EP.04 確りフローラを見ていませんでした
「フローラ、ちょっと」
少し皆から離れ手招きをした。
「何ぃ?」
「今日一緒に寝る?」
「それって……」
「寝るだけだよ?」
「むぅぅぅ」
口をへの字にしだす。
「何? 変な事考えてた? えちえちなフローラだな」
久々にこの単語使ったな。フローラは顔を赤くし出す。
「………………………………寝る」
「正気? 同じ布団に入るだけで、しかも哀れみでだよ?」
「うん……でも、最後の余計。分かってるけど言わないでよぉぉ」
「じゃあ、今日はどっかに宿泊するか。チョビヒーゲからぶん取って差し上げたお金があるし」
「ぷっ!」
フローラが吹き出す。スーリヤの言葉を使ったお陰か少し笑ってくれた。
「フローラ」
「何ぃ?」
「笑っていた方が可愛いぞ」
耳打ちしてやると耳まで真っ赤にし出す。
「久々に言ってくれたね」
「最近わがまま言うからだろ?」
「……ごめん」
「女としては、どうしても見れないけどちゃんと好きだぞ」
「うん、ありがとう。ボクは、男として好きになってるよ」
「…………………………」
「も~~~! 何か答えてよぉぉ!!」
答えられる訳ないじゃん。本当にそうだとは思えないんだし。
フローラは、頬をプクーっと膨らますが直ぐに笑顔になってくれた。
「じゃあ皆のとこ戻ろうか」
「うん、さっきの事絶対だよ。ちゃんと同じ布団に入ってよ」
「あ~~~~はいはい」
「も~~」
「皆~~。フローラはちょっとおだてたら機嫌治る程、チョロかったし、飲み直そう。騒ぎ直そう」
「余計な事を言わないでぇぇぇ! 恥ずかしいでしょぉぉぉ!」
「今更でしょう?」
「分かってるよぉぉぉ!」
その日、宿屋にフローラと泊まった。
適当な宿で良かったのだが、何故かフローラは風呂有り所望した。まあ寮には大浴場があるし風呂有り生活に慣れてしまったのだろう。
前に一緒に住んでた時は、体を拭くくらいしか出来なかったが。
値段は、かなり高いがたまには良いだろう。フローラもそれなりに可愛く思ってるし、たまにはわがままを聞いてやろう。
ただね……、
「お前、誘ってるのか?」
風呂上がり、宿屋が用意した浴衣に似たものを着ているのは良いのだが、着崩している。胸元がかなり開いてる。
「アークが喜ぶかと思って」
丸で悪戯が成功したかのような悪い笑みをしてるし。
「つまり、誘ってるんだな」
「もし、そうだったら? キャっ!」
俺は抱き上げベッドに放り投げた。
「痛いよ。乱暴にしないでぇぇ!」
「お陰で覚醒したよ。どうしてくれるんだ?」
ビックマグナムが暴走寸前。
俺はテントを張ったそれを見せ付けるように腰を突き出す。
そうするとフローラは、顔を赤くしつつもそろ~りと手を伸ばして来る。俺はその腕を掴む。
「何ぃ?」
「何しようとした?」
「『どうしてくれるんだ』って言ったから処理して上げようかなって。して欲しいんでしょう?」
挑発的な笑みで黄色の双眸に俺を収める。
「前は『気持ち悪い』って言ったよな? それを何だ? 平気そうな面して掴もうとしてるんだ?」
「………………えっと、あの時はね。ごめんね。怒ってる?」
ボソボソ呟く。
その黄色の瞳は、情欲に潤んでいる。
「って言いながら自分がしたいんだろ? 誘って来るような恰好しやがって」
何か段々イライラして来た。理由は分かる。こいつは自分がしたいくせに俺からさせようとしてるんだ。気に入らない。
「そ、そんな事ないよ」
「耳まで真っ赤にして説得力ないんだよ」
「やっぱり怒ってる?」
「お前が、はっきりしないからだろ?」
「したいって言えば満足なの?」
フローラが首を傾げる。
「したいんだったら姫様モードで、『したいです、触らせてください』って言えたら考えてやる」
「何でぇぇ?」
「そっちのがそそられるから」
「分かったよぉ」
フローラは目を瞑り、やがて開くとガラリと雰囲気が変わる。目を瞑るのをスイッチにしてる感じだな。
「アーク様、わたくしと伽をしてくださいませ。アーク様のソレを触りたいです」
俺はそれを聞いて一気に冷めた。ビックマグナムも速攻大人しくなる。
「キモっ!」
「えっ!?」
「マジでキモい」
「何故でしょうか?」
「必死過ぎなんだよ!」
俺はベッドからおり、ベッドを背に目を瞑る。何も見なかった、聞かなかった事にしてこの体勢で寝よう。
ああもうイライラする! こいつふざけんなよ!
いや、分かってたよ。分かってたけど、こう事実を突き付けられるとマジでイラ付く。
何で俺は、こんな女を可愛がってたんだ? いや、確かに娘のようにとか思ってたけどさ。今も思ってるけどさ。
「………………ク、アー………………」
それでも今だけはイラ付く。どうしようもない程にイラ付く。
たぶん自分に腹が立ってるんだろうな。こいつの本当の気持ちを知っておきながら、それを直ぐに暴かなかった自分の甘さに。
それを八つ当たりしてるだけなんだ。自分が嫌になる。
「アークってば!! 聞いてよぉぉぉっ!!」
イライラしながら考え事をしていたので、聞こえていなかったようだ。
振り返るとフローラがボロボロ泣いていた。
「何だよ?」
ぶっきらぼうに答える。
「ごめん。ごめん。ボク……、ボク……、」
「何が言いたいのか分からん」
「お願いだから、一緒に寝て。もう何もしないから」
涙を拭いそう言う。
「着崩したままで良く言う」
「直す。直すよぉぉぉ!」
そうしてきっちり浴衣を着直す。
「これで良い?」
「ああ」
仕方無しにベッドに上り布団に入った。
するとフローラが抱き着いて来る。
「おい! 何もしないんじゃなかったのか?」
「ごめん。これだけで良いから」
そう言ってまたボロボロと俺の胸で泣き出す。
にしても柔らかいものが当たる。それに良い匂いがする。
は~~。ナターシャとしてないから溜まってるんだよな。またビックマグナムがこんにちわしてるし。
「アーク、また大きくなってるよ?」
「煩い!」
暫く泣くと、そんな事を言い出す。
「まだ怒ってる?」
「別に。イライラしてるだけだ」
「やっぱ怒ってる」
「フローラにじゃないが煩い! 今はお前の声を聞きたくない」
「ごめんね。ボク……やっと分かったから」
「あっそ」
「ボク……、ボク……、」
再び泣き始める。
「ボクボク煩いわ! ボクボクってサメのトロ軟骨でも食いたいのか!?」
「ボ、ク、……や、……と、じ……の……ぎも゛ちに゛………………」
「泣きながらじゃ何言ってるか分からん。さっさと寝ろ!!」
頭を撫でてやる。
「うん。ごめんね」
最後にそう言って寝息を立て始める。
「は~~~~~」
俺も何してるんだか。自己嫌悪に陥りそうだ。
もっとフローラの事を考えてやるべきだった。考えなかった結果が八つ当たりだ。最悪だな。
もっとフローラに向き合っていれば、こんな泣かせずに済んだかもしれない。
何が娘みたいな感じで好きだ、だ。これがエーコだったら、もっと確り向かい合っていただろうな。
それから月日が流れる。
フローラの花弁牢獄を誰なら破れるかなんて事をやった。
結果はアンナ、沙耶、胡春。胡春は完全にズルだ。破らず転移。
アンナは闘気の申し子だし分かり切っていた。沙耶も精霊顕現とかチート技を使えるようになったしな。
後はアベリオテスだけが惜しかった。傷は入れられた。もうちょっと精進すればそのうち壊せるかも。
Cクラスは、優秀と言うか才能がある者達が集まっているので、凡人のスーリヤとルドリスは、自信をなくしてるなんて事があった。
二人は凡人ながらに研磨してるので、下手な兵士よりよっぽど強い。だか、周りにもっと凄いのがいると自信もなくすのだろう。
そこで一対多数戦なんてものをやらせた。
ただし、フローラは上位魔法禁止、アベリオテスは魔法剣禁止、アンナは闘気を攻撃に回すの禁止、沙耶は精霊顕現禁止、胡春は転移禁止にした。
すると一対多数戦だと言うのに善戦した。ただスーリヤはフローラに、ルドリスはアベリオテスにどうしても勝てなかった。
やっぱり戦いには相性があると皆、再認識したようだ。
俺が教えられる事も正直少ない。フローラは足腰を鍛え戦場を駆け回りながら魔法を使うようにしろとしか言えない。胡春も同じだな。転移を頼りにせず動けるようになれしか言えない。
スーリヤには槍の扱いなんて基本しか知らないので教えらない。まあ有難かったのは、実はウェンディ先生は、槍の使い手でウェンディ先生が教えられていた。
それにスーリヤなら、もう少しすれば闘気の事も教えられるだろう。突き込みの際に良い感じに闘気が流れているのを感じる。
アンナは、模擬戦すらしたくない。小太刀が折られそうだし。だから、教える事は完全になくなった。
沙耶も精霊顕現禁止状態じゃないと模擬戦はしたくなかった。
なので、俺が直接教えたりしたのアベリオテスとルドリスだけになってしまったり。
勇者達だが、あれから横暴さが減った。クラス対抗武術大会の代表に選ばれた蓮司達が止めてるようだ。
ただマークだけがどんどん孤立して行ってると胡春から聞いた。そして横暴さが減った最大の理由は、沙耶と胡春だったりする。
我がクラスに編入したからだ。クラス対抗武術大会で、Cクラスは目立ち過ぎた。誰もが一目置くようになっている。
そこに編入出来たってのもあるが、二人が実は代表に選ばれてもおかしくない程に強いってのが広まり、ただ威張ってた自分が恥ずかしくなって来たらしい。
他にもアンナが色んなクラスの男子に告白されまくってるなんて事もあった。
平民なのに容姿が良いと言うのも勿論あるだろう。胸も豊満で、廊下を歩いてると視線を集めている気がする。フローラ程ではないけど。
赤い髪で腰まであり背中でリボンと言うお洒落なのもウケが良い。
そして、何よりそんな長い髪で剛毅と戦った時にかき乱す事なく、素手で華麗な試合運びをしたってのが最大の理由だ。
まあ本人としては、毎日毎日言い寄られて辟易としていた。




