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EP.02 野生人ガッシュ (三)

間違えて中途半端なとこでアップしてしまいました

申し訳ございません

描き直したものがこちらです

前話(もう消しましたが)を読んでくださった方は、半分くらい読み飛ばしてください

 このユピテル大陸にはサバンナと呼ばれる危険地帯がある。大陸中の動物が集まり、何故か共存してる不思議な環境。勿論日々争う事もしている動物もいるが、何故か全滅しない。

 それはラフラカ帝国の実験で魔物に変えられても同じだった……。

 ラフラカ帝国は、精霊の力を利用し、人工魔導士を造るなど、神をも冒涜する行為を行った。その手始めに動物達に実験をしたと言うわけだ。

 その実験場がサバンナで、大陸中にいる魔物はサバンナから広がったと言われている。動物達は淘汰され残ったのは魔物だけだ。


 その魔物も環境によって住み分かれて行った。例えば北の方には毛皮が厚い魔物が、南は毛が少ない魔物が、と。

 其処から、進化して様々な形になり、またサバンナに帰って来る。従ってサバンナは、魔物の種類や数が増える一方だった……。

 と言うか全ての魔物が棲息してると言われている。但し突然変異の雪だるま種除いてだ。


 そのサバンナに黄色の髪で、黄色の目をした三歳児が捨てれた。その三歳児は、逞しくもその環境で生き抜き成長して行った。ただ、その頃は、まだ良かった。動物達を狩れば食うの困らなかったのだから。

 しかし、魔物となれば殺すと灰となって消えてしまう。六歳くらいになると魔物が少しずつ増えて食うに困って行ったのだ。

 尤も途中で殺さなければ良いと気付き、殺さず食い散らかすようになった。動物より不味いし噛み付いた時に殺してしまうと口の中に灰が広がると言う劣悪な環境で、更に強靭に育っていた。


 そのサバンナにとある空手家が通り掛かる。その空手家に野生児はガッシュと名付けられた。

 それが当時八歳の頃だった――――。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 そのガッシュは更に成長し現在二十歳だ。髪はボーボーに伸び、腰の辺りまである。更にボサボサだ。野生人なのだから仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。

 昔、通り掛かった空手家を含め一緒に暮らさないかと誘われるが、小さい頃から育ったサバンナ以外で今更暮らせないと断り続け、現在もサバンナにいた。


「ごぉぉぉぉ……」

「ぎゃぁぁぁぁ……」


 騒がしいなと、ガッシュは感じる。サバンナの事ならある程度遠くからでも把握できる能力を身に付けていた。

 誰かが戦ってると直ぐに気付いた。

 人間が来たのか? と騒ぎの方へ向かう。ガッシュは町の暮らしは嫌がるが別に人間が嫌いなわけではない。空手家を含め、ガッシュと仲良くしてくれようとした仲間が沢山いたからだ。

 ガッシュは、その仲間達と共にラフラカを倒した。英雄の一人である。まあ動物が食えなくなり、不味い魔物になったからと言う食い意地の張った理由で、戦ったのだが。


 それはともかくガッシュはウキウキした顔で人間の方へ向かう。人間も魔物を次々倒して自分の方へ向かってるのを感じていた。

 人間に近寄って行くのは美味い物をくれるからだと言うこれまた食い意地が張った理由だ。


「はらへった。なんかくれ、なんかくれ」


 そう言ってガッシュは、接触した人間の周りをクルクル回る。


「……ほら」


 人間は、チキンを投げて寄越す

 ガッシュは嬉しそうにそれを掴み取る。まるで犬のように……尤もこの大陸には、もう犬は存在しなが。


「ムシャムシャ……もっとくれ、もっとくれ」


 ガッシュは、コイツはチキンくれたから良い奴と思い、更に回る回る。

 しかし、ピタっと止まる。ガッシュが野生で育ったお陰か鼻が良い。直ぐに匂いで、この人間が誰のかわかったのだ。


「欲しければ着いて来い」

「おれ、ついていく、ついていく」


 美味しい物くれるなら着いて行くと、これまた犬のようだ……繰り返すがこの大陸には、もう犬は存在しない。


「おまえダークだ、ダークだ」


 共に戦ったからこそ匂いもその人間も覚えていた。絶対にそうだと自信満々だ。


「……人違いだ」


 しかし、人間にすげなく否定されてしまう。


「ぜったいダーク、ダーク」


 それでも言い続けるガッシュ。


「……勝手に言ってろ」


 人間は、げっそり疲れたような反応し、そう言い返した。それに対しガッシュは何で疲れているんだと、首を傾げる。


「ダークひさしぶり。げんきだったか?げんきだったか?」

「……ああ」


 今度はちゃんと返事した。ダークだと肯定したのだ。それがガッシュには堪らなく嬉しくニヤニヤしだす。

 やがてチキン欲しさにダークを着いて行くとエド城に到着した。


「おお! 待っていたでござるよ。ガッシュ殿」


 この匂いも覚えていると言わんばかりに……、


「ござる、ござる、ひさしぶりだな」


 と、言うのだが、全く違う。ムサシの口癖をまるで名前のように憶えているガッシュ。

 しかし、そう言った事を全くきにしないござる……もといムサシであった。


「ダーク殿! 世話になったでござる」


 そう言ってムサシはダークにお金を渡した。


「……俺はこれで」


 受け取ったダークは、踵を返そうとするが……、


「まぁ待つでござる。せっかくでござるから晩食に付き合わないでござるか?」


 そう言ってムサシが引き留めた。


「……良いだろ」

「ダークもいっしょ、いっしょ。たのしそう、たのしそう」

「では直ぐに準備するでござる」


 ムサシは、急ぎ足で城に入って行った。ガッシュは美味い物の準備かな? 楽しみだと、またまた食い意地の張った理由でニコニコしていた……。


 やがて、晩食会と言う名のダークとガッシュの歓待が始まり、二人が会食に使われてる広い部屋の席に腰を掛けた。当然ムサシも同席している。

 続けて、兵二人にガッチリ挟まれてエド王がやって来た。


「お主がダーク殿にお主がガッシュ殿じゃな?」

「……違う。アークだ」

「おぉ、そうだったな。失礼したアーク殿」


 ダークがアークと訂正するとエド王が鷹揚に頷く。


「おまえ、だれだ? だれだ?」


 ガッシュが不思議そうにエド王を見る。


「これ! 王に向かってなんていう口だっ!」


 兵が無粋な事を言い放つ。何故なら……、


「良い。ガッシュ殿の事は国務大臣(・・・・)のガーランドに聞いておる。サバンナで育ったのだじゃ。口の聞き方がわからぬのも当然じゃ」


 エド王の言う通りだからだ。またエド王は寛大であり理解を示す者のようだ。


「……国務大臣とは何だ?」


 ダーク……もといアークが首を傾げる。


「貴方はサバンナ育ちではないだろ? 口の聞き方を知らんのか?」


 また兵が無粋な事を。


「止めんか! ガーランドに聞いておる。主を持たぬ暗殺者。それならそういう口の聞き方になるものじゃな」

「……暗殺者? なら危険では? 即刻追い出すべきです」

「お前はガーランドを信じられぬのか? 儂は信じておる。そして、そのガーランドと共に戦った仲間じゃぞ」


 エド王の言葉にムサシは嬉しさに口元が綻ぶ。


「……申し訳ございません」

「二人共すまぬな。今夜は無礼講で構わぬ。それと国務大臣の話じゃったな。エド城最後の生き残りじゃからな、それなりの地位を与えねばと考えたのじゃ」

「にあ……偉くなったな」


『にあ……』と何かを言い掛けたアーク。それに違和感を感じムサシは首は傾げた。

 また国務大臣など拙者に勿体無いくらいでござる。と思っている。


「まぁそんなことよりじゃ。昔、ガーランドが世話になったようじゃな。本日は礼を兼ねて御馳走を用意した。大いに楽しむが良い」


 兵は無粋な事を言うが、エド王が寛大なのもあり、和やかに歓待が進む。

 ただ料理は全て、ムサシの好みばかりだ。白米に味噌汁に魚の生き作りに天婦羅等々。

 ムサシは口に合わないのではないでござるか? と不安に感じる。しかし、それは杞憂でだった。

 何故ならアークは淡々と食べてるおり、ガッシュ殿は美味しそうにガツガツ食べていたからだ。

 ただアークは綺麗に箸を使っていた事には首を傾げていた。昔は使えていなかったでござるに、と。

 ガッシュは言わずもがな。野生育ちなので手掴みだ。しかも途中から満足したのか眠ってしまう。


 やがて歓待も終わりガッシュを兵に頼み寝床に運ばせ寝かせた。本当は自分で運びたかったとムサシは思っていたのだが腰を壊してしまってるので断念した。


「ダーク殿も今晩は此処に泊まるが良いでござる。床を用意するでござるよ」

「……せっかくだから世話になるか」

「ところで今までどうしていたでござるか?」


 やはりムサシに取って其処が一番気になってるようだ。何故なら精霊大戦の最後の戦いでダークは、唯一帰らぬ者となってしまったからだ。


「……瀕死で助かり半年意識を失っていた。目が覚めた後も身体を完全に治すのに半年かかった」


 アークは簡素に説明した。

 それを聞きムサシは、ダーク殿が生きていて良かったと思うでござる。と感じていた。


「そうであったでござるか。では、この一年大陸に不可解な事をが起きてる事は知らぬでござらぬか?」

「……突如洞窟現れたり、島が沈んだりとかか?」

「おぉ。知っておったでござるか。ではその辺りをより詳しく知りたいとは思わぬでござるか? 何をするにしても世界の情勢は知っておいた方が良いでござるからな」


 自信げに言うムサシ。


「……ああ」

「では、ロクリスに会うと良いでござるよ」


 ダーク殿が生きていたとなると、きっと喜ぶでござるよ。あの二人。と内心ほくそ笑んでいたが。


「……ロク、リス?」

「トレジャーハンターチーム『ロクリス』でござる。この一年でかなり有名になったのでござるよ」


 と言うのは、ムサシの付いた嘘だったりもする。片方は元々有名だったので半分しか正しくないとも言える。


「……そうなのか?」

「ロクリスは大陸を股に掛けているでござるからな。誰よりも大陸の情勢に詳しいでござる」


 それにあの二人を喜ばせて欲しいでござる。と内心考えていた。


「……何処に行けば会える?」

「元クロード城でござる」

「クロードぉぉぉぉっ!?」


 アークは声を裏返し素っ頓狂な声を上げ訝しげた。

 当時小規模だったがラフラカの一派にクロード城が、占領され後にラフラカ帝国となり、ラフラカ城が建てられた。それ故に驚くのも無理無い。


「あの戦いの後、ラフラカ城の瓦礫をどかし、復興したのでござるよ」


 正確には、ロクリスの住まい一軒でござるが、ダーク殿には内緒でござる。と内心呟くムサシであった。


「……となると、港町ニールからか?」

「そうなるとニールからイーストックス、イーストックスからチェンルで日数掛かるでござるよ?」


 船旅は時間が掛かる。それなのに港町ニールからイーストックスとイーストックスからチェンルと二回船に乗らないといけないのだ。

 昔なら南下して西に迎えば良いだけなのだが、いや、そもそも港町ニール――当時は港町ニーベと言う名前だったが――から、船を乗り換えず、そのままチェンルへ出航していた。

 しかし、ラフラカの力で大陸破壊を撒き散らし、今のように乗り換えないと行けなくなってしまった。


「……なら、どうする?」


 胡乱げにムサシを見る。


「まぁまぁ。そんな顔をするでないでござる。『しの道』から行けば良いでござるよ。さっき言っていた島の浮き沈みと似たようなもので、島の形が変わる事もあるでござる。『しの道』は、今では『Jの道』と呼ばれているでござるよ。其処を通れば元クロード領に行けるでござるよ」


『しの道』とは、まんま『し』の形をした道である。そして変動した事で『J』の形になったので、今では『Jの道』と呼ばれ出したのだ。その『J』の形になった事で元クロード領――風評の問題で元ラフラカ帝国領とは、誰も言わない――にぶつかった。

 まあ、お陰で一部では交易がし易くなったと言われている。


「……そうか。行ってみる」


 翌日アークが直ぐに出発すると言い出した。


「道中気を付けるでござるよダーク殿。ガッシュ殿、ダーク殿を頼むでござる」

「ござる! わかったぞ、わかったぞ」


『Jの道』までガッシュに案内を頼む事にしたムサシ。

 そして内心では、『Jの道』には彼女の家があるでござる。彼女もダーク殿にもし会う事になれば喜ぶでござろうな。と思っていた。

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