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EP.24 ルティナ&沙耶vs異形の魔人

 学園の外に出る体がピカーンと光輝き出す。人前で見せると化物と呼ばれるので普段はしない異形の姿に変わる。

 が、現在西で暴れているのがヤバいとそう感じ、早く行かなくてはと思いルティナは躊躇わず半精霊化を行った。

 ルティナは、やがて宙に浮きビリビリと体の周りに電気が走る。次第に青白く半透明になっていった。


「えっ!? これ何?」


 サヤが目をパチパチさせながら驚く。


「私は半分精霊だから」

「あ~精霊化出来るのね」

「人間の姿じゃないけど普通に話せるのね」

「まぁ私には精霊の友達がいるからね。見慣れているよ」


 精霊の友達? と首を傾げるが……、


 ――――そう言えば癒しの精霊を顕現させ皆を癒していた。この子は本当に不思議。


 気を抜くとまた抱きしめたくなる程、ルティナは惹かれていた。


「それで、貴女も飛べる?」

「やって見るよ……アネモイ君」

《おお。出番か……って、半同胞(はんから)じゃねぇか!?》


 アネモイと呼ばれた逆三角錐のような形で風が渦巻いており、頭だけがひょこっと出ている風の精霊が顕現した。

 ルティナはそれに驚いてしまうが、風の精霊も同じように半精霊のルティナの存在に驚いた。


「アネモイ君、飛ばして」

《お安い御用だ》


 そう言うと沙耶が浮き始めた。


「じゃあ行きましょう。と言いたいとこだけど、あまりスピードを出すと魔力消費が激しいよね?」

「どう? アネモイ君」

半同胞(はんから)の言う通りだぜ。ゆっくり飛んだ方が魔力効率が良い。ゆっくり過ぎると逆に余計な魔力を使うがな》


 ゆっくり過ぎると同じ距離を飛ぶのに時間ばかり掛かり魔力を多く消費する。

 それはルティナも同じだから理解出来ていた。


「あとでサヤの魔力を貰うんだから、節約して頂戴。私は先に行くから」

「分かったよ。アネモイ君、最も魔力節約出来るスピードであの化物のとこへお願い」

《任せておけっ!》


 そんな会話をしつつ一気に加速。リックロア国王都とやらの上空に迫った。

 近付いて、ルティナは気付いたが炎を纏っているのは体ではなく手に持つ大きい剣だ。

 自分の身長の三倍はあるバカでかい剣。そもそも、その体は常人の四倍はある。

 具体的に全長7m程、剣は二十m程あった。


「まるで魔物ね」


 体は薄緑で顔はまるでオーガのように鬼だ。

 背中には骨の羽が生えており、あれで何で飛べてるのか不思議な姿。まさに異形。


 ――――私もだけどこれも相当な異形の化物ね。


「アークサヤダークユルサネーアークサヤダークユルサネー」


 まるで呪詛みたいな言葉を繰り返し炎を纏った大剣を振るい火の粉を飛ばす。

 それだけで地上はパニックだ。悲鳴、喚き、嘆き、怒声などが響き渡る。

 建物もあの大剣で崩されたのだろう。見るに無残な街並みだ。


「アークサヤダークユルサネーアークサヤダークユルサネー」


 ただ呪詛のような言葉を繰り返す。


「アークとダークって同じよね? 知らないのかしら? それよりもアークは何をしたのよ? サヤの名前もあるけど二人共、ほんと何をしたんだか」


 ルティナが呆れるようにが呟いてる間にも大剣が振るわれ被害が増してしまう。


「考えている場合じゃないようね……<上位氷結魔法(ブリザード)>」


 上位氷結魔法(ブリザード)で吹雪を起こし町の火を消すと同時に異形の化物の大剣に纏う炎を消す。

 元々広範囲な魔法だが、町の火を消す為に更に広範囲にした為に結構魔力を持って行かれた。


「アークサヤダークユルサネーアークサヤダークユルサネー」

「もうそれは良いわよ」


 ルティナの上位氷結魔法(ブリザード)に反応して、ルティナを見て来るが発する言葉は呪詛のようなもの。


「アークサヤダークユルサネーアークサヤダークユルサネー」


 今度はそう言って大剣に雷を纏う。それを振るわれる。

 空中での立体移動が可能なので、なんとか躱せるがあんなバカでかい大剣を地上で振るわれたらアウトだったと感じるルティナ。


「<最後の光、究極の光よっ! ファティマっ!!>」


 一気に決めるべくルティナは、短縮詠唱で究極魔法を両掌を突き出し唱える。

 青いドーム状のものが異形の化物を包み込む。が、抜け出して来てしまう。その後にドームの中で光の柱がいくつも走る。

 簡単に抜け出さないようにドームで抑え込み、光の柱で殲滅させる魔法なのにドームから逃げ出したのだ。

 しかも、その一瞬が速かった。本能で危険と悟ったのだろう……。


 ――――今の究極魔法よ。どれだけ魔力使ったと思っているのよ。


 内心憤慨してしまうルティナ。

 例えば万全な状態で上位氷結魔法(ブリザード)等の上位魔法は半精霊化しながら二十発は放てるだろう。が、究極魔法(ファティマ)は二発が限度なのだ。

 しかも一度上位氷結魔法(ブリザード)を使ってるいし、飛んでここまで来たので、もう魔力が相当やばい


 ――――タケルが次の脅威があった時の為に、その世界の事はその世界の人にやらせるって言ってたっけ。癪だけどあの時、経験がなければこの時点で私の半精霊化は解けているだろうな。


 雷を纏った大剣を上段に構え振り下ろそうとしている。あれは、掠りでもすれば体が痺れて動けないだろう。

 なら振り切る前に相殺するまでと判断し……、


「<上位稲妻魔法(ドラゴ・スパーク)>」


 後ろに下がりながら上位稲妻魔法(ドラゴ・スパーク)を放つ。

 雷の竜が走り大剣に纏った雷を食らいそれだけとどまらず、異形の化物の体に巻き付いて雷ダメージを与えて消えた。

 だと言うのにもろともせずそのまま剣を振り下ろす。その際に雷が消えた大剣に瞬時に炎を纏わせる。


「っ!?」


 それが振り下ろされたので当たらないように一気に加速し後ろに下がった。空中を自在に飛べるからこそ出来る事。

 しかし異形の化物は振り下ろすだけでなく炎の斬撃を飛ばして来た。

 しまった。これは直撃だ。と、ルティナは焦り腕を盾のようにし急所だけは守るようにした。

 しかし痛みはやってこない。


《危なかったね~半同胞(はんから)


 隣には全身炎の人がいた。

 いや、目と口の部分は風穴が空いていて反対側が見えており、それ以外は髪も含めて炎だ。

 その炎の精霊……メラが攻撃を防いでくれたのだ。


「危なかったね、ルティナさん。メラ君が相殺出来て良かったよ」


 と言う声が後ろから聞こえる。沙耶も到着した。


「ありがとう。助かったわ。それと私に『さん』はいらないから」

「分かったよ、ルティナ。相殺可能ならメラ君がやるから」

「ありがとう。でも、魔力のパスを繋げてサヤから魔力を貰うから無理しないで」

「分かったよ」

《そんな心配ないよ~。サヤは魔力伸びが早いからね~。ここ最近一気に魔力が増えたよ~》


 メラが沙耶を安心させるかのよいもユラユラと自らの炎を揺らす。


「サヤサヤサヤサヤユルサネー」


 呪詛のように叫び異形の化物が沙耶に向かって行く。


「えっ!? 何? アネモイ君!」

《おおよ! 行くぜ》


 アネモイが突風を起こし異形の化物を遠くに飛ばす。


「あれサヤを狙うようね」

「何でよ?」

「アークとサヤ、許さないしか喋ってなかったし。それでサヤを発見してサヤだけを許さないって言い出したわ。何をしたの?」

「知らないわよ。むしろあんな化物の知り合いはいないよ」

《依り代になったニンゲンが、サヤを恨んでるんだね~》

「「えっ!?」」


 ルティナと沙耶はメラの言葉に目を丸くし出す。


《その恨みがニンゲンをあの姿に変えたんだよ~》

「依り代になった人って誰よ?」

《そこまで知らないよ~。たぶんボクの会った事ないニンゲンだよ~》

「お喋りはそこまで見たいね。戻って来たわ」


 ルティナはそう言い油断なく構える。

 とは、言っても剣なんて通じる相手でもないし、いつでも魔法を放てるように掌を異形の化物に向けてるだけだ。


「サヤサヤサヤサヤユルサネー」


 こちらに飛んで来ながら氷を纏った大剣の斬撃を沙耶に放った。


「させない……<中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)>」


 中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)を放ち炎の鳥を顕現させる。

 それは氷の斬撃を飲み込み、そのまま操り本体にぶつけた。


「サヤサヤサヤサヤユルサネー」


 だと言うのにダメージは食らった様子は皆無。


「ちなみにサヤの全魔力を使った炎の精霊の攻撃で倒せないかな?」

《ボクでも無理かな~。あれにダメージを与えられるとしたら~半同胞(はんから)だけだよ~》

「えっ!?」


 今度は雷の斬撃を振るって来た。おちおち話してもいられない状況だ。それも狙いは沙耶だ。


 ――――私を無視するなんて良い度胸してるわね。


「<上位稲妻魔法(ドラゴ・スパーク)>」


 上位稲妻魔法(ドラゴ・スパーク)を放ち雷の竜で相殺した。

 普通に放っては、軽々相殺出来、本体にも当てられるのだが、どうせダメージがないなら、相殺出来る程度の魔力しか使わないで放つ。無駄だから。

 ルティナは沙耶が近くにいる事で魔力が流れて来るのを感じていた。

 ただ不思議な事に流れて来てる量とルティナの中に貯まる量が違う。

 具体的にはサヤが一の魔力をルティナの中に流すと三貯まる。つまり三倍に変換されているのだ。


 ――――これが精霊に好かれる体質を持った特異性なのかしらね。


 と首を傾げる。だが、今はそれよりも……、


「狙いはサヤよ。離れて」

「分かったよ」


 沙耶が離れて行く。そのせいでルティナへの魔力供給が少なくなっていく。


「サヤサヤサヤサヤユルサネー」


 呪詛の言葉を撒き散らし大剣を振り下ろしながら氷の斬撃の飛ばす。


「<中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)>」


 中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)で炎の鳥を顕現させぶるける。当然魔力調整をして相殺に留めている。

 しかし、続けて炎を大剣に纏わせた。次の魔法剣を出すのがいくらなんでも早過ぎる。と、感じていた。

 なにせ大剣を振り下ろし切る前に炎を纏わせたのだから……。

 そして振り下ろし切った時、炎の斬撃がサヤを襲う。

 メラが庇うように間に入るが沙耶も咄嗟の事で魔力を多く流していなかったのだろう……。

 メラが掻き消え炎の斬撃が沙耶を襲う。


「キャぁぁぁぁぁ!」

「サヤー」

「お願い、ティカルさん」

《無理ちゃんしゅるんじゃなかとよ。ほら回復するけん》


 全身白い、白無垢のようなのを着ている、ティカルが顕現し博多弁で話し沙耶を癒す。

 ルティナは直ぐに沙耶の元に飛んで行く。


「大丈夫?」

「なんとかね。あとメラ君があれはルティナの究極魔法(オリジン)でしか倒せないって」

「炎の精霊は無事なのね?」


 掻き消えていえたけど。


「魔力の供給が間に合わず顕現出来なくなっただけよ。メラ君来て」

《今のは危なかったね~》


 そう言ってメラが再度顕現した。


 ――――にしても究極魔法(オリジン)は、精霊の血が流れている事で私にしか使えない魔法ではあるけど、避けられたのよね。当てるには……? そうなると沙耶から魔力を貰う訳には行かない。沙耶にも精霊に沢山魔力を送って欲しいから。


 と、色々考えてルティナは方法を思い付いたが少しげんなりしていた。


「サヤ、暫く囮をお願い出来る? それも極力魔力を使わず」

「無茶な要求ね」

「ごめん。それしか思いつかなくて」

「メラ君、出来る?」

《あれが理性を失っているバカなら可能かな~》


 そう言うと異形の化物の周りにボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッと火が現れ、やがてそれが陽炎にようにユラユラ動き、沙耶のような姿になった。

 とは言っても影みたいな感じで、見れば沙耶本人ではないと簡単に看破出来てしまう。


「サヤサヤサヤサヤユルサネー」


 そう言って大剣を振り回し陽炎のサヤを薙ぎ払う。


《バカだね~。でも、いつかは学習するかも? だから早くね~》

「ありがとう。メラ君」

《そう呼んで良いのはサヤだけ。半同胞(はんから)でもダメ~》


 素っ気なく言われてしまう。


「あ、はい。じゃあサヤ。作戦を伝えるね………………ってな感じなんだけど」

「うん、分かったよ。やってるみるよ」


 これであれを倒す道筋が立った。と、グっとルティナの手に力が入る。


 ――――さて、陽炎の偽サヤに攻撃してる間に詠唱を済ませないと。


 いつかはあれも気付くだろう。偽物の囮なのだから。それはルティナも重々承知している。


「す~~は~~」


 ルティナは深呼吸した。目を瞑り残りの魔力を確認する。

 沙耶に無茶をさせているので、もう沙耶からは魔力を貰えない。

 例え変換効率が良くて沙耶自身も精霊に魔力を送っているのだから……。


 ――――残りの魔力的に究極魔法(ファティマ)はギリギリ可能ね。


 と、残り魔力を確認すると開けて詠唱を開始した……。


「<我の中に眠りし血に命じる……>」


 メラが陽炎の偽沙耶を徐々に遠くに配置し始める。仮に偽物だと気付いても、こちらに戻って来るまでの間に多少猶予を作っているのだ

 ただ精霊の力を借りて魔法を放つだけでなく精霊と話し合い魔法が放てる。これだけで凄い事だとルティナは感じながら詠唱していた。

 沙耶のやってる事は、言い換えれば頭脳が二つあるようなもの。それにただ魔法を放つだけでなく陽炎にしたり応用が利く。

 沙耶の特異性は、尋常じゃないとルティナは強く感じた。


「<我が祈りを聞き届け、究極の光撃にて……>」


 異形の化物がドンドン離れて行く。今のうちに詠唱を完成させたいと、と逸る気持ちを落ち着かせながら、慎重に詠唱していた。

 もし焦って間違えてしまうとやり直しだからだ。


「<我の手を阻むものを滅し賜え……>」


 ついに異形の化物は陽炎の偽沙耶だと気付く。陽炎の偽沙耶を無視してこちらに戻って来たのだ。

 それも速い。何故あんな骨の羽で飛べて速いのか疑問に感じる程だ


「<我が力、最後の光とならんっ!>」


 目の前に迫って来たとこで詠唱が完成し、最後は力強く唱えた。


 ――――出来れば二度と完全詠唱はしたくないわ。長いし。短縮詠唱だけで十分よ。


 そう完全詠唱しないと魔力が足らないと感じルティナは、最初にげんなりしていたのだ。

 短縮詠唱すると魔力の消費が多きくなったりする。下位や中位の魔法ならともかくルティナの究極魔法(オリジン)は上位の上位。最上位ってとこなのだから。


「<究極魔法(ファティマ)っ!!>」


 魔法を解き放つ。

 青いドーム状のものが広がり異形の化物を包み込む。

 やはり感が良いのか、本能によるものか、逃げ出そうとし出す。


「させないよ。アネモイ君」

《おおよ! 任せておけ》


 沙耶はアネモイを顕現させ、逃げ出そうとしてる方向から突風を起こし逃げられないようにした。

 それにしても自分を空に飛ばして貰いながら、他の魔法を使えるのだから、精霊顕現は反則過ぎるとルティナは思った。。

 そして、青いドーム状の中で光の柱がいくつも走り(ほとばし)


「アー、クサ、ヤダ、ーク、ユル、サ、……ぐぁぁぁ」


 呪詛を言いながらどんどん小さくなり普通の人間となって落下した。依り代となった人間だ。

 ルティナは追いかけるように地上に降り立った。沙耶も同じく地面に降り立つ。


「……マーク?」


 沙耶が呟く?


「クッソー! また負けた」


 そう言って依り代だった人間……マークは立ち上がるが目が真っ赤だ。完全に人間に戻れていなかった。


「やっぱりマークね。どうしてマークがこんな事を?」


 沙耶が周囲を見てそう言う。

 建物は焼け焦がれていたり、崩れていたりしている。それを痛ましく思っていた。


「沙耶が悪いんだろっ!!」

「えっ!?」

「沙耶が最初に手加減して態と負けて俺を嘲笑っていたのだろ?」

「別にそんなつもりは……」

「それにゼフィラクのアークにオッサンのアーク、どっちもムカ付くぜ。オッサンのアークは偉そうに大剣がどうのって言いやがって何様だ」


 マークは大剣を持っている。

 異形の化物の時は自分の三倍はあるバカでかい剣だったが、今は普通の大剣で自分の身長くらいの長さだ。


「それは大剣の欠点を言ってただけでしょう? 魔法剣と大剣では、能力と武器が噛み合ってないのよ」

「煩い! そしてダークとか言う仮面の怪しい教師も同じ事を言いやがって」


 ――――それは同じ人だもんね。って言うか仮面なんて被ってたのか。まんま本物のダークの真似をして教師をやっていたのね。


「アークもダーク先生もマークの事を思って……」

「煩い! そもそもがユーが手を抜いたのが最初の原因だ」


 沙耶の言葉を遮り勝手な事を言い出す。完全に憎しみに染まって言葉が届かないようだ。

 目も真っ赤だし、説得は無理そうだとルティナは感じる。


「分かったよ。そこまで言うなら本気で相手をしてあげるよ」


 そう言ってサヤは薙刀を構える。


「はっ! 今更? しかもユーのはチートアビリティじゃねぇか。さっきのは何だ?」


 どうやら記憶にあるようだ


「それは負けた時の言い訳? そんなんだから、あんな化物になるんでしょう?」

「煩い! 煩い! 煩い! ミーは悪くない。悪いのはユーとゼフィラクのアークとオッサンとダークだ」

「分かったよ。私が使うのは一属性のみで自分に施すのだけにするよ。これで文句ないでしょう? マークは三属性の魔法剣が使えるんだかから」

「五属性だけどな」

「え?」

「火、氷、雷、土、風だ。尤も(ソイル)(ウインド)は使い物にならないがな」

「馬鹿なの? 土も風も状況によっては使えるものよ? さっき言ってたあびりてぃってのが何か知らないけど、魔法剣の事なら土も風も十分に使えるわよ」


 ついルティナは、口を挟んでしまう。


「ユーは何も分かっていない。ソイルは重くなるだけで、ウインドは斬る前に相手を吹き飛ばしてしまう。アビリティの事を知らぬのに口を挟むなバケモノ(・・・・)


 カチーンっ! と、ルティナはキレる


 ――――私より化物の奴に化物なんて言われたくないわよ。


「サヤを見てなかったの? 風の力で飛んでいたわ。これで風が使えないとか言う発想は頭おかしいとしか言いようがないわ」

「煩い! 煩い! 煩い!」

「子供の癇癪ね」

「黙れ! 黙れ! 黙れ!」

「それで私の挑戦を受けるの? 口ばっかで喚いて逃げるの?」


 沙耶が再び口を開く。


「良いだろう。あんなチートを使わず一属性しか使わず、自分にしか施さない? そんなバカみたいな事を言ってるユーに目にもの見せてやるよ」

「ルティナは手を出さないでよ」

「うん、分かったわ」


 沙耶とマークの戦いが始まろうとしていた。本当はルティナがぶっ飛ばしたいと思っていた。

 なにせ化物に化物呼ばわりされたのだから。ルティナは、相当に頭来ていた。それでも沙耶に任したのだから、グッと堪える。

 沙耶の薙刀を構える姿は端麗。普段から扱っているのが良く分かる。

 対するマークは大剣を構えているが不格好だ。これはアークの気持ちも分かる。とルティナは感じた。

 大剣は武器を使い慣れていない者が使うものではない。ましてや魔法剣を使うなら効率が悪い。

 両者は向かい合い、暫しの時が止まったとさえ思えるものだった。

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