EP.37 繋いだ想い -side Eco-
下位悪魔の数が多かったけどユピテル大陸で発生した下位悪魔と比べて弱くて助かったー。
それにセリスお姉ちゃんに魔導の才が、わたしよりあるかもしれない。とは言え、あまり魔法を使って来なかったせいか上位になると詠唱を必要とするけど
ここに来る前に教えた大地系上位の隕石魔法を覚える大地の精霊との契約の言霊を教えたら一発で成功したのにはビックリしたなー。
わたしは何度か失敗したし。それに動きが良い。もしかしたら学園でアークが教えたのかも。
さて、そんなセリスお姉ちゃんの力もあり下位悪魔も片付けたしアークを先に行かせるかな。
そんな事を考えていたら再び城から激昂した声が聞こえて来た。
『貴様ら何者だ? たった四人で何故あの数を倒せる!?』
いや、アークは温存させてたから三人なんだけどね。まぁどうでも良いけど。そう思っていたら、アークが口を開く。
「お前、俺達が元々どこにいたか調べてから言えよ」
『あ?』
「俺達がいた場所は、これよりもっとも強力な下位悪魔がいたし、それだけではなく上位悪魔もいたぞ」
『なぬ!? 上位悪魔……だと? き、貴様はそこから名前を取ったと言うのではあるまいな?』
「スペルが違うっつーの!」
『意味の分からぬ事を』
確かにねー。アークはたまにわたし達の知らない言葉を使う。たぶん前の世界の言葉なんだろうけど。と言うか……、
「あれは無視して、アーク行っちゃいなー」
「ああ」
『ふふふ……甘いわ! 城に簡単に入れると思っているのか? 人間が通れない障壁を張っているのだぞ。それに邪魔者を排除する触手付きだ!』
確かに気持ち悪い赤い膜で覆われれいるなー。
「秘儀・破国っ!」
だが、それを聞いたムサシ叔父ちゃんが即座に刀を振り下ろした。
あれはタケルさんがくれた刀だ。ムサシ叔父ちゃんの刀から特大の斬撃が飛ぶ。
スッパーンっ!
赤い膜をあっさり斬れ、城の一部も崩壊。
「これで参れるにてござる」
「王城の一部が…………。流石ですわね、ムサシ様」
セリスお姉ちゃんの目が引き攣ってる。まぁ自分の城を見事に破壊させられたしねー。
『おのれー! ならば我が最高の作品で葬ってくれるわー!』
ハルファスが言うと魔物が一体、城から出て来た。が、先程までの下位悪魔と違う。
まだいたのかと、わたしとセリスお姉ちゃんはげんなりしてしまう。
「あれは……合成魔物にてござるか」
鷲のような頭と翼と上半身にライオンのような下半身を持つ合成魔物だ。
「グリフォンか」
アークが呟き、それを聞いたエーコが首を傾げる。
「グリフォーン?」
「あ、いや別の世界でグリフォンって呼ばれている姿なんだよ」
別の世界ってアークが元々いた世界かな?
「あれは、わたし達がどうにかするからー、アークは行ってー」
「ああ……着地は任せる」
そう言ってアークは飛行船の甲板から飛び出し落下して行った。
「<重力魔法>」
わたしは重力魔法でアークが着地する地面の重力を軽くし着地の衝撃を軽減する。
アークは着地すると同時に城に向かって走って行く。ついでに合成魔物に投擲。
「ぎゃぁぁん!」
足に突き刺さり苦悶の声を漏らす。アークは、そのまま城に入っていた。
「セリスお姉ちゃん、魔力は?」
「実は心許ありません」
「わたしもー。ムサシ叔父ちゃんはー?」
「破国は闘気を大量に持っていかれるにてござる。放ててもあと一発」
どうやらセリスお姉ちゃんもムサシ叔父ちゃんも厳しいようだ。でも、アークは万全な状態でハルファスを戦わせた方が良い。
ルティナお姉ちゃんが向かった炎を纏った化物の本体とやらがいるらしいから。正直アークでも、厳しいと思う。それでもわたしに出来る事をしないと。
「あれは四人で何とかするよー」
「心得ましたわ」
「承知したにてござる」
「おい! 俺も人数に含めるんじゃねぇー!」
ブリッジからストラトス叔父ちゃんの声が響く。さり気なく人数に混ぜたらバレちゃったかー。
そんな話をしていたら投擲され傷付いた足が再生し此方に突っ込んで来た。
あの合成魔物は獅子のように爪で引き裂き牙で嚙み切る、しまいには火を吐く。それでいて空を縦横無尽に駆けられて厄介だ。
しまいには超速再生とも言える生命力も兼ね備えている。
「セリスお姉ちゃん」
「はい」
わたしが呼び掛けると意図を察し前で出てくれる。
「ムサシ叔父ちゃんは、なるべくトドメに集中していてねー」
「承知したにてござる」
ドーンっ! ドーンっ!
ファルコンが揺れる。船体に体当たりして来てるようだ。
「クソがぁ! エドが改造してなかったら沈んでたぞ! 鬱陶しいんだよ合成魔物野郎が!」
ストラトス叔父ちゃんの罵詈雑言がブリッジから響いて来た。
「<下位稲妻魔法、下位稲妻魔法>」
合成魔物にセリスお姉ちゃんが下位稲妻魔法を放つ。
ダメージは皆無ただの挑発だ。
「ギャアンっ!」
怒りを滲ませ甲板まで上昇すると爪で引き裂こうとする。セリスお姉ちゃんは、それを杖で塞ぐ。
両手の爪を杖で抑え込み、鋭い牙は動体視力と上半身の動きだけで躱す。
こうして空を縦横無尽に駆けさせないように動きを封じているようだ。
焦れたのか合成魔物は口を開けブレスを吐こうとした。
「<中位氷結魔法>」
咄嗟に両手で持っていた杖から左手を離し、そこから中位氷結魔法を合成魔物の口の中に唱えて阻止した。
合成魔物が、ブレスを吐こうとして来た一瞬の隙をわたしは見逃さない。
「えーいっ!」
タケルさんがくれた破邪の鉄槌をいつも以上に大きくする。
普段は人の頭半分とするなら、今回は魔力を多めに込めて人の頭三つ分くらいまで大きくして横薙ぎに合成魔物のドテ腹を殴った。
合成魔物は吹き飛びファルコンから離れる。直ぐ様鉄槌を小さくし懐にしまい両掌を合成魔物に向けて集中する。
今の魔力をかなり持っていかれたし、あと放てても上位系が二、三。それをキッチリ当てる事を考えてながら、息を大きく吸う。
「<中位氷結魔法>」
まず中位氷結魔法で吹雪を起こす。雑魚なら氷漬けに出来るが、抵抗力があると動きを鈍らせる程度。
合成魔物は一瞬だけ怯んだだけだ。が狙いは、それではない。
『<上位稲妻魔法>』
本命の上位稲妻魔法を放つ。雷の竜が合成魔物に向かって行く。
単体に対し絶大な威力を誇るのがユピテル大陸の上位稲妻魔法。
今回は、ただ上位稲妻魔法を放った訳ではない。
事前に中位氷結魔法を放つ事で、水は雷を通し通常の何倍もの威力になる。
「ぎゃあああああああああああああああんっ!」
合成魔物が苦しみ藻掻く。しかし、逃がしまいと雷の竜が合成魔物に巻き付く。
合成魔物は生命力が高い。この程度では倒せない。
なのでセリスお姉ちゃんに視線を向ける。セリスお姉ちゃんは、コクリと頷き、杖を合成魔物に向けた。
「<岩狭よ、我が魔力喰らいて、我に力を与え賜え!>」
「<上位火炎魔法>」
ドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴン……っ!!
上位火炎魔法を唱え、特大の炎が大量に炸裂。
上位稲妻魔法で、多少のダメージを与え、上位火炎魔法で、足止めしセリスお姉ちゃんの詠唱の隙を作る。
「<今、顕現せよ……上位大地魔法>」
あれはたぶん上位大地魔法だ。合成魔物の四方八方から岩が現れ挟み込む。
合成魔物じゃなかったらこれだけでぺっちゃんこだったなー。
「<氷馬よ、我が魔力喰らいて、我に力を与え賜え! 今、顕現せよ……上位氷結魔法っ!!>」
続けて上位氷結魔法を唱え氷の天馬が駆け合成魔物に衝突すると岩ごと凍結させた。
でも、合成魔物の生命力を考えるとこれで終わらないだろうなー。
「ストラトス叔父ちゃん、突撃ーーーっ!!」
なので攻撃の手を緩めない。動けるようになる前に完全に倒す。
「カァー! わぁーったよ! おらぁファルコン、行くぜ」
ファルコンで突撃し、合成魔物吹き飛ばす。エド叔父ちゃんが改造してくれたから傷一つない。前だったら、船体がひしゃげ運航不能になってたかもなー。
吹き飛ばされた合成魔物は氷も岩も吹き飛び生身を晒している。だが、ボロボロだ。
再生には数十分は要するだろう。なら、もうトドメだねー。
「やっと拙者の出番にてござるな。では、参るっ! 秘儀・破国っ!!」
ムサシ叔父ちゃんの刀から特大な斬撃が発せられ合成魔物を真っ二つにした。
「ふ~……終わったー」
「魔力、枯渇してしまいましたわ」
そう言ってわたしとセリスお姉ちゃんを背中合わせにし、へたり込む。
今回は危なかったなー。魔力もギリギリだったし。セリスお姉ちゃんがいてくれて良かったよー。
なんとなくセリスお姉ちゃんのやる事が分かった。セリスお姉ちゃんもわたしのやる事が分かっているって雰囲気だったなー。
これもアークと模擬戦している影響かなー? 教師やっていたならセリスお姉ちゃんとも模擬戦しているだろうし。
同じ人と模擬戦をしていたのが少なからず影響してる気がした。
「くー! はぁはぁ……」
ムサシ叔父ちゃんも刀を杖替わりなんとか立ってる状態だ。
「ムサシ叔父ちゃんきつそうだねー」
「……闘気がもうござらん」
「なら座っていればー?」
「いや、次が来たら困るにてござるからな」
「その時は、ストラトス叔父ちゃんが体当たりで倒してくれるよー」
「聞こえているぞ! 体当たりばっかしていたら、壊れて帰れなくなるだろうがぁ!」
どう言う作りにしたのか甲板の声はブリッジに、ブリッジの声は甲板に聞こえるようにエド叔父ちゃんがしてくれた。
「冗談だよー。わたしもセリスお姉ちゃんも魔力枯渇してるしー、大人しく逃げよー」
「カァー! ったりめーだ。こんな状態じゃやってやれねぇ」
それにしてもセリスお姉ちゃんが静かだ。なので呼び掛けた。
「セリスお姉ちゃん?」
「何でしょうか? エーコさん」
取り繕ったような笑みを浮かべ首を傾げる。
「大丈夫ー?」
「魔力はございませんが、怪我もしておりませんし平気ですわ」
「そ? 大人しいからさー」
「王女様よ、何やら心配そうなお顔にてござる」
ムサシ叔父ちゃんも気になったのか、セリスお姉ちゃんの顔を覗き込む。
「アークが心配で」
「アークが負けるとこなんて想像付くー?」
「……付きませんね」
「なら信じよー」
「そう……でございますわね」
とは言うものの、アークが負けるとこなんてわたしは見ている。傷付きボロボロになるとこも。
だから、無事でいて欲しいと祈らずにいられない。アーク……ちゃんとわたし達の想いを繋いだんだから、ちゃんと帰って来てねー。
それにアークには、まだまだずっと傍にいて欲しいんだからねー。
アークには恥ずかしくて決して言いたくないけど、そんな事を思いながらアークの無事の帰りを待つ事にした。
side Ark-を作った理由その③
上位悪魔と同じスペルにしたくなかったからです
ほとんど②と一緒ですけど
そして最大の理由である④は、主人公アークを作る根幹のものですが、それが公開されるのは、ずーーーと先ですね
そこまで続くかも不明ですが(笑)




