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EP.34 何故か性教育する事になりました

 クラス対抗武術大会後の二日間はお休みだ。武術大会の疲れを癒そうと言うものらしい。

 とは言え約二週間の大会で出場するのは一日だけ。他は別の試合を見るもの。それも勉強になるのだが、見るかどうか自由意思に任されている。

 確り見続ければ二日の休みは大事なのかもな。

 それと本来なら怪我を負う可能性があるので、怪我を癒すのも大事になって来るが、Cクラスは回復魔法があるので関係無い。

 ともかく沙耶と胡春の団体戦を見た後、俺は一週間のんびり過ごした。教師になって一番充実したな。生徒には言えないが。

 で、休み明けにかったりぃなと思いながら、教室に向かったのだが………………ん?

 何で? んんん?


「何で転がいるの?」


 なんかスーリヤの肩を揉んでるし。

 と言うかスーリヤにビビってもう近付かないと思ったのにこれどう言う事?


「姉御の下僕になったっす」


 げ、下僕っ!? は? 意味分からん。


「えっと、つまり大会中スーリヤを奴隷にするとか吠えておいて自分がなっちゃったの?」

「そうっす」


 そうっすって。おいおいおい。

 全員既に教室に集まっていたので、知っていたのだろう。気にも留めていない。


「えっと、スーリヤはそれで良いの?」

「好きにさせておりますわ」


 良いのかよ。


「まあスーリヤが、転とはぁはぁしたいなら、まあお好きに」

「<炎獄よ、我に力を貸し賜え……中位火炎魔法(フレア)>」


 げ!

 ちょっとふざけた事を言ったら中位火炎魔法(フレア)が飛んで来たよ。

 咄嗟の事で一応小太刀で斬ったけど、火の粉が多少かかったし。あちぃなおい。

 まあ無詠唱でも飛ばせるとこを詠唱してくれたお陰で、多少心の準備が出来たけどさ。それでも……、


「酷くない?」

「ダーク先生が戯れた事を仰るからでしょう?」

「いや、だって夜に踊る相手がどうのって言ったのスーリヤでしょう?」

「………………………貴方もわたくしの言葉を一言一句覚えていらっしゃるのです?」


 何かげんなりしたように言われる。


「一言一句じゃないけど、どんな事を言ったかは」

「そうですか……怒りでわたくしは、とんでもない事を言ってしまったのですね」


 失敗したなと言う感じで落ち込んでるし。


「で、転」

「なんっすか?」

「奴隷でも夜のダンスの……」

「ぅん!?」


 めっちゃスーリヤに睨まれた。怖い。

 やっぱりスーリヤを怒らせるのは世界の禁忌だ。


「あ、いや奴隷でも下僕でも良いけど、授業始まったら教室戻りなさい」

「残念っすけど、了解っす。では姉御、帰りにおカバンお持ちしに来るっす」

「……寮まで近いのですがね」


 そう言って転は出て行った。

 ちなみに出て行くまでの間、ずっとスーリヤの肩を揉んでいた。


「えっと……部外者がいなくなったところで話を進める」

「あの、ダーク先生」


 スーリヤがスっと滑らかに挙手をし出す。


「どうした? 肩揉まれて楽になった自慢か?」

「違います! お戯れが過ぎますと、また中位火炎魔法(フレア)を差し上げますよ?」

「あ、はい」

「今日はウェンディ先生は……?」

「体調不良で欠席だ。暫く俺が全ての授業を行う」


 そうなんだよな。休み明けでかったるいのに、オマケにウェンディ先生もいないとか最悪だ。


「あの……ダーク先生にそんな事が出来るのですか?」

「何が言いたい? ルドリス君」

「いえ、ダーク先生は戦闘指導の為に教師として招かれたんですよね? 他の授業は……」

「出来ないってか?」

「……はい」


 言い辛そうに頷く。


「君は俺を何だと思っているんだ?」

「……脳筋」


 ボソっと何か聞こえたぞ。


「デカ乳しか魅力ない奴が何か言ってるな」

「他にもあるよぉぉぉ!!」

「え? 何? 自分で自分を可愛いって思ってる訳?」

「うっ! それは……」


 フローラは顔を真っ赤にし俯く。


「ほんと子供よね」

「ほんまや」


 何か沙耶と胡春がヒソヒソ話してるし。


「何がだ? 沙耶」

「えっ!? 聞こえていたの?」

「俺は元暗殺者って言っただろ? 耳が敏感なんだよ」

「暗殺者ですって!?」


 スーリヤが目を剥く。他の面々も目を丸くしていた。


「元な、元。その辺の話を聞きたいなら、また今度な。で、沙耶……何が子供なんだ?」

「男子で直ぐえっちな話をするからよ。ダーク先生も子供よ。あと男子って直ぐ覗きとかしたがるよね」

「失礼ですね。私はそんな真似はしませんよ」


 アベリオテスを即座に反論しルドリスがうんうん頷いてやる。


「ごめんなさい。そうじゃないのよ。アベリオテス王子とかこっちの人間ではなく召喚された人よ」

「そうですか」

「ちなみにこの沙耶の意見は、スーリヤとアンナはどう思う?」

「いえ、わたくしは殿方がそんな子供とは思いませんわ。何も分かってなかった幼少の頃はそう思っておりましたが」

「あたしも子供と思うなぁ」

「両方予想通りの答えだな。ちなみに俺から言わせれば、たまに男子は子供とか女が言ってるのを聞くけど、実際はそう考えている女のが子供だと思うが?」

「何でよ!?」

「何でや!?」


 二人揃って目を剥く。


「よし! せっかく俺が授業を受け持つ事になったし、軽く保険体育の授業をするか」

「保険体育って何ですか?」


 アンナが挙手して質問した。


「下品な言い方だと性教育」

「要りませんわっ!!」


 スーリヤが声を張り上げる。


「そうだな。アベリオテスとスーリヤは王族教育で良く理解してるだろう。でもな此処には君達にとっては十歳の子供がいるんだよ? アンナも少し教育が遅れているようだし。クラスメイトの為に少し時間を使ってやってくれないか?」


 日本での成人は二十歳。この世界の成人は十五歳。つまり成熟が早いこの世界の人間から見れば勇者達は十歳のようなものだ。


「そうですね。分かりましたわ。ただしあまり過激なのは止めて頂きたいですね」

「私も同意見ですね」

「具体的な話はしないよ。そこまでしたら沙耶と胡春の将来の相手が可哀想だし」

「ふふふ……そうかもしれませんね」


 スーリヤが口元を抑えて笑う。うんやっぱ王女さんとなれば、笑い方が美しいね。


「何か失礼な事を考えていない?」

「珍しく俺の内心を外したな」


 ニヒっ! と、揶揄うように笑う。


「普段からそうだからでしょうぉぉぉ!」

「あのさ勝手に話を進めないでよ」

「ウチもどうでもええわ」

「じゃあ自分達のが何も分からない子供だと認めるかい?」

「それは……」

「……そんな事あらへん」


 二人が言い淀む。


「まあ聞けって。具体的なあれこれを教えるつもりはない。触りだけだ」

「分かったよ」

「わーたでぇ」


 仕方無しに了承した感じだな。


「まず人間には三大欲求がある。性欲と性欲と性欲だ」

「性欲しかあらへんやっ!!」

「それはダーク先生だけでしょうぉぉぉ!?」


 胡春とフローラから鋭いツッコミが来た。


「で、性欲だが……」

「そのまま進めるなぁぁぁ!」

「煩いよ。ボクっ娘」

「ボクっ娘言うなぁぁぁっ!!」

「その性欲は、最初は男の方が強い。溜まると苦しくなったり、病気になったりする程にな。これは本能がそうさせている。だって子孫を残さないと絶滅してしまうから」

「そこが分からないよ。女子が性欲強くたって良いと思うよ。なのに私は興味が無いよ」


 沙耶がそう言って来た。


「それは男からするものだから。女がどんなに嫌がろうとも出来てしまう。逆に女が男を襲っても、余程飢えているか変態じゃないない限りその気にならず、失敗に終わる。この程度の話ならスーリヤ、問題ないか?」

「えぇ。ダーク先生の事ですから、もっと生々しく話すのかと思いましたわ」

「失礼な! 続けるぞ。だから最初は男のが性欲が強い。しかし、やがて女もそれを覚えると相手して貰えないなんて事があると不安でどうにかなってしまいそうになる。たぶん遅れて女も本能に目覚めるんだろうな」


 アベリオテス、スーリヤ、フローラ、ルドリスは知っている知識なのか興味なさそうだ。

 アンナ、沙耶、胡春は恥ずかしそうに聞いていた。

 ちなみに実際の事は俺も知らない。なにせ俺がヤったのはナターシャだけ。そのナターシャを見ているとそんな気がしただけだ。

 たぶん俺も大人の階段を上った気がする。


「つまり、そっちの遊びを知らないで、男を子供だと言う女の方が、俺は子供だと思う訳だな」

「言い方が酷いのではありませんか!? 遊びだとか」


 スーリヤが目を剥く。


「じゃあ伽って言えば良かった? 男の俺がなんて言っても下品だと思うけど?」

「……そうですわね。申し訳ございません」


 スーリヤが素直に頭を下げる。


「一応聞くけど、俺の言った事に間違いはなかったかな? スーリヤ」

「細かい事は、首を傾げる事もございましたが、概ねわたくしが聞いた事と同じですわ」

「それは良かった。って訳で、沙耶と胡春は少しは理解したか?」

「実感はないけど、言ってる事は分かったよ」

「ウチが間違っとったようや。カンニンやで」

「って訳で、少しは俺も授業が出来るって分かったかな?」

「えっちな事だけじゃないのぉ!?」


 ジトーっと見て来たボクっ娘が何か言ってるな。


「あと算術なら余裕だな。はっきり言ってレベルが低い」

「何ですって!?」

「聞きづてなりませんね」


 スーリヤとルドリスが反論して来た。


「じゃあこないだの算術のテスト、沙耶と胡春は何点だった?」

「何で言わないといけないのよ?」

「現状を知って貰う為に必要な事だ」

「分かったよ。100点」

「ウチもや」

「「「「「えっ!?」」」」」


 全員して目を丸くした。

 まあ掛け算割り算しかないレベルだしな。数学と言うより算数。小学生レベルだ。


「このように勇者の世界から見ればレベルが低い」

「でも、ダーク先生はこっちの世界の人間ですよね? 他の大陸出身でも」


 アンナが遠慮がちに質問して来た。


「生まれはあっちだから。それが理由で俺まで勇者召喚に巻き込まれた」


 沙耶、胡春、フローラは事情を知ってるから特に反応しなかったが、他は驚いていたので、生れは日本で、途中からユピテル大陸に転移したと説明した。

 髪の色とか聞かれけど、面倒になったの転移の影響とか適当に誤魔化した。

 まあ嘘ではなしな。


「他のは、まあ上手く授業出来ないかもな。でも、やり様はある」

「どのようにでしょうか?」


 アベリオテスが挙手して質問して来た。


「今は置いておく。何故か保険体育の授業をしていまったが、本当は最初に言っておくべき事があったからな。だから、それは後でのお楽しみにしとけ」

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