EP.17 マンモスに勝ちました
マンモスの口から吹雪が解き放たれる。俺はこれで死ぬようだな。
悪いな。止められなかったよ。
シュィィ~ンっ!!
何だ? これは防御魔法?
エーコが形見の指輪に付与したピンチの条件付きで発動するものだ。
「はは……」
乾いた笑いが口から零れる。またエーコに救われたな。
なら、こんなとこで終わるわけには行かないよな。
俺はナターシャとエーコとずっと一緒にいたいんだからさ。
それには、こいつをぶち殺して大陸をもう一度守らないとな。
「っつぅぅ」
だが、ぶっ刺された足が痛くて動けない。俺の強みであるスピードが死んでしまってるな。
どうしたものか……。
あ、武がいつも言ってる魔法の言葉がある。気の応用。
闘気で血や痛みを止められないか?
俺は目を瞑り横っ腹と足に闘気を集中させる。残り少ない闘気だが、一か八かだ。
「よし! 痛みが和らいだ」
完全にじゃないが十分だ。そして目を開ける。
マンモスは突進して来ており、もう目の前だ。
俺は慌てずに後ろに回り込み右小刀を振るう。
カーンっ!
当然弾かれる。
マンモスは余裕綽々といった感じで振り返り鼻を振るう。
それも慌てず躱し右側面に移動し攻撃。左手の光陽ノ影を右手に持ち替えて影を攻撃すればダメージを与えられるだろうが、もう無駄な闘気は使えない。
それに持ち返る時間が惜しい。
そんな事より速く、速く動け。
カーンっ!
弾かれる。
鼻での攻撃が来る。
避ける。
速く、速く。もっと加速しろ!!
カーンっ!
負ける訳には行かないんだ。もう時間逆行はしない筈。これがラストチャンスなんだ。
プシュっ!
少し斬れたな。
ダームエル戦を思い出す。
エーコの形見の指輪のお陰で命拾いし、そこから速く動く事だけに集中し、ダームエルの張った障壁を破って行ったんだったな。
そしてトドメはやっと使えた闘気技。
プシュっ!
こんなんじゃ足りない。
もっと加速しろ。左手が凍ってる時点で手数も少ない。いずれ俺の体力が尽きて終わる。
それにあの時みたいにやっと使えた闘気技で倒す事はできない。
何故ならこいつには最初から放っていたのだから……。
プシュっ!
今度はケツを浅く斬る。
バックステップを踏み、マンモスが反転して鼻を振るって来たとこで……。
プシュっ!
鼻を浅く斬る。
考えろ。どうすればこいつに勝てる? 体だけじゃなく頭も加速させろ。
加速しろーーーーーっ!!!
プシュっ!
また浅く斬る。足りない。全然足りない。考えろ。
プシュっ!
次は左側面を浅く斬る。
マンモスは吹雪を放ちながら左回りに反転。俺も左回りに移動しながら吹雪を避ける。
待てよ? この吹雪って上位氷結魔法なんじゃね?
こいつ影をぶっ刺されて、一気に勝負をかけようと時間停止を解除したのかも?
それなら防御魔法が発動した説明も付く。
そもそもいくら付与されていても時間停止の中、精霊の力で使う魔法が発動するのか?
たぶんしない。なら賭けてみるか。もうどっちみち俺の限界は近い。
「<下位火炎魔法>」
「ぱお~~んっ!」
よし! 使えた。
下位火炎魔法が、マンモスに直撃。やはり弱点なのか苦しんでる。
しかし、中位火炎魔法なら一撃だろうが下位火炎魔法じゃダメージは少なそうだ。
それでも、今のうちに……。
「<下位火炎魔法>」
左腕の氷を溶かす。
「ぱお~~ん」
おっと。
鼻を振り回して来た。
焦るな。勝機は見えて来たんだ。慌てず避けろ。
変わらず加速しろーーーー!!
プシュっ!
右側面を斬る。
「<下位回復魔法>」
下位回復魔法を唱える。これで、足と横っ腹が多少回復した。
上位回復魔法じゃないと完全に回復しないが闘気を回す量が減る。何より左腕が使えるぜ。
プシュ、プシューンっ!
手数が増えた。
だが、浅く斬ってるだけじゃ話にならない。
プシュ、プシューンっ!
「<下位火炎魔法>」
「ぱお~~んっ!」
浅く斬ってもその傷に炎を潜り込ませてやれ。
プシュ、プシューンっ!
「<下位火炎魔法>」
それを何度か繰り返す。だが、魔力の底が尽きそうだ。
それに体力も限界だ。それでもマンモスの動きが鈍って来た。
あんなに素早く、反応も早かったのに……。
これならいけるか? 俺はバックステップを踏み距離を取る。
当然マンモスは追いかけて来るが遅い。ダメージを蓄積させた甲斐があったかもな。
これが最後の一撃だ。俺の全部出し切ってやる。
「<下位火炎魔法>」
残りの全魔力を込めた下位火炎魔法を小刀に乗せる。
小刀が燃え盛る。それを闘気を加えて維持する。
「がぁぁっ!?」
集中力が今までの比じゃねぇ。火だけに……ってくだらん事を思ってる場合じゃない。
火が小刀より上、腕まで登り腕を焦がそうとする。自分の出した魔法なので、大きなダメージじゃないが、小刀に集中させないとダメだ。片方なら平気でできたが、両手となると今までより集中して闘気と合わせ魔法剣を維持しないといけない。
「うわぁぁぁ!!!!」
気合で火を小刀だけに押し留め、上段で構える。
「<ファイヤー・クロス・ファングぅぅぅッッッ!!>」
残りの闘気を籠めた斬撃を放つようにX字に振り下ろす。
ズピューン……ズッドーンっ!!
X字の斬撃がマンモスに直撃。灰となって消えた。
「やった……のか?」
膝から崩れ落ちてしまう。
闘気を使い果たし意識を保ってるのがやっとで、立ち上がる事もできない。
「はぁはぁ……これで終わりなら良いがな」
心臓を潰したのに時間停止させられたしな。これ以上何かあったら堪ったもんじゃない。
って思ってるのに周りがどんどん灰になって行く。あーそっか、この巨大なゾウも魔物なんだよな。
灰になるわな。しかも山より大きい。このまま灰になったらそんな高さから俺、落ちるのか。
終わったな……。