


 ラゴスが喋りエーコが繋ぐ。

 私みたいに人工魔導士とは大違いだ。と、内心嘆息するエリス。

 エリスは、全くもって気付いていなかった。


「なるほど」

「……待て」


 と、エドワードは納得するが、アークはそうではないようだ。


「それに気付いたのは何時(・・)だ?」


 と繋ぐ。


「ニ週間程前じゃ」


 ラゴスが答える。


「なら()()()()()()()()()()()()()?」

「あっ!」


 エリスは、失念していたと言う感じで声を上げる。確かにそうだ。その指摘は尤もである。父親が精霊のルティナが気付かないわけがない。

 しかし、ロクームだけは違った。それ故……、


「いや……ルティナは、気付いたんじゃないんでガンスか? なぁエド。さっきルティナがどうとか言い掛けていなかったでガンスか?」


 と、問い掛ける。


「ああ。ロクームの言う通りルティナは気付いていたよ。実はロクーム達が来るより早くルティナが此処に来たんだ」

「えっ!? ルティナ? で、ルティナは今、何処だ?」


 驚くエリス。


「それが体力の消耗が激しくベッドで休んでる」

「ルティナお姉ちゃんがー?」

「ルティナは大丈夫なのか?」


 心配な面持ちのエーコとロクーム。いや、ロクームは、女だから気遣ってるフリをしてるのかもしれないが。


「偶に起きては食事を摂ってるから、問題無いが……暫くは動けんだろうな」


 エドワードが、かぶりを振りながら答える。


「……だが何故? 一週間前に会った時は元気だったのに……何があった?」


 アークが心配している。昔のダークだった頃ににはあり得ない光景だ。ますます別人に思えて来る。と、エドワード、エリス、ラゴスがそう感じていた。


「恐らく半精霊状態で此処まで、飛行して来た為に体力を急激に消耗したのだろう」

「なるほど。魔法が蘇って、一年もブランクがあるのに無理したのか」

「……体が着いて来なかったか」


 エドワードが推測を述べ、エリスは納得しアークが続く。が……、


「……だが、解せんな」


 再び納得いかないと言った感じでアークが呟く。


「お前は、さっきから何を言いたいんでガンスかっ!?」


 すかさずロクームが突っ込む。要領得ない事に少しイラ付いてる感じだ。


「黙れっ! お前とは話していないっ!!」

「「「「「っ!?」」」」」


 アークが怒鳴った事に、一同驚く。


「ダー、いや、アーク。こないだから思ってたけど、ロクームに当たりがきつくないか?」


 エリスは、ここ最近の疑問を問うた。


「……いや、すまない。気が立っていた」


 それは今だろ? こないだからの話ではないだろ? まあ良い今は(・・)。いずれ問い詰めてやる。私の旦那に文句付けるならアークでもダークでも関係無い。相手になってやる。

 なんて、剣吞な事を考えるエリスだった。が、それでも……、


「それで何が気になってるんだ?」


 話を戻す事にした。


「……俺が最後にルティナに会ったのは一週間前だ。その時は、まだ魔導の力が蘇っている事に気付いていなかった」

「それが?」

「少なくても……ニ週間前には魔導の力は蘇っていた。いくら魔導士の村の者でも、()が精霊の奴には敵わぬまい」


 アークが淡々と語る。

 それでエリスも得心が行く。

 アークは魔導士の村の者には直ぐ気付けて、父親が精霊であるルティナには気付けない筈がないって言いたいのだ。


「たぶんー、ルティナお姉ちゃんはー、なんとなく気付いていたんじゃないかなー?」

「じゃが……ルティナは一人じゃから、確信できなかったと思うのじゃ」


 おずおずエーコが答え、ラゴスが繋ぐ。


「……どういう事だ?」


 アークが訝しげに首を傾げる。


「儂らは、村の皆が魔導士。一人が不可思議な事に気付ければ、皆で相談できるのじゃ」

「ルティナと一緒に住んでる人達は魔法を使えない。ならルティナ一人、異変に気付いても周りには、わからなかった。それで、ルティナも気のせいだろうと思った……そんなところだろう?」

「……そうか」


 ラゴスに言葉にエドワードが要約し、アークが納得を示す。


「じゃあ話を戻すが、今回のこの魔法が蘇った事は、何か作意的なものではないかとルティナは言っていた」

「それは儂も感じるのじゃ」


 エドワードが話を切り替え、ラゴスが同意した。


「それで最悪精霊大戦みたいな悲劇が起こるかもしれない……っと」

「「「「っ!?」」」」


 エドワードが続けた言葉に全員が息を飲んだ。

 またあの悲劇が……。あの大戦で、どれだけの者が亡くなっただろうか。どれだけの者が傷付いただろうか……?

 考えるだけで計り知れないと、誰もがそう思った。


「……それで、ルティナどうするって?」


 一人冷静にアークが聞く。


「もし、これが作為的なものなら、是が非でも止めると言っていた。まあ今は、その為にも暫く休むと」

「そうかでガンスか」


 ロクームが頷く。

 此処まで話を終えると誰もが深刻な面持ちでしていた。これからまた大きな戦いがあるかもしれないのだ。当然なのかもしれない。しかし、それを払拭させる者が……、


「ガハハハハ……兄貴、久しぶりだな」


 豪快な笑い声を張り上げながら、謁見の間に現れ、その深刻な空気も一変させるのだった……。

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