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EP.32 王子&王女対決

 謁見の間に入ると玉座が三つあり、男が二人と女が一人腰を掛けていた。歳は両方二十歳行くか行かないくらいの男で青色の髪。女の方はスーリヤより少し上くらいで水色の髪だ。

 他に護衛らしき者が五人、傍に控えていた。


「あら、どうして此処にスーリヤ王女がいるのかしら?」


 最初に口を開いたのは玉座に座る女だ。


「わたくしの城にわたくしがいるのが、そんなにおかしいのかしら?」


 スーリヤは桃色ツインテールの右側を払いながらそう言う。彼女がキレてる時の仕草だ。


「スーリヤ、知り合いか?」


 エドワードは、察しは付いているのだが一応確認した。


「えぇ。デビルス国の第一王子アマイモン、第二王子アドラメレク、第一王女フルーレティですわ」


 エドワードの方を向きそう答える。再び三人を見据え……、


「それで、貴方方は学園におらず何故此処に?」

「リックロア国が我が国が陥とすから必要無いのさ。まぁもう陥ちてる頃だろうけど」


 アマイモンが余裕の笑みで答えた。他の二人も余裕の笑みを見せている。


「あら、そう。残念ながらその計画は失敗致しましたわ。勇者達の腕輪も全て処理しましたわ。おあいにくさ」


 対し、スーリヤは嘲笑うかのように言う。

 自分の城を占領している司令官らしき者を前にしているので、相当頭に来ているので、そのような態度になるのは当然である。


「なんだと?」

「バカな」


 余裕の笑みが崩れ、アドラメレクとフルーレティがそう漏らす。


「わたくしが、ここにいるのが何よりの証拠ですわ」

「そんなものは証拠にならない」


 アマイモンだけは余裕の笑みを消さず冷静に返す。


「それに仮に我々を退けここを取り返しても、本国に増援を要請した。どっちにしろ終わりだ。スーリヤ王女」

「あらあら。それはそれはまんまと罠にハマったようですわね」


 桃色ツインテールの右側を払い再度嘲笑うかのようにスーリヤが返す。


「どう言う事だ?」

「リックロア国に出現した異形の化物、デビルス国、此処をほぼ同時侵攻したのですわ。しかもこの作戦を立案した者は、デビルス国からこちらに増援を出して手薄になったタイミングで仕掛けると言っておりましたわ。まんまと予想通りにデビルス国は踊ってくれたのですわね。ふふふ……」


 アークの思惑通りだった。

 アマイモンも、そこでやっと笑みが消える。


「そいつは何者だ?」

「あら、貴方方も武術大会で見ていたでしょう? チョビーゲ先生を瞬殺する所を」

「ま、まさかダーク先生か!?」

「えぇ、そうですわ」

「あの者の実力がどれ程か分からぬが、デビルス国本国では、今其方が言った異形の化物の完成形が誕生している頃だ。どこまでやれるかな?」


 再び余裕の笑みを見せアマイモンがそう言うが、その態度と言葉にエドワードはカチンと来て……、


「我が友アークを……いや、ダークを舐めないで頂こう。彼は我がユピテル大陸を三度救った大英雄ぞ」


 と、つい口を挟んでしまう。

 尤も一度はダーク本人、二度はダークの体を乗っ取ったアークなので同一人物ではないのだが、エドワードもつい大きく出てしまった。


「あらあら。流石はダーク先生ですわね。三度も救われたのですか」


 スーリヤが優雅に、そして誇らしそうに笑う。


「ユピテル大陸? 何故他の大陸の者が介入してるのですか?」


 フルーレティが怪訝そうな顔で問うて来た。


「あら、貴方方が勇者召喚で呼び出したのでしょう? まぁお陰でわたくし達Cクラスは良い師に巡り会えましたが」

「つまり裏切ったのだな?」


 今度はアドラメレクがそう言う。


「何を仰ってるのですか? 一年と少し前、唯一北の砦との戦いで毎日参加した方ですよ。それなのに精霊契約をしたと言う理由で、身勝手に牢屋に入れたのはデビルスでしょう? 当時は、その化物もおりませんでしたから逃げ出すのも簡単だったでしょうに、大人しく従ってたそうですよ」


 アークがされた仕打ちを事前に聞いていたが、それでもエドワードは内心イラっと来た。

 だが、大人しく従ってたと言う事はナターシャやエーコがいない事で精神的に参っていたのではないかと考え、今回は口を挟まない。


「なら何故牢屋にいない?」


 再びアドラメレクが問う。


「クロセリス王女ですよ。貴方方と違い間違った道に進むデビルスを見ていられず、ダーク先生にお願いして城を抜け出したのですよ」

「だが、クロセリスは攫われたと聞いたぞ」


 今度はアマイモンが問い掛ける。


「攫われた? 貴方方の目はどこまでも節穴なのですね。学園で元気していらっしゃったでしょう?」

「何? まさか武術大会で花弁牢獄(フローラル・プリズン)を使った者か?」


 スーリヤは何も答えず笑顔を向ける。しかし、目は笑っていない。その表情が如実に肯定だと物語っていた。


「ま、まさかわたくしの妹があんな近くにいたとは……」


 フルーレティが悔しそうに顔を歪ます。


「それで先程其方が異形の化物と言った者は、どう対処するのだ? まさかダーク先生が自ら対処してるのか? デビルス国にはもっと強力な化物がいるのにか?」


 リックロア国に出現させた、あの異形の化物を思い出したのか、再び余裕の笑みを見せアマイモンが問う。


「まさか……。ダーク先生は当然デビルス国を攻めますわ。クロセリス王女と一緒に。リックロア国に出現した異形の化物には、もっと凄い化物が向かいましたわ」


 嘲笑うかのようにスーリヤが言う。


 ――――化物って……ルティナが聞いたら怒るぞ。まぁ化物のように強いって、良い意味で言ってるのだろうが、ルティナはその言葉に過剰反応するからな。


 そう思いエドワードは肩を竦める。


「化物?」

「えぇ。精霊の血を半分引く者と精霊を顕現させられる者が向かいましたわ。王家の者なら、これがどれ程の事が理解出来ますよね?」

「どこからその者を連れて来た?」

「また異な事を仰いますね。貴方方が勇者召喚したんでしょう? 能力は精霊顕現。もう一人はダーク先生を迎えに来たユピテル大陸の者ですわ」

「どこまでもふざけた事を……」


 アマイモンが怒りを露わにしスーリヤを睨み付ける。他の二人は苦虫を嚙み潰したよう顔をし出す。


「ふざけているのはどっちですかっ!? 身勝手な理由で我が国を占領しリックロア国も支配しようなんて蛮行、同じ王族として恥ずかしく限りですっ!!」


 桃色ツインテールの右側を右手で払い除けながら怒鳴り付け、左手で槍を地面にドーンと打ち付けた。

 アマイモン以上に怒りを露わにしている。


「そして、長年に渡り我が国ゼフィラク国を攻め続けましたね」


 そこで後ろからアベリオテスがやって来て言った。

 他にボレアース国王や幾人かの兵達、それにアルフォード、アンナもやって来た。


「あら、ボレアース国王がここに来られたと言う事は、この戦は決したのかしら?」


 スーリヤが問う。


「ああ。スーリヤ達が転移で消えたので、城に突入したと察し、追い掛けて来た。外も時期に終わる」

「だ、そうですわ。降伏なさい」

「それは出来ぬ相談だな。我等にはデビルス国王家としての矜持がある」


 アマイモンが答えた。


 ――――最後までやる気か? 馬鹿げている。


 エドワードは内心そう思い歯噛みする。


「矜持? クロセリス王女のよっぽど矜持がありましたわ」

「それに心身共に貴方方には、もう遠く及びません」


 スーリヤに続けてアベリオテスが言う。


「妹に及ばない? では、試して見るか?」

「なんたる侮辱」

「我が妹は、まだ未熟」


 そう言ってアマイモン、アドラメレク、フルーレティが立ち上がった。


「では、クロセリス王女の強さを証明する為に、ここは王子王女で決着を着けますか?」


 スーリヤがツインテールを払い除け、槍を構える。


「そうですね。同じクラスメイトを侮辱されて黙っている訳には行きませんね」


 続けてアベリオテスが剣を構えた。


「そう言う訳でエドワード国王、手出し無用でお願い致します」

「父上も」


 三対二で不利だとエドワードは考えたが、結局のところ、これはこの大陸の問題。部外者であるが故にそう言われると手を出せないと思った。


「レディが傷付くのは見たくない。なのでスーリヤ、ご無理はしないように」

「えぇ、当然ですわ」

「アベリオテス、本気か?」

「無論です」

「分かった。だが、危険と判断したなら手を出すからな」

「分かりました」

「姉御、やっちゃってくださいっす」


 そうしてアベリオテス&スーリヤvsアマイモン&アドラメレク&フルーレティの戦いが始まった。

 アマイモンは鉄槌、アドラメレクは剣、フルーレティは杖と、それぞれ護衛にいた兵に渡され構える。


「<炎獄よ、我に力を貸し賜え……中位火炎魔法(フレア)>」


 最初に動いたのはスーリヤだ。中位火炎魔法(フレア)を飛ばす。


「<氷雪よ、我に力を貸し賜え……中位氷結魔法(テンペスト)>」


 対しフルーレティ王女は反属性である中位氷結魔法(テンペスト)を杖から放つ。

 反属性の魔法が衝突し、辺りが水蒸気で包まれる。


「<下位稲妻魔法(ライトニング)>……ライトニング・アウステル」


 アベリオテスの声を聞こえる。水蒸気で視界が悪くなってる中、何かを仕掛けた。


「ほ~……魔法剣か」

「えぇ。最近アベリオテス王子が習得された魔法剣の斬撃飛ばしです」


 アルフォードとアンナには索敵気法(さくてきほう)による空間把握が出来てるので、何をしたか気付く。

 その会話を聞いてエドワードは驚く。アークはアベリオテスには魔法剣を伝授していた事、アベリオテスに魔法剣の才能があった事。そして、それを見抜いたアークにだ。

 やがて水蒸気が晴れる。するとフルーレティの杖が真っ二つにされておりお腹の辺りがバッサリ斬れていた。


「くぅぅぅっ!」


 苦悶の表情を浮かべ膝を付く。


「フルーレティ、大丈夫か? <癒しを、慈悲を持って与え賜え……中位回復魔法(リペアー)>」


 アドラメレクが、中位回復魔法(リペアー)をフルーレティにかける。が、傷が塞がったのに立てない。


「くぅぅぅ……どうやら雷系です。兄上、痺れて動けそうにありません」

「安易に反属性を使ったのが間違いですわね。室内で視界を塞ぐなど愚の極みですわ。それにわたくしが態と詠唱したから、対応出来たようですね」

「クロセリス王女なら避けたでしょうね。少しはクロセリス王女との差が分かりましたか?」


 スーリヤとアベリオテスがそう言う。

 クロセリスとの差を教える為に攻撃の手を緩めていた。スーリヤの初撃の中位火炎魔法(フレア)も詠唱したからこそ、フルーレティは反応し反属性とは言え、魔法を返せた。


「それに真っ先に杖を失っては、魔法の威力が落ちますわね」

「そもそも杖があってもスーリヤ王女の炎魔法を相殺するしか出来ないのですね」

「……屈辱ですわ」


 二人にそう言われ、フルーレティが苦虫を嚙み潰したよう顔をした。

アベリオテス、ノトス、ボレアースは風神から名前を取りました

また魔法剣の名前にしたアウステルも同じです

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