EP.12 怠惰な蓮司
時はアーク達勇者が召喚された直後に遡る。
アーク達勇者は得た能力を申告し、訓練後に王と謁見する事になり謁見の間に向かった。
左の玉座に座る王らしき人はまだ三十歳くらいで若く、容姿で言えばかなり整っている。
髪の色は金色で瞳も金。衣装も王を思わせる豪奢なもの。その王が勇者達を見据えた。
右の玉座に座ってるのは、王妃と思われる。同じく三十歳くらいで美しく気品を感じさせる。
淡い青の髪をしており、美しいドレスを身に纏っていた。
しかし、勇者達……それも男共が気になるのは、王の左に立っているドレスを着た水色髪で黄色の瞳の少女だ。
歳はアークを除く彼らと同じか少し上くらいに見えるが気品があり、ぶっちゃけ超可愛いと皆感じていた。
もしかしたら勇者という立場からお近付きになれるかも。かなり期待してしまうなと、大半がそう思っていた。
尤もアークだけは冷めた目で王族達を見ていたのだが……。
「余の名はベルフェコール=アイム=デビルス。この国の王をしている。左にいるのが我が妻……」
「レヴィアタン=サマエル=デビルスと申しますわ。どうぞよしなに」
王妃が王の言葉を引き継ぎ名乗る。
が、大半の男共は、そんなのどうでも良いから、その可愛い娘が誰なんだよと思っていた。
「そして、余の右に立ってるのは……」
「デビルス国、第二王女クロセリス=リリム=デビルスですわ。どうぞ宜しくお願い致します」
王の言葉を引き継ぎ名乗ると同時にスカートのを摘まみ優雅にお辞儀をする。
髪か背中の辺りまであり、王女だけあり複雑な編み方をしている。
だが、それよりも胸元が開いているドレスだけはあり、谷間がはっきり見え、男共は凝視。股間を膨らませれいる奴までいる始末。女子に冷めた目で見られている事にも気付かずに。
更にはクロセリスが名乗るとそそくさと退出したので、あからさま残念がり、それが一層女子達に蔑みの目を向けられていた。
「他に第一、第二王子に第一王女がいるのだが、現在はリックロア国いるので紹介はできぬ。さて我が国の勇者教法王バルバトスから聞いたと思うが魔王復活の兆しがあり、其方らの力を貸して貰いたい」
「おいおい、そんな事よりクロセリスちゃんともっとお話しさせろよ」
と、つい本音を出してしまったのは勇者として召喚された一人である漣川 蓮司だ。
黒髪で中分にしており耳が隠れるくらいの長さで目元がキリっとしており、顔も整っているので学校では、それなりにモテる。が、王女に現を抜かした時点で大暴落していた。
「ふむ。ではこうしよう。この魔王との戦いで一番戦果を挙げた者に我が娘クロセリスをやろう。妻とするのも良し、奴隷とするのも良し、好きにするかが良い」
それを聞いた瞬間、アークを除く男子全員の目がクワっと開く。
奴隷なら良いな。あの大きなおっぱいを好きにして良いのか。と、ニヤリと笑みが零す。
やってやるよーと意気込み出した。それよりも一部だったのが全員してモッコリさせ前かがみになってた事には女子達がドン引く。いや、物理的に男達から距離を取った。
「では、まず其方らにこれを配ろう」
そう言って全員に腕輪を渡される。
「これは、能力が向上する腕輪。それにこれをデビルス国で見せれば、どの店でも無料で提供して貰える」
「マジか?」
「それはすげー」
「良いな、それ」
「勇者達に戦って貰うのだ。我が国としても国を上げて支援したいと思っている。暫し町を自由に使い英気を養うが良い。しかるのち戦いに参加して貰う」
最後にベルフェコール王がそう言って謁見が終了した。
さて、先程声を上げた蓮司だが、転移前の学校ではスクールカースト上位に位置し、取り巻きを何人か連れていた。
「蓮司さん、町に行ってみましょう」
うち一人目が豪山 剛毅。
刈り上げ頭で、能力は波〇拳みたいなものを得ていた。
「オイラも着いて行くっす。蓮司さん」
次に声を掛けて来たのは、二人目の特徴的な喋り方をするボウズ頭の天河 転。
能力は力が増強するものだと本人は思っていた。
「蓮司さん、僕も行きます」
三人目が、長髪で首の辺りまでの長さの多久島 拓哉。
能力は投擲による攻撃が百発百中のもの。
この三人は、大抵蓮司がいつもつるんでる連中だ。
「じゃあ四人で行くか」
そうして四人で町にくり出す。
そして、最初に目に入ったのは串焼き屋。
「くれるか?」
「まいど。何本で?」
「百本だ」
「蓮司さん、そんな食べるのですか?」
「そうっすよ、蓮司さん」
「僕達だけでは食べきれないですよ」
剛毅、転、拓哉が口々に言うが、蓮司は無視した。
「お客さん、お連れの言う通り食べきれるのですか?」
「ふん」
店の親父まで、そう言うが左腕に付けた王に貰った腕輪を見せると顔色を一気に変える。
「わ、分かりました。ただ数が多いので少々お待ちください」
そうして店の親父は慌てて串焼きを焼き出し百本きっちり渡す。
「どうやら、この腕輪は本当に効果があるようだな」
「それを確かめたかったんですね」
「流石蓮司さんっす」
「やりますね。蓮司さん」
「お前らがバカなんだよ。こういうのはまず確かめるのが常道だろうが」
そして串焼きを食べる。
まずい。いや、美味いには美味いが日本の串焼きには遠く及ばない。所詮は異世界か、とがっかりしていた。
ちなみに百本も食べきれないので適当に捨て出す。最初からそのつもりだったようだ。
この異世界に来て数日が過ぎ、最初は食文化の差から、ガッカリしたが蓮司は最高の遊び場を見つけた。一日中入り浸る始末。
飯、快楽、寝床、全てがそこにあった。
「レンジ様、今日はこちらなんて如何ですか?」
「おお。じゃあそれで」
「今日入ったお酒なんですよ」
そう言って女がお酌をしてくれる。
本来なら成人していないので、酒はご法度なのだが、異世界は十五歳が成人なので合法なのだ。正確にはまだ十四歳の者もいるが誤魔化していた。
しかしだからと言って……、
「お酌も良いが、今回は口移しをして貰いたいな」
「またお戯れを」
「ダメか?」
そう言って腕輪をチラつかせる。
これはやり過ぎだろ。
「ええ、喜んで……ぅん」
此処、遊郭が蓮司の遊び場となっていた。言えば何でもしてくれる。この遊郭はやりたい放題だ。
しかし、いくら遊郭でも節度があり、やり過ぎれば出禁になるのだが、その辺りを疑問に思わなかったのが間違いの始まりだったのかもしれない。
蓮司達は気付いていない。デビルス王家が渡した腕輪なの罠に。そもそも成熟が遅い地球の日本育ちの中坊が、もっと考えろと言われて出来ないのが当たり前なのだが。
「流石蓮司さんっす。じゃあオイラも頼むっす」
転も真似て口移しして貰う。
「レンジ様、私の口移しは如何でしたか?」
「微妙。おい、そっちの奴がやってくれ」
更には微妙と切って捨てて別の女を指名する。
その女は新人らしく初々しく若々しい。蓮司の好みは同じ歳くらいなので、こっちのが良いと判断した。
「わ、私ですか?」
「お前、名前は?」
「は、はいリリンと申します」
「で、リリン。嫌なのか?」
「ほら、ご指名よ。やりなさい」
先程、蓮司に口移しした女も援護した。正確には押し付けたのだが蓮司達は気付かない。
「わ、分かりました。では……ぅん!」
口移しして直ぐに唇を離そうとしたが、そうは行かない。
頭をガッチリ抑え、その女の口の中を蹂躙する。
「蓮司さん、非道ですね」
剛毅がそう言ってケラケラ笑う。
蓮司はそのまま双山の片方に手を持って行く。
「ちょ……」
「何か?」
「……いえ」
問答無用で揉みしばく。
「小さいな」
「蓮司さん、僕でもそこまで酷い事は言わないですよ」
酒で赤くした顔で拓哉が言う。
流石に小さいは言い過ぎたのか、はっきり嫌そうな顔をした。
「でも、今日はお前で楽しみたいな。おい床間へ」
そう言って寝室へ、そのリリンと向かう。
こんな傍若無人に振る舞っても通ってしまうから、蓮司達は増々調子に乗ってしまう。
「おはようございます。蓮司様」
朝、起きるとリリンが先に起きており、俺が起きるのを待っていたのか、起きた瞬間に朝の挨拶をしてきた。
そこは確り教育されているようだ。
「リリン、おはよう。とりあえず朝から元気になってるのを沈めてくれ」
「えっ!?」
「嫌なのか?」
そう言って腕輪をチラつかせる。
「いえ、起きた瞬間からだったのでビックリしただけです……では、失礼します」
あーダメだ。他の女が慣れていたせいか、リリンが下手糞に思える。と、蓮司は肩を落とす。
「ダメだ。話にならない。お前、跨れ」
「は、はい」
そう言って朝からおっ始める。
「リリンは良い顔するな」
「恥ずかしいので、あまり見ないでください」
顔を真っ赤にしだす。
新人の女は、こういうとこが新鮮で良いなぁと思う。
「気持ち良いのか?」
「………」
「どうなんだ?」
「は、はい。い、良いです」
目を逸らし耳まで赤くし、そう言う。まぁ実際のとこは、そう言っておかないと何されるか分からないからなのだけど。
「そうなのか、そうなのか」
下から更に突き上げる。
そうした時の歪む顔がたまらんと思うのだが、実際痛くて辛くて苦しくて堪らないのだ。蓮司はそれに気付かない。尤も気付いたら気付いたら何言われるか怖くて仕方無いのが現実だ。
朝から三回は済まし、苦痛から解放され疲れ切ったリリンを放置し宴会場に向かう。
宴会場と言っても、この遊郭で食事も出来る場所なので、宴会をしに行くわけではない。
「これはこれはレンジ様。おはようございます。朝食の用意が出来ております」
「では、頂くとしよう」
「ところでリリンはどうしたのでしょうか?」
「疲れ切ってるよ。客を前にそんな態度で良いのか?」
「それは申し訳ございません」
「首にしろ」
「いくら何でもそれは……。確り教育しますので」
「ふん」
俺は腕輪を見せる。
これである。言う通りにしても、このように理不尽な事を言われてしまう。リリンは辛いのを必死に耐えたのだが、結局無意味になってしまう。
蓮司達に逆らう事は、王家に反意を示す事になり、一族郎党斬首刑にされてしまう。それを表に出さずに蓮司達に尽くそうとするのが、もう既に何人か店を辞めさせられている。
「わ、分かりました。そのように取り計らいます」
「蓮司さん、朝からえぐいっすね」
「おー転も楽しんでたか?」
「それはもう。昨日四人同時に相手にしたっす」
「じゃあ朝食を摂るか」
「では、朝食中の際の余興に舞を披露しますね」
そう言って、遊郭の女が扇子を持って踊り始めた。
もう自分の思い通りなので、蓮司達は完全に調子乗っていた。故に……、
「おい、どうせ舞うなら脱げ」
「蓮司さん、マジ非道ですね」
後から来た拓哉がそう言う、同じく後から来た剛毅がうんうんと首を振る。
こんな事まで言う始末だ。はっきり言って、この遊郭にはそんなサービスはない。
そもそも衣装がヒラリと舞うのが美しく、それを見てお客に楽しんで貰う舞なのだが、中坊には理解出来ないのだろう。魅力が半減どころかそれ以下になる裸での舞を所望する。
「えっ!?」
舞が止まる。
「嫌なのか?」
腕輪をチラつかせる。
「……いえ、では脱がせて頂きます」
そう言って裸で舞を始め出す。
「別の意味で食欲が出て来たな」
「オイラもっす」
「俺も」
「僕もです」
蓮司の言葉に転、剛毅、拓哉が同意した。
そうして食事中だと言うのに違う食事を始めてしまう。
この数日間はずっと遊郭に住み込み楽しみまくっていた。
しかし、それも長くは続かない。
「勇者様方、出陣です」
その遊郭にデビルズ兵がやって来た。
「出陣って?」
「はい。ゼフィラク国が魔王を復活させようとしている可能性があります。なので攻め滅ぼして頂きたいのです」
「どうするっす?」
「行くしかないだろ」
転に聞かれ、蓮司はそう答える。
「せっかく楽しんでいたんだがな」
「とは言うがな剛毅。俺達は勇者として活躍を期待され、この腕輪を渡されているのだぞ。これで何もしなかったら腕輪も没収されるぞ」
「僕もそう思います。蓮司さん」
拓哉も同意し、蓮司達は名残惜しいが遊郭を出てカルラ国に向かう事になった。
いや、カルラ国とは言うが、ゼフィラク国を攻める足掛かりとして実際にはもう滅ぼされており城があるだけだが。
ただ蓮司達が遊郭を出る時に女共があからさまに安堵した態度をしてた事に内心イラっと来ていた。
どうせ王宮に請求してるんだろ? なのに何だ、あのふざけた態度は。そもそも俺達は魔王を倒す勇者様だぞ。全くふざけるな。とか思っていた。