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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十章 月光の世界へ (第二部 開始)
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EP.18 廃坑を探索しました

 その後、ギルドカードが赤くなった。つまり俺達は冒険者ランクがDに昇格したのだ。二つ昇格だ。

 本来なら依頼をもっとこなし実績を積む必要があったのだが、集団暴走(スタンピード)を止め、巨大魔獣を屠った事で、これ以上ないって程の実績が認められたという訳だな。

 ってな訳でパーティランクで言えばCになった訳だが、次の日はせっかくなのでCの依頼をしようという話になった。

 ちなみに資金がカツカツで、宿屋代を払い続ける余裕はなかったのだが、今回の一件で一ヶ月以上の余裕が生まれた。


「これなんかどうかなー?」


 エーコが依頼掲示板より引き剝がしたのは廃坑に住む魔獣の間引き。魔獣が廃坑を住処にし、放置すると処理するのが面倒になる程、数が増えるので時折間引いてるのだとか。


「それ、一度受けると暫く出ない依頼だしねぇ」


 ナターシャも乗る気のようだ。まあたまにしか出ない依頼なので受けようという事だな。

 俺も異論はない。沙耶も三人が良いというならという感じだった。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 って訳でやって参りました。メンサボの町から東南にある昔にオリハルコンが取れていたと言われる廃坑に……。

 ちなみに洞窟のようになっている。


「さて早速お出迎えされているな」

「あれは、ブラックドックだねぇ」


 俺の言葉にナターシャが答える。俺達はそれなりにこの世界の事を調べているので、魔獣の名称とかも既に色々頭に入っている……はい嘘です。俺は知らん。

 ナターシャは精力的に色々学んでるけど俺は面倒だし。とは言え国の事は調べている。地図上のどこにある国で現在位置は何処でとか、その辺りを重点に調べた。


「<下位大地魔法(ストーン)>」


 はい、あっさりエーコさんが沈めました。

 そうして魔獣を倒しつつ奥へ進むと無数の別れ道があった。昔は散々オリハルコンを掘り起こしていたし当然だな。


「魔獣も雑魚ばかりだし、ここは三手に別れよう。沙耶はナターシャと組んでね」

「何でよ!?」


 納得行かないと言わんばかり食って掛かって来た。


「前にも言った通り一番沙耶が弱いし、何かあったら困るから」

「そうだけど……」


 なかなか納得し辛いのだろう。苦虫を嚙み潰したように返して来た。

 だが、仕方ない。精霊がどんな存在なのか分からないし、また契約が必要な場合があるかもしれない。沙耶頼りなのだ。


「それで何であたいとなんだい?」

「接近戦が一番苦手なのナターシャだろ? エーコは鉄槌を持ってるけど」


 そうエーコは破邪の鉄槌と呼ばれる武器を持っている。普段は小さくしているが、使う時は大きく出来る。

 また重力魔法(グラビティ)が付与されており、普段は軽くインパクトの瞬間だけ重くする事で威力が格段に上がる。

 まあナターシャも剣とか槍を扱えるが持ち歩かない。弓一筋なのだ。


「そう言う事かい。じゃあ沙耶、宜しくさぁ」

「はい、ナターシャさん」

「ナターシャには素直だな」

「アンタに素直になっても調子に乗られるだけでしょう?」

「だねぇ」

「アークだしー」


 さいですか。てか、ナターシャもエーコも酷いなぁ。

 って訳で三手に別れた。

 その後、魔獣がちょいちょい現れるが武器を抜くまでもなく、全て徒手格闘で倒した。

 こんな雑魚が相手で格闘レベルが上がるのかね? かと言ってレベルMAXの小刀で倒しても旨味がない気もするしな。


「ん? 下り階段?」


 山の中に入る洞窟のような入り口だったし、登り階段あっても下り階段あるとは思わなかったな。

 まあ良いかと思い下り階段を降りて行った。にしても結構長い階段だな。

 やがて下まで降りる。


「ん?」


 なんか違和感があるな。

 そう思いつつも目に付く魔獣を片付けて合流地点まで戻った。


「そっちも終わったみたいだねぇ」

「わたしの方も終わったよー」

「……ほとんどナターシャさんが倒したよ」


 なんか沙耶が溜息を付いてるな。お前戦闘狂だったか? そんなに暴れたいん?


「このまま帰還しても良いのだけど気になる事があるから、ちょっと来てくれ」


 そう言って皆を俺が通ったルートに連れて行く。


「こっちには下り階段があったんだねー。わたしの方は登りだったー」


 ふーん。エーコの方は登り階段だったのか。


「ナターシャ、空間把握のスキルでこの辺の空間を調べられるか?」


 俺は階段を降りずにナターシャに問い掛けた。


「どうしてだい?」

「降りた階段の長さと下の階の天井の高さが一致していない」

「そうなのかい。待ってな……まだスキルとやらに慣れていないから」


 そう言ってナターシャは目を瞑り集中しだす。暫くすると歩き出し、ある地点で止まる。


「この下、何か空洞があるねぇ」


 そう言って地面を軽く蹴る。


「エーコ、ここ掘れるか?」

「わかったー。上位大地魔法(アースクエイク)


 エーコは上位魔法を唱えた。大地系の下位と中位は岩石を飛ばすだけ。しかし上位になると地盤を操れる。基本的には地震を起こすのだが、エーコは繊細に魔力を操り問題の地面だけを破壊した。


「隠し階段?」


 沙耶がポツリ呟く。

 やはりあったか。下の階の天井が低いのに階段の距離が長いとなると間に階層があると思ったんだよ。


「流石エーコ」

「褒めても何も出ないよー」


 って言ってるわりには顔赤くしてるぞ。


「いやー掘れただけに惚れたぜ」

「…………………」


 シラ~っと冷めた眼差しで見られた。うっ! 地味にきつい。


「アーク? そうはどう言う意味だい? あたいがいるのに」


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い! ナターシャさんマジ怖いです。

 顔は眩しいくらいに笑顔なのに眉間がピクピクしてるよ。


「……すみません」

「アークって馬鹿みたいな事しか言わないよね」


 沙耶さんや、事しか(・・・)は言い過ぎでは?


「さーて、隠し階段も出たし行ってみようか」


 誤魔化すように俺は降りて行った。

 そうして中二階と呼べる階層を到着し、暫く歩くと眩しくて目が眩んだ。


「こいつはすげーな」

「だねぇ」

「これオリハルコンだねー」

「廃坑と言われていたのにまだ取れるみたいね」


 四者四葉に驚く。そうオリハルコンがまだ鉱山にあったのだ。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 


 その後、オリハルコンがまた取れる事をギルドに報告すると、ギルマスの部屋に通された。


「がははははは……まさかオリハルコンがまた取れるよになるとはな」

「まあ運が良かっただけだな」

「じゃが、ワシがこの町のギルドマスターやってたのは、武具を作る為じゃったんだがな」


 マスタースミスとか言う称号があったしな。それに魔鍛冶とか言う変わったスキルも持っているし。

 だが鉱山からオリハルコンが取れなくなった時点で他の支部へ行っても良くなかったか? まあどうでも良いけど。


「これから忙しくなるぜ」

「それは何より」

「本来ならその功績でランクを上げたいとこじゃが、お前等は昇格が早すぎて他の支部から反対の声が上がるじゃろう」

「だろうね」

「だから悪いがDのままだ」


 まあこちらとしても性急に上げたい訳じゃないし構わないけどな。

 その後ボーナスも貰った。いや~最初は宿屋代すら稼げるか不安だったけどがっぽりだな。

 とは言え、現在いくら持ってるか知らん。興味もない。ナターシャに全て管理させている。でも、たぶん前回の事もあったし、かなり遊べる金があるだろう。


「さて、ボーナスも入ったし、暫く休みで良いだろ?」


 せっかくなので俺はそう提案した。


「構わないさぁ」

「わたしもー」

「いや、でも稼げるうちに稼いだ方が……」


 沙耶だけは反対のようだ。前から思ってたけど、このパーティで唯一の常識人?


「じゃあ沙耶は仕事して良いぞ。ああ、一人は禁止な。他の誰かを誘ってやるんだぞ」

「皆して休む気でいるのに働けないじゃないのよ」

「だな」

「アンタのそう言うとこ、ほんとムカ付くよ」

「さいですか」


 休みを入れて三日目の夜、テーブルを囲みお茶を楽しみながら、俺は口を開く。


「そろそろ仕事を再開するか。体も鈍るし」

「そうだねぇ」

「分かったー」

「それが良いよ」

「そう言えば、エーコはギルドに行ってたけど仕事してたのか?」


 昨日、エーコが冒険者ギルドに入って行くとこを見掛けた。


「魔法で気になる事があったからー、調べ物ー」

「あ~……下位冒険者が学べるようにって言う資料室があったな。そこに入ったのか?」

「そー」


 ギルドでは格安で、資料を閲覧出来るようになっている。本は高価なので、流石に無料には出来ないようだけど。


「そこで魔法スキルを調べていたのか?」

「そうだよー」

「そもそも何が気になったんだ?」

「前の世界では、魔法を使うと上手く言えないけどー、魔力がどこかに奪われている感じがあったんだー。それで、わたし自身の力で魔法を行使してるのじゃなくー、別の何かが力を貸してくれる感覚があったんだー」

「それが精霊だと?」

「たぶんそうだねー」


 そもそも星々の(スターライト)世界では、魔法の行使は精霊との契約によるもの。俺には分からないが、エーコは上位の魔導士だ。不可思議な力に敏感だしな。そう言うのがはっきり分かるのだろう。


「ナターシャは気付いてたか?」

「あたいも分からなかったさぁ」


 ナターシャは、中位の魔導士。中位では分からないのかもしれない。いや、エーコの場合はそれだけじゃない。魔導士の村と言う特殊な場所の生まれ。そう言った不可思議の存在と慣れ親しんだ場所で生まれたのだ。もしくは魔眼の力か。

 いずれにしろエーコには、はっきりと精霊に魔力を奪われ、変わりに精霊が力を貸してくれて魔法を発動していると言う感覚が分かったのだろう。

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