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EP.24 Sクラスとの対戦順を伝えました

「次はルドリス」

「はい」

「落第。来年からEクラス」

「え? 何故でしょうっ!?」

「落第は冗談だ。俺が決める事ではないしな。だが、右手の短剣を投げるのは禁止にしてたぞ。奇策があるとは言え、言いつけを守れないのは宜しくない」

「……申し訳ございません」


 ルドリスが項垂れる。前回も今回叱ってしまったな。


「考えながら戦うように言ったが、違うベクトル……ベクトルは分からんか。えっと、違う方向性で考えるなよ」

「……はい」

「だが、ルドリスはSクラスでの戦いはめっちゃ期待してる」

「え?」


 ルドリスが目を輝かせる。


「決勝は、対戦順は俺が決める事になってる。ルドリスには今までの真価を発揮出来れば素晴らしいものになるのではないかと期待している」

「頑張ります」


 よし! 少しはおだてないとな。嘘でもないし。ルドリスの相手は拓哉だ。


「最後は……あれ? 誰かいたっけ?」

「態とですか?」


 アンナに睨まれた。


「いや~男ってのは可愛い女の子をイジメる趣味があると、どっかのボクっ娘が言ってたので」

「そこで何でボクを出すかなぁぁ!?」

「誰もフローラとは言ってないぞ」

「他にボクっ娘がいる?」

「あ、自分で認めちゃった」

「ダーク先生のせいでしょぉぉ!」


 とまあいつものようにフローラを揶揄いアンナを見る。


「さて、では真面目にアンナちゃん」

「『ちゃん』って言ってる時点で真面目とは思えませんよ。ダーク先生は、ふざけるている時、あたしをちゃん付けで呼びますから」


 気付いていたのか。


「それだけアンナが魅力的ってだけだよ」

「はいはい」


 アンナも俺のあしらい方を覚えて来たようだ。


「では、今度こそ真面目に。いきなり闘気全開にしたっしょ?」

「はい」

「素晴らしいね。闘気はあまり知られていない。なので実力を隠してるようなもの。よって全力を出せる。これほど良い事はない」

「ありがとうございます」

「あと、最初の魔法の後、相手の動きを予測したよな?」

「はい……と言うより魔法の避け易い方向を作って放ちました」

「ほ~そこまでするとは。今回のMVPはアンナだな」

「えむぶいぴぃ?」

「一番素晴らしいって意味だよ」

「まあ……ありがとうございます」


 アンナが花が咲いたように微笑み頭を下げる。

 ボクっ娘は『出た。女垂らし』とか言いそうだな。


「言わないよぉぉぉ!!」

「人の心を読むな」

「顔に書いてるからぁ」


 書いてねぇよ! エスパーめ。


「さて二時間後のは決勝戦。Sクラスが相手だ。対戦順を発表する」


 皆の顔を見回す。真剣な表情で此方を見て来る。


「まず先鋒、アベリオテス」

「はい」

「勇者達は俺の予想では慢心している。よって対戦順は変えて来ない。もし変えられたら作戦がおじゃんだけどな」


 そう言って苦笑し、肩を竦める。


「では、何故アベリオテスが先鋒か分かるか?」

「同じ魔法剣を使うからでしょうか?」

「正解。マークの勇者としての能力は魔法剣だ。だが剣の腕だけなら確実にアベリオテスのが上だ。だから勝機はある」

「はい」


 まだ大剣にこだわっている以上、アベリオテスが勝つだろう。


「次鋒はルドリス」

「はい」

「理由は分かるか?」

「同じ短剣&投擲使いだからです」

「正解。拓哉は投擲の能力を得た勇者だ。が、短剣を全部投げる愚を犯す奴だった。今も変わっていないなら……」

「常に右手の短剣を持つ私に勝機がある」

「そう言う事だ」


 ただ両手でどんどん投げるから手数の問題でどこまで受けられるかだな。


「中堅はスーリヤ」

「承知致しましたわ」

「理由を話す前に、副将はアンナ」

「はい」

「スーリヤは、本当は同じ槍使いの剛毅とやって貰う方が良かった。だが、アンナと転では相性が悪いと俺は感じた。だからスーリヤには転の相手をして貰いたい」

「分かりましたわ」

「正直スーリヤでも厳しいかもしれない。だけど破壊力のある斧を射程外から突ける槍と言うのを加味してスーリヤにした」

「善戦して見せますわ」


 まあスーリヤは予想だが、相手の攻撃に敏感な気がする。

 なので、転の斧を上手く躱すだろう……。


「アンナは槍使いが相手だが、勇者としての能力は気弾だ」

「気弾とは何でしょう?」

「闘気を飛ばす技だ。俺がやって見せただろ?」

「なるほど」

「つまり剛毅は闘気の使い手だ。しかし、槍にまで闘気を纏う事は出来ない。だからアンナで十分相手出来るだろう」

「はい。あたしも頑張ります」


 前のまんまだったら一番楽だろうな。


「大将は……は~」

「何で溜息ぃぃ!?」

「喋り疲れただけ。決して相手がフローラだからじゃないよ?」

「絶対ボクだからだよねぇ!?」

「決してフローラだからじゃないよ?」

「二度言うなぁぁぁ!!!」

「フローラは楽勝過ぎる。逆につまらないだろう」

「相手はレンジさんだったね。炎使いの」

「そう蓮司。楽勝過ぎるので、一つフローラだけは課題を出す」

「何ぃ?」


 出しても楽勝だろうな。


「蓮司を煽って最大の炎を出させ、一度で良いから同じ炎魔法でねじ伏せろ」

「それって上位でも良いって事?」

「ああ。フローラは全魔法解禁」

「うん。やってみるよ」

「全員もう中位以上の魔法を使っても良いが、逆にもう使わなくても良い。フローラが全力を出す布石はもう散々打ったからな」

「「「「「はいっ!」」」」」


 にしてもアレだな。


「胡春と沙耶が編入して来ておいて良かったな」

「そうですね」

「未だにお二人には敵いませんわ。それどころか差が埋まる気がしませんもの」

「私なんて話になりませんね」

「あたしも」

「ボクも」

「いや、アンナとフローラは善戦してるだろ」


 そう言うと二人は首を傾げる。


「タラレバの話だけど、二人が俺の教えを請わなければ今ほど強くならなかった。沙耶はアンナの闘気で叩き潰せる。フローラは魔法で、胡春の転移を封じれたかもしれない」

「実感ありませんけど」

「ボクもだよ」

「まあアンナが胡春、フローラが沙耶だったらお話にならなかったかもしれないけど」

「それは分かります」

「そうだねぇ。サヤさんには勝てる気がしないよぉ」


 まあタラレバの話は此処までにして……、


「俺の予想が正しければ厳しいのはスーリヤだけだ。だが全員油断せず決勝戦に望もう」

「「「「「はいっ!」」」」」

「俺を首にしない為にな」

「ダーク先生は余計な事を言い過ぎなんだよぉぉぉ!」


 フローラが絶叫した。それによりドっと笑いが漏れる。


「そこが素敵なんだろ?」

「何でだよぉぉぉ!?」

「だって今ので肩の力抜けただろ?」

「それを自分で言うなぁぁぁ!」


 全員笑いながら肯定するように首を振ってるし。


「ダーク先生、ありがとうございます」

「え? いきなり何ですウェンディ先生? 俺に惚れたんですか?」

「それはありません。ではなく、生徒達をここまで引っ張ってくれて」


 それはないってはっきり言われたよ。しょぼへぼんだよ。そこまで断言されると悲しくなるな。


「まあそうするように言われて学園に誘われましたからね」

「だとしても、私では確実にAクラスに勝てなかったでしょう」

「それはないでしょう。チョビヒーゲに口説かれたと聞いて皆怒ったでしょう? そんな信頼されている先生の指導ならAクラス勝てましたよ」

「ありがとうございます。でも、チョビーゲ先生ですよ」


 うん、分かってるよ。

 まあともかく全ては決勝戦だ。オッサンが、どれくらい成長したか品定めしてやるよ。

 くくく……。


「ダーク先生、悪い顔になってるよぉ」


 何か聞こえた気がした。

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