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EP.39 第二形態に移行しました

《いつまでも何やってるのさ~?》


 あ~ダメだ。考えがまとまらない。意識が薄れて行く……。


《お~い。ニンゲン! 聞こえるか~い?》


 煩いな。なんかさっきから頭の中に声が直接響く。幻聴か?


《確りしろ~。まだ生きてるだろ?》


 はっ!? この声は……。


「……メラゾーマ君?」

《だからキミは、そう呼んじゃダメ~。と言うか、ゾーマはどっから来たの~?》


 またすげなく言われてしまった。


《とりあえず、まだ意識はあるようだね~》

「ギリギリな」

《なら、まずは回復だね~》

《しょんないから回復しちゃる》


 今度はティカルか。って、腹の傷がどんどん塞がっていく。こいつはありがてぇ。

 気付くと精霊二体が俺の傍にいた。一体は 人型の炎の目と口だけ風穴を空いて反対側が見えるが、それ以外は四肢から髪にいたるまで燃え盛っている炎の精霊メラ。

 もう一体は、全身白く白無垢のようなのを着ている癒しの精霊ティカル。

 だけど……、


「何でお前らがここにいるんだ?」

《サヤに頼まれたからに決まってるでしょ~》

「沙耶に?」


 そう言いながら俺は起き上がり腹を撫でる。どうやら完全に穴は塞がったようだ。服だけ風穴が空いてるのが妙な感じだな。


《怒ってたよ~。もう少し待ってくれれば一緒に行けたのにって~》

「そんな直ぐに来れたのか?」

《魔力の残滓から夕刻くらいに飛び発ったでしょう~? あと数時間待てば到着したよ~》


 メラが俺の周りクルクル回りながら言う。


「そっか」

《だからボク達だけ来たんだよ~。サヤに頼まれて~》


 ピタっと俺の前で止まる。


「沙耶が傍にいなくても顕現出来るんだな」

《魔力効率が悪いからサヤの負担になるけどね~。だからさっさと終わらせな~。でないと沙耶が魔力枯渇して力貸せないよ~》

「つまり手伝いに来てくれたのか?」

《そうだよ~》

「だが、俺はあのクソ虫に魔力を封じられた。お前達の力を使う事は出来ない」

キミ(・・)の魔力が封じられただけでしょ~? ボク達はサヤの魔力で顕現してるんだよ~》


 遠方にいる沙耶の魔力で力貸してくれるとか、沙耶はマジでパネェな。


《そもそも癒しの精霊が回復したでしょ~? 今更何を言ってるかな~》


 メラがお手上げのポーズを取り肩を竦める。なんかイラっとくるな。


「それは助かるが、どうやってアレの元に行こうか」


 そう言って天井が抜けた上を見上げる。


《そこは俺の出番だぜ》


 次に顕現したのは……、


「……アネモイ」


 逆三角錐のような形で風が渦巻いており、頭だけがひょこっと出ている風の精霊アネモイ。


《サヤ以外のニンゲンが、そう呼ぶんじゃねぇ!》

「あ、はい」

《じゃあ飛ばすぜ》

「飛ばすって……え? ええ~?」


 俺の体が宙に舞い出す。


《風の力で飛ばしてるんだぜ。空中での動き方は実戦で覚えな》

「あ、ああ」


 なんとか冷静差を取り戻し上に向かって飛びだす。これ良いな。まだ慣れないが、ある程度思った通りに飛べる。一瞬で城から飛び出たぜ。


「さて、あのクソ虫はどこへ行ったかな?」

《あっちだぜ》


 アネモイが南の方角を差してくれる。逆三角錐に顔がヒョコっと出てる姿なので指はない。なので、下側の三角錐の尖がってる部分を差していた。


「了解」


 アネモイの力を借り全速力飛ぶ。やがてファルコンが見えて来た。ファルコンは必死に逃げてるように見える。

 甲板にいるエーコ、クロセリス、ムサシは疲労困憊のようだ。エーコとクロセリスは、もう魔力がないのか下位魔法で応戦している。


「メラ!」

《だからそう呼んで良いのは……》

「だったら炎! 戦闘中に炎の精霊とか長々と呼べるか! 炎、風、癒し。これで文句ないな?」

《分かったよ~。それで良いよ。で、何かな~?》

「特大炎を放ってくれ」

《良いよ~。でも、魔力効率が悪いんだから、サヤの魔力を無駄遣いしないようにね~》


 精霊達は沙耶の魔力で顕現しており、その沙耶は遠くにいるせい効率が悪く、普通より多くの魔力を使っているのだったな。

 こりゃあさっさと決着を付けないとな。


《じゃあ行くよ~》


 って、お前が行くのかよ! メラは巨大化してハルファスに突っ込む。


『ぐぁぁぁ! 何だこの炎は? どこから』


 更に追撃で二振りの短剣を投擲した。


 ブスっ!


 炎を払い除けようとしている両腕にそれぞれ刺さる。


『くっ! 今度は短剣か。一体誰が?』


 やがて炎が収まり視界がクリアになるが短剣や炎が飛んで来た方向には既に誰もいない。

 何故なら、俺は奴の下側に回り込んでいるからだ。奴は自分が出した特大の炎で俺の様子が見えていなかった。

 つまりは気配を探る事も空間を把握する事も出来ないと言う事だ。大きな力を手に入れて振り回されているだけに過ぎない。


「はぁぁぁぁっ!」


 一気に上昇し二振りの小刀で斬り咲き、更にファルコンから離す為に蹴り飛ばした。


「「アークっ!」」

「アーク殿」

「何でぇい! 無事だったんじゃねぇか!」


 エーコ、クロセリス、ムサシ、ストラトスの声が聞こえる。


「今のうちにここから離れろ!」


 だが、まともに相手にせず油断なくハルファスを睨み付ける。あの程度じゃ死なないだろう。死ぬんだったら、とっくに倒せている。


『まともや貴様か』

「さあクソ虫魔王、第二ラウンド開始だぜ!」


 とかなんとか言っちゃったけどまだ空飛ぶの慣れないんだよな~。今回は上手く下に潜り込めたけど、毎回そう上手く行くとは限らないし。

 それにアレ、どうやって倒すんだよ? 首落としても生きてるとか反則じゃねぇ?


「おい、炎。アレ、どうやって倒すんだ?」


 ここは専門家に聞いてみよう。まあ実際専門家かどうかは知らんが、あれを真っ先に危険視したのは精霊だしな。


《………………………………》


 し~~~ん。

 おい! 無視かよ。


「おい! 炎」

《………………………………》


 イラっ!


「クソメラ!」

《キミはそう……》

「だったら炎で返事しろ! メラと呼ぶなって言うから略して炎って呼んでるんだろ?」


 遮ってやった。

 メラと呼ぶなと言うし、炎の精霊だと長ったらしくて戦闘中は不向きだから炎と呼ぶって言ってるのによー。


《そうだったね~。紛らわしいな~》


 ウザっ!


『何をブツブツやっている? それに何だ、その人型の炎は? 貴様の魔力は封じた筈』

「うっさい! 黙ってろ」


 クソ虫魔王がなんか言ってるが、それどころじゃない。


「で、どうやって倒すんですかねぇ? 炎の精霊さ~ん」


 いや~何故かおでこの血管がピクピクして気がするんだけどな~。気のせいかな? いいや、気のせいじゃない。絶対青筋が立っている。


《簡単だよ~。再生も出来ない程に細切れにしてやれば良いんだよ~》


 どこが簡単なんだよ!?


『ええい! いつまでもブツブツと……。さっさとくたばれ』


 痺れを切らした魔王が特大の禍々しいメラ型炎を飛ばしてきた。と言うか好きだな炎。それしか使えないの?

 ついでにそれ悪手。いい加減学習しろよ。気配察知も出来ない奴が特大のを飛ばすな。


「風! 逆風であれ返せないか?」

《出来るぜ》


 おお~。こっちはちゃんと反応してくれたぜ。ちょっと感動。

 どっかのメラと大違い。アネモイは、突風を起こし特大のメラ型炎を跳ね返す。


『小賢しい』


 魔王がそれを右腕で払う。


『なっ!』


 驚きに目を見開いているな。特大の炎の影に隠れて追尾していたからな。

 だから気配察知も出来ない奴が特大のを飛ばすと悪手だっつーの。奴からすれば俺が突然目の前に現れた感じだな。


「はぁぁぁ……!」


 両手の小刀で滅多切りにしてやる。細切れにすれば倒せるらしいしな。


『だ、から……小賢しいわ~!』

「くっ!」


 クソ虫魔王が闇色に輝き、突風が起き俺を吹き飛ばす。数m飛ばされたとこで体勢を立て直し奴を見据える。


「何だ?」

『ふはははは……。馴染ん出来た~』


 全身を覆うマントがガバっと開く。中身はどこまでも闇だったが肉体が確りあった。

 やがて徐々に大きくなり、二倍くらいの大きさになり、筋肉もムキムキになる。角も途中か直角に曲がり真上へと突き出す。

 それと同時に顔や体が赤く染まっていく。胸、肘、膝、横っ腹から突起物が飛び出てきた。ちなみにだが、上半身裸で、下半身は紫のズボンを履いていた

 第二形態って奴? どうまでもふざけた奴だな、クソ虫魔王が!


《まずいね~。ほっとくと更にあの力が馴染み進化するよ~》


 横でメラが解説してるが、進化だと? 第三形態もあるのか。

 と言うか第二形態でデカくなったし、第三形態ではエーリアンみたいになるのか?

 それってどこのフリ〇ザさんですかね? 第五まで行くとメカとかで、第六は金ピカですかね? 簡便してくれよ。

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