EP.01 プロローグ
息を潜ませる。森と一体化させる。
獲物に気付かれないように忍び足で進む。
やがて、俺は背中に携えている矢筒から矢を三本取り出し左手に構えた弓に添える。
そして射つ。射つ、射つ、計三度射た。しかし、木に止まっていた三羽のうち二羽逃げられてしまう。
それでも……、
「まず一羽」
そう呟き20m離れた仕留めた獲物のとこへ向かう。
ルシファー鳥は、まだ生きていたようだが、動けずに地面で片羽をバタバタさせていた。
たった一羽だけだったが、最近習得した弓にしては上々だな。
俺は血抜きの為に短剣で首を斬り下ろしトドメを刺した。
その後、獲物に感謝を込め、暫し目を瞑り黙祷を行う。
そうして獲物に対してこの場に行う事を済ませ、足に縄を括り付け逆さ吊りをして木に結び付け血抜きを行った。
「じゃあ次」
そう呟き再び息を潜め、森と一体化する。
そうして大半の矢は外れてしまったが、ルシファー鳥を三羽仕留めた。
そろそろ帰ろうと、木に括り付け逆さ吊りにしたルシファー鳥の元に向かう。
「ん?」
気配を感じる。
どうやらルシファー鳥の血に誘われて来たようだな。息を潜め、忍び足で近付く。
「猪か」
あれは矢では簡単に仕留められないな。仕方ないので腰に下げている短剣を抜く。
そして一歩、また一歩とゆっくり近付く。目の前に迫ると当然気付かれる。
だが慌てない。猪はこちらに突進して来た。
「シッ!」
一閃。
今日の獲物は極上だな。ルシファー鳥だけでなく猪も仕留めたのだから……。
俺は三羽のルシファー鳥を腰に括り付け、全長1m以上ある猪を背中に抱え帰路に付く。
「ただいま~」
玄関を開け家の中に聞こえるように叫ぶ。
「アーク、おかえりー」
「ああ、ただいま」
再び帰って来た挨拶をした。
「大量だねー。今日は猪もあるんだねー」
「だろ? 惚れ直したか?」
「はいはーい。そうだねー」
得意げに言った俺を適当に流し猪を持って行く。恐らく夕飯にするのだろう。
彼女が夕飯を作っている間、俺は風呂に入り、獣臭や血の臭いを洗い流す。
「ふ~……さっぱりした」
俺が風呂から上がると夕飯が出来ており、メインはやはり猪だ。
香草等を使い獣臭を消すお手並みは流石だ。それに味も整えている筈だ。彼女に料理を教えてくれた人の技術が息づいている。
とりあえず一口。
「美味い」
その一言につきる。
いつものながら彼女が作る飯は極上だ。
「アークが猪を捕まえてくれたからだよー」
そう言っていつも謙遜する。
そうして他愛のない会話をして夕食を終わらせた。
暫く家でのんびりしてベッドに潜り込んだ。
「ふ~……毎日同じ事の繰り返しで退屈だな~。何か刺激があれば良いのに……」
そう枕元に呟き、やがて眠気に襲われ意識を手放した。
「アーク、起きてー。朝だよー」
ん? もう朝か。
「ふは~~~」
大きな欠伸をして目を覚ます。
「ん? 此処は?」
ああ、そうか。夢を見ていたのか。懐かしい夢を。
俺が今、目覚めた所は家のベッドではない。外だ。つまり野宿してた訳だな。彼女もいない。
起こして貰う夢まで見るとか俺も末期だな。