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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十章 月光の世界へ (第二部 開始)
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EP.20 強制転移

「今日も稼げたねー」

「でも、いつまでこれ続けるのよ……」


 魔獣の討伐、いや間引きの依頼を終えギルドに報告をしたエーコと沙耶が宿への帰り道を歩いていた。

 間引きとは、ある程度魔獣を狩り町まで来ないようにする行為。殲滅となる難しいので定期的にある程度狩るという依頼を冒険者ギルドのクエストで出していた。


「うーん。まあアークは色々考えてると思うよー」

「そうかもしれなけど……」

「その知識がげえむとやらから来てるのが不安ー?」

「そうよ」


 言い淀む沙耶の心情をエーコはズバリ当てる。

 アークの知識は正確には、ゲームの他に漫画やラノベ等も含まれているのだが、それを言っても詮無き事。

 ただ、そう言う知識が乏しい沙耶は不安なのだ。元々沙耶は文武両道であるが、それには並々ならぬ努力があったからこそで娯楽には、あまり手を染めていない。


「まーアークは、年単位は覚悟してるからー、失敗したら軌道修正してくれると思うよー」

「そう言うのは、エーコちゃんがアークが大好きだからだよね」


 揶揄うように笑う沙耶。


「え? ええ? ちが、違うよー。確かに好意はあるけどー、家族としてだよー」


 顔を真っ赤にし否定する。事実エーコはアークを異性として見てない。かと言って父とも思っていない。

 確かに肉体は父、アークス=アローラのものだが、中身が違うと魔眼で奥底の魔力――魂と言っても良いもの――が違う事に直ぐに気付いたのだ。

 それでも一緒に暮らさないかとアークに誘われ、ナターシャに薬師として弟子入りし一緒に住むようになってから、家族のようなものとして好意を持つようになった。


「あれあれ~何焦ってるのよ? 誰もどう言う意味(・・・・・・)で大好きとは言ってないよ~」


 口を抑え大笑いするのを堪えながら沙耶は更に揶揄う。


「むー。サヤお姉ちゃんの意地悪ー」


 頬をプクーと膨らましそっぽ向き出す。


「ごめんごめん。それと今はお姉ちゃんは無しよ。同じ歳にしたんだから」

「そうだねーサヤさん」


 そしてエーコは、仕返しを思い付き沙耶の方を向きながら悪戯な笑みを浮かべる。


「サヤさんもアークが好きなんだよねー?」

「え? どこからそんな話が?」


 心底わからないという態度で首を傾げる。


「ルティナお姉ちゃんから聞いたよー」

「ちょ! ち、違うわよ! あれは……」

「どう言う意味かは言ってないよー」


 泡食うように言い淀む沙耶を見てクスクス笑うエーコ。

 前に沙耶はマークと言う同じ学校に通う同級生で、同じく一緒に異世界転移して来た者と戦う事になった。その際にアークの事を『人間としては好ましいわね。少なくても貴方よりは好きよ』と発言した。

 それをルティナは傍で聞いていたのだ。


「あー仕返ししたわねぇ」

「サヤさんから先に言って来たんでしょー?」

「えっ!?」

「なに!?」


 そんな他愛のない会話してると辺りが光り出した。真っ白な光で視界が遮られる。其処は魔力の流れがおかしいとアークが言った場所だ。

 そして気付くと真っ暗で何も見えない場所でにいた。


「サヤさんいるー?」

「いるよ。此処どこだろ?」

「<光源魔法(ライト)>」


 エーコは巫により習得した魔法を使い辺りを照らす。そうして見えて来たのは石造りどこかもわからない狭い空間。

 強制転移を喰らってしまったようだ。そしてそれに巻き込まれたらしき大きなリュックを背負った三十代くらいの優男とエーコ達より少し上くらいの少女が二人いた。


「ここどこ?」

「怖いよ?」

「此処は何処なんでしょうか?」


 少女達は不安そうに、優男は冷静に周りを観察していた。


「あの一瞬、魔法陣が見えたよー。たぶん強制転移させられたんじゃないかなー?」


 真っ白な光で視界が遮られる一瞬魔法陣が見えた事からそう推察するエーコ。


「大丈夫よ。皆で此処から出ましょう?」


 沙耶は不安がる少女達に優しく声を掛ける。が、自分より年下に見える相手に声を掛けられたからって何が大丈夫なんだと思うだけだった。


「そうですね。此処から出る方法を考えましょう。幸いと言うかあそこに通路らしきものも見えていますし」


 そう言って優男は沙耶に賛同し通路へ視線を向ける。


「こうなっては一蓮托生ですから、まず自己紹介でもしましょうか。私はハンス。行商人をしております」


 ハンスと名乗った優男は笑い周りに呼び掛けた。どう見ても自分が年長者。他は少女もしくは幼女が四人なので自分が確りしないと思っているのだろう。


「わたしはエーコだよー」

「沙耶よ」

「……ネル」

「……ロッテ」


 エーコと沙耶とは、対照的に二人の少女は不安そう名乗る。


「おや、エーコさん肩に草が付いておりますよ?」


 ハンスは優しくエーコに語り掛ける。


「ありがとー。でも、これお守りみたいなものだからー」

「それは失礼しました。では、通路を進みましょうか。私の後を付いて来てください」

「いや、前は私が行きますよ」


 そう言って沙耶が前に出る。ハンスは武器らしきものを持っていなかった。隠し武器があるかもしれないが、もし持っていなければ危険と判断したのだ。


「しかし……」

「私はこんな見た目だけど冒険者よ」


 そう言って背中に背負った薙刀を抜き構える。


「そうでしたか。確かに今の私は武器を持っておりませんので前はお任せします」

「えぇ」

「ただし、危険と判断したら無理矢理下がらせますよ?」


 ハンスとしては幼女を前に出すのは不本意なのだ。別に自尊心がどうこうではなく年長者として沙耶が心配なのだった……。

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