表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十章 月光の世界へ (第二部 開始)
299/563

EP.11 とりあえず宿を取りました

「これからどうするー?」

「どうするんだい?」

「どうするのよ?」


 三人して俺に尋ねて来る。

 何故か俺がこのパーティのリーダーになってるな。まあ良いけどさ。


「その前にさっきも言ったけど、沙耶をどうするか決めよう」

「私?」

「どうしたい?」

「着いて行っても良い?」

「反対は……」


 俺はナターシャとエーコを見る。


「しないさぁ」

「しないよー」

「じゃあ決定な」

「ありがとう」

「いや、精霊の事があるから、実は沙耶にはいて貰いたい」

「そうなの?」

「まあその話は後だな。まず宿に行こう」


 俺は門番のとこに戻った。


「あの……今、手持ちが無いので、タイガーウルフを換金して宿を取りたいです。何処に向かえばスムーズに進みますかね?」

「それなら冒険者ギルド併設の宿屋に行くと良いですよ。まず素材換金場にタイガーウルフを出して宿を取る事になります」


 最初は物々しいと思ったけど、外壁門番の人は丁寧な対応してくれるな。


「それと身分証明書はどこで手に入りますかね?」

「それなら冒険者ギルドか商業ギルドに登録するのが一番手っ取り早いですよ。今日は宿でお休みになり、明日そのまま冒険者ギルドで登録されるのが宜しいかと思います」

「そうですか。では、冒険者ギルドはどこにあります?」

「西地区になります。この大通りを左に真っ直ぐ行けば大きな建物があるので直ぐ分かりますよ」

「分かりました。ありがとうございます」


 なんかテンプレ展開だな。まあ分かり易くて良いけど。そう言う訳で冒険者ギルドに向かう事にした。

 それにしても町並みが石造りによるものだな。ちらほら二階建て以上が見えるが、大半が一階建てだ。それに二階以降は、木材による建築。この世界の建築技術レベルは低いのかもな。

 星々の(スターライト)世界では、レンガの家があったり、石造りの家でも三階まであったりしたんだけど。


「冒険者ギルドって何だい?」


 当然ナターシャは知らないか。エーコも不思議そうにこちらを見て来た。

 ルシファー大陸には冒険者って職があったっぽいので、冒険者ギルドも存在してるのかもしれないが、ユピテル大陸にはそんなもん無かったしな。

 沙耶は、どれだけゲームやラノベを手に取ってるか知らないが、この二人よりは知識があるだろう。


「簡単に言えば仕事の斡旋場」

「仕事? そうだねぇ。お金がなければ何も出来ないしねぇ」

「仕事の中には、恐らく他の町への護衛等もある」

「護衛するついでに他の町に行くんだねー」

「それだけじゃない。人が集まるから情報が手に入りやすい。他の町に行けば別の情報も。そうやってこの世界の異変についても聞けるかもしれない」

「なるほどねぇ」

「でも、そう上手く行くのかなー?」


 エーコだけは首を傾げた。確かに上手く行くかどうか分からない。


「まぁ身分証明書が手に入り、仕事でお金を貰えて、他の町にも行き易くなる。一石三鳥よ。これで異変の情報も手に入れば一石四鳥ね」


 沙耶が話をまとめた。しかし、俺はそれに頷かず足を止める。


「どうしんだい?」


 ナターシャが訪ねて来るが、俺はエーコの方向き……、


「エーコ、なんか此処おかしくないか?」


 俺は左にある町を囲う壁の一部を指差す。


「確かに此処だけおかしな魔力の動きをしてるねー」


 俺には魔力察知のスキルがある。それは肌で感じ取るものだが、エーコの魔眼のように完全に察知出来るものではない。

 ただエーコの場合は魔眼で見ないといけないのだが……。

 今回も近くを歩いただけで俺は違和感を感じ取ったが、エーコは気付かないでいた。


「どうするんだい?」

「おかしな動きがあるなら、どうにかした方が良いよね?」


 ナターシャと沙耶に尋ねられるが、俺はかぶりを振った。


「いや、俺達は此処に来たばかりだ。俺達が知らないだけで、これが普通なのかもしれない。なので手を出さない方が良いだろう」

「分かったさぁ」

「分かったよ」

「じゃあそうするねー」


 やがて冒険者ギルドに到着しので、まずは並びにある素材換金場と書かれた看板のとこに入った。どうやらここで魔獣の解体をするらしい。


「タイガーウルフを換金したいのですけど」

「おぉ! そこに出してくれ」


 粗暴な言葉で大きなテーブルを差す。

 タイガーウルフを三頭を置く。俺が仕留めた一頭とエーコが仕留めた一頭とナターシャが凍らせた一頭だ。


「これは……核を一突き。なんじゃこれ?……どうやって仕留めたんだ?」


 エーコが仕留めたのを指差し訪ねて来る。まあ損傷が一切ないから気になるのだろう。


「水魔法で溺死させた」

「水魔法で……。なるほど。良い腕じゃねぇか」

「ありがとー」

「えっ!? 嬢ちゃんが仕留めたのか?」


 解体屋が目を丸くする。

 まあエーコは八歳だしな。驚くだろう。いや、元の十四歳でも驚くだろうな。


「そうだよー」

「若けぇのにすげぇな」

「ありがとー」

「ただこれは、一撃で仕留めたのは良いが、オススメしないぜ」


 俺の核を貫いた魔獣を差して言う。


「ん? 何で?」

「魔獣の核は、魔石とも呼ばれ魔道具とかの核にもなったりする。これは知ってんだろ?」

「ああ」


 いや、知りません。だが、怪しまれないように頷く。


「タイガーウルフの核は、市場に出回りまくってるから良いけどよぉ。他の核だったら貴重だったりもすんだよ」

「そうだったな。失念していた」


 って事にしておこう。


「じゃあ査定しておくから、金は明日取りに来な」

「あの今、金無くて宿屋代だけ先に貰う事を出来るか?」

「あぁん? ならこれ持って行きな」


 木札を二枚渡される。


「一枚はギルド併設の宿屋に出せば後払いしてくれるぜ。もう一枚は明日査定した金と引き換えだ」

「そうか。感謝する」


 木札で後払いと有難いね。って訳で冒険者ギルドと並んで建ってる宿屋に向かう。


「泊まりたいのですが、部屋空いてます?」

「空いております。部屋分けはどうしましょう?」


 宿屋の女将さんらしき人ににこやかに尋ねられる。


「どうする沙耶? 沙耶一人部屋か、それとも女三人で固まるか?」

「何で私に聞くのよ?」

「いや、俺達は一緒に住んでるし同じ部屋でも抵抗ないし」


 ナターシャとエーコはうんうんと頷いている。


「良いわよ。同じ部屋で」

「良いのか?」

「どうせ今の私じゃ変な気起こさないでしょう?」


 なんせ八歳まで年齢を下げたしね。だが関係ない。


「あ、十年経っていてもなんとも思わない」

「それはそれでイラっと来るよ」


 沙耶が額に青筋を立てる。

 だって沙耶の胸はぶっちゃけ小さいんだもんな。十六歳の時点でBカップ。将来的にも……ゴホンゴホン! いいや、俺はナターシャ一筋。胸なんて関係ない。


「じゃあ四人部屋で」

「かしこまりました。一泊8000ギル。食事は朝夕お付けできますが、一食500ギルになります」

「朝夕の食事付き二泊」

「部屋代が16.000ギル。本日はもう朝食は付けられませんので、食事は全部で三食四名様となりますので、6.000ギルで合計22.000ギルになります」

「これで良いですか」


 後払いに出来るとか言う木札を出す。


「承りました」

「あの俺達旅人で、月日が分からなくなったんですけど、教えてくれませんかね?」

「本日は月陸歴1515年7月4日です」


 やはり月日もズレているな。


「ありがとうございます」

「もう直ぐ夕食の時間を締めてしまいますので、直ぐに食堂に起こしください。こちらお部屋の鍵になります」

「分かりました」


 部屋に鍵を受け取り、食堂に向かった。

 その後、食堂に向かい夕食を摂る。食事は、スープとパン……質素だ。スープの肉は魔獣のものらしいけど油が乗っていて、それでいて柔らかいので悪くはなかった。


「なかなか美味しかったさぁ」

「そうだねー」


 どうやらナターシャとエーコは、満足のようだ。が、沙耶は渋面をしておりナターシャが問い掛ける。


「サヤは、口に合わなかったのかい?」

「美味しいには美味しかったのよ。ただ……日本食が食べたい」

「激しく同意」


 俺もそう思った。


「は~……もう何年も食べてないよ」


 溜息を付く沙耶。


「じゃあ素材がある事を期待するんだな。ナターシャとエーコは俺に合わせ日本食をそれなりに作れるようになってる」

「何ですって!? 何でそれを早く言わないのよ!?」


 沙耶が目を剥き、俺の首根っこを捕まえグラングラン揺らす。


「いや、聞かれなかったし。フィックス城に遊びに行った時も日本食を食べたいって言ってくれれば、家に招待したぞ」

「…………そうよね」


 俺から手を離すと失敗したーと言う感じで沙耶が頭を抱える。まあ着物なんか上げる前に日本食を食わしても良かったかもな。

 食事も終わったし部屋に向かう。

 ベッドが四つ、テーブルが一つ、イスが四つ、棚らしきものが一つ。うん簡素だ。

 一応茶葉らしきものがあるが、お湯を貰って来こないとお茶飲めないな。まあ俺達は魔法で飲めるけど。水魔法で水を出し、火魔法で熱くすれば良いんだから……。

 エーコ様様だな。水魔法が唯一使えるのはエーコだし。

 ちなみにだが、風呂はない。それを知った沙耶は愕然とした。桶は貸して貰えるので、それで体は拭けるが、問題はそこではない。問題は俺の前で裸になる事だ。

 『興味無いから、見向きもしないから安心しと』とは言ったけど、当然そんなので納得する訳もなく、エーコが上位大地魔法(アースクエイク)で、岩の囲いを作り問題は解決した。

 ただな、宿で出る時にこれどうやって片付けるの?


「ずず~」


 四人でお茶をすすり一息付く。舌を湿らすと開口一番ナターシャが切り出す。


「ところでアーク、何でこの依頼を受けたのさぁ?」

「そうした方が良いと思ったから」

「まさか面白そうだとか言わないよねー?」

「二股クソ野郎と一緒にしないでくれ」


 エーコが揶揄うように言って来たので、辟易する思いで吐き捨てる。

 まあ時の精霊から詳しく聞いてから依頼を受けるかどうか決めるって結論が出たけど、結局時の精霊のどの部分を聞いて決断したかは言ってないからな。


「じゃ何でー?」

「時の精霊が出て来たからかな?」

「どう言う事だい?」


 時の精霊は時間を司る精霊。つまり未来を知る事のできる精霊だ。その精霊が来たって事は、星々の(スターライト)世界にも影響が出るのは確実と思われる。そう説明した。


「そもそも時の精霊自身も神が出張って来て、滅ぼさないと他の世界にも影響が出るって言ったいたしな。自分達の世界に影響が出さないでくれって神頼みをするのもどうかと思ったし」

「なら何で、はっきりあの場でそう言わなかったのかねぇ?」


 ナターシャが訝しげに呟く。


「いや、聞かれなかったし。あの時は、依頼を受けるかどうかを聞かれただけだったしな」

「そうだったねぇ」

「あと気になるのが、未来が分かるならー、こっちの世界の事も分かるんじゃないのー?」


 エーコも疑問を口にした。


「いや、時の精霊はあくまで星々の(スターライト)世界の時の精霊だ。他の世界の事まで過去・現在・未来が分かる訳じゃないだろ」

「なるほどー」

「沙耶はどうして依頼を受けたんだ?」

「私はいつも精霊にお世話になってるからよ」


 なるほどな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ