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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第十章 月光の世界へ (第二部 開始)
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EP.07 時の精霊からお願いをされました

「腹減った」


 コトが終わるとボソリ呟きお腹を抑えてしまう。


「家まで保つかい? エーコが待ってるし帰るさぁ。一日遅れの誕生日もやりたいさぁ」

「まあ帰るまでくらいなら」


 そうして帰り支度を始める。ついでにせっかく貰ったので鎖帷子を着る事にした。ベストタイプで軽く動き易い。スピード主体の俺には丁度良いかもしれない。


「そう言えば、これありがとう。軽くて良いね」

「それは良かったさぁ。エーコと編んだ甲斐があったもんだねぇ」


 テレたように笑う。


「じゃあ帰るか」

「分かったさぁ」

《少し待って欲しいな~》


 と、いきなり頭の中に声が響いた。この声は最近にも聞いたな。


「誰だい?」


 ナターシャは辺りを警戒する。が、きっと姿は現さないだろうな。


「時の精霊か?」

「え? 時の精霊かい?」

《そうだよ~》

「時の精霊なら、あたいとエーコの記憶を一部を残してくれてありがとうさぁ」

《あれは、そこのニンゲンに対するお礼さ。キミにお礼されるような事じゃないよ~》


 歴史改変前の記憶の事か。


「で、沙耶を帰してやれない役立たずが何のようだ?」

《嫌味が酷いな~。前も行ったけど、ボクは時を司る精霊だよ~。異世界転移なんて芸当は星々にしか出来ないよ~》

「冗談だ。何の用だ?」


 生真面目に答える時の精霊に苦笑しながら、用向きを再び聞く。


《近々、サヤにとある依頼をする予定なんだ~。もしその話が回って来たら、キミ達とエーコって名のニンゲンも受けて欲しいんだ~》

「内容は?」

《端的に言えば他の世界を救って欲しい》

「は?」


 この世界じゃ飽き足らず他の世界もってか?


《別の世界に行って欲しいんだ~》

「帰って来れるのか?」

《終わったら帰すさ~》

「それを何故サヤに頼む?」

《サヤは精霊と縁が出来てる。それはキミもなんだけど、サヤは通常の転移だ。だけどキミは少し特殊だね~》


 ダークの体を奪った転移だしな。


《異世界転移の直接依頼を出して良いのは、通常の転移して来た者なんだ~。それが星々の更に上の神々が定めたルールなんだよ~》


 あ、星々の上にちゃんとマジもんの神がいたんだ。


「でも、今依頼しに来てるよな?」

《これは依頼じゃないよ~。お願い(・・・)だよ~。サヤからこの話が回って来たら、依頼を受けて欲しいって》

「回って来なかったら?」

《この話は忘れてくれて構わないさ~》


 なるほど、そう言う事か。


「じゃあ、さっき俺達とエーコの三人でって言ったが、それだけ厳しいのか?」

《そうだね~。人数がいるに越した事はない、大変な依頼だね~》

「具体的には?」

《別の世界の事だから、どこまで話して良いか上が検討中。それと依頼を出すかどうかもだね~》


 それで依頼を出す予定と言ったのか。しかも『上』ね。


「つまり、俺達に依頼……じゃないな。お願いとやらをしに来たのは、時の精霊の独断?」

《察しが良いね~。星々には許可を取ったけど、独断だね~》

「依頼となると報酬があるんだよな?」

《まだ検討中の段階だから、なんとも言えないけど、そうなるね~》

報酬(・・)に加え、お願いしに来たって事は、それに対する()もあるのか?」

「アーク、強欲さぁ」


 ボソっとナターシャからツッコミを受けてしまう。


《あるよ~》

「どんな?」

《まず別の世界で、収納魔法を覚えられたなら、この世界でも使えるようにしてあげるよ~》

「そんなのユグドラシル大陸のディーネ王妃に頼べば、言霊を教えてくれるだろ?」


 あっちの大陸には収納魔法(オープン)ってのがあった。それを胡春が使っていたし。


《言霊でボクが認めると思う~?》

「あ、汚ねっ!」


 お願いを聞かなければ、契約してやらんと言ってるのか。


《冗談だよ~。これを理由に契約しないなんて事はしないよ~》

「それじゃあ、それ礼にならないだろ?」

《ボクは『まず』って言ったよ~》

「ああ、そっか。まだあるのか」

《別の世界で、収納魔法を仮に覚えられ、そこに収納した物をそのまま残しておいてあげるよ~。本来なら世界を跨ぐと消えるんだよね~》

「ん?」


 何か引っかかるな。


「あ! じゃあ武はどうなんだよ? 別の世界の物を持ってたし、別の世界の魔法を使っていたぞ」

《本来は他の世界の魔法は使えないし、収納魔法に入れた物を移動させられないよ~。ただタケルと言うニンゲンの場合は、神々の力が働いてるのさ~》

「なるほど」

《一部の魔法は使えたりするけど、収納魔法はボクと契約しないとダメだね~。だけど、お願いを聞いてくれたら言霊無しに契約するし~、中身はそのままにしておくよ~》

「さっき独断って言ったよな? そんなの勝手に決めて良いのか?」

《ボクは時を司る精霊だよ~。ついでに空間もね。だから時空魔法の契約をするかはボクの裁量だね~。それに収納魔法は、亜空間に物を入れる魔法だよ~。それもボクの管轄》

「なるほど。悪くない礼だな」

《じゃあ考えておいてね~。尤も本当に依頼をするか不明だけどね~》


 そう言って声が聞こえなくなった。


「どう言う事だい?」


 ナターシャが首を傾げる?


「何が?」

「悪くないって言ってたさぁ。何が悪くないんだい?」

「例えばこの世界にない鉱石とか収納魔法一杯に詰め込めば?」

「あ~、この世界に持って帰れるって事かい?」

「そう。ただ一つ難点がある」

「なんだい?」

「俺達三人の中にそれを覚えられる奴がいるかどうか」

「あ~」


 得心が行ったかのように頷く。

 そう俺、ナターシャ、エーコのうち誰かが収納魔法を覚えられないと意味がない。


「そもそも別の世界って事は、別の理があるしな」

「どう言う事だい?」

「俺がいた前の世界で魔法が使えない。この世界では精霊と契約すれば使える」

「でも、収納魔法の話をするって事は魔法は使えるんじゃないかい?」

「それの習得方法は? 精霊と契約とは限らない」

「なるほどねぇ~」


 未知の世界に行くのだ。危険もある。


「じゃあ先にディーネ王妃に教えて貰うのは?」

「世界を跨げば使えなくなると言っていたぞ。仮に使えるとしても、なんにも見返り無しに別大陸の王族に頼めないだろ?」


 俺は肩を竦めてしまう。


「そうだねぇ」

「まあこれは時間を掛けて、エーコも交えて考えれば良いさ」

「だねぇ」


 とまぁ帰る間際にこんな一幕があったけど、家に帰り着いた。


「ただいま」

「ただいまさぁ」

「お帰りー。遅かったねー」


 エーコが出迎えてくれる。


「ハッスルしていたからな」

「そ、そんな事をいちいち言わないでー」


 顔を赤くそ染め目を吊り上げる。俺は揶揄うようにニヒと笑う。


「あれ? エーコは何を想像したのかな?」

「うっ!」

「どうせ、エーコも寂しくて一人でハッスルしまくったんだろ?」

「そ、ソンナコトナイヨー」


 耳まで赤くし、そっぽ向く。


「エーコは分かり易いさぁ」

「ナターシャお姉ちゃんも酷いよー」

「やっぱ今度は三人で楽しむか?」

「だから何でアークとしないといけないのーっ!?」


 エーコが目を剥く


「いや、エーコは一人だって前にも言ったぞ。聞き耳立てるより盛り上がるだろ?」

「だねぇ」


 ナターシャも一緒になって揶揄う。


「もー知らなーい」


 踵を返し台所に向かう。

 その部屋のテーブルには、それなりに豪勢な食事が用意されていた。俺の誕生日だって事で、本来は昨日食べる予定だったものか。


「エーコ、俺の為にありがとうな」

「つーん」

「『つーん』とか口で言うの子供っぽいな」

「………………」


 この後、エーコのご機嫌を取るに少し苦労したのは言うまでもない。


 それから月日が流れ七月の終わりに、フィックス城から手紙が届いた。


「エド叔父ちゃんは何だってー?」


 エーコに問われる。


「要約すると『仕事の依頼をしたいので、現在請け負っている仕事がなければフィックス城まで来て欲しい。今回の依頼はサヤからだ』だな」

「遂に来たんだねぇ」

「だねー」


 たぶんこれは四ヶ月前に時の精霊が言ってた事だ。

 ちなみに沙耶は、現在フィックス城で機械技術発展に尽力しているとも手紙に書いてあった。あれからフィックス城に行ってなかったけど、元気でやってるようで何よりだ。


「で、どうするんだい?」

「話し合った結論通り詳しく話を聞いてからだ」

「やっぱりそうだねー」


 つまりは結論の先延ばしをしてたんだけど。

 って訳で、次の日にフィックス城に向かう。

 俺はせっかく貰った鎖帷子を着ている。ナターシャは、いつものツギハギのワンピースにストール型になっている自動防御のマント。エーコは普通のシャツとミニスカートにスパッツだ。

 昼過ぎにフィックス城に到着し謁見の間に行くと、エドが王座に腰を掛け、右に沙耶が立っていた。それと他にロクームとエリスもいた。

 沙耶は紅い蝶の文様が入った着物を着ている。エドにでも用意して貰ったのかね。俺が上げた着物を見ればエド城で手に入る品だって一発で分かるしな。


 ロクームは、黒髪ツンツン頭で深縁の瞳。ガウンチョパンツに裸ベストという、なんともセンスが微妙な服装。

 冒険家気取りのコソ泥で、ぶっちゃけダークの下位互換。ダークより上なのは、鍵開けやワナ解除等で、斥候向き。

 MMORPGファースト・(F)ファンタジー(F)・オンライン(O)の際に体力が少し上なので、長時間戦闘が出来る。まあ少し上程度なので大きな差はないのだが。

 他に敵からアイテムをぶんどれるので、終盤貴重なアイテムを持っていたり金が全キャラで一番余裕がある程度だな。


 もう一人のエリスは、気品に溢れた美しい女性だ。凛とした意志の強そうな紫の瞳は時として鋭さを感じる事があるが、それが欠点へと繋がるかと言われればそうでもない。

 スタイルも胸は決して大きくはないが、決してそれが欠点というわけではなく、逆にバランスの良いプロポーションに見える。

 紫の髪は艶やかで背中までストレートに流しているのがまた彼女の魅力を引き立てているであろう。

 パンツスタイルの薄紫の軍服を着ている。

 ただ残念なのがロクームの嫁。

 見た目はかなり綺麗なので男なんて選び放題なのに、ロクームを選んだのは本当に残念に思える女だ。

 全キャラ中最もバランスに優れ最強クラスの攻撃力を誇るキャラ。容姿端麗、文武両道のMMORPGファースト・(F)ファンタジー(F)・オンライン(O)では一番人気と言っても過言はない。


挿絵(By みてみん)


 特記するべきは防御力も増え、全武器中三番目に威力がある剣を装備出来る。一番上は刀、次に槍なのだが、この二つは両手持ちで二刀流ができない。

 しかし剣は出来るし、エリスは二刀流を中盤から会得するので単純に攻撃力二倍だ。

 まあ最強クラス(・・・)と言うのは、魔物相手ではエドのチェンソーが強力だったり、エドの弟のアルフォードは、闘気が唯一レベルMAXになり、素手でも最強の破壊力を持っていたりするので、条件付けで負けてしまうからだ。

 だが、他にも魔力が全キャラ中四番目で、三キャラしかいない全魔法を習得出来る一人。何もかもバランスが良過ぎるキャラだ。

残念ながら画像生成AIでは裸ベストを作ってくれませんでした……男なのに(-_-;)

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