表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/563

EP.18 治を救出 -side Takeru-

「おう! 行って来る」

「こっちは任せろ。男を助ける趣味はないが、確り全員守ってやるよ」


 俺達が拳を突き合わせると治は走り出しゾウの鼻から侵入して行った。

 悪いな治。色々煽ってお前を行かせたが、実際のとこ俺一人で始末できた。

 じゃあ何でしないのかって? バランスが悪いからだ。

 その世界の事は、その世界の奴にどうにかさせる。お前はもうこの世界の人間だ。

 お前が動けるのに俺がどうにかするのは違うぜ。

 魂魄撃魔法(ソウル・ストライク)や特大の斬撃なんて、ただの演出だ。

 いや、実際に魂にダメージを与えれば肉体が脆くなる。そこに特大の斬撃を入れれば、かなりのダメージが入る。これは本当だ。

 だが、俺の持つ切り札、奥の手等を出せば速攻終わる。そもそも斬撃である必要はない。

 俺のもっとも強力な攻撃は拳だ。お前の考えている通り、斬撃ではなく拳による打撃にすれば倒せるだよな~。


「お?」


 鼻が動き始めた。

 治は、まだ鼻の途中までしか登っていないな。

 一時期止まっていたが、何かの攻撃を受けていたのだろうか?

 索敵気法(さくてきほう)で、感じ取れていた。恐らくだが、気の強い攻撃を発した事で動けるようになったのだろう。

 まぁともかく登り始めた途中から鼻が動き始めた。

 そもそも頭にあるナニカが最初から動いていた。こいつは時間停止してもナニカだけは動いている。

 そして鼻も動かし出した。しかし、そこが限界なのだろう。体が動いていない。

 時間停止の中で動けるのは頭にあるナニカと鼻だけのようだ。


「ちっ! 男を抱える趣味はないんだがな」


 エド、ロクームに鼻が襲い掛かろうしていたので、二人を抱えて距離を取る。

 尤も二人を狙ったのではなく治を排除しようと暴れているのだろうがな。

 やがて治は頭に到達した。俺は索敵気法(さくてきほう)をゾウに集中する。

 勿論、いつ時間停止を解除されるかわからないし、魔物だけ操るなんて事も出来るかもしれない。 

 よって周りにも気を配るが、最優先で治の動向を気で感じ取った。


「苦戦してるな」


 治が頭に到達し二十分は過ぎてるがナニカを倒しきれてないようだ。尤も時間停止してるので、時間なんて意味をなさないのだが。

 鼻の動きもさっきから止まっている。恐らく治の排除にナニカが集中している為だろう。


「ん? あのバカ、何してるんだよ」


 治の気が弱まっている。まずいな……。

 このままだと負けるぞ。しゃーねぇな。

 俺は龍剣帰還の預言(アポカリプス)を抜く。龍の角を叩いて俺専用に鍛え上げた究極の一振り。

 何が何でも元の世界に帰ると言う意味を込めてアポカリプスと名付けた。


「来い!」


 右肩から右腕へ。そして剣へと銀竜が剣に巻き付く形で現れた。

 これは俺が会得した武術の流派で免許皆伝になると先代から譲られる力の源とも言える銀竜。

 これの力を借りた俺の力が十とするなら、これ無しだと五割程度といったとこだ。


「<我竜覇斬(がりゅうはざん)ッ!!>」


 上段から振り下ろした。

 刃先から銀竜を(まと)った特大の斬撃が飛ぶ。

 魂魄撃魔法(ソウル・ストライク)の効果に嘘はないが、あくまで演出。

 銀竜を纏わせるだけで十分だし、本来の我竜覇斬(がりゅうはざん)はこうやって使う。


 ジュピューン……ズサァァァっ!!


 斬撃が直撃するとゾウの首が半分辺りまで斬れる。しかし、超速再生で即座に首が元に戻った。

 それと同時に銀竜が俺の(もと)に帰って来る。


「<我竜覇斬(がりゅうはざん)ッ!!>」


 再び特大の斬撃を飛ばす。超速再生。


「<我竜覇斬(がりゅうはざん)ッ!!>」


 特大の斬撃。超速再生。


「<我竜覇斬(がりゅうはざん)ッ!!>」

「<我竜覇斬(がりゅうはざん)ッ!!>」

「<我竜覇斬(がりゅうはざん)ッ!!>」


 俺は繰り返し続けた。

 魂魄撃魔法(ソウル・ストライク)と組み合わせれば、終わるのだがあえて首を斬り落とさない。

 足の心臓を潰した事で硬質化したってのも本当だが、そもそも銀竜を(まと)わせた拳一発で終わる。

 じゃあ何でこんなまどろっこしい事してるかって?


「ぱお~~んっ!」


 これが目的だ。

 頭のとこにいるナニカと鼻しか動けなかったのに口も動くようになった。


 ドーンドンドンドーンっ!


 足も動かし出し暴れ出した。

 それすなわち……、


「な、何だ?」

「これは一体?」


 誰が声を上げただろうか。

 問題はそこではない。全員動けるようになったと言う事だ。


「心臓をほふったにてござるが、これからどうするのでござるか?」

「……頭じゃねぇか?」

「だな。そこ以外考えられないでガンス」


 次々に声をあげる。

 つまりこれは世界が動き出したと言う事だ。

 時間停止させても攻撃を受ける……つまり無駄だとわかれば時間停止を解除する。そう踏んだ。予想通りだ。


「ねぇアークはどこだい?」

「あれー? いないねー」


 ナターシャちゃんとエーコちゃんが声を上げる。


「何か知ってる?」

「あ・そ・こ」


 そしてルティナちゃんが俺に聞いて来たので頭を指差した。


「いつの間に……」


 全員驚きを隠せないようだ。

 まぁともかくこれで魔法が使える。あとは治がそれに気付くかどうか……。そして、気付いても通用するかどうか。

 まぁ本当にヤバいようなら、それこそいよいよ俺が始末するがな。


「あのゾウは世界の時間を止めやがった。で、そんな中で動けたのは俺とあいつだけだった」

「「「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」」」


 全員の声が揃う。


「俺は事実だけを言っている。そしてあいつは単身ゾウに突入した」

「なんでタケルさんは行かなかったのー?」


 エーコちゃんに聞かれた。


「時間停止させられている中でゾウだけが動いたら、俺とあいつ以外全滅だ。だから俺は残った」

「そっかー。ありがとー」


 うっ! エーコちゃんの純心な目が痛い。ごめんよー。

 本当の事は全部言えない。


「まぁともかく後はおさ……あ、いやアークに任せるしかない」

「私達も突入すれば良いだろ」

「エリスちゃん、突入してる途中で、また時間停止させられたらどうする?」

「ちゃん、だと? まぁ良い。そうだな、それはまずいな……」

「おいてめぇ、俺の女に気安いでガンス!!」


 治じゃないが、ロクームはウザいな。


「鏡欲しいのか?」

「は? 何が言いたいのでガンス?」

「ああ、そうだな。鏡見てから、文句付けろ」


 エリスちゃんまで言い出す。

 ナターシャちゃんを口説こうとしてたようだしな。それで治とモメたのに忘れたのかね?


「意味わかんねぇよ」


 アホだな。


「ともかく、あと俺達にできるのは見守る事だけだ」

「歯がゆいさぁ」

「だねー」


 誰よりも治の身を案じるナターシャちゃんとエーコちゃん。

 そして待つ事、暫くして索敵気法(さくてきほう)で感じる治の動きで優勢になって来た事を感じた。

 たぶん魔法が使えるようになった事に気付いたようだな。


「あ、終わった」


 そして治が頭の中にいるナニカを倒す。


「まずいな……」

「どうしたんだい?」


 ナターシャちゃんが焦ったように声を上げる。


「倒したは良いが、魔物は灰になるんだろ? あいつ動けないぞ」

「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」


 言ってるそばから巨大なゾウは灰となって消えた。

 そしてゾウの頭の中で倒れてた治が落ちて来る。

 山より巨大……たぶん400mくらいある高さから落下したらあいつ死ぬぞ。

 仕方ない。ここは俺が動くか……。


「<重力魔法(グラビティ)>」


 そう思っていたら、弓から発射された矢のように治に向かって行ったのはナターシャちゃんだ。

 この世界仕様の重力魔法(グラビティ)を誰だったか繰り返してる時に聞いた。この魔法の効果は二種類に分類される。物体に掛かる重力を増減させるか、自分が立つ地面の重力を増減させるかの二種類。

 前者のが便利だが人間サイズ以上を増減させると魔力消費が大きい。後者は少し不便だが魔力消費が少ない。

 不便と言うのは、例えば自分の立つ地面の重力を下げ飛ぶと高く飛べるが、同じ地面に下りないと高く飛び過ぎて地面に激突する。それ故、着地の時に同じように地面の重力を下げないといけないという手間が掛かるからだ。

 前者なら自分を軽くし高く飛び、軽いままなので着地も問題無い

 今回ナターシャちゃんは後者の方にしそのまま治を抱きかかえた。

 恐らくもう魔力がないのだろう。それに魔力があっても前者の場合自分を軽くしても治が重いままだ。治に重力魔法(グラビティ)を掛けないといけない手間がある。 


「アーク、大丈夫かい?」

「相変わらず、男前だな。ナターシャ」

「無理してさ。あたいも人の事言えないけどさぁ。エーコ頼む」

「分かったー……<重力魔法(グラビティ)>」


 エーコちゃんは、二人が落下しそうになってる地面の重力を軽くし、落下のダメージを軽減。

 やはり魔力が残ってなかったか。それ故に着地はエーコちゃんに任せたのだろう。


「魔力枯渇してたから助かったさぁ。回復も頼むさぁ」

「ごめん。わたしもー。ルティナお姉ちゃん」

「ええ……<上位回復魔法(ヒーリング)>」


 ルティナちゃんが駆け寄り上位回復魔法(ヒーリング)をかけて治のダメージを回復させた。

 しかし失った気は回復魔法では回復しない。暫く休まないといけない。

 そして気が枯渇すると動けないし最悪意識を失う。かろうじて意識はあるが動けないようだ。

 まぁ動けなくても脅威は去ったので問題ないけど。


「……終わったんだな」

「だねぇ。アーク、お疲れさぁ」

「アーク、お疲れー」

「……だが、げ、んか、いだ」


 そして治は意識を手放した……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ