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EP.01 エド城のムサシ (三)

 俺はエドに言われた通りエド城を目指し、東に歩き出していた。

 いや~エドと別れた後、大笑いしてしまったな。あのキザったらしいのは王になっても変わらない。

 エドといる時は、暗殺者ロールプレイをしていたので、必死に堪えていたが。

 それとエド城だからってエドの城ではない。エドの城はフィックスだ。

 あ! これテストに出るから覚えておくように。って何のテストやねん。


 この時の俺は目的ができていた。エドの『せっかく生きながら得た命だ。何か意味があったんじゃないか? それを探すのも悪くない。そう思わないか?』という言葉をヒントに……。


 転移したのだから、何か意味があるのかもしれない。それを探すのも悪くない――。



               ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 十二年前に全てを失った男がいた。

 ラフラカ帝国による毒物という悪辣な攻撃を受け、妻と子を亡くし、エド城は崩落し、その男だけが生き残った。

 深い絶望味わされ、一人でラフラカ帝国に挑み続けた勇敢なる男。それでも一人では限界を感じ途中からレジスタンスに所属し、十一年後大願を成就させラフラカを倒し英雄の一人となった。


 その際の勃発していた精霊大戦の後に各国から人々が集まり、見事一年でエド城が復興した。

 しかもエド城最後の生き残りだったという理由で、その男が町を自由に作らせて貰えた。

 長い年月戦い続けた彼に取っては、少なからずではあるがご褒美であったのだ。

 男は木造の長屋が並ぶ城下町にしたが、時代錯誤だと非難の声が上ってしまう。

 だが、男に取っては素晴らしい街並みになったと感慨耽るのである。

 そして城では他国の王族が国王となり、男はその者に生涯仕える事になった。

 その男の名は、ムサシ=ガーランド――。エド城唯一の侍だ。


 ただ困った事に町の復興時に張り切り過ぎて腰を痛めてしまう。ムサシの友人であり、同じくラフラカを共に倒した英雄の一人であるガッシュとの約束を果たせない事に悩んでいた。

 城が復興したら招待するという約束を……。

 ガッシュが暮らすのは大陸中の魔物が集まるサバンナと呼ばれる無法地帯。


挿絵(By みてみん)


 腰を痛めたムサシでは、そんな場所に行くのは厳しい。かと言って侍大将――ムサシが勝手にそう呼んでるだけで実際は国防将軍――の実力ではサバンナでは通用しない。

 其処で国王がムサシの為に傭兵を雇うと言ってくれた。ムサシは良き主に恵まれたと感謝の言葉を口にする。

 しかし志願する者は皆、侍大将に敵わない。それでは全く話にならない。最低限侍大将に勝てる者ではないとサバンナでは通用しないとムサシは考えていた。


 そして、ある日――。


「志願者が一名来られました」


 いつものように衛兵が報告に来た。


「ご苦労でござる。下がって良いでござるよ」

「はっ!」


 そして今回の志願者は……。

 今までの者と違う気迫がある灰色髪の男だ。ムサシはどこか懐かしさを感じるものがあると感じた。


「さて傭兵をやって貰うにはそれなりの実力がなければ困るでござる」


 いつもの決まり文句を口にするムサシ。


「……何をしろと?」


 灰色髪の男が問い掛けて来る。


「話が早いでござるな。簡単な事でござるよ。ここにいる侍大将を倒す事でござる」

「その名は止めてください。私は国防将軍です」


 侍大将のが良いと、どうしても考えてしまうムサシ。


「……わかった」


 灰色髪の男が短剣を構えた。


「気が早い奴だな。名は何と申す?」


 侍大将が名を訪ねる。


「……アークだ」

「そうか」


 侍大将も槍を構える。


「では始めっ! でござる」


 ムサシが開始の合図をした。


「おおおおお……。」


 侍大将が槍を突き出し、アークに突っ込む。が、シュっと消える。


「な、何? 消えただ、と?」


 消えたのではない。常人には見えない速さで動いたのだとムサシは気付いた。決着は一瞬だ。


「続けるか?」


 アークと名乗った者が姿を現した時には侍大将の後ろに回り込み短剣を侍大将の首元に当てていた。

 この気迫とこの動きは、ダークだと瞬時に見抜くムサシ。


「うっ……俺の負けだ」


 侍大将が槍を降ろす。それに合わせアークも短剣を降ろす。


「なかなかやるでござるな、アーク殿……いやこの場合、流石はダーク殿と言うべきでござるな」

「……何の話だ?」


 すっ呆けるアーク。


「寂しい事言うでござるな。共に戦った仲間でござろう?」

「ガーランドさんお知り合いだったのですか?」


 と、侍大将がムサシに問い掛ける。


「今、言った通り共に戦った仲間でござるよ」

「で、傭兵を雇うと言う事は、何処かに攻め込むのか?」


 アークはアークでダークという事を有耶無耶にしようと話を進める。


「違うでござるよ。サバンナからガッシュ殿を連れて来て欲しいのでござる」


 そうそれが目的で傭兵を雇おうとしていた。ダークと同じく昔共に戦った仲間であり友であるから……。


「それくらいならお前の実力で問題無いだろ?」


 ダークだと肯定しなかったのに、あたかもムサシの知り合いと言わんばかりのこの言動にムサシは嬉しく感じた。


「実は拙者、エドの復興作業で腰を壊したでござる。なんとも情けないでござるが」

「そうか。で、いくらだ」

「10000Gでどうでござるか?」


 本当は8000Gなのだが、昔の仲間のよしみでオマケするムサシ。



「良いだろう……で、何故奴を連れてくるのだ?」

「エド城が復興したら食事に招待すると約束いたでのでござるよ」

「そうか……じゃ行ってくる」


 と、アークが踵を返す。


「待つでござる」

「ん?」

「これでチキンを買って行くと良いでござる。ガッシュ殿なら匂いであっちから寄ってくるでござろうから」


 そう言ってアークにチキン代の2000Gを渡した。

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