表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/569

EP.20 北の迷宮探索を開始しました

 それから昼まで歩き迷宮の入口に到着した。ちなみに夜盗は縛ったまま放置だ。

 勿論、役に立ちそうなものは貰っておいたけど。


「やっと着きおったな」

「そうね」

「ここからが本番だ。リーダー、号令を」

「ウチぃ?」


 胡春が目を丸くし出す。

 おいおい俺が仕切ったら文句言っただろ。


「仕切るのは任すと言ったぞ」

「そないやったな。ほな行きまっせ」


 迷宮とやらに突入したが、最初はたんなる洞窟だ。はてさて、最深部に行くにつれてこれがどう変わるか。

 ちなみに前衛はマーク。中衛は沙耶と胡春。

 そして後衛は荷物持ちの俺。まったく後衛だけに光栄だね。


「魔物がいるって言ってけどいないね」

「いや、いる。まだ先の方だけど」


 沙耶が呟き、それに答える。


「そう言えば、魔物って何? アークは知っている?」

「俺がいた大陸では動物が狂化されて魔物になった。つまり狂ったように襲って来る動物だな。ついでに倒すと灰になる」

「灰になるって奇怪やなぁ」


 胡春も会話に加わる。


「どうせ雑魚のユーの事だ。その魔物に逃げ回ってるだけなんだろ?」


 振り返り嘲笑うかのように言う。こいつは何故こう俺に絡むかな?


「おい。そろそろだぞ。雑魚の俺にかまけて良いのか?」

「分かってるよ! え?」


 直ぐ様、前を向く。

 分かってねぇじゃねぇか。もう目の前だろうが。まあ魔物は、素早いハウンドドックなので仕方無いと言えば仕方無いのかもしれないが。


「紅蓮の刃」


 出た。

 中二的必殺技。炎の魔法剣でハウンドドックを斬り咲く。


「ほんまに灰になってん」

「本当だね」


 胡春と沙耶が驚く。

 一撃で仕留めたのは良い。ただな……、


「何故炎にした?」

「またケチつけやがって。ユーはミーの紅蓮の刃がそんなに気に食わないのか?」

「誰もそうは言ってないだろ? 馬鹿が。洞窟で炎を使うのは酸欠になるからご法度だって常識だぞ」

「ちょっとアーク。いつもより棘があるよ」


 沙耶に諫められそうになるが、眠気でイラついており、それどころではない。

 それに洞窟で炎を使い過ぎると酸欠になるって知らんのか? 常識だと思うのは俺だけか?


「煩い! 咄嗟に出たのがこれだったんだから仕方ないだろ?」

「自殺志願者か? だったら俺達を巻き込まず勝手に死ね」

「なんだとー!」

「喧嘩しとる場合やへんでっしゃろ」

「アーク! どうしたの? いつもならサラリと流すでしょう?」


 胡春と沙耶が止めに入った。

 特に沙耶は先程、諫める言葉を無視したせいか俺にしがみつくように止める。


「悪い。昨日寝てなくて気が立っていた」


 それにマークは何かと突っかかって来てウザい。二股クソ野郎並みだ。


「ソーリー。ミーも気を付ける」


 そう言ってマークは進み出す。

 そして再びコブリンと接敵。


「氷結の牙」


 今度は氷属性の魔法剣にしたか。にしても氷結の牙??? また中二くさい名前が出たな。内心笑ってしまう。

 と言うか、それ俺の魔法剣と名前被ってるし。


「はぁぁぁ……あ!」


 その氷結の牙とやらで斬り掛かるが天井に大剣が当たり上手く振れない。

 大剣なんか使ってるからだよ。


「くっ! まずい」


 俺は夜盗からくすねたナイフを投擲した。


 ブスっ! と、ハウンドドックの足に突き刺さり一瞬怯む。


「はっ!」


 その隙を見逃さず沙耶が薙刀を振るう。


「危なかったな」


 胡春がマークを慰めるかのように言う。

 だが、原因は武器だ。そこは、はっきりさせておこう。


「これを使え。はっきり言って魔法剣の能力と大剣は相性が悪い」


 そう言って俺の持つ剣……通常の大きさの剣を渡そうとした。


「いらん。今回は、たまたまだ」

「燃費も悪いぞ」

「煩い! 次は大丈夫だ」

「あっそ」


 もう良いや。また進みだし魔物と遭遇。またハウンドドックか


「雷光の撃」


 今度は雷光の撃と来ましたか。中二くさいの好きやな。

 その雷属性を纏った大剣を横薙ぎに振るう。

 縦に振るうと天井に突っかえるからな。それは分かるが……、


「キャっ!」


 ほら沙耶の腕を掠めた。

 沙耶は、それに驚いた拍子にへたり込んでしまう。

 まあハウンドドックは倒せたけど。ただ属性が悪い。


「沙耶はん、平気かい?」

「えぇ」


 胡春が駆け寄り、沙耶はそう答え立ち上がろうとする。


「立つな。雷属性だったから痺れがある筈だ」


 だが、俺は直ぐ止める。


「そうね。腕が動かない」

「まあ掠めただけだから、少し休めば平気な筈だ。念の為……<下位回復魔法(リカバリー)>」

「ありがとうね」


 下位回復魔法(リカバリー)を掛けた。


「それが回復魔法な。ええな」

「さて、マーク。味方を傷付けてどうする?」

「ソーリー。今回は、たまたまだ」

「今回()だろ? 大剣は取り回しが悪いんだ。何度も言うが魔法剣と相性が悪い」

「雑魚が煩い! 魔法剣も使えない奴が魔法剣を語るな!」


 つか何故に大剣にこだわるんだ? こいつは。


「<下位氷結魔法(フリージング)>」

「「「えっ!?」」」


 俺が剣に氷を纏わせたら三人が目を丸くした。


「<ブリザー・ファング!>」


 剣を振り下ろす。

 氷の斬撃は、目視がギリギリ可能なとこにいるハウンドドックに直撃し灰にした。


「魔法剣が使えないと誰が言った?」

「えらい凄い(ごっつい)な」

「アークは何でも出来るのね」


 女子二人からは称賛してくれるがマークからめっちゃ睨まれる。

 まあ当然か。十八番を奪ったようなものだし。


「ユーは、蓮司の炎に拓哉の投擲、そしてミーの魔法剣まで使えるのか。チートじゃなぇか!」

「チートはお前だ。気付いていないのか?」

「何が?」

「紅蓮の刃とか名を付けてるが魔法名破棄で使えるのだろ? 俺のは魔法名を口にしなとしないと無駄な力を取られる。魔法名破棄で使えるとなると研鑽を積めば相当強力なものになる」


 魔法を魔法名破棄で使うと魔力を相当使うし体への負担が半端無い。

 しかし、それは平然と出来る者は、魔法の才がズバ抜けてる。

 エーコもやろうと思えば魔法名破棄も可能だが、魔力消費が無駄に激しいから、やりたくないと言っていた。

 尤もこいつの魔法剣や蓮司の炎が魔力によるものならの話だが。


「現時点ではユーはチートだ」

「いい加減にしろ。俺だって最初から自在に使えた訳じゃない。長年鍛錬して来たんだ。妬む暇があったら鍛錬しろ」


 寝てないせいもあって余計に腹立つ。

 俺は確かにダークの出来た事は全部出来た。だが、出来るのと使いこなすのは違う。俺は、使いこなせるように鍛錬した。

 まあ全部出来たと言っても闘気技は完全に使いこなすのに苦労したな。


「そうだね。アークに突っかかって場合じゃないよね」

「そないやな。オッサン……いや、おっちゃんに文句言うても始まらん」


 どうやら二人は援護してくれるようだ。

 と言うか胡春は、マークがいるのにおっちゃん呼びになってるぞ。


「なぁ、春小川さん……」

「胡春と呼びぃ」

「え?」


 俺はマークに視線をやる。マークがいるのに良いのかと。


「もうええよ。アホらしくなってきよった」

「じゃあ胡春」

「何や?」

「出来ればおっちゃん呼びをどうにかして欲しいかな」

「それやったらにーちゃんええか?」

「普通にアークにしない?」

「わーたでぇ。アークはんでええね?」

「ああ」


 やっと普通に呼んで貰える。


「で、マークだけどやっぱこれ使え」


 俺の持つ通常の剣を差し出す。


「ユーはどうするんだ?」

「夜盗から奪った短剣がある。実は俺にはこっちのが性に合ってる」

「なら何で最初から、そう言う武器選ばなかった?」

「ん~~やる気なかったから? 勇者召喚とか勝手に呼び出してふざけんなって感じだったし」

「ユーがふざけてるだろ! ともかく俺はこの剣で十分だ」


 大剣に拘るな。


「あっそ」

「もうええわ。行こうか。あ、荷物持つや。今まで持ってくれておおきにな」

「じゃあ私も持つよ。ありがとうね」


 そう言って二人は俺から自分の荷物を受け取る。

 二人分になったのでめっちゃ軽くなったわ。って訳で迷宮探索再開。

 にしても流石は迷宮。洞窟のような作りだけあり、別れ道が多い。当然マッピングしてるけどな。

 てか、マークだけおいてこぼりにしてしまってるけど……。


 あれから見た目は洞窟の迷宮を何時間か歩き回った。宝箱がちょくちょくあり、武器や防具が入っていた。

 ぶっちゃけ荷物が多くなるのは、どうなのかな? しかも小刀はないし。あったのは小太刀だ。

 まあどっちにしろ剣で十分なので、小太刀を装備したりはしなかった。

 マークは黙々と魔法剣で魔物を倒す。

 まあ周りに気を使うようになっただけマシだが、大剣を思いっきり振り回せなくてもどかしそうだ。


「氷結の牙」


 …

 ……

 ………

 …………シーン。

 何も出なくなったぞ。


「氷結の牙……何故だ? 何故でない?」


 マークの魔法剣が発動しなかったので、流れるように沙耶が動き薙刀を振るう。

 やはり沙耶は薙刀術を嗜んでるだけあって動きが流麗だ。それに最初の頃より明らかに動きが良くなっている。

 ハウンドドック……いや、今はそれより上位のブラックウルフを一刀の元に灰にされた。


「恐らく魔法剣は魔力を使うのだろうな。魔力が切れれば使えなくなる」

「何!? 何故最初に教えなかった?」


 俺がそう言うとまた突っ掛かって来た。


「言っただろ? 俺は能力が分からない。獲得してるかも不明。だから人の獲得した能力の実態が何なのか分かる訳ないだろ?」

「くっ!」


 マークが言い返せなくなったからなのか苦虫を嚙み潰したよう顔をし出した。


「そもそも大剣じゃ燃費が悪い。通常より大きな面に魔力を流さないといけない。と言うか使ってる時に自分の中の何かを消費してると気付かなかったのか?」

「知るか」


 俺にキレられても困るんだけどな。


「って訳で意地張らないで、この剣を使え。魔力を纏わせる面が減れば燃費も良くなる」

「いいや。俺はこの剣を使う」

「そないやな。その方がええ」

「リーダーもこう言ってるぞ」

「リーダー? ウチがぁ?」

「最初に仕切るなって言われたし」


 それに三つ編みメガネで委員長ぽいしな。つかこのやり取り二度目のような……。まあどうでも良いけど。


「まだ根に持ってるちうワケやか? 意外にひつこいでんがな」

「いや根に持ってると言うか、誰でも良いやと思ってただけだよ」

「そうなんや」

「それよこせ」


 俺と胡春が話してるとマークがイライラした態度で俺の剣に手を伸ばして来る。

 なので俺が持つ通常の剣を渡し、俺は夜盗から奪った短剣を腰に下げた。

 小太刀でも良いが、今はマークが持っている。態々言うのも面倒だし、今のところ魔物も雑魚なのでこのままで良いやと思ったからだ。


「さて、マークが魔力切れ起こしたし、さっきの宝箱があった部屋に戻り、今日は休むべきだと思うが、リーダーはどう思う?」

「何や、前の部屋なん?」

「入口が一つだったからだ。そこだけ見張っていれば危険は少ない」

「そないう事でっか。やったら戻るか」


 と言う訳で、一つ前の宝箱の部屋に戻った。


「見張りはどないする?」

「アークは昨日寝ていないから、先にマークと一緒に休んで貰うのは? それで後から私達と交代で良いと思うよ」

「そやな。沙耶はんのゆう通りにしよ」

「じゃあお言葉に甘えて」


 良かった。今日は休める。

 今日も寝ずに見張りだったら、イライラが爆発してマークをぶん殴りそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ