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EP.08 Cクラスの実力を見ました

 そう言う訳でやって参りました。Cクラス専用修練場。さて、ではまずはフローラからだな。


「フローラ、これを」

「何?」


 フローラに訓練メニューが書かれた紙を渡す。


「反復横跳び、走り込み、走り幅跳び……どれも足腰を鍛えるようなものだね」

「お前さ、魔法無しだと戦えるか?」

「無理だね。そう言う訓練をして来なかった」


 次第に俺はフローラに近付き皆に聞こえないように話し掛ける。


「魔法は暫く人に見えるとこでは禁止」

「そうなるね」

「自己鍛錬の間、中位クラス以上使用禁止」

「えっ!?」

「良いか? この訓練メニューこなしながら、下位を苦なく連発出来るようにするんだ」

「難しいね」

「走腰を鍛えるのが中心だから両手が空いている。って事は、理屈の上では出来るだろ?」

「そうだね」

「これが、後々フローラの実力を伸ばす布石になる。確りやっておけ」

「うん。分かったよ」

「確りやってたら、足をベタベタ触り確かめてやるよ」

「確かめるなぁぁぁっっ!!」


 コソコソ話していたのだが、突然フローラが絶叫し出したので、全員がギョッと此方を見て来た。

 フローラとの話も終わって、丁度良いし皆に話し掛ける。


「フローラの実力は知ってるから足りない物の訓練メニューを与えた」


 実際は知らないけど。

 上位まで使える事は聞いているが実戦で、どの程度役に立つか知らない。だが、この場でそれを見る訳には行かない。

 まだ皆には精霊契約の儀式を教えていないのだから。

 って訳で今は、皆の実力を知るのが先だ。


「次は、皆の実力を見る。自己紹介した順番に俺に掛かって来い。殺す気で全力でな」

「では、私からだな。ダーク先生宜しくお願いします」


 そう言って剣を構えるアベリオテス。王子なので礼儀正しいな。

 あ、そう言えば確認しないと。


「おっと、その前に聞きたいんだけど、俺は赴任して来たばかりだしな。王子と呼び恭しくするべきなのか?」

「いえ、アベリオテスで大丈夫です。卒業後ならともかく在学中では立場は先生のが上と考えて頂いて結構です」


 学園の運営凄いな。

 卒業までは、先生のが立場が上なのか。それならやり易い。


「分かった。では来い」

「先に仕掛けさせて頂きます」


 そう言ってアベリオテスが剣を振り上げ突っ込んで来た。

 単純だな。そのまま振り下ろすって丸分かりだ。受けるまでもなく躱そう。


 ギーンっ!


 だが、躱せなかった。正確には躱すのを止めた。

 振り上げた剣を振り下ろすと見せ掛けて、一瞬で右横に持って行ったのだ。

 速い! と、言っても学生にしてはと、但書が付くが。

 そして、横一文字に斬り掛かって来た。俺は、そんな動きをしたので受けたくなったと言う訳だな。

 小太刀を一振りを逆手持ちで抜き防ぐ。


「ダーク先生の武器は珍しいですね」

「そうか?」


 剣と小太刀を合わせたまま話し始める。

 勿論その間、アベリオテスは力を籠め振り切ろうとしている。

 逆手持ちなので力は順手より入れ辛いが、それでも学生に力負ける気はサラサラない。


「しかも、本来の戦闘スタイルは二刀流ですか?」

「ん? そうだな」

「では、まずは二本目を抜かせる事から、始めないといけないのですね」

「だな」


 それだけ話すとパっと離れる。

 今の一合で自分に必要な事を見抜き確認する手腕は見事。

 その後、攻防は続く。

 と、言っても俺にはお遊びみたいなもので、受けたのは最初の一合だけで、後は避け続けた。

 アベリオテスは実直に剣の鍛錬して来たのが良く分かる。剣の腕だけなら、恐らく勇者なんて話にならないだろう。

 そして、剣筋には時折フェイント混ぜる事も出来る。こいつはこのまま伸ばせば良いだろう。

 それを確認出来たとこで止める。


「そこまで」


 アベリオテスの動きがピタっと止まる。


「二本目を抜かせるどころか、二撃目から全て躱されましたね。感服しました」


 王子なのに、こう言う言葉を言えるのは美徳だな。


「アベリオテスの剣は、実直に鍛錬して来た事がよく伝わった。このまま精進すればより強くなれる」


 アベリオテスが目を丸くしだす。

 まあ俺が、子供を相手にするように全て躱したから、まさか褒められるとは思っていなかったのだろう。

 やがて微笑を浮かべ……、


「ありがとうございます」


 と、言ってお辞儀をした。

 こう言うとこも美徳だな。王子なのに。

 って、俺はどんだけ王族に悪いイメージ持ってるんだ? エドだって良い奴じゃないか。

 内心苦笑してしまう。


「では、次」

「わたくしですね」


 そう言って剣を構えながら前に出たのはスーリヤだ。


「最初に言っておきます。胸部に変な視線を送らないでくださいね」


 まだ言ってるのか。


「では、俺も言っておこう。戦闘中変な視線を受けても、例え服が斬り咲かれ丸見えになろうとも、その場では羞恥心を出すな。その場で出すのは愚の極みだ」

「……心に留めておきましょう」


 そう言って、開始したスーリヤとの戦い。

 まず来たのは突きの応酬。見事だな。これだけ鋭く素早く連続で突きが出来るのだから。俺は全て躱していたが、そう感じた。

 勿論突きだけではなく斬撃も繰り出す。たまには受けねばと小太刀で防ぐ。

 すると、スーリヤはパっと離れた。何だ? 今の違和感。

 試すか。


「次は、こちらから行くぞ」


 そう言って接近して小太刀を上段を振り下ろす。ゆっくりだったので当然剣で防がれた。

 しかし、またパっと離れられた。

 男嫌いか?

 そんな感じで、数分やり合い終了を告げた。


「そこまで」

「ありがとうございました」

「突きは目を見張るものがあったぞ」

「全て躱されましたけどね」


 自嘲気味に返される。


「経験の差だ。だが、それをそのまま伸ばせば並の兵士数人相手取っても遅れは取らないと思うぞ」

「心に留めておきます」


 また、それか。本当に留めてるの? 流してない? 王族だし。おっとまた王族を偏見で見てしまった。

 ともかく本当に留めて欲しいね。


「では、次」

「私ですね」


 次はルドリスだ。

 ほう。短剣か。これはまた珍しいのを。

 え? お前が言うなって? まあ小太刀も珍しいけどさ。

 そう言う事ではなく戦いの場で短剣一本とはリーチの差で厳しいんだよ。

 二股クソ野郎のように二刀流なら手数があるので、問題にならないだろうけど。


「では、行きます」


 速い。一瞬で距離を詰めた。

 短剣を使うだけあってシーフタイプか?

 試すか。俺は短剣の斬撃が当たるギリギリのとこでバックステップ。

 するとまた一瞬で距離を詰められた。それを態と何度か繰り返す。

 すると、短剣を投げ出した。

 おい。一本しかないのだろ?


 カーンっ!


 それを小太刀で弾き明後日の方向に飛ばす。

 じゃあ丸腰で何をするのか見ようか。俺から斬り掛かる。

 しかし、躱される。

 学生相手なのでゆっくりやったと言うのもあるが、ルドリスの目が良い。

 そして、短剣を拾いに行く。

 もう一度投げさせようと誘うようにバックステップを繰り返す。

 そして再び短剣を投げる。正確に当てに来ているな。

 こいつ投擲技術があるのに短剣一本かよ。実に勿体ない。

 次は拾わせないように短剣への進路を塞ぎ小太刀を振るい続ける。

 躱して一気に取りに行くかと思えば俺の動きを見ながら短剣へと距離を徐々に詰めていやがった。

 面白い。こいつはやるな。


「そこまで」

「ありがとうございます」

「面白い。実に面白い。鍛え甲斐がありそうだ」

「……はい、お手柔らかにお願いします」


 少し悪い顔になっていたので、ルドリスが引いていた。

 って訳で次行くか。ラストだな。


「じゃあラスト」

「はい、宜しくお願いします」


 ラストは髪の長いアンナ。

 あんな髪じゃ動き辛いだろうな。で、武器は細剣。

 レイピアって程でもないけど細い。まあ女の子だしな。そうして開始した。

 一撃目は態と受けるか。


「うっ!」


 何だ? 重い? 細剣なのに重い。

 しかもアンナも強く振ったように思えない。

 気になり避けずに防ぎ続けた。やはり重いな。


「はぁぁぁっ!」


 気合の咆哮とともに一閃。

 まずい! 俺はそう直感した。

 そして、そう思った瞬間機械的に左手が動き二振り目の小太刀を抜いた。


 ギィィィィィィンっ!!


 小太刀をクロスにして挟み込む形で細剣を受けた。今のは二振りなければ俺が力負けしていたな。

 だが、なんとなくこいつの力が分かった。


「そこまで」

「ありがとうございます」


 小太刀に挟まれた細剣を抜きお辞儀した。


「凄いな。ダーク先生の二本目を抜かせるなんて」


 アベリオテスから称賛の声が上がる。


「いえ、アベリオテス王子。ダーク先生は態と私の剣を受けておりました」

「いや、アンナの剣は、実力を計る為に受けたいと思えるものだった」

「え?」


 まさか俺からそんな事を言われるとは思わなかったのか目を丸くする。


「そして最後の一撃は間違いなく一振りでは俺が負けていた」

「えっと……その、ありがとうございます」


 アンナが照れたように笑う。


「この女垂らし」


 ボソっとフローラが俺にそんな事を言って来た。嫌味ったらしい笑みをしていやがる。


「たらされ筆頭が言うと違うな」


 嫌味ったらしく笑い返してやった。


「ぅぅぅ!」


 フローラが涙目で顔を真っ赤にしていたのは言うまでもない。


「では、最後に皆やってる自己鍛錬を見せてくれ。それで今日の授業は終わる」


 そして、最後にそう締めた。

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