EP.27 フィスト・ファングが炸裂しました
さて残りはアンナとフローラ。
どっちも楽勝だな。多少強くなっていても二人なら余裕でいける筈だ。
そう思ってたらアンナと相手の剛毅が出て来た。
剛毅とは豪山 剛毅の事だな。刈り上げ頭で、武器は槍。
能力は気弾。一番能力と武器が合ってないアホだ。アンナは今回は武器無し。本気だな。
「では、副将戦始め!」
「武器はないのか?」
「えぇ」
開始早々会話が始まる。
「それで勝てると? 馬鹿にされたものだ」
「そう?」
それだけ言うとアンナは一瞬で間合いを詰める。
あいつ足にも闘気を流して速く走れるようになってないか?
そして右ストレート。
「がはっ」
顔面にクリーンヒット。剛毅は吹っ飛ばされる。
「くっ! やるな。なら……気道列波」
ほ~気道拳を連発で撃てるようになったか。
三連続打ち出しアンナを襲う。それをアンナは右、左、右とパンチを繰り出し掻き消す。
拳に闘気を集中させたな。
「な、何? 素手で何故掻き消せる?」
「勇者って口ばっかで、下品だから能力の本質も分からないのじゃないかしら?」
アンナも怒ってない? 同じ女としてスーリヤが受けた屈辱で怒っちゃった?
「なんだとぉぉぉ。だったらどこまで防げるかやってみろ! 気道列波」
剛毅が激高し出す。目付きも凶悪になった。殺意に目覚めたって言いたくなるな。剛毅だけに。
まあそんな沸点が低いから能力の本質も分からないんだよ。アンナの言葉を確り聞けよ。
剛毅は闘気をひたすら飛ばし出す。
「馬鹿の一つ覚え?」
めっちゃ挑発してるな。
アンナは、気道拳一つ一つを殴り掻き消しながら剛毅に接近。
「クソ! この」
槍を突き出す。
バシっ!
「なん……だと?」
槍を素手で掴みやがったよ。アンナさんやりますな。
右手で槍をガッチリ掴む。
「クソ! 離せ!」
「クソしか言えないの? 下品極まりない。勇者って一体何なんでしょうね」
「煩い」
って言うか離せとか言ってる間に気道列波使えよ。
相手の片手が塞がってるんだから、全部掻き消せないだろ? 頭悪いな。
バキっ!
そして槍を右手だけへし折った。
闘気をここまで自在に扱えるようになってるのか。増々アルに会わせたいな。
「……何故折れる?」
「だから能力の本質も分からぬ者には分かりませんよ」
「本質?」
「えぇ……貴方も能力を自在に扱えばこのように……」
そっと剛毅の胸に右手で添える。
ズッドーーンっ!
それだけ吹っ飛ぶ。
俺が見せた小太刀を振り上げず岩に当てただけで斬ったのを真似たな。
どこまで天才なんだよ? アンナは闘気の天才、いや化物だ。
「くっ! だったら、気道破弾っ!!」
かめは〇波ですか?
両手の手首より少し上の手根を合わせ指の方を開き特大の気弾を飛ばす。普通の気道拳の四倍はあるな。
「フィスト・ファングっ!」
えっ!? アンナも飛ばしたよ?
拳を突き出しそこから拳の形をした闘気弾が飛んだ。
ここまで出来れば理想だって教えたけどさ、あれから三ヶ月半くらいだよ?
まさか使えるようになるとは思わなかった。
って言うかフィスト・ファングって何? 俺のパクり? 直訳すると拳の牙? 格好良いじゃねぇか。
そのフィスト・ファングが気道破弾と衝突し貫いて剛毅を襲う。
拳の大きさしかないので、その分の穴が空いた気道破弾がアンナに迫る。
「ぐはっ!」
剛毅の方はそれでダウン。
しかし、アンナは両手を突き出しそれを受け止める。
「くぅぅぅ!」
苦悶の声を漏らしつつ抑え込み掻き消した。しかし、両掌が火傷したかのように赤くなっているな。
「<下位回復魔法>」
それを下位回復魔法で回復。と言うか上位火炎魔法まで習得してるのに出番なかった。
まあいずれにしろ圧勝。
「今の凄かったな」
「槍を片手でへし折った」
「どんだけ怪力なんだ?」
「勇者の技も拳で潰していたしな」
「Cクラスの女子こぇぇ~」
「最後なんて勇者と同じ技を出して勝ったぞ」
怪力娘にされちゃったよ。
次でラストか。まあ見る価値低いな。見るまでもなくフローラが勝つって予測出来るから。
って言うかこの学園は誰が勝つかって賭け事ない訳? 全財産Cクラスに賭けて大儲けだったのにさ。
まあともかく最後は蓮司だ。漣川 蓮司と言い能力は炎使いだったな。
どこまで成長したか。それでも上位火炎魔法クラスまでになってるとは到底思えないな。
まあなっていても課題である同じ炎でねじ伏せろは、達成出来るだろ。
って訳で二人が出て来た。今回フローラは杖を持っている。本気を出すからだ。
この大陸には、王家だけの秘密なのかデビルスの秘密なのか魔法の力を少し増幅させる杖がある。ユピテル大陸にはなかったのに。
作り方は三ヶ月間、自分の魔力を流す。他に杖の元となる特殊な枝や、特別な削り方があるらしいが、ともかく自分の魔力を流し続けた事で、自分の魔法に馴染み少し威力を増幅させるとか。
この学園に来て三ヶ月。その三ヶ月間、寮の自分の部屋で作り続けていたとか。で、数日前やっと完成したと俺に自慢していた。
閑話休題
「では、大将戦始め!」
おっと気付いたら始まったな。




