EP.07 Cクラスの副担任になりました
「今日からですね。ダーク先生」
「宜しくお願いします。ウェンディ先生」
今、話しているのは、Cクラスの担任を担当しているウェンディ先生だ。
赤縁メガネでスーツ姿のザ・秘書って感じだな。緑で肩まである髪を三つ編みにしている。歳は知らないが二十代中盤に見えた。
「ところで、本当に仮面を外されないのですか?」
「ええ。少し顔を会すのが面倒な相手がいましてね」
「そうですか。学園長が許可されたのなら私は構いませんが」
俺は学園長に告げた条件の一つ通り鉄仮面を被っている。
「それでは、まずフローラさんのとこに行きましょうか」
そう言われ職員室を出る。
ウェンディ先生は出席簿のようなものを持っている。って言うかCクラスは四人、今日から五人だけで、それしかいない。
フローラとは職員室の外で合流する事になっていた。
「あ、ダーク」
俺に気付き寄って来る。
「待たせたな。こちら担任になるウェンディ先生だ」
「宜しくお願いします」
軽い会釈を行うフローラ。
「宜しくね」
ウェンディ先生も微笑を浮かべ挨拶を返す。
それにしてもけしからん制服だ。膝くらいまでのチェックのスカートにYシャツ。
そこまでは良い。問題はベストだ。胸元部分が無く、胸を強調したベストである。
「制服良いな」
「そう?」
フローラが嬉しそうにはにかむ。
「ちょっと回って見ろ」
指でクルリしろと合図を送る。フローラは、得意げにクルリと回った。
「実に良い制服だ。馬子にも衣裳とはこの事だ」
「ボクを褒めたじゃないんだねぇぇぇ!」
「え? 褒めて貰ってたって勘違いして得意顔してたの?」
「分かってるくせに言うなぁぁぁ! 恥ずかしいじゃん!」
いつもの事ながら涙目の絶叫が始まる。
「ウソウソ。似合うぞ」
「……今度は本当でしょうね?」
「ああ。胸が強調されて実にけしか……いや、似合うぞ」
「どこ見て言ってるのさぁぁぁ!?」
「仲良いですね」
顔が引き攣ってるぞ。
「おい、ウェンディ先生が引いてるぞ」
「ダークのせいでしょぉぉぉ!」
「それはともかく、ダーク先生。女子生徒の胸を無遠慮に見てはいけませんよ」
「あ、はい」
「女子生徒の胸を無遠慮に見てはいけませんよ」
フローラがニヤニヤしながらウェンディ先生の言葉を繰り返した。
「ほ~。では、教師のは見ても良いと」
そう言ってウェンディ先生の胸に視線をやろとすると……、
パシンっ! と、出席簿で叩かれた。
「いけません!」
「はい」
「ふふふ……」
「フローラ君、君は特別授業で放課後、校庭1000週です」
「桁がおかしいよぉぉぉ! しかも何で走らせるのぉぉぉ!?」
「気持ち悪い笑みをしてるからです」
パッシーンっ!
腕を叩かれた。
恐らく頭は鉄仮面を被ってるので止めたのだろう。
「暴力で訴えるは止めましょう」
「女の子に気持ち悪いと言うのは止めましょう」
「ボクっ娘なのに?」
「それは関係ないよぉぉぉ!」
「……さぁ行きますよ」
収拾つかないと思ったのかウェンディ先生が先を促す。
やがて教室に到着した。生徒四人しかいないクラスだ。
クラスは成績でE~Aまで決まると聞いた。なので、毎年クラスが変わる可能性があるとか。
勇者達だけは、特殊な能力を持っているので他とは違うと言う事で、新しくSクラスが作られ、そこに編入させられた。
ちなみに四人しかいないのは、たまたまだそうだ。
入学試験で可もなく不可もない生徒が四人だったので、この四人がCクラスになった。
ちなみにだがこの学園は六年制。卒業は六月、クラス替えは七月に行われるらしい。日本人からすれば全く意味が分からん。
で、俺はその可もなく不可もないCクラスの副担に選ばれたようだ。
何故ならEだと差があり過ぎる。AだとSクラスに勝っても当然と思われるので、俺が態々呼ばれた意味がないとか。
ちなみに学年は一番下。Sクラスが一学年なのだから当然だけど。
数え年で十六歳から入学と言う事は、満年齢は元服の十五歳と言う事になる。まあ王族や貴族とは言え元服した瞬間政治の大事な部分を任せる訳でないって事で十五歳~二十歳の六年間学園生活を送るらしい。
「今日は新しく赴任して来た先生と、新しく途中入学して来た生徒がいます」
ウェンディ先生が四人の生徒にそう切り出す。
「それではまずダーク先生」
と、俺に振られる。
まあ最初くらい素顔を見せておくか。鉄仮面を外す。
「ダークだ。宜しく」
そう言って再び鉄仮面を被る。
「次にフローラさん」
「ボクはフローラ。みなさ……」
「違うだろ?」
遮ってやる。
「え?」
「教えた通りにやらないか」
「教えた通りって?」
「ふろぉらじゅっちゃいでちゅ」
「言う訳ないでしょぉぉぉ!!!」
「そこはあえて言うものだ」
パッシーンっ!
ケツにキックされた。と言うかスカートで、それはいかんっしょ。
「男子生徒諸君見たかな? フローラは下着を見せるのが趣味なのだ」
「そんな趣味はないよぉぉぉ!」
クスクス……。
そして、教室に笑い声が響く。
「よし! フローラ、掴みは良いぞ」
サムズアップ。
「こんな掴みしたくなかったよぉぉぉ!」
クスクス……。
「今日は水色だったな」
「忘れろぉぉぉ! それに今日はって見せた事ないでしょぉぉぉ!!」
顔真っ赤にし出しスカートを抑える。今更遅いだろ。
「ほら喚いていないで、自己紹介」
「は~……フローラです。皆さん宜しくお願いします」
溜息とともやっと自己紹介を終えた。
「十歳です」
「ぅぅん!」
めっちゃ睨まれた。
「では、皆さんの自己紹介と二人に何か質問があればどうぞ」
ウェンディ先生が進行し生徒達を促す。
その言葉で一人立ち上がる。肩の辺りまである白みの強い金髪で首の後ろで結っている男子生徒だ。
「では、私から。ゼフィラク国、第一王子」
おいおいおい。
いきなり約半年前にやり合った国の王子かよ。
「アベリオテス=ノトス=ゼフィラクです」
アベリオテスもノトスも風神じゃねぇか。これでゼフィラクではなくゼフィロスなら全部風神だな。
「ではダーク先生に質問です。その鉄仮面は何でしょう?」
うん、聞かれると思ってたよ。
「まだ詳しく言えないが顔を会せたくない人がいる。まあいずれそれが誰なのか教えるけど」
「分かりました」
そう言って着席する。
次に立ったのは、エーコと同じピンク色の髪で肩の下辺りまであり、ツインテールにしている女子生徒だ。
「わたくしは、カルラ国の第一王女」
って今度は、約半年前の戦争で拠点にしてた国じゃねぇか。
「スーリヤ=リブ=カルラと申しますわ。どうぞ宜しくお願い致します」
そう言ってスカートの端を摘まみ軽くお辞儀。
やっぱ姫さんともなると教育が違うね。ここ五ヶ月のどこかの姫さんと大違い。
「……何か失礼な事を考えていない?」
「ソンナコトナイヨー」
前も思ったが、フローラはエスパーかよ。
にしてもスーリヤもリブもカルラも全部インド神話じゃねぇか。
「では質問を失礼致します。ダーク先生とフローラさんはお付き合いされておられるのですか?」
「はい、されています」
即答してやった。
「されてないよぉぉぉ!」
「……だそうです」
スーリヤは曖昧な顔して着席した。
次に立ったのは、耳の上くらいの短い髪で紫色をした男子生徒だ。
「ゼフィラク国、伯爵。ルドリス=スリドです。では質問します。ダーク先生の得意分野は?」
さて、なんて答えようかな?
「女性の胸部のサイズが目視により正確に分かる事」
と、とんでもない事をフローラが言い出した。
横目で見るとニヤニヤしてる。うん、じゃあここは乗っておくか。
「うん、それで良いや」
パっと見た感じスーリヤはC。もう一人の女子生徒はDかな? もう一人の方は、なかなか豊満だな。ボクっ娘にはワンランク下がるけど。と、言いつつ正確な大きさは分からないけど。そんな謎特技なんてないし。
当然女子生徒がドン引きしながら両腕で胸を隠し出したよ。まあ最初はそれでも良いや。
フローラは、俺がそのまま答えるとは思わなかったらしく目を丸くしていた。
「……それは、凄いですね」
目を引き攣らせつつ言いルドリスが着席する。
次に立ったのは、赤い髪で腰まである長い髪をしており背中でリボンを付けている一番個性的な髪型の女子生徒だ。と言うかナターシャと同じ髪型か。
当然胸を両腕で隠したままである。
「あたしはアンナ。ただの平民です。では、フローラさんに質問です。ダーク先生と恋人らしいですが、普段どのような事を?」
「恋人じゃないって言ったでしょぉぉぉ!」
すかさずフローラが抗議の声を上げる。
「毎日情熱的に絡み合ってる」
と、俺は答える。
「まあ」
アンナが顔をポっと赤くし出す。スーリヤも同じだ。男子生徒は引いてるな。
「ちょっとぉぉ! 絡み合ってないでしょぉぉ!?」
「え? 今だって絡んでるじゃん」
「言い方っ!!」
「……とても仲が宜しいようで」
苦笑いをしつつアンナは着席した。
「……ダークのせいで変な誤解されてるよぉ」
「え? じゃあ仲悪いの?」
「良いよぉぉ!」
投げやりに言い出した。
クスクス……。
そしてまた教室に笑い声が響く。
「ダーク先生、生徒とのお付き合いは良いですが節度は守ってください」
「はーい」
「はーいじゃないよぉぉ! ダークのせいで入学早々変な誤解されてるよぉぉ!」
「いや、俺も胸のサイズを測定出来るとか謎特技があるらしいし」
「うっ!」
フローラは何も言えなくなってしまったようだ。
「それでは授業を始めます」
うちらをほっといて進めるようだ。
「今日はダーク先生もいらっしゃいますし、ダーク先生に決めて貰いましょう」
「いきなりむちゃぶりっ!?」
「ダーク先生に決めて貰いましょう」
「そこ黙って」
ニヤニヤしながらウェンディ先生の言葉を真似たフローラの頭を叩く。
「何でも良いのですか?」
「えぇ。ですがくれぐれも女性の胸部観察をしサイズを測らないでくださいね」
「ウェンディ先生もノリ良いですね」
「いえいえ」
「では、生徒のを見ない分、ウェンディ先生のをじっくり観察します」
「いけません!」
パッシーン! と、再び出席簿で殴られる。
「はーい。では一人一人、俺と戦ってください。まずは、皆の実力を知らないとね。それと皆が普段どのような自己鍛錬を行っているのかを見せてください。ってな感じだけど問題ないです? ウェンディ先生」
「分かりました。では、Cクラス専用修練場に向かいましょう」
そうしてCクラス専用の修練場に向かう事になった。
何故専用があるかと言えば、テストのような感じで他のクラスと試合があり、お互いに手の内がバレないようにする処置なんだとか。




