表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
286/569

EP.41 ロア学園を去る事になりました

「ぅん……?」


 ふと目覚め、上半身を起こす。此処はファルコンの客室かな?


「「アークっ!!」」

「ぐえ」


 両側からナターシャとエーコに抱き着かれた。と言うかより泣き付かれた。あまにも勢い良く俺に飛び付いて来るものだから、ヒキガエルのような声が出てしまったぜ。

 あれから目覚めたの三日後だったらしい。

 全魔力のメラの炎を使用したせいで、精霊達は消え俺は地上に落下してしまったしな。

 空に飛ばせていたアネモイや回復してくれるティカルがいないし、俺は全闘気を使い意識がなかった。

 結果、頭から落ちて出血がヤバかったとか。

 オマケにエーコとクロセリスの魔力はほとんどないときたものだ。

 二人掛かりで、全魔力をふり絞り中位クラスの回復魔法で、延命を行い急いでルティナがいるリックロアに向かったとか。しかし、上位回復魔法が使えるルティナも魔力がなかった。

 リックロア国王都で、ルティナは沙耶から魔力を貰って戦ったのとは逆で、ルティナから魔力を貰い遠方の俺のいるとこでメラ達を顕現させていたとか。

 だが、俺が枯渇させてしまったしな。まあでも一日保ったので、魔力が回復した次の日、上位回復魔法で全回復させられたらしい。


 二日後、戦後処理等をある程度行ってナターシャ、エド、アル、アンナが帰還。

 当然胡春が転移させてくれたのだが、その当の本人はユグドラシル大陸に行く為にゼフィロスの傍にいるとかで帰還せず。

 アベリオテス、スーリヤ、ルドリスは、王侯貴族なので、戦後処理でそのまま残ったとか。

 そして三日後、漸く俺は目を覚ましたと言う訳だな。


「それよりナターシャ」

「何さぁ?」


 ナターシャが涙を拭いながら俺に視線を向ける。


「そんなに胸押し付けて誘ってるの?」

「心配したのにさぁ!! 何さ! その言い方」


 桃色の双眸で拗ねたように睨まれる。


「いや、そんな大きいものを押し付けられて溜まってたし、覚醒するって」

「あらまぁ、本当だねぇ」


 俺のテントを見て目を丸くする。


「仕方無いさぁ。これからするかい?」

「いや、病み上がりだから」

「それは残念」


 ナターシャがあからさまにガッカリした。


「って言うか、エーコはどこ行こうとしてるの?」

「いや、だってー。するんでしょう? そう言うのは、わ、わたしのいなくなってから始めてよー」


 エーコはエーコで顔を真っ赤にし、部屋に出入口に向かっている。


「いや、エーコもいれば良いじゃん」

「何でー!?」

「どうせ一人でするんだろ?」

「し、しないよー」

「普段聞き耳立ててる奴が良く言う」

「だからって、アークとしろってのー?」

「そうなのかい!?」


 二人揃って目を剥き睨まれた。


「別にエーコになら、見られても問題ないだろ? ナターシャ」

「まぁエーコにならねぇ」

「ほらぁ。聞き耳立てなくても、間近で見れるぞ」

「み、見ないよー」

「せっかくだから一人で慰めるとこを……」

「み、見せる訳ないでしょー!! 起きて早々馬鹿なのーっ!!!」


 めっちゃ怒鳴られた。


「いや、最近してないって言ってたから」

「だからってねー、よりによってアークなんか見せないよーっ!!」

「まあ冗談だけどね。病み上がりで俺もする気ないし。と言うか最初にそう言ったし」

「もー」


 エーコが頬をプクーと膨らます。


「そもそもナターシャも冗談って分かってただろ?」

「まぁねぁ」

「ナターシャお姉ちゃんも酷いよー」

「煩いけど、アーク起きたの?」


 客室の外から沙耶の声が聞こえて来た。


「沙耶か? 起きたぞ」

「入るけど良い?」

「お好きに」


 そう言うと沙耶が部屋に入って来た。ただね、目を吊り上げズガズガ歩き俺が寝てるベッドまでやって来て、俺の胸倉を掴み上げた。


「アンタね! 何なのよ!?」

「えっ!? いきなり何? 目覚めのキスをしたいの? ナターシャの前でとか良い度胸してるね」

「な、な訳ないでしょうよっ!!」


 顔を真っ赤にし突き放す。


「で、何だ? ナターシャがいて残念に思い手を離したのか?」

「違うわよ!」

「アーク、帰ったら話があるさぁ。それも沢山」


 ナターシャが眉をピクピクさせながら言う。


「え?」

「サヤも含め色んな女の子を垂らし込んだらしいねぇ」

「は?」

「アンタの所業をぜーんぶ言ってやったわよ」


 沙耶が嫌らしい笑みを浮かべている。


「垂らし込んでないし、そうだとしても誰にも手を出すつもりなかったぞ。それともナターシャは、俺の言う事より、こんなポっと出のぺったんこを信じるのか?」

「煩いよ!」

「アークを信じてんも良いけど、ちゃんときっちり話すさぁ」

「……はい」


 ナターシャが青筋立てて怖い、言う通りにしておこう。


「で、結局ぺったんこは何か用なのか?」

「アンタどう言うつもり?」

「だから、何が?」

「何で待ってなかったのよ! あと少し待っていればルティナと一緒に着いて行けたのに」

「知らんよ。直ぐにアレが片付いて、来れると思わなかったし」


 精霊がさっさとファルコンでデビルスに向かった事で沙耶が怒っていたと言っていたな。でもさ、確かにリックロア国王都から、あの炎の化物がいなくなったのは確認出来たけど、直ぐに回復して来れるとは思わなかったし。

 それなりに消耗してるだろうと思ったしなぁ。


「それに私やルティナの全魔力を使うんじゃないよ!!」

「それだけ厳しい相手だったんだよ」

「それでもよ!」

「何? もしかして心配してくれていたの?」

「そ、そんな事ある訳ないでしょうよ!!」


 顔を真っ赤にし、そっぽ向く。さてはこいつツンデレだな。前々から思ってたけど。


「まあでも沙耶のお陰で助かったよ。俺の魔力が封じられて困ってたし。ありがとう」

「べ、別に良いわよ」


 絶対これツンデレだわ。まだそっぽ向きっぱなしだし。


「礼にその哀れ乳を揉んで大きくしてやろうか?」

「アンタなんかに触らせないわよ!! それに哀れとか言わないでよ!!」

「それはどう言う事だい?」


 今度はナターシャに胸倉を掴まれた。


「別に俺じゃなくても良いだろ? ナターシャが揉んでやれば? あれ哀れだと思わない?」


 そう言うとナターシャは、俺から手を離しジーっと沙耶を見る


「確かに哀れさぁ」

「ナターシャさんも止めてよ」

「いや、ナターシャと比べて酷いぞ。ほれナターシャのを見ろ。俺のお陰でワンサイズ上がったんだぞ」


 そう言って揉む。久々のマシュマロや~。

 ナターシャは、何かドヤ顔を沙耶に向けている。


「それ私がいないとこでやってよ。アンタやっぱサイテーよっ!!」

「ほんとだよー。わたしが見てる前でもしないでよー」


 エーコにまで言われてしまう。

 とまあ起き抜けにアホな事をやってしまったが、もう動けるのでブリッジに向かう。


「起きたか、アーク」

「元気そうだな」

「いつまで寝過ごしてだ、テメー」


 エド、アル、ストラトスがいた。


「ところで直ぐに帰れそうか?」

「少しメンテをした方が良いな」

「カー!! テメーらが無茶させるからだろ!」

「どれくらいだ?」

「二ヶ月くらいだな。多少部品も変えた方が良いかもな」

「分かった。ロア学園で挨拶したら、それデビルスでやってくれないか?」


 ナターシャとエーコが言うには現在、ロア学園付近にいるらしい。


「それは構わないさ」

「それとその二ヶ月間デビルスでの復興を手伝ってくれないか? アル」

「応ッ! 良いぜ」


 アルのパワーがあれば復興も捗るだろう。


「リックロアの復興は良いのか?」


 エドに問われる。


「リックロア兵が気に食わなかったから知らん。それにたぶんデビルスの酷い状況だ。エーコが散々破壊してくれたから」

「だってー、それだけ一杯いたんだもーん」


 って訳でユピテル大陸に帰る話をアグリス学園長にするのだが、ここで一悶着……、


「あの学園長……実は故郷に帰りたいので辞めたいのですが……。実は俺がいたユピテル大陸からお迎えが来まして……」

「構わないのじゃ」


 一悶着……なかった。

 え? あっさり? あっさり教師を辞められた。


「良いのですか?」

「戦争があったからのぉ。リックロア国王都は半壊。学園も勇者が暴れて休校せざるを得んのじゃ」

「ダーク先生、ありがとうございました」

「え? 何です? 俺に惚れたんです?」


 ウェンディ先生がいきなり頭を下げて来て、俺は目をパチクリさせてしまう。


「それは無いと前にも言いましたよ。ふふふ……ほんとダーク先生は全然変わらないですね」


 そう言って微笑む。


「ダーク先生には学べる事がありました。今までありがとうございました。そして、お元気で」

「はい。ウェンディ先生もお元気で」


 次にアルと一緒にアンナに会いに行った。ロア学園の女子寮にいると聞いたので。勿論受付で呼び出して貰ってだ。男子禁制だしな。


「あ、ダーク先生」

「アンナ、二ヶ月後に俺は帰る。アンナはどうする?」

「一緒に行きたいです。あのアル様、良ければ教えを請いたいのですが、良いでしょうか?」


 アル様って……変な呼び方だな。


「がははははは……良いぜ」

「ありがとうございます」


 パーっと明るくなり頭を下げるアンナ。


「アンナ、来るんだったら一つ言っておく事がある」

「何でしょうか? ダーク先生」

「そのダークってのもう止めてくれ。俺の本来の名はアークだ」

「では、アーク先生?」

「教師も止めて来たんだがな。まあそっちは好きにしろ」

「はい」

「それから帰るのは二ヶ月後で、それまで俺達はデビルスの復興を行う。アンナは、それまでどうする」

「そうですね」


 顎に指を当てて暫く考え……、


「では、あたしはその間、リックロアにいますね。親孝行してからユピテル大陸に行きます」

「分かった」


 アンナと別れ、再びファルコンに戻って来た。


「そーいや沙耶、結局お前どうするの?」


 まだファルコンにいた沙耶に話を振る。


「どうするって何が?」

「いや、ユピテル大陸に来るのかなって」

「何? 誘ってるの?」

「あと3カップ上げてから出直して来い」

「冗談にマジで返さないでよ! 3ってEじゃないのよ。無理に決まってるじゃない!」

「へ~~。沙耶ってBだったのか。やっぱり小さいな」


 ニヤ~と嫌らしく笑い視線を下にズラす。


「うっ!」


 うっかり言ってしまったと言う感じで、顔を赤くし出す。まあ言うまでもなくそれくらいだろうと分かる程に小さいがな。


「と言うか、いちいち見ないでよっ!」

「で、結局どうするんだ? 哀れ沙耶」

「哀れ哀れ哀れ、言わないでよ! 行くわよ! 時の精霊に会えば帰れるかもしれないんでしょう?」

「可能性があるだけだ。絶対とは言えない」

「それでも良いわよ」


 そうしてデビルスに向かい、復興作業を手伝い一ヶ月が過ぎると胡春の転移でアベリオテス、スーリヤ、ルドリスがやって来た。どうやら一度学園に行き、アンナと会い俺がデビルスにいると聞いたらしい。


「アークはん、これでぇお別れになるさかい、会いに来たんや」

「あれ? まだユグドラシル大陸に行ってなかったのか?」

「これから行く事になったんや」

「そうか。でも、ディーネ王妃を教えを請えるようになったら、フィックスに来いよ。沙耶ともまた会えるし」

「わーたでぇ。もし王妃はんを口説けたらフィックスに行くんや」

「その時こそ初物を……」

「やらんわ! 最後までいらん一言があるんやな」


 苦笑を浮かべながら言うと胡春は沙耶の下へ向かう。親友同士が一時期とは言えお別れになるしな。


「ダーク先生、ありがとうございました。お陰で八年に及ぶ戦が終わりました」


 今度はアベリオテスが俺に話し掛け頭を下げる。


「いや、カルラ国奪還はエドのお陰だろ?」

「それもダーク先生の采配ですわ」

「それに短い期間でしたが、色々教わりました」


 柔らかく微笑むスーリヤと生真面目に頭を下げるルドリス。


「スーリヤは笑みは天上の美とかなんとか言われなかった?」

「えぇ。言われましたわ。ダーク先生の仰る通り疲れる方でした」


 苦笑を浮かべる。


「でも、言いたくなる気持ちも分かる。学園にいた頃は、張り詰めてる感じもあったし」

「ダーク先生にも分かってしまわれるのですね」

「でも、エドには色々教わったんじゃないか? それこそ俺の中途半端な教えより」

「はい。少し困ったお方でしたが、素晴らしい王でした」


 そう言って微笑む。


「ただ……」

「うん?」

「ご自分を中途半端と言わないでくれまし」

「え?」

「ダーク先生にも沢山の事を学びました」

「それはどうも」

「いえ、お礼を言うのはわたくしの方ですわ」

「アベリオテスにも、もう教える事はないな」


 次はアベリオテスに水を向ける。


「そうでしょうか?」

「アベリオテスの最終的にやって欲しかったのは、魔法剣の斬撃飛ばしだしな。まだまだ粗削りだが出来るようになったし」

「それもダーク先生のお陰です」

「あとはルドリス」


 続けてルドリスに水を向ける。


「はい」

「まだまだだな」

「……はい。分かってましたが、私だけ酷評ですね」


 肩を落とす。


「気配察知について概要を教えたから、それが出来るようになれ」

「はい。勿論です」

「それが出来れば目だけに頼らなくても戦える」

「ダーク先生のようにですね」

「それとクロセリスを落とせよ」


 最後にニヒと笑い揶揄う。


「当然です。その後に文句を言わないでくださいよ」

「言う訳ないだろ。ちゃんと落としたんならな」

「それにしても、ダーク先生が伯爵くらいの爵位を取れって言ったのは、本物の王女だったからなのですね」

「まぁな」

「まずは爵位を取って挑みます」

「頑張れ」


 こうしてCクラスの者と、ほぼ全員お別れの挨拶をした。残すはクロセリスだな。

 でも、あいつ今クソ忙しいかならな。復興に奔走しまくっている。噂では寝る時間も惜しんでるとか。

 残り一ヶ月で帰るけど、それまで別れの挨拶くらいしたいものだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ