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EP.01 王女様を連れ出しました

 牢屋生活が始まった。先刻言われた通り三食用意してくれる。寝たい時に寝て良いというのでグータラしていた。

 とは言え、体がなまるのも嫌なので、程々に筋トレを行う。

 にしても暇だ。暇が売れるなら一財産稼げる程だ。ぶっちゃけ脱獄も可能だし、それも考えたが、今後の見通しがなってないので止めた。


 てっきり拷問とかあるのかと思っていた。その時に、逆に少しでも情報を聞き出してやろうと意気込んでみたものの放置だ。

 普通さ、拷問とか、判決とかあるでしょう? まったくこの国はなんなん? はよ~お家に帰りたいな~。

 メシは用意してくれるけどさ、ナターシャやエーコのメシと比べると天と地、月とスッポンの差があるんだよな。例えそれがあのチューブ入りの合成食品だとしてもだ。

 そんな感じで一週間が過ぎ、そろそろマジで脱獄しようかなと思っていたら、やっと誰か来た。


「御機嫌よう、アーク様」


 おいおいおいおいおいおい!!!

 来たのは、お姫様かよ。豪華なドレスを着込みこんなとこに……。

 髪より少し濃い水色のドレス。胸元が開いており、あの豊満なEくらいありそうな胸が目立つ。

 ぶっちゃけエロい!

 というか足元までスカートがあるんだから汚れない? マジでなんなん?

 髪型は、三つ編みっぽいのが右側にあり後ろに流している。片方サイド三つ編みポニーテール? 名前なんか知らん。

 ゴテゴテではないが、首元や髪飾りがあしらわれており、それが一層姫様を引き立ている。また左頬に親しみ易い印象を与えるほくろがあった


挿絵(By みてみん)


「えっと、こんにちわ。牢獄から失礼します。クロセリス王女殿下」

「まぁ、わたくしの名前を憶えてくださっていたのですね」


 口元を右手で隠し笑う。姫様ってのは笑い方も優雅な事で。

 ただね……、


「えぇまぁ。ただこの状況でご機嫌に見えますかね?」


 嫌味が漏れてしまった。それもついうっかりって感じで。一週間放置だったので、若干イライラしていたし。


「うっ! 確かにそれは失礼致しました」


 45度の綺麗なお辞儀。おっふ。

 胸元が開いたドレスなので、見えそうで見えない。それがなんともそそる。

 お辞儀で、より上からめっちゃ覗ける。が、そんな邪念を悟られないように……、


「それでお姫様直々にこのような場所に何の御用ですか?」

「まずは、このようなとこに入れて申し訳ございませんでした。再び謝罪させて頂きます」


 頭を上げ直ぐに再び頭を垂れる。

 ヤバい。だってEカップくらいあるデカさなんだよ。ナターシャがいると分かっていながら凝視してしまう。

 一度目は邪念を悟られないようにとか、頑張ったけど二度目は無理だ。凝視しまくってしまう。

 最近溜まってるから、これだけでビッグマグナムが完全覚醒してしまった。

 やがて、顔を上げた姫さんが俺の視線に気付き目付きが鋭くなる。


「……どこ見てらしゃるのですか?」

「谷間ですが何か?」


 俺も馬鹿正直に答えてしまう。


「は~……わたくしは、このような者にお願いを申し上げに来たのですか」


 溜息とともに小さく呟く。

 ん?


「お願い?」

「えぇ……。わたくしをこの城から連れ出してください」


 はい? 城から連れ出す? つまり、脱獄&王族誘拐しろと?


「では、まず一つ宜しいですか?」

「聞きましょう」

「その依頼を受けるかどうかはともかく、話を聞くにあたって普通に喋っても宜しいですか? 恭しくとかめんどくさいです」

「正直ですね。クスクス……ええ、勿論構いません。むしろ、もしお願いを聞いてくださるようでしたら、こちらから言うつもりでした」


 姫さんが優雅に笑う。


「じゃあ遠慮なく。まず聞くが何故俺のとこに来た? 勇者だからか?」

「いいえ。コハル様に伺いました。ドラゴンを倒した、と。そのような実力の方なら、必ずやわたくしをこの城から連れ出してくださると考えました」

「なるほど。じゃあ本題だ。何故城から出たい?」

「怪しいからですね」

「はい!?」


 いやいや、それだけじゃ意味分からんよ。


「この国は、他国と戦争を起こしてまで何かを企んでいます。魔王復活? ゼフィラク国がそのような事をしてるとは思えません」

「核心はあるのか? 『思えない』とか曖昧な理由で城を出るつもりか?」

「そうですね。戦争を起こしたとこまでは核心には至りませんでした。しかし、アーク様達が持ち帰られた宝玉で核心しました。あれは魔王に対抗する代物? 馬鹿馬鹿しい。そんな神聖な物には到底思えません。もっと禍々しいものを感じます」

「ほ~……姫さんにも分かるのか」

「では、アーク様も?」

「ああ」


 あれは危険なものだと俺の中で警報を鳴らしている。


「流石は王家しか知らぬ魔法の契約をご存じなだけはありますね」

「あ、それ関係ない」

「え?」

「魔法に卓越した者なら精霊とか不確かなものに敏感になったり、相手の魔力を読み取ったり出来るらしいけど、俺は得意じゃないし」

「……では、何故かお聞きしても?」

「気配」

「気配……ですか?」

「俺は元々は暗殺者だったんだよ。だから気配に敏感なんだ」

「なるほど……通りで召喚されたばかりだというのにお強い筈ですね」


 確かに他の連中は能力を使いこなせていないし、武器と能力がマッチしていなしな。


「勇者召喚と言えば、もう一つ核心がございました」

「それは?」

「勇者召喚とは、平和な世界から呼び出す事で魂が疲弊しておらず、魂の力で能力の獲得が行われます。ここまではご存じですよね?」

「ああ、聞いた」

「しかし、平和な世界で生きて来たからこそ、戦いには向かないのです」

「使い物にならないって事だろ?」

「……まぁはっきり言ってしまえば」


 言葉を濁したのに俺がはっきり言ってしまったので、姫さんが渋面で肯定した。


「なので、過去に勇者召喚をした際に、はっきり言ってしまえば肉壁にしたそうです」

「今と同じだな。一体何人死んだのやら」

「……はい」


 姫さんも心を痛めてるのか俯いてしまう。


「そうして、生き残ったほんの僅かが、能力を使いこなし真の勇者となるのです」

「まぁ確かに勇者の能力はズルいからな。羨ましいよ。俺も何か獲得していれば良かったのに」

「え? ドラゴンを倒せるのに何も獲得しておりませんの?」


 なんか姫さんが鳩が豆鉄砲を食ったよう顔してるな。


「元々鍛えていたお陰だ」

「そうでしたか……。それで話を戻しますが、そのような扱いをするのは非人道的という事で禁忌となったのです」

「なるほど。その禁忌を破り、勇者召喚した、と?」

「仰る通りです。これがわたくしが感じている核心です」

「つまり、そのような所業を行っている国から逃げたいって事か?」

「はい」

「理解してるのか? 状況によっては祖国と戦う事になるのだぞ」

「……はい、り、かいしております」


 殺気に闘気を乗せを軽く威圧すると、苦しそうに返して来た。

 威圧は闘気に耐性があるか、余程胆力がある者ではないと跳ね除けられない。具体的には金縛りにあったような感じになる。モロに威圧を受けると恐怖を感じ、胆力の全く無い者は立つ事もままならない。

 まあこれだけで殺めるどころか意識を奪う程の事は出来ないが。

 その威圧を軽くとは言え、姫さんに当てたのにビビらず確り言葉に出来ていた。

 うん。これなら連れて逃げても良いだろ。


「姫さんの城を出たい気持ちは分かった。それで、ご希望通りにして俺に何の利益があるのだ?」


 意地悪な質問をしてやる。もう既に連れて逃げてやっても良いと決めてるのに。


「わたくしは、この身一つで城を出ます。なのでお渡しできるものは、この身となります。アーク様がこの胸をお気に召したのならご自由に」


 胸を寄せて谷間を強調しながら言う。ちょっとあざとい。

 ほー。でも、それは良いな。


「……鼻の下が伸びてますよ」


 いかんいかん。俺にはナターシャがいるのだ。


「胸だけで済むと思っているのか?」


 更に意地悪な質問。


「……覚悟は出来ております」


 俺の答えは決まっているのだが、更に更に意地悪な質問をしてみよう。


「それだけか?」

「え?」

「俺の利点は、姫さんの体だけか?」

「その腕輪を外して差し上げます」

「これ、位置探知かなんかの機能が付いてるだろ?」

「気付いてらっしゃったのですか?」


 姫さんの黄色の双眸を丸くする。


「感だけどな。最初から怪しさ爆発だったぞ」

「なのに付けられた、と?」

「いつでも外そうと思えば外せたからな。よってそれは利点にならない」

「そのような事はが……。では、申し訳ございません。これ以上の利点は差し上げられません」


 姫さんが項垂れる。


「良いぞ」

「はい?」

「だから逃がしても良いぞ」

「本当ですか? ありがとうございます」


 パーっと姫さんの表情が明るくなる。

 うん、やっぱ王族として厳しく躾けられても、こういうとこは年相応と思ってしまうな。


「じゃあ、代わりの要求を告げる……」


 態と間を開ける。ついでに姫さんの胸元を凝視。最後の意地悪だ。


「……ゴクリ」


 おいおい。生唾飲んだのが聞こえたぞ。覚悟してたんじゃないのか?


「……小太刀を持って来い」

「へ?」


 拍子抜けと言わんばかりにガクっと肩が落ちた。


「だから北の迷宮で見つけた小太刀を持って来い。ああ、更に性能が良い小太刀があるなら、それでも良いぞ」

「承知しました。ところで……」


 めっちゃ言い辛そうな顔してるな。


「何だ?」

「小太刀とは何でしょう?」


 ガクっ!


 今度はこっちの肩が落ちた。

 暫くして姫さんが戻って来た。


「アーク様、小太刀を持って参りました。ですが、本当に牢屋の鍵はいらないのでしょうか?」


 暫くして姫さんが小太刀を持って来てくれた。

 では、ついでに牢屋の鍵も探すと言い出したのだが、探さないと見つからない、分かり易い場所に無いと言う事なので要らないと答えていた。


「ああ」


 頷きながら鉄格子の隙間から伸ばされた小太刀を受け取る。


「ところで、城を出るのに着替えないのか? 動き辛いだろ?」

「はい……ですが、気取られます」

「なるほど。じゃあまずこの腕輪を破壊した方が良いかな? でも、これって破壊した瞬間バレるんじゃねぇか? つまり兵達がわんさか寄って来る」

「そうですね。ですが、それは位置探知するだけではございません。隷属させるものです」

「隷属? 奴隷にされるのか」

「はい。ですので、壊せるうちに壊さないと操られ壊す隙がなくなります」


 なるほど。

 壊せば、その瞬間からデビルズ兵がやって来る。しかし、壊さないといつ隷属させられるか分からない。

 城から出るまで隷属させられないと言う賭けに出るのが一番楽なのかもしれない。

 だが、デビルス兵なんて大した事ないので壊しても問題ないな。って訳で右手に闘気を籠め左腕に嵌めた腕輪を握り潰す。


「驚きました。本当に簡単に外せるのですね」


 俺は壊した隷属の腕輪の破片を懐にしまう。


「何故それをしまわれるのですか? 捨てても問題ないかと」

「いや、後々使う。それより離れていろ。鉄格子を斬る」


 そう言って小太刀を抜き、闘気を籠めながら振り下ろした。

 鉄格子が豆腐のように、あっさり斬れる。


「お見事。流石は最強生物のドラゴンを単独撃破されただけはありますね」


 最強生物単独撃破。

 その単語だけ聞くと俺って凄いんじゃね? とか思ってしまうが、油断は禁物だ。

 今までに何度も死に掛けたんだから。


「じゃあ行くぞ」

「はい」


 ビリビリ……。


 おいおいおい。

 ドレスのスカートを破りやがった。足元まであった長さが膝くらいの長さになっている。

 まあこれで動き易いだろうけど。

 ただね。破る時に俯いたから、胸元にめっちゃ目が行っちゃたのよね。

 再びビッグマグナムが覚醒してしまった。半覚醒だけど。


「……どこを見ているのですか?」

「谷間」

「は~……先程、体は要求されませんでしたけど、いずれされそうですね」

「ソンナコトナイヨー」


 視線が冷たいのでそっぽ向いてしまう。

 っとそんな話をしてるとわんさか寄って来たな。気配で分かる。


「姫さん、下がって。おいでなさったようだ」

「はい」


 ほどなくして兵達が五人程やって来た。


「貴様、いつ牢屋から……」


 言わせないよ。

 俺は瞬時に後ろに周り斬る。


「峰打ちだ」


 言って見たかったんだよね。

 峰を首筋に当てた事で一人倒れる。


「よくも……」

「<下位稲妻魔法(サンダー)>」


 隣にいたのを出力を抑えた下位稲妻魔法(サンダー)を放つ。スタンガンくらいの威力だ。

 二人。


「ぐはっ!」


 回し蹴りで三人。


「ば、ばけも……」


 言わせないよ。

 後ろに周り両手の小太刀で二人まとめて峰で首元を殴る。


「お見事です。一瞬で五人殺めたのですね」

「殺してねぇよ。血が一滴も出てないだろ?」

「あら、そうですわね。暗殺者だと仰っていたので殺めたのかと」


 この姫さんもアホ抜かすなー。


「元だよ、元」

「それは失礼致しました」

「それより、さっさと行くよ。わんさか此処に集まってるのを感じる」


 そうしてデビルス兵を何人昏倒させたか分からないが姫さんを連れて城を脱出した。

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