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EP.36 学園祭について話し合いました

「もう体調は大丈夫ですか?」

「はい。お陰様で」


 ウェンディ先生は三日後、ご回復されたようで復帰した。

 なので、職員室で今後の事を話す。


「授業なのですが、算術がここまで、歴史がここまで、兵法がここまで………………」


 進み具合を話すと頭を下げた。


「すみません。俺の力不足で授業が遅れてしまいまして」

「………………驚きました」


 ウェンディ先生は目を丸くし、眼鏡の(つる)を押し上げる。


「え?」

「算術は私が行うより進んでいますね」

「まあ算術は、得意だったので」


 実際にはレベルが低いのだが。


「歴史も思ったより進んでいます。私が休んだ事で、もっと遅れているかと思いました」

「ウェンディ先生も俺は戦闘しか出来ない脳筋だと思っていたのですか?」


 ジトーっと見てしまう。


「脳筋とまでは言いませんが、正直に言えば授業が進まないと思いました。すみません」

「実際遅れていますけど」

「それでも思ったよりは全然。それに算術が進んでるので、この時間を他の授業に割り当てられます」

「ありがとうございます」

「それにしても一番意外でしたのが、ダーク先生ともあろう方が、兵法が一番遅れているとは……」

「戦闘訓練が出来るから、詳しそうだと?」

「はい」

「俺、元ですが暗殺者だったんですよね。だから複数人で戦うなんて滅多にしませんでしたよ」

「あ、暗殺者ですか!?」


 ウェンディ先生が目を剥く。

 やっぱ暗殺者ってそんな驚くのか。いや、怖がられるのか。


「もうとっくに足を洗いましたよ? ぶっちゃけ生い立ちが酷くてそうならざるを得なかったんですよね」

「……そうですか」


 とは言え、実際は俺がダークの体を乗っ取ってから、そんな事はしていない。しても斥候くらいだ。


「それで今日はどうします? ウェンディ先生が引き継いで授業を行います? それともまだ本調子でないなら、サポート的な事をしています?」

「ご心配ありがとうございます。でも、大丈夫です」

「分かりました。では、今日はからまたお願いします」

「はい。ああそれと、今日は学園祭について話し合いますから、ダーク先生も意見があれば言ってくださいね」

「分かりました」


 そんな訳でCクラスに向かった。


「あ! ウェンディ先生」

「もう大丈夫なのでしょうか?」

「体調は平気でしょうか?」

「復帰されて何よりです」


 アンナを皮切りにスーリヤ、ルドリス、アベリオテスが続きウェンディ先生の下に集まって来る。遅れて沙耶と胡春、フローラもやって来た。

 慕われているようで何より。


「では、今日は学園祭について話し合います。うちのクラスでは何をやりましょうか?」


 ウェンディ先生が教壇に立つとそう切り出す。


「お好み焼きやタコ焼きがええな」

「却下!」


 俺は胡春の意見を即座に却下した。


「何でや!?」

「食文化が違うでぇ関西人。食べれば人気が出るかもしれないが、まず食べない」

「さようかな?」

「ルドリス、色んな露店とか出店されるだろう。その中で全く知らない食べ物に直ぐ飛び付くか?」

「飛び付きませんね」

「だそうだ」

「……そうなんや」


 胡春が意気消沈し出す。


「では、演劇はどうでしょうか?」


 今度はスーリヤ。


「七人で、でしょうか? あまり派手なのは出来そうにありませんね」


 アベリオテスは乗り気じゃないようだ。


「喫茶店」

「普通過ぎやな」

「展示物」

「退屈です」

「人形劇」

「子供っぽい」


 次々に意見が出るが、即座に反対意見が出た。


「ダーク先生の演舞」

「却下。ボクっ娘は、黙っていましょう」

「黙れとか酷いよぉぉぉ! それに即座に却下しないでよぉ」

「あくまで主役は生徒なんだぞ。まあボクっ娘が俺に服斬り咲かれ裸になる役をやれば考えてやる」

「やだよぉぉぉっっ!!!!」


 涙目で絶叫し出す。いつもの事だ。


「またお戯れが過ぎますわ」

「最低です」

「アンタほんとサイテーよ!」

「アカン教師や」

「ダーク先生、生徒に嫌らしい事をさせてはいけません」


 ウェンディ先生を含む女性陣から非難の声と蔑み目を貰う。男性陣もドン引きしてるし。


「じゃあウェンディ先生に……」

「いけません」


 パシーンといつものように出席簿で殴られる。いや少し久々だな。体調崩していたし。


「はーい」


 その後も何をやるか難航した。


「あのダーク先生、何か意見はございませんか? 破廉恥なもの以外で」


 決まらないので、スーリヤが俺に水を向けて来る。


「破廉恥ってなんやねん!」

「だってダーク先生は、直ぐそう言う発言をなさいますから」

「あっそ」

「それで何かございませんか?」

「王族喫茶」

「王族喫茶……ですの?」

「せっかくこのクラスに王族が二人いるだから、例えばお客さんは、他国の重鎮って設定で、接客をするってのは? まあ決めるのは君達生徒だけど」

「仮にそれに決まったとして、わたくしとアベリオテス王子以外は如何なさいますか?」


 スーリヤが人差し指を顎に当てて首を傾げる。


「調理で良いんじゃない?」

「そうなると、対応はスーリヤ王女と私の二人になってしまいますね」

「それですと追い付きませんわ」


 アベリオテスが難点を言いスーリヤが続く。


「そこでボクっ娘の登場」

「ボクっ娘って言うなぁぁぁ!! そもそも何でボク?」

「姫様のモノマネ得意だろ?」

「えっ!?」


 フローラが固まる。当然だろう。モノマネではなく本物なのだから。

 なんか沙耶と胡春が睨んで来てるな。


「得意? 仮に言葉使いを真似出来ても、いきなり王族として気品を身に付けるのは難しいと思いますわ」


 スーリヤがもっともな意見を言う。


「じゃあ試して見るか。フローラ、姫様モードに入れ」

「本当にやるのぉ?」

「ただのモノマネだ」


 実際は違う。本当の姿になるんだけど。


「分かったよぉ」

「よし! 俺が客としてやって来たとこからスタートだ」


 そう言って、一度教室を出て、再び入る。


「お待ちしておりましたわ、ダーク様。わたくしはこのロア学園国、第二王女フローラ=C=ロア学園ですわ」


 そう言ってフローラは、スカートの端を摘まみ優雅に頭を下げる。

 それだけで、沙耶と胡春以外は目を見張る。

 って言うか『C=ロア学園』って、なんやねん! よく噛まずに言えるな。


「うむ。此度はお招き感謝する」

「では、客室にご案内致しますわ」


 そうしてフローラの誘導で、机に座る。


「こちらが我が国でお出し出来るものですわ。お気に召したものがございましたら、どうぞお申し付けください」


 そう言ってエアーメニューを渡さる。エアーと言うのは実際にあるように見せ掛けているものだ。それを俺は受け取ったフリをした。


「ふむ……では、フローラ王女を所望しよう」

「ダーク様、お戯れが過ぎますわ」


 そう言って手で口元を隠しクスクス笑う。マジで気品に溢れているな。ほんとボクっ娘モードの時とは大違い。


「そうか。フローラ王女を頂けないのは実に残念だ」

「そう言って頂けて嬉しく存じますわ。今後ともどうかよしなに」

「では、ロア学園ティーを頂こう」

「かしこまりましたわ。早速ご用意させますので、少々お待ちください」


 そう言ってスカートの端を掴みお辞儀をする。


「って訳だ。どうだ?」

「驚きましたわ!」


 真っ先に反応したのはスーリヤだ。


「本当ですね。本物の王女を見てるようでした」

「フローラさん、素敵でした」

「あたしもビックリしました」


 うん? ルドリスの奴、フローラに落ちてない? 顔赤いし目がトロンとしてるぞ。

 まあどうでも良いけど。って言うか、ルドリスとくっつけば、俺の方に面倒は来ないし良いかも。


「えへへへ……そうかなぁ」


 フローラが頭を掻きながら照れたように笑う。


「実は、フローラはスーリヤに憧れて一挙一動を見ていたんだって」

「そうなんですの!?」


 スーリヤが目を丸くする。

 まあ見てたって事にしておくんだけど。


「えぇ、まぁ」


 実際は違うので言い淀むフローラ。


「それでもあのような気品があるとは驚きですわ」

「ありがとうございます。スーリヤ王女」

「しかし、これでも三人ですよ。あと最低一人欲しいとこですね」


 アベリオテスが考え込むように言う。


「それならギャグ要員で胡春だな」

「何でや!?」

「関西人だから」

「関西人は関係あらへんやろ?」


 快活な返しが飛んで来る。


「そもそも前から思ってたんやけど関西人ちゃうでぇ。地方であってん同じ日本やねん」

「ああ、関西国だったのは昔か」

「昔も今も日本や!」

「それよりロア学園茶お願い」

「ロア学園茶やな。……………って、何でやねん!?」

「うん? 関西茶しかない?」

「何やそれ!? アンはん、もう帰れや!」


 クラスで大爆笑が起きる。

 胡春は訳が分からず目を白黒させる。


「って感じで、胡春ならギャグ要員になれる。関西弁が良い感じだ」

「乗せられてしもうたっ!!!」


 胡春は頭を抱えながら叫んだ。


「良いですね」

「わたくしもコハルさんなら賛成ですわ」

「素晴らしいですね」

「あたしも良いと思います」

「ボクも良いと思う」

「……………胡春が可哀想よ」


 一人何かボソっと言ってるが、ほぼ全員好意的でCクラスの出し物は『王族喫茶時々関西人』に決定した。

 時々関西人ってなんやねん!?

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