EP.18 精霊が顕現しました
「あれを忘れたら沙耶の能力は分からないままだっただろうな」
「えっちな事なら能力なんていらないわよ」
「そう言う発想するって事は沙耶の方が……」
「言ったら薙刀で後ろから刺すよっ!」
「武器持った沙耶はんを怒らすってか怖いもん知らずやな。日本でぇは、どなたはんも敵わなかったんやけど」
胡春が何かクスクス笑っている。
「で、そこから何で能力の察しが付くのよ?」
「あの時、俺も声が聞こえたから」
「そう」
「あれから声は?」
「たまにね。やっぱり微かによ」
「『ダークに抱かれろ』って声を聞こえるだろ?」
「聞こえないわよ」
「ダーク先生もひつこいなぁ」
そこで魔法陣を描き終わる
「よし、出来た」
「五芒星の魔法陣? これをどうするのよ?」
「ベッドを……」
「真面目に言いなさいよ」
遂には、薙刀を抜かれ後ろから突き付けられた。
「精霊と契約」
「精霊? 契約するとどうなるのよ?」
「この世界を形作っている精霊と契約して魔法を使えるようにする」
「私も魔法が使えるようになるの? それは嬉しいな」
「そらウチもか?」
二人の声音が期待からなのか弾んでいるように感じる。
「契約成功すればね。才能によるから失敗する事もある。俺も成功してるのは下位ばかりだし」
「ちなみにCクラス全員も?」
「使えるね。中でもフローラがズバ抜けた才を持っている」
「フローラ様が……」
「様?」
「呼び捨てにし辛いよ」
「しないとそこから悟られる」
「ふ~~ん。随分とお姫様にご執心ねぇ。もうベッドでの講座とやらはしてあげたのかしら?」
「そらウチも聞きよったい」
嫌味ったらしく笑って来てるな。
「何? 焼きもち?」
「違うわよ」
「顔赤くし言われても説得力ないぞ」
「怒らせるから、赤くなったんでしょう?」
「残念ながらしてないな。もう直ぐ十ヶ月俺の女に会ってないから誰かで発散したいとこだ」
「そう言えばもう召喚されて十ヶ月ね」
「女? ダーク先生、彼女おったの?」
胡春が興味津々に聞いて来た。
「まぁね」
「こないな、どエロなのに?」
「うっさいわ! まあどエロでも良いや。沙耶で発散するから」
「嫌よ」
「まあ俺も大きさから言って胡春のが良いかもな」
「ウチもお断りや!」
「悪かったわね。小さくて」
「だったらくだらん事を言ってないで始めるぞ」
「言ってたの誰よ?」
「始めようとしたのにフローラとベッドがどうのって言ったの沙耶だぞ」
「うっ!」
あ、押し黙った。
「ほれカンニングペーパーも用意してやったぞ。魔法陣の上で読め」
「我、契約を結ばん……我に汝の力を示せ……。ねぇ? 中二病?」
「知るか。言霊の内容に文句があるなら星々に言ってくれ」
「何で星々?」
「この世界の神みたいなのが星々だから」
「そうなの?」
沙耶が目を丸くする。胡春は胡春で、やっと始まるんのかと言わんばかりに目を見張ってる感じがした。
「だから星々の世界と呼ばれている」
「そうなのね」
「そうやったの」
「星々は世界を見守り、精霊は世界を形作る。これがこの世界の法則」
「詳しいね」
「時の精霊と話したからね」
「あ、それとコンタクトが取れれば帰還出来るって言ってたね」
「そう。前に話した時に日本に、元の自分の体で、好きな時代に帰してあげるって言われた」
「断ったの?」
「引き篭もりしてるって言っただろ? あまり良い思い出なかったしね」
「じゃあまた話せば?」
「どうやって? 前回は一方的だったし」
「そう」
残念そうにし出す。
「俺の感が正しければ沙耶の能力は時の精霊とも話せる」
「ほんと?」
「感が正しければな」
「少しは期待するからね」
「俺の感が正しければ魔法習得だけじゃ話は終わらなくなる」
「どう言う事よ?」
「それはやってみれば分かる。感が外れても魔法習得出来る」
「そうね」
「才能がなければ全部無駄だけどね」
にしししと悪い笑みをしてやる。
「縁起でもない事を言わないで欲しいよ」
「全部無駄だったら大人しくベッドの……」
「い・や・よっ!」
「そろそろこのネタもつまらなくなって来たか」
「最初からつまらないよ!」
「またネタに走るんやな。ウチは期待してウスウズしとるんやけど」
胡春は胡春で、なんか溜息を付いてるし。
「沙耶は好きな人でもいるのか?」
「え? いきなり何よ?」
「いや、俺が知る限り沙耶だけなんだよ。頑なに帰りたがってるの。だからそう言う事なのかなって」
「べ、別にいないわよ」
「本当に? 顔赤いぞ? いるのか? そりゃ帰りたいよな」
「いないわよ。こういう話は慣れてないだけ。だからって貞操あげないわよっ!」
「いらんわ! 小さいわ!」
「小さいは余計よっ!」
沙耶が目を剥く。
「沙耶はんは、イジるとこないな面白かったやな」
しみじみと呟いてる人もいるな。
「よし! そろそろ緊張も解れて来たな?」
「……気付いていたの?」
「まぁね。最初は来る前に言った下ネタが原因かと思ったけど、違う気がして来てな。今まで分からなかった能力が分かるかもって考えたら緊張が走ったのかなって」
「目端が利くのね」
いいや、そうではない。
「沙耶が分かり易いだけ」
「……恥ずかしいわね」
「ただまぁ俺はトーク能力とかないから結局下ネタに走ちゃったけどね」
肩を竦めてしまう。
「そやね。ダーク先生はどエロやし」
「確かに前からダーク先生は下品な事しか言えないよね。でも、ありがとうね」
「じゃあ魔法陣の上に立って中二病台詞言ってみよう」
「中二病台詞……やる気削ぐ言い方ね!」
そう言いつつも魔法陣の上に立ちカンニングペーパーを読み始める。
『我、契約を結ばん……我に汝の力を示せ……』
ドーンっ!
沙耶が吹っ飛ばされる。
「いったぁ」
「なんやっ!?」
「雷の精霊に嫌われたな」
「じゃあ雷の魔法は覚えられない?」
「根性を試してるのかも? 何度もやる気概に認める事もある。精霊は何を見て契約してくれるのか不明」
「そう……でも、こんないきなり吹っ飛ばされるの怖いし痛しやりたくないよ」
「時間もないし三回ダメなら次行くよ」
「三回ね」
再び魔法陣の上に立つ。
『我、契約を結ばん……』
ドーンっ!
また吹っ飛ばされる。さっきより速い。
「ほんと痛いんだけど」
「痛そうやな。いけるでっか?」
そして再び魔法陣の上に立つ。
『我、契……』
ドーンっ!
速っ!
速攻吹っ飛ばされたぞ。
「何なのよ!」
「よーーーーーーっぽど嫌われたな」
「溜めて言わないでよっ!」
「じゃあ次行こうか、雷なんて焼き尽くす炎で恨み晴らせ」
「意味分からないんだけど」
「はい、カンニングペーパー。それ読めば分かる」
しょっぱなから不安を感じる開始だったな。俺の感が外れているのかもな。
沙耶が魔法陣の上に再び立つ。今度は炎の精霊との契約だ。
『我、契約を結ばん……我に汝の力を示せ……我が捧ぐは心、雷をも焼き尽くす爆炎を……我に与え賜えーっ!!』
一発で成功したよ。
うん? って言うか様子がおかしい。
本当なら、ここで上昇気流が上がる筈。なのにな無い。
それにやたら魔法陣が光ってる。やがて目が開けられないくらい光が強くなった。
「眩しいー!」
「目ぇを開けていられへん!」
沙耶と胡春の叫び声が聞こえた。
やがて光が収まり目を開ける。
《や~~っとボクを呼んでくれたね》
目の前に人型の炎がいる。
目と口だけ風穴を空いて反対側が見えるが、それ以外は四肢から髪にいたるまで燃え盛っている。
「え? 何?」
沙耶も驚きに茫然としている。
「えっと、炎の精霊さん?」
《そうだよ~》
「アーク、これどう言う事よ?」
驚きのせいか俺の呼び名が戻ってるよ。
「沙耶の能力は精霊と会話する事だったって事だよ」
「何それ?」
意味分からないって感じの顔だな。
《正確には違うよ~。精霊に好かれる性質を持ったニンゲンだね。それに会話する能力ってのだったらキミとは話していないでしょ~?》
炎の精霊が沙耶の周りをクルクル周りながら言う。
まあ確かにそれなら俺とは話をしないわな。
「やったな。精霊に好かれるんだってよ」
「ごめん。頭がついて行けないよ」
「沙耶はん、ごっついなぁ」
沙耶は目を丸くし、胡春は驚きで目を見開いている。
《やっと呼んで貰えたのに自覚が少ないのも悲しいな~》
「じゃあ俺から色々聞いても良いかな?」
《近くにそのニンゲン……サヤがいるなら良いよ~》
「まず沙耶は炎の魔法を使えるようになったの?」
《使えるけど効率悪いね~。ボクを顕現させた方が効率が段違いに良いよ~》
「つまり、自由意志を持った炎を操れる感じかな?」
《そんな感じかな~》
それはまた凄いな。
「じゃあ魔力使用率はどうなる?」
《少しならボクの力は少ししか振るえないね~。多くくれるならかなり暴れられるよ~》
「効率って言ったけど普通のフレイムと比較してどんな感じ?」
《フレイムと同じ魔力で1.5倍の力になり、自由自在に動くよ~》
やばいなそれ。
って言うか話ながら沙耶の周りをまだクルクル周ってるんだけど。余程沙耶が好きなんだ。
「とんでもないものを身に付けたな沙耶」
「それは分かるんだけど……」
「そろそろ頭が動いて来たか?」
「まだちょっと」
「沙耶の能力は精霊に好かれる事。でも好いた相手が淡泊な反応だったらどう思う?」
「うっ! 嫌だかもね」
「じゃあ頑張って頭を動かして炎の精霊と向き合わないと」
《そうしてくれるとボクも嬉しいな~》
「つまり貴方は私の味方で、いつでも来てくれたりしてくれるの?」
お! 頭が動き出したか。良い質問だ。
《そうだよ~。キミが心の中で呼べばいつでも駆け付けるよ~。ただしこの世界にいる時のみだけどね~》
「そう。じゃあこれから宜しくね」
《よろしく~サヤ》
「何て呼べば良い?」
《炎の精霊のままでも良いし~好きに呼んでも良いよ~》
「じゃあメラ君」
「ゲームやない」
胡春は俺と同じ事を思ったようだ。俺もドラ〇エを連想したし。
《うん。今日からボクはメラだよ~》
ノリ良いな。
「じゃあメラ」
《キミはダメ》
「あ、はい」
「メラはん、ウチは?」
《キミもダメ》
「しゃーないな」
二人揃ってすげなく言われっちった。




