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EP.16 マンモスと戦いました

 俺はゾウの鼻の中を顔に向かって走り続けた。しかし、途中で激しく揺れる。


「のぉぉぉぉ!」


 何だ? この揺れは。まさかゾウが動き始めたのか?

 武は、全員を守っているだろうか? いや、今は人の心配より自分の心配をしないと。

 上下左右がわからなくなる。それにこんな揺らされて気持ち悪い。


「ちぃぃ!」


 今度は鼻息か? 物凄い風が迫った。

 踏ん張って耐えてるが、いずれ外に追いやられそうだ。


「ふん!」


 ブスっ!


 両手の小刀を逆手に持ち地面……鼻の中なので地面というのはおかしいが下側に突き刺した。


「ぬぅぅぅ!」


 小刀を確り掴み鼻息が治まるの待つ。

 それに鼻をぐるんぐるん動かしてるようだけど、それも治まるの待つしかないな。


「今だ!」


 鼻息が収まり、揺れも大した事なくなったのを見図り小刀を抜き走り出す。

 そして揺れが激しくなったり鼻息が来れば小刀を下に刺し耐えるを繰り返した。

 やがて空洞に出た。恐らく顔の位置だろう……。後はここから頭へ向かうだけ。


 辺りを見回しながらゾウの顔らしき空洞を歩き回る。

 魔物はいないようだな。やがて穴が空いている天井を見つける。

 あれは脳に通じているのか? まぁ行けば分かるか。

 そう思い投擲武器にロープを括り付け投げる。


 ブスっ!


 穴の近くに突き刺さり、俺はロープをつたって登る。

 そして穴を通り脳の位置する場所に出た。同じく空洞だ。

 ただゾウが待っていた。しかし普通のゾウよりでかい。て言うか、ゾウの中にゾウがいるとか意味不明なんだけど。しかも足が五本とか半端だ。

 普通のゾウは確か全長7mだったかな? 詳しく知らんけど、目の前にいるのは10mを超えている。 高さも4mくらいか?

 そして何より特徴的なのが毛皮がある事だ。


「マンモスじゃねぇかー!」


 思わず突っ込んでしまった。そうマンモスだ。絶滅した生物だ。

 いや、まあ絶滅も何もこの世界にはいないんだけどな。

 そのマンモスが突進して来た。

 俺は闘気を籠め左手の光陽ノ影(こうようのえい)を突き出す。


 ドーンっ!


 光陽ノ影(こうようのえい)により張られたバリアに阻まれた。


「宣言通りぶち殺しに来たぜ。<スラッシュ・ファング!>」


 右手の闇夜ノ灯(やみよのあかり)を逆手に持ちダークの得意な闘気技を繰り出す。


「げ! かすり傷一つ付かねぇ」


 スラッシュ・ファングが直撃したのに全くダメージがない。こいつ硬すぎだろ。

 俺はバックステップを踏み距離を取る。


「なら、<クロス・ファング!>」


 右の小刀を順手持ち直し上から両小刀をクロスする形で振り下ろす。俺の得意とする闘気技だ。


 ズッドーンっ!


 X字の斬撃が直撃するがやはりかすり傷一つない。

 参ったな。こうなると接近戦をしながら、弱点を探るか。いや、弱点なら最初から分かっているんだけどな。

 分かっていてもどうせ無理だろう……。

 そう思いマンモスの右側面に回り込み右の小刀で斬る。


「クソっ!」


 でかい図体してなんて身軽なんだ。サイドステップして躱しやがった。なら一応試してみるか。


「ファイヤー」


 ………………しーん。


 やっぱ下位火炎魔法(ファイヤー)が出ない。こいつの弱点は火だろうと予測していたが、出なければ意味がない。

 これならユキからフレアランスを奪ってくれば良かったな。


「ぱお~~ん」


 げ! 反撃が来た。

 マンモスは直ぐ様反転し長い鼻を振り回した。


「くっ!」


 光陽ノ影(こうようのえい)を突き出すが、咄嗟だったので十分に闘気を流せなかった。

 そのせいで、バリアは即壊れ鼻で吹き飛ばされてしまう。


「つぅぅ!」


 それでもバックステップを踏んでいたので、ダメージは多少殺せた筈。だが、吹き飛ばされたわけだし痛いわ。


「ぱお~~ん」


 突進して来やがった。マンモスのくせに追撃かますのかよ。

 俺は残像を残す程、全力で走りマンモスの後ろを取る。そして右小刀を振ろうとするが……、


「ちぃぃ!」


 マンモスが反転。気配察知もできるのかよ。また鼻で攻撃されるかもしれない。

 なので右小刀の攻撃を中断し、左小刀を鼻に突き刺すように突き出す。

 しかしバックステップを踏み躱される。

 攻撃ではなく防御の為に左小刀を突き出したのだけどな。

 どうせダメージは通らないのに何故避けるんだろうか……。

 まあ気配察知ができようが、素早かろうが、所詮は獣って事か?


 プシューンっ!


「え?」


 小刀が当たってないのにゾウの鼻が少し斬れた。

 今、何が起きた? もしかして……?

 俺は今度は左側面に回り左の小刀を振るう。マンモスはサイドステップを踏みで躱すが……、


 プシューンっ!


 左側面に少し傷が入った。やはり……。

 光陽ノ影(こうようのえい)って名前だけはあり、影に攻撃ができるのだな。

 なんだよ。

 武の奴、最初から教えてくれよ。いくらマンモスが硬くても影なら関係ないっぽいな。だから小刀事態はダメージが入らなくても、本能で危険を感じバックステップで距離を取ろうとしたのだな。

 よし! じゃいっちょ反撃開始と行きますかね。

 追撃するように前に踏み出し左小刀を突き出す。


 カーンっ!


 今度は避けないのかよ。いくら獣でも学習能力があるってか?

 体で受け止めればダメージがないと分かってるのだろう……。

 そしてマンモスは反転しつつ鼻を振り回す。


 ギーンっ!


 鋼か何かかよ。

 鼻を受け止めようと右の小刀を振るったが、金属がぶつかり合う音が響いた。


「くぅぅ!」


 つうか威力が死んでねぇ。マンモスの力のが遥かに上だ。


「ぐはっ!」


 マンモスの鼻に吹っ飛ばされ、無様に地面に転がる。

 いってーなー。まあ多少の打撲程度か? だから、まだ動ける。

 ダームエルと戦う前の俺だったら、この時点で諦めてケツまくって逃げていたな。


「ぱお~~ん」


 ちっ! 内心舌打ちしてしまう。

 ここで追撃かよ。体勢がまだ整ってないっての。


 カーン、カーン、カーンっ!


 牽制しようと投擲武器を三本投げるが全て鼻で振り回され弾かれた。

 肉薄の瞬間、光陽ノ影(こうようのえい)を突き出し闘気を籠める。


 ブスっ!


「うっ!」


 突進の勢いでバリアが砕かれ、マンモスの3mはあるのではないかという牙が腹に刺さる。

 咄嗟に半身逸らしたので右の方だが、ぐっさり刺さってしまった。


 ドーンっ!


「がはっ!」


 そのまま放り投げられ、地面に叩きつけられた。

 まずいな。魔法も使えないんじゃ、厳しい戦いだ。


「ぱお~~んっ!」


 また追撃かよ。しつこいな。体勢くらい立て直させろよ。

 なら、あの幻覚の空間を打ち破ったように闇夜ノ灯(やみよのあかり)を振るえば、牽制になり体勢くらい立て直せるか?

 そう考え闘気を多めに籠め横一文字に振るう。


 スッバーンっ!


 斬撃が飛ぶ。それも綺麗な斬撃だ。白く明滅している斬撃。まさに闇夜に明かりが灯っているように……。


 プシューンっ!


 マンモスの頭に直撃し、今までで一番ザックリ斬れた。お陰で足が止まってくれる。その隙に立ち上れた。


「はぁはぁ……」


 これからどうしよう? 少しフラ付いているな。

 横っ腹刺されて血を流し過ぎたのも勿論ある。だが、それだけじゃなく闘気を使い過ぎた。

 あれは体内エネルギーを収束したものだけに使えば使う程、体内エネルギーがなくなり意識すら保てなくなる。

 さっきの一撃にかなり持って行かれたな。ここからは闘気も極力使わずにやるしかないな。


「ぱお~~ん」


 再びマンモスが迫って来た。俺は後ろに回りケツを斬る。


 カーンっ!


 当然弾かれる。マンモスは斬られる事ないと判断にしたのだろう……。

 今までと違い余裕綽々と言った感じでゆっくり反転。そして鼻を振り回す。


「ふんっ!」


 それをヤクザキック。当然吹っ飛ばされるが空中で反転。

 もろに受けて吹っ飛ばされるより全然ダメージが少ない。

 俺は着地と同時に左の小刀を逆手に持ちマンモスの影に向かって突き刺す。

 今まで影の上で振るっただけでダメージを与えいた。なら、直接影にぶっ刺したら……、


 ブスっっ!!


 予想通り今までより深くマンモスに傷が入った。血が噴き出る程に。


「ぱお~~んッ!!」


 完全におかんむりだな。鼻を振り回しながら反転。

 俺は鼻を避けるようにバックステップを踏む。それを追い掛けるように突進して来た。

 更にバックステップ。


「くっ!」


 血を流し過ぎた。フラ付く。やばい。足がもつれた。

 それでも何とかバックステップを踏むが、少し遅れたせいで鼻が届いてしまう。

 咄嗟に左腕でガード。


「ぐはっ!」


 失敗した。

 これで左腕が使えない。つまり光陽ノ影(こうようのえい)が振れない。

 右手に持ち返れば良いのだろうが、そうなると牽制で闇夜ノ灯(やみよのあかり)が使えなくなる。

 と言うかそれどころじゃない。今追撃で突進されたら終わる。


「ぱお~~んっ!」

「え?」


 追撃して来ない?

 なら、今のうちに立ち上がって体勢を立て直さないと。

 とりあえず左腕は、折れるまで行ってないようだ。だが、痛みでほとんど挙げらないな。

 マンモスを睨みながら、体の調子を確認する。横っ腹は、相変わらず血を垂れ流していた。

 急所は避けたが、速く決着を付けないとダメだなこれ。だが、どうやって?

 考えがまとまらないうちにマンモスが口を大きく開けた。


「何だ?」


 そして、その口から吹雪が吐き出された。


「げっ!」


 ユキかよ。

 もうどうせ左腕は使えないし、左腕でガードした。

 左腕は凍り付き完全に使えなくなる。参ったぜ。どうしたものか。


「ぱお~~んっ!」


 トドメと言わんばかりに突進。

 クッソー! 俺にぶつかる瞬間飛び蹴りを繰り出す。


 ブスっ!


「くっ!」


 足裏に牙が刺さり貫通する。

 そのまま逆さ吊りにされ、振り回される。


「のわぁぁぁ~」


 気持ち悪~~~い。

 そして地面に叩き付けられた。


「がはっ!」


 背中を強打してしまう。ダームエル戦の時のような満身創痍だぜ。

 魔法が使えない分、こっちのきついがな。それでも何とか立ち上がる。


「はぁはぁ……」


 何だ?

 また追撃がないが、(なぶ)りまくりたいのか?

 やがてマンモスの口が大きく開く。また吹雪か。

 これは終わったな。次は全身氷漬けで氷像の完成だ。ゾウに像にされるとか笑えねぇ。


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