EP.08 新たなる決意をするしかない -side Arc-
「おっととと……」
足がフラ付く。
「お前飲み過ぎなんだよ。ほら肩貸してやるから」
「わりぃ」
そう言ってカインの肩を借りる。
「やっぱリースが死んだのは痛手だったな」
「あん?」
「いや、お前の精神的な支えになってたの彼女だったろ」
「別に俺の女って訳じゃねぇよ」
「だが、支えてくれてたのは事実だ。まぁそれがお互い様だったとしてもな」
「………」
何も言えない。
確かに俺はリースのお陰で救われていた。最初は、人を殺しまくった不快感を忘れる為。
親しい仲間達が死んだ時もリースが、いたから堪えて来れた。
お互いに慰め合う都合の良い関係……でも、実際は違っていたのかもな。
俺の方がよっぽど支えて貰ってたのかもしれない。
「今日は宿舎に戻らず遊郭に繰り出すか?」
「……いや良い。暫く女は良いや。余計にリースを思い出す」
「おいおいおい……まさか本気だったのか?」
「それは無い。ただ支えて貰ってたのは事実だからな」
本気ではなかった。それは断言できる。
「そうかい。じゃ……ぅん?」
「どうした?」
突然カインが目を細める。
「あれ」
指を差す。
俺は、そっちの方を見た。
「や、止めてください。離してください」
「うるせー。女は黙って従え!」
「キャー! 誰か……ぅうんんん」
男と女が揉めており、最終的に男が女の口元に布を当てて黙らせた。
そして、そのまま布を口に縛ばり、抱えて去って行った。
「まずいな」
「放置……って訳には行かないよな」
カインがやれやれ、と言う感じで天を仰いだ。
俺達は騎士団の団員だ。騎士団は町の治安を守る義務がある。
「行くぞ」
俺とカインは離れ尾行を開始した。
「お前、酔いは大丈夫なのか?」
「あんなの見たら多少吹き飛んだ」
「多少かよ! で、何で尾行? とっとと捕まえれば良いだろ?」
「他にも連れ去られた奴がいるかもしれない」
「なるほどねぇ。潰すなら拠点を見つけれてからでも遅くないって事か」
「そう言う事だ」
そうして後を追い女を抱えた男が大きな家に入って行くのが見えた。
俺達は、足音を消し忍び込んだ。
「ほら、口の外してやるよ」
男が女の口に縛った布を外した。
俺達は隠れてそれを覗く。
「どうしてこんな事をするのですか?」
女がキィ! っと睨む。
「おーおー怖い怖い。だが大人しくしておけば良い思いできるぜ。どうせこの町はデビルスに支配されるんだからな」
何だって?
じゃあこいつらはデビルスの斥候部部隊か?
「この国はゼフィラクです」
「良いのかな、そんな事を言って。ほーらお仲間だぜ」
そうして部屋に明かりが灯る。
っ!? 最悪だ。
「何て惨い事を……」
カインも怒りに震える。
その部屋には、放心状態の一糸纏わぬ女が数人いた。散々弄ばれて心が壊れる寸前なのだろう……。
いや、もう壊れているのかもしれない。
「おー。新しい女か。こりゃまた楽しめそうだ」
「もうこの女共は壊れちまって面白くなかったんだよな」
「次の女はどこまで楽しめるかな?」
そう言って三人その部屋に入って来た。
「ヒィ……」
連れて来た女が恐怖で怯え切っている。
自分の末路を考えてしまったのだろう……。
「ほーら」
ビリビリ……!!
そして、女の服が一気に引き裂かれた。
「行くぞ」
「ああ。黙って見てられないな」
俺はカインの声を掛け飛び出た。
「何だ貴様らは!?」
プッシューンっ!
即座に斬った。
その後、デビルスの斥候部隊と思われる四人を俺達二人で斬り倒した。
なんて奴らだ。女を食い物にしやがって。
デビルスは斥候部隊までも腐っていやがる。こんな奴らがのさばると、悲しむ人達が、泣く者達が増えるばかり。
ああ、そうだな。俺は何で自分の事ばかり考えていたんだろう……。
確かに故郷を、幼馴染を、友を、支えてくれる女を奪った。
だけど、こんな辛い想いをしてるのは俺だけじゃない。現に此処に心を壊され掛けている女達がいる。
俺だけじゃないんだよ。
辛いのは他にも沢山いる。
だから、俺は自分の復讐の為だけでなく、他に悲しい想いをする人を作らない為に戦わないといけないんだ。
何で俺は気付かなかったんだ。どうしようもないな。俺は。
「あ、あの騎士様。助けてくださり、ありがとうございます」
連れて来られた女が破られた服を必死に抑え乳房を隠しながら頭を下げて来た。
黄色が強い金髪で腰くらいまである長さ。特に結いでる訳ではなく、そのまま垂らしている。
「いや良い。たまたまだ」
「何かお礼がしたいです」
「なら体で」
女が一歩退いた。再び顔が恐怖に染まる。
「バカか!」
「ぐっ!」
カインに蹴られる。
当然だな。貞操を運良く守れたのに、それをよこせと言われたと勘違いしたのだから。
「こいつが言った体ってのは肉体労働の事だよ」
カインが弁解してくれる。良く出来た友だぜ。
「ははは……そう言う意味の体ですか。分かりました。私でお役に立てる事なら」
女が苦笑しながら言った。
「ところでお名前を聞いても宜しいですか? 騎士様。私はアリス・シーンセス」
「アークだ」
「カイン」
「アーク様にカイン様。本当にありがとうございます」
再びアリスが頭を下げる。
さてと一糸纏わぬ状態で方針状態の女達も保護しないとな。まずは何か着れるものを……。
「アーク!」
そんな事を考えていたらカインに吹き飛ばされていた。
グサっ!
そして生き残りのデビルス斥候部隊がカインに剣を突き刺す。
クソっ! またかよ。また俺は……。
完全に酔いが覚めてなかったとは言え、このザマかよ。
普段なら気配で分かるのに。
ちっくしょーーーー!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は剣を振り回しその斥候部隊の生き残りを殺した。
「バーカ……ボーっとし過ぎだ……ごふっ!」
カインは、まだ生きていたようだが、吐血を起こした。
だが、その命は風前の灯火に思える。俺は直ぐ様、閃光弾を上げた。
救援を要請する時の為に一つ必ず持つ事を義務付けられたいたからだ。
今まで使う機会がなかったが、持っていて役に立った。
その後、カインとアリス、それに散々弄ばれた女達が保護された。カインも、何とか一命を取り留める事となる。
良かった。今回は失わずに済んだ。
その二日後、ゼフィラク国を経ち最前線の北の砦に三日掛けて向かった。
もう無様は晒さない。 俺の復讐、そして誰かに悲しい想いをさせない為に、今度は戦い抜いて見せる。
そう決心した……。