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EP.19 胡春は魔法を習得出来ませんでした

「それで炎の精霊、沙耶は精霊に好かれる性質って言ったけど雷の精霊には嫌われたぞ」

《ニンゲンにもいるでしょ~? 万人に好かれるようなカリスマを持ったニンゲン。でも、そのニンゲンを全ての人が好きなると思う~?》

「なるほど。好きになってくれない精霊もいるのか。沙耶、雷の精霊によっぽど嫌われたんだな。能力があるのに」

「再び言わないでよ。悲しくなるよ」

《ボクは好きだよ~》

「ありがとうね、メラ君」

「じゃあ炎の精霊、沙耶に惚れこみ沙耶が呼べば来てくれる精霊を紹介して貰う事は出来る?」

《出来るけどあまり多いとサヤの負担になるよ~》


 と、会話してる中、まだひたすら沙耶の周りを周っている。まあ沙耶と直接話す時だけは止まるのだけど。


「負担?」

《今回、ボクとの契約の繋がりが出来た。だけどそのせいで微量ながらサヤから常に魔力を貰ってるんだよね~》

「つまり、何十体も契約してしまうと散りも積もり大量の魔力を取られてしまう?」

《そう言う事~》

「じゃあ何体なら負担にならない?」

「ん~~~。サヤの素質によるけど最初は三体で様子を見た方が良いかな~」


 三属性か。それでも自由意志がある三属性の魔法を使えるのは凄いな。


「残り二体呼んで貰うのはどうかな? 沙耶」

「そうね。それが私の力になるのなら。前みたいにダーク先生のお荷物は嫌だし」

「そうだね。ナイズバディが拝められたなのらともかく……。は~」

「……あからさまにガッカリって態度しないでくれる? 見ておいてそれ失礼過ぎない?」


 目が怖い。


「まぁ荷物とは思ってないけど」

「でも借りっぱなしって嫌いなのよ」


 別にどうでも良いんだけどな。


「って訳で残り二体紹介してくれる?」

《良いよ~》


 そう言って炎の精霊がパっと消える。

 暫く経ち二体の精霊が現れた。

 一体は竜巻。逆三角錐のような形で風が渦巻いており、頭だけがひょこっと出ている。風の精霊かな?

 もう一体は白塗り。全身白い。白無垢のようなのを着ている。


《俺は風の精霊だ。ニンゲン……いやサヤ、宜しくな》

「宜しくお願いします。貴方も名前付けて良いかな?」

《おお。格好良いの頼むぜ》

「アネモイ君」


 ギリシャ語ですか?


《今日から俺はアネモイだぜ》

《次はウチん番やね。ウチは癒しん精霊たい。どげんぞ宜しくお願いするけんね》

「宜しくお願いします。癒しの精霊ですか。では名前はティカルさん」


 さん、ってこっちは女性体と判断したのか。まぁ白無垢だし。

 と言うかティカル? またギリシャ語? ファーマシューティカルから取ったのかな?


《ではウチは今日からティカルたい》

「あの癒しの精霊、前に俺に声掛けた?」

《あん時んニンゲンか。あん時サヤに死なれたらおおじょうする事になりよったからな》

「どう言う事?」

「前に沙耶を助けた時に今まで契約出来なかった中位回復魔法(ギガ・リカバリー)が契約できたんだよ。どうやらこの癒しの精霊が特別に俺と契約してくれたみたいだ」

「そうなんだね。ティカルさん、その節は助けてくれてありがとね」

《礼はよかたい。ウチは、ただサヤと会って話したかっただけたい》

「なんでぇ博多弁何やねん?」

《雅やろう?》


 胡春が聞くと、どうでも良い理由が帰って来た。


《これで三体の精霊とサヤは契約できたよ~。困ったらいつでも心の中で呼べば駆け付けるから~》


 と、メラが言う。


「あ、契約とか無しに話したいからって理由で時の精霊を呼ぶ事は出来る?」

《出来ない事もないけど~理由は~?》

「前に話した事があるんだけど続きを話したいなって」

《話した事ある? キミからは別の精霊との繋がりを感じるよ~? ルシファー大陸の時の精霊と話した事あるの~?》

「いや、ユピテル大陸の」

「それは無理だよ~。ボクが呼べるのはルシファー大陸の精霊だけだよ~」


 そうなのか。残念。


「沙耶、まずはどうにかして俺がいた大陸に渡る術を考えないと話にならないようだ」

「そのようね」

「あ、もし沙耶がユピテル大陸に行ったら君達どうするの? このルシファー大陸だったか? そこから離れられるの?」

《そこは星々と相談するよ~。ボク達の代わりの炎、風、癒しの精霊を誕生させて貰うよ~。そして、サヤに着いて行くさ~》

「なるほどな」

「ダーク先生が言った通り星々って神みたいな存在なんだね」


 と、沙耶がしみじみと溢す。そうして精霊達は姿を消した。


「次は胡春の番だ」

「待ってたんや。やっとウチも魔法を覚えられる」

「じゃあ脱いで」

「何でや!?」


 胡春が目を剥く。


「沙耶は胸を晒したから、能力が分かったんだぞ」

「あんたサイテーよ。正確には死に掛けたからでしょうよ!!」

「そんなん嫌に決まってるやろ? そもそも契約に何の関係がある? ウチの能力とも関係あらへんやろ」

「俺が見たいからに決まってるだろ!」

「どこまでぇ鬼畜なんや?」


 逆ギレしたら、胡春が頭を抱え出した。


「冗談はここまでにして。そこの小さいのを揶揄ったのだから、同じようにしないと不公平かな~っと」

「小さい言わないでよ! アンタほんとムカ付くよ」

「さっき礼をゆうたのがアホらしいやねん」

「って訳で、沙耶も使ったカンニングペーパーに書いてる中二病台詞言ってみようか」

「わーたでぇ」


 結果から言って惨敗。

 風や土も試したが全部ダメだった。お陰で胡春がブルーになっている。沙耶も何て言って良いのか困っていた。


「ショックや。せっかく面白そうって思ったやけど」

「転移って超希少だからな。それだけも、かなりズッコいけどな」

「そうなん?」

「少なくても俺がいたユピテル大陸では、使い手は一人もいなかった」

「せやけど、それだけぇってなんか寂しいわ」

「沙耶、ちょっと炎の精霊を呼んで」

「え? うん。メラ君!」

《呼んだ~?》


 一瞬ピカーンと光ると人型の炎が現れた。炎の精霊だ。その炎の精霊に俺は話し掛ける。


「聞きたい事があるんだけど」

《なんだい?》

「胡春が、精霊契約全部失敗した。理由を教えて貰える?」

《それは出来ないよ~。そこまでの肩入れは星々が定めたルールに反してるんだ~》

「そこをなんとかって言ったら?」

《教えてる最中にボクが星々に消滅させられるね~》

 

 炎の精霊が肩を落としたかのようにユラユラ揺れる。消滅とか怖いなー。

 まあある意味カンニングだしな。精霊契約は何を理由に契約してくれるか分からないから。


「じゃあやっぱり時の精霊を呼んで貰う事は?」

《理由は~?》

「胡春は、たぶん時空魔導士の才がある。だけど俺は時の精霊との契約の言霊を知らない。それを聞きたい」

《まぁ精霊本人が来れば言霊は要らないけどね~。その場で契約するか否かを決めるから~》

「なら……」

《だけど止めた方が良いよ~》


 俺の言葉を遮り、きっぱり言われてしまう。


「何で?」

《時空魔法は、制御が難しいんだよ~。失敗すれば大変な事になる。だから……》


 炎の精霊は、胡春を指差す。


《キミは、転移魔法をもっと完璧に使えるようになった方が良いよ~。他のを覚えるのはそれからだね~》

「納得いかないけど、わーたでぇ」

「ちなみに失敗すると例えばどんな事があるんだ?」


 興味本位で聞いてみた。


《例えば、自分がいる場所を半次元ズラす絶対防御魔法があるんだけど~、制御に失敗すればズレた次元から出られなくなり、この次元の物に干渉出来なくなるよ~》


 こわっ! それは怖いわ。

 って訳で、残念ながら胡春は転移魔法だけしか、今は使えないな。


《でもヒントだけはあげるよ~。キミは、他の魔法も使える~。だけど今は契約出来ない。その理由を伝えるのは星々の定めたルールに反するから言えないけど、絶対に契約出来ない訳じゃない。その理由を自分で見つけると良いよ~》


 そう言って炎の精霊は消えた。

 さて、残りの時間どうしようかな。

 一限目は俺、沙耶、胡春を審議する為に時間を使った。

 二限目は、精霊契約に時間を使ったが少し余ったな。

 そして、三限目はCクラス全員の戦闘訓練の時間なので、皆此処に集まってくる。なので、それまでの何にしようかな。

 ならクラス対抗武術大会の話でも二人にしておこう。


「沙耶、胡春。クラス対抗武術大会の事なんだけど、代表に選ばれるのは何人か知ってる?」

「五人でしょう?」

「そやね」


 そう、五人だ。この五人は有り体に言えば、目立つので上手く行けば成績が上がり、二学年に上がる時にクラスのランクが上がり易くなる。


「じゃあ残りは?」

「団体戦やな」


 そう、団体戦なのだ。残り全員が出場して、入り乱れた戦いをする。

 クラスによっては人数が少ないので、団体戦では人数が出せない。よって目立てるかもしれないが、人数が多いクラスに当たれば囲まれてボコられる可能性のが高い。

 だから、基本的には個人戦に選ばれるように、大半の者が頑張ってる訳だな。


「個人戦には出さないつもりだけど、そうなると二人団体戦に出て貰う」

「そうなるよね」

「気乗りせんなぁ」


 二人が溜息を溢す。


「でも、出るからには全員叩き潰して貰うよ」

「二人だけで?」

「無茶や」

「いや、あと二ヶ月以上あれば一人でも余裕な程に仕上げる事は可能だ。俺のクラスに来た以上やって貰うよ」

「やれるだけはやるよ」

「しゃーないな」


 渋々って感じだな。


「二限目の残り時間、作戦やこれからの鍛錬に付ついて話す。特に沙耶は精霊顕現とかインチキ能力を手に入れたから負担があるかもしれないけど」

「インチキ言わないでよ! アンタほんとムカ付くよ!!」

「ただ、精霊顕現は人前で絶対に使うな。アレは誇張無しに反則だし、何があるか分からない。デビルスの連中なんて目の色変えて捕まえに来るかもしれない」

「うっ! そんな凄いものなのね」

「沙耶はん、えらいもん手に入れてもうたぁ」


 沙耶がげんなりし、胡春が同情の眼差しを向けていた。

 てか、人の事は言えないだろ。デビルスの馬鹿連中は胡春の凄さ丸で理解していないが、転移と空間把握の能力はヤバ過ぎる。


「クラスの皆にも教えるなら、時期を見た方が良いな」

「分かったよ」

「代わりに闘気を色々教えるよ。まあ沙耶は自分の闘気を感じ取る段階だから、教えられる事は少ないけど」

「頼むね」

「それでも細かい事を覚えて行けば精霊顕現とか使わなくても余裕で、一人で団体戦に勝てる力がある」

「そうかな?」

「勿論、これは代表五人がいないからだけど。クラス最強の五人がいれば厳しいかもね」

「うん」


 やはり自信なさそうだ。今はそれで良いけど。


「まあでも実際は、胡春と二人だから、そんな気負う事はない」

「そやね。ウチもおる」

「作戦だけど前衛は胡春、後衛は沙耶」

「何でよっ!?」

「何でやっ!?」


 二人揃って目を剥く。まあ当然だろ。胡春は弓なの支援系の武器だ。


「後で戦い方を教えるけど、理由はSクラスまで力を隠す為だ」

「隠すまでもなく、分かってると思うよ? 精霊顕現を使わないなら尚更」

「そやな」

「だから、胡春には二つの技を覚えて貰う。覚えるまでが大変かもしれない。試合では沙耶に負担が来る作戦かもしれないが、頑張ってくれ」

「分かったよ」

「その技がなんやねんか知りまへんがやれるだけぇやりまっせ」


 こうして沙耶と胡春に作戦や、胡春が覚えて貰いたい技を伝えた。

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