EP.12 今後の事を話し合いました
「じゃあ今後の方針だ。最終目標はこの世界で起きている異変を調べ解決する事だが、その為に目指すべき目標は大きくて三つだ」
そう断言した。俺はこうして決断できる男なのだ。
はい嘘です。予想を交えて話しています。きっと漏れや破綻がある筈。だから皆に話してるのだし。
「まず一つ。月を調べる事。場合によっては月に行かないといけないかもしれない」
「「はぁ!?」」
案の定、ナターシャとエーコは意味が分からんと素っ頓狂な声を上げる。沙耶は予想していたのか頷いていた。
まあ突拍子のない事をいきなり言ったのだから二人の反応は当然だろう。
「どう言う事だい?」
「この世界の名前は?」
「……ルナ・ワールドさぁ」
「そのルナ・ワールドを俺の治時代の世界、つまり、沙耶の元の世界での言葉で訳すと……はい、沙耶」
「月の世界よ」
「それだけで月に行くとか言ってるのかい?」
ますます意味が分からんと言わんばかりだ。
「ちなみに前の……元々俺達がいた世界はスターライト世界。こっちは? はい、沙耶」
「星光の世界」
「そう。まあ星々の世界と書いてスターライト世界と読んでいるようだけど」
「それで?」
ナターシャが先を促す。
「星々の世界は、星々が神のような存在で、世界を見守っている。つまりこっちの世界では月がそれにあたるかもしれない」
なんせ三つも月があるしね。
「月が神のようなものと言うのは分かったさぁ、ただ、その神のようなものに会いに行く意味あるのかい?」
「いや、邪神とかテンプレじゃん」
「出たげぇむ的発想」
シレっと答える俺に呆れたように返すナターシャ。
「じゃあ次、二つ目。精霊を見つけ可能なら沙耶と契約して貰う」
「うーん。月光の世界の精霊って星々の世界の精霊と違う存在よ。必要ある? まぁ私の戦力アップを考えると必要かもしれないよね」
沙耶が考え込むよう返して来た。
「あっちで世界の根幹の一因でもあるんだから、こっちでも似たような可能性は高い。まあ沙耶の戦力アップもあるけど」
「分かったよ」
「そして三つ目。世界中を回る。情報を集めるのもそうだけど、状況によって現地の人に協力して貰わないといけない」
「簡単に言うけど、この世界がどれくらいの広さか分からないさぁ。長旅となると準備とか大変じゃないかい?」
「ぶっちゃけ年単位を考えた方が良い。星々の世界でも、ユピテル大陸だけだったのに精霊大戦が開始……まあラフラカ帝国が樹立してから考えると終結まで十年以上掛かったし。同じように掛かると思った方が良い。しかも今回は、他の世界を巻き込むようだし」
「やはりそうなってしまうかい」
全員げんなりとしてしまう。次にエーコが疑問を口にする。
「でもー、それだとあっちに帰った時に、一日しか経っていないのにー、歳取りまくった事になるよー」
「いや、それは時の精霊が調整してくれるだろ?」
「あ、そっかー」
「それと年齢下げてくれるって、時の精霊が言い出したけど、アレ絶対下げた方が解決しやすいって意味だっただろうし」
これには全員目を丸くし驚いていた。まあ確かに年齢を下げると能力アップしいやすいってのもあったのだろう……。
具体的には十代中盤から二十代後半まで肉体が出来上がる。つまり筋力が上がり物理攻撃力が上がるって事だ。
幼少から十代中盤までは魔力が上がり易い。つまりは魔法の威力が上がるって事だ。
しかし、きっとそれだけじゃない。
「これは俺の予想なんだが、時の精霊でも他の世界の未来を完全には見通せない。けど多少を見れる、もしくはこの世界を管理している者に聞いてる可能性もある。となると年齢を下げる事で紛れ込む方が効率が上がると考えるのが妥当だろうな」
「そうなるのかねぇ」
「うーん」
「そうよね」
エーコだけ考え込むように唸っている。
「とは言え、学園のようなとこに紛れ込むのはエーコと沙耶が中心だろう。俺とナターシャは年齢を下げたとは言え難しいかもしれない。まあ年齢を誤魔化せばいけるだろうけど」
治時代の世界なら大学とかあったけど、ファンタジーっぽい世界だとなさそうだな。
成人も十五だしな。大抵は十五で学園を卒業というのがテンプレだ。尤もこの世界ではどうだか知らないが、星々の世界のユピテル大陸はそうだった。尤もルシファー大陸は、成人後に学園入学だったようだけど。
「あ、年齢と言えば、沙耶は下げて正解だったな」
「なんでよ?」
「ロクームの餌食にならないで済んだから」
そう言うとナターシャとエーコはなんとも言えないという感じで苦笑を浮かべていた。
「は!? いや、奥さんいるじゃないよ?」
「その嫁も落ちたからくっついたってだけだしな」
「あんな綺麗なのに?」
「関係ないな。見境ないし」
実際ルティナとエリスを同時に口説き、ルティナには相手にもされなかったからエリスを選んだって感じだし、エリスとくっついた後も浮気を繰り返してるっぽいし。
ほんとマジ二股クソ野郎だわ。
「……最低ね」
渋面でそう言う。正にその通り。
「でだ、場合によっては、四人別れる必要も出て来るかもな。ただ、沙耶だけは暫く誰かと一緒にいて貰うけど」
「何でよ?」
「だって一番弱いじゃん」
バッサリ切り捨てる。
「うっ!」
「それに今言った中で一番現実的なのは精霊契約だからな。だから、沙耶がこっちに加わってくれて助かったと思ったんだけどね」
「なるほどね」
それが可能な確率が一番高いのは沙耶なんだから仕方無い。
「そう言えば、日付聞いてたけど、あれおかしくなかったかい?」
ナターシャが小首を傾げ金髪が揺れる。
「何が」
「八月だったじゃない」
「あ~。世界によって時間の流れが違うから」
「何でそんな事を知ってるのよ?」
今度は沙耶だ。
「前に言っただろ? 異世界ハーレムを楽しんでる俺のダチがいるって。アイツに聞いた。アイツは色んな世界を周らされているようだ」
「そう言えば言ってたね」
「今回の俺達のようにな。アイツも世界に異変があるとこに、しょっちょう行かされるようだ」
「異世界はぁれむってなんだい?」
ナターシャに問われる。エーコも小首を傾げていた。
「馬鹿げた言葉だから知らなくて良いよ。ちなみに武の事だ」
「タケルさんねー。ゾウの時は助かったよー」
「だねぇ」
「まあ、ああやってアイツは色んな世界を周ってる。だから時間の流れが違うってのを知ってたんだ」
まあこれで納得してくれたようだ。
ただね、ナターシャの誕生日まで一週間もなかったのに、一ヶ月に伸びてしまったね。
「じゃあ明日から仕事開始だな。冒険者ギルドに登録してみないと分からないけど、テンプレ通りなら最初は、金にならない薬草採取が中心になると思う。エクセレントコンパウンド持ちがいるし直ぐに終わるだろ」
「ちょっと待つさぁ!」
泡を食ったようにナターシャが声を上げる。
「ん? 何だ?」
「何でアークが知ってるのさぁ?」
「言ってなかったっけ? 俺、鑑定持ち」
「鑑定ってなんだい?」
「相手のステータスを見るスキル。名前、能力、スキル、称号、装備の全部見えてるな」
「なるほどねぇ。何で鑑定を持ってるのか不思議だけど、それよりエクセレントコンパウンドってどう言う意味だい? 内容は薬の調合で効果が1.5倍と薬草の目利き効果アップらしいけど」
「直訳すると優秀な調剤師。まんまナターシャだな」
「じゃあそのまま優秀な調剤師にして欲しいねぇ。意味が分からなかったさぁ」
エクセレントコンパウンドもどうかと思うが、そのままだとダサいじゃん。
「そう言えば、沙耶は異世界転移して二年と四ヶ月しか経っていないのに闘気レベルがナターシャより高かったな。ビックリしたよ」
「あ、やっぱり私のも見たの?」
「あと薙刀術がレベルMAXだし、かなり鍛錬したんだな」
「フィックスの兵達と模擬戦をね」
沙耶は照れ臭そうに頬を赤らめ微笑む。
「それにそれ以外の武術系のスキルがいくつもあったな。やっぱ日本でやってたのか?」
「嗜む程度ね。本腰入れたのは薙刀だけよ」
「沙耶に柔術で抑え込まれた野郎は、『ご褒美だー』とか喜んでいたんじゃね?」
「うっ!」
俺が揶揄うように笑うと渋面をし出す。
「え? マジで?」
「………………多少いたよ」
げんなり答える。
「まあお前、容姿は良いからそうなるわな」
「何よ? いきなり」
顔を赤らめる。チョロい。
「でも、俺から言わせればこんな小っさい胸の奴に抑え込まれても、当たってる感覚しなそうで、美味しくも何ともないだろうけど」
「結局それ? アンタほんとムカ付くよっ!!」
「で、話を戻すけど薬草採取を中心に仕事開始なると予想されるけど、明日は沙耶はギルド登録だけしてお留守番ね」
「なんでよ!?」
「だってまだ、その体に慣れていないだろ?」
エーコに合わせたせいで年齢を八最も下げて歩き辛そうだった。度々転びそうになっていたし
「……そうよね」
渋々頷いた。
「その状態で薙刀を前みたいに自由に振り回せるようになって欲しい」
「分かったよ」
「って訳で当面の目的はギルドで、討伐とか金になる仕事を貰えるようになる事だな。まあ明日冒険者ギルドに行ってみたら、いきなり討伐とかさせて貰えるかもしれないけど」
テンプレで言えば冒険者ギルドランクがあって受けられる仕事が変わる。生活基盤をまずは安定しないといけない。
それにランクが高いと優遇されるらしいしな。世界中を周るなら尚更優遇された方が協力者とかを見つけ易いだろう。
当然だが、全て治時代の世界のラノベや漫画、ゲームの知識が元だ。故に現実となると別かもしれないので注意が必要だし、実際に登録してみないと何も分からない。
「問題は金だな。今から言っても仕方無いけど、採取はお金が、ほとんど貰えないと予想される。このままでは宿を取り続けるのも難しくなるだろう」
「そうだねぇ」
「集団暴走が起きれば解決だねー」
「はいそこ! フラグ立てないでよ」
エーコは、沙耶に突っ込まれてしまった。
確かに魔獣を狩りまくり売れば金は平気だろう。だが、魔獣の強さにもよるが、たった四人で被害を出さずに殲滅は厳しいだろう。なので集団暴走は、あまり好ましくないな。