EP.06 なんちゃって秘儀
エリスとムサシは六本の腕を持つスケルトンデッドの前にいた。
アークが言葉通り、一対一での戦闘で、魔法が使えない結界が張られている。
そのスケルトンデッドと対峙するのはムサシだ。スケルトンデッド程度ならエリスでも遅れは取らないので、上の階層でムサシに無理をさせる予定故に下の階層では自分が受け持とうと提案したのだが……、
「拙者は監禁されていた故、体の感を取り戻したいにてござる。上の階層は、エリス殿では厳しいらしいにてござるからな」
と、言われてしまいエリスは、スケルトンデッドを譲る事にした。
確かに上の階層の守護魔物は、エリスでは厳しいと自分でも分かっているのだ。それならムサシにベストパフォーマンスで事に当たって貰いたいと考えるのも当然と言えよう。
「ふっ! ふっ! ふっ!」
しかし、スケルトンデッドとの戦いが開始され、暫く経つと言うのにムサシは、一向に攻撃しない。全て回避しようとしている。と言うのも、実際には大半が回避出来ていないのだ。
掠り傷だが、徐々にその身に傷が増え鮮血を撒き散らす。後ろで見守るエリスも手を出したくてやきもきしてしまう。
「はっ!」
カーンっ!
それでも致命傷の攻撃は、刀で弾く。それも鋭く速い。アークの言う通りでエリスでは接近戦でムサシには敵わない。それくらい速い刀捌きなのだ。
この大陸のおいて武器種によってある程度性能が決まっている。最も強力なのが槍だ。エドのグングニルは、攻撃力だけで言えば一線を画していた。対魔物用チェーンソーと言う例外はあるが、最強の武器種と言えよう。
剣は防ぐのを想定しており、刀身の幅が広く、大剣ともなると俊敏は落ちるものの鉄壁の武器とも言える。
では刀は……攻撃力だけで言えば槍に劣るが、俊敏が上がる性能があった。それは小太刀、小刀と短くなればなる程、顕著になる。
ただし、素早く斬る事を想定されており、剣より刀身の幅が狭い。従って耐久度が低くく防御には向かなくパディするにも上手く弾かないと刀が直ぐにダメになってしまう。
つまりは、相手の攻撃より速く振るい斬らないといけない扱いが難しい武器種なのだ。
刀でパディする場合は、特にタイミングに気を付けないといけない。相手が振り切り勢いに乗る前に弾かないと前述の通り折れてしまう可能性があった。
が、ムサシは後の線できっちりパディを行う。相手の攻撃を見て致命傷と判断したなら、後から動き始めても素早く斬り付け、相手が武器を振り切る前にパディを行う。
それだけの技量があるのだ。エリスは、ほとんど回避に専念し、細かい切り傷を増やしてるのを見ている事しかできなく、やきもきしているが、その刀捌きだけには目を見張り感嘆の息を吐き出す。
「ふっ! ふっ! はっ! ふっ!」
カーンっ!
やはりスケルトンデッドの攻撃を避け続け、時々鋭く刀を振り致命傷の攻撃を弾く。
段々エリスに迷いが生じる。流石に六本の腕にそれぞれ剣を持った六刀流の相手は厳しいのだろうか? と。
エリスですら、それなり苦戦するが割りとあっさり倒せる魔物だ。それに時より見せる鋭い刀捌きを見る限り大丈夫そうだが、何せ一度も攻撃に転じていないのが気がかりに感じていた。
「ふっ! ふっ! ふっ!」
やがて斬られる回数が減り、鮮血を撒き散らさなくなる。それどころか刀で弾かなく躱すようになる。
「ふっ! ふっ! ふっ!」
そして、完全に見極めたのか、全ての攻撃を躱しだした。
「頃合いでござるな。体の感が戻って来たでござる」
ポツリそう呟く。
それでやっとエリスも得心が行く。
最初の言葉通り、体の感を取り戻し慣らして行った。つまりスケルトンデッドを丁度良い練習台にしたという事だ。
「そろそろ終わらせるでござる。秘儀・月」
そう言った刹那。ムサシお得意の秘儀が炸裂。
エリスは『は~』と呆れの溜息を溢す。ムサシの秘儀は強力だが、名前がどれも駄洒落に思えるからだ。秘儀・朧以外は……。
この月もただの突きの応酬。
パキン! パキン! パキン! パキン! パキン! パキン!
ムサシの鋭い突きで、ガード姿勢を取ったスケルトンデッドの剣を一本一本砕いて行きやがて全て砕けて無防備を晒す。ムサシのようにパディをすれば良かったのだが、スケルトンデッドにはそんな知能も技能もない
「此処っ! でござる」
そして最後の一突き。
肋骨どうしの細い隙間に刀を刺し込み核を貫いた。速い上にあんな繊細な動作……エリスは自分には真似できんなと再び感嘆の息を吐き出す。
やがて核を突かれた事により、スケルトンデッドの体が崩れ始め、灰となった。
「お待たせしたにてござる。エリス殿」
振り返りエリスの方へ向かって来た。
「最初は苦戦しているのかと思ったぞ。とりあえず回復だな……<下位回復魔法>」
掠り傷とは言え、無数に刻まれているのでダメージは、それなりにあるだろう。
エリスは下位回復魔法を掛けた。またエリスがムサシを見守っていた場所は丁度魔法封じの結界がない場所だったので魔法が使えたのだ。
「感謝致すにてござる。苦戦していたのは事実にてござる。体を思うように動かせるようにまで時間がかってしまったにてござる」
それでも刀捌きは見事だったと、エリスは思う。
「さて次の階層に行くにてござるか」
「次は、あまり傷を負うなよ。私の魔力もいつまで保つかわからんからな」
「心得たにてござる」
ムサシが答えると再び振り返り進みだした。その先にあるのは螺旋階段。これを上り、次の階層に向かう訳だ。
先程、魔力がいつまで保つか分からないって言ったのは、此処の階段を上る時に現れるコウモリの魔物が思ったより数が多くて、結果魔力消費が激しくなってしまうからだ。
「では、階段では前を任すにてござる」
「ああ」
そう言ってムサシが前を譲る。
階段ではエリスが前に出てコウモリを倒す。一対一の場所では接近戦に優れたムサシが倒す。利に叶った配置だ。
アークとは何者なのだろうか? と、エリスはどうしても考えてしまう。
エドワードに聞いたとは言っていたが、エリス達の事を知り過ぎてると感じてるのだ。
「<下位火炎魔法>、<下位火炎魔法>、<下位火炎魔法>」
そんな事を考えながらもエリスは、下位火炎魔法でコウモリ達を処理して行く。
「<上位火炎魔法>」
束で掛かって来た場合は、圧倒的火力の上位火炎魔法で処理。この魔法の特徴は単発では、火の鳥を飛ばす中位火炎魔法には劣るが、直径2mはある特大の炎の猛威……数の暴力だ。
「ふ!」
ザンっ!
完全に接近を許せば左手に持つ愛剣の一振りである名将の剣インバリットクイーンの錆にしてやる。
大半は下位火炎魔法で片は付くのだが、それでも数が多すぎて魔力消費が激しい。ルティナやエーコなら何でもないが、エリスは二人程魔力はない。
ましてやエリスの得意とするのは氷系。氷系を使えばほんの少し消費が軽減されるのだが、コウモリは炎に弱いので仕方ない。
「<下位火炎魔法>、<下位火炎魔法>、<下位火炎魔法>」
それにしてもアークの不可解な点は他にもある。と、ふと再びアークについて考え始めるエリス。
戦闘力だけでなく内情も知っていそうだ。ロクームとモメてる時にルティナや最近では町の女に色目を使っていた事。
エドが戦闘の事を教えたとしても、そんな話はしないだろう。そもそも町の女の話は知らない筈。
エーコも態々それを話したりしないだろう……。
そう言えば今回の騒動で十一人の英雄……一人は故人なので十人集めているとエーコが言っていた。と、エリスは思い出す。
が、ダークはいない。代わりにナターシャがいる。ダークは探さなかったのだろうか。まぁ見つけたとしても協力してくれないだろうけど。
ただアークとアルの会話を察するにアークはスピード系だ。それも武器は小刀。まさか……?
いや、ダークは小刀も扱うが、大半が小太刀だ。バレないように小太刀を腰に下げていない?
まぁそんな訳ないか。そもそもアーク=ダークだとしても町の女は説明付かないしな。
エリスは首を振りほとんど正解を引き当てたが、余計な思考を頭に奥に追いやりコウモリとの闘いに集中した……。
「では、参るにてござる」
そう言ってムサシが対峙し始めたのはアークの情報通りトロールだ。此処からはエリスでは困難になる。
肉が厚く刃が通り辛い。剣だけで挑むには、倒すまでに時間がかかるし、きっちり仕留められるか五分五分と言った相手だ。
だが、ムサシなら勝てるだろう、とエリスは思う。不安要素があるとしたら、しばらくの監禁生活で十全に力を発揮できない可能性がある事。
「ふん!」
トロールのこん棒を刀で受け流す。サムライの特性は防御に優れている事。刀で受けたり、または受け流したり。防御に向かない武器種だと言うのにそれが出来るのがサムライなのだ。
そうやって誘い受けし、隙を見つければ斬り掛かる。エリスも剣で受ける事はあってもムサシのように流れるように綺麗に受け流せない。
ザンっ!
ムサシはこん棒を左に流すと右腕を斬る。トロールの鮮血が跳ねた。しかし、やはりあの肉厚にでは完全に斬れない。
左に流れたこん棒が返しの刃……刃ではないが返しの一撃が来る。それをムサシがバックステップで躱す。
「秘儀・残」
トロールの一撃は隙は大きい。その隙を狙い斬撃に特化したムサシの秘儀を縦一文字に繰り出す。
何故か字が斬ではなく残で、ムサシの秘儀は意味が分からないのが多い。
「ぬぅぅぅ!」
ムサシが唸る。今のは決まったと思ったのだろう……。
エリスも同じだった。斬撃に特化した秘儀を大振り後の隙で繰り出したのだ。本来のトロールなら絶命していただろう。
しかし体を後ろに反らされ、飛び出た腹が少し斬れただけだ。恐らくトロールの中でも強力な個体だったのだろう。と、エリスは推測する。
そして隙が大きいのは秘儀・残も同じ。その隙を狙いこん棒を振り被る。
「秘儀・円」
刀を上に上げれば防げるが、秘儀・残の硬直で即座に動けず秘儀・円で対応した。
円は刀を回すように攻撃を防ぐ秘儀だ。硬直しているとこを刀を無理矢理上げるより秘儀でカバーした方が体の負担が少ないと判断したのだ。それに下手に完全に受け止めてしまえば、あっさり刀が折れてしまう可能性がある。
ゴンっ!
右回りに刀を回し、こん棒の左側面に当てる事により鈍い音を鳴らし攻撃を防ぐ。
「秘儀・月」
突きの連打。
シュシュシュシュシュ……。
トロールの腹に無数の傷が入り、鮮血を撒き散らす。しかし、どれも浅い。致命傷にはならない。
見てる事しかできないとは歯がゆいな。と、エリスは奥歯を噛みしめる。
魔法が使えれば中位火炎魔法》二、三発あれば倒せるのに、と。
だが、魔法を封じる結界が張られており、それは出来ない。かといって、剣で挑んでもムサシでも攻めあぐねているのにエリスでは話にならない。
それでも何かしようと動こうとする足を自制心で何とか抑え付けていると懐で音が鳴る。その発生源取り出し、頭に取り付けた。フィックスで作られた通信機械だ。
≪こちらルティナ。聞こえる?≫
通信機械からルティナの声が聞こえた。
「こちらエリス。聞こえるぞ」
≪もしもしアークだ≫
≪もしもし? 何それ?≫
エリスも気になっていた。
≪あ~~……気にするなルティナ≫
≪こちらエドだ。感度良好≫
ロクーム達とエーコ達の声は聞こえない。
エーコにはナターシャがいるし魔物を上手く避けてそうなのだが、応答しないという事はよっぽどの事があるのか? と、思うエリス
そしてロクーム。お前は何をしているのだ? アークではないが、大陸一の冒険家が聞いて呆れるぞ。
やはり自分がいないとダメなんではないかと最近思い始めている、エリスであった。
≪もう到着したわ。皆はどう?≫
ルティナ達は誰よりも早かった。
足の心臓とやらがある階層を四階層とするなら、エリス達はまだ四階層中二階層だ。
≪早いなルティナ。俺達はまだまだだ≫
「こっちもだ」
≪こっちもだ≫
≪ならしばらく待機してるわ≫
通信を終わらせ、エリスは懐に通信機械をしまい再びムサシの様子を伺う。どうやら厳しいようだ。
しかし、先程よりトロールに付いた傷が増えている。血で真っ赤に染め上げていた。そのお陰か、先程よりトロールの動きが鈍い。
「……頃合いでござるな」
ガっ!
ムサシが呟くと力強くこん棒を弾く。
それによりトロールがよろける。
「なるほど」
と、エリスは頷く。
秘儀・残で決められなかったので、おびただしい量の血を流させ体力を奪ったと察したのだ。
「秘儀・残」
再び残を繰り出す。今度は横一文字。
プッシューンっ! と、トロールの首が飛ぶ。今度こそ決まったのは火を見るよりも明らか。
「お待たせしたにてござる。思ったより手古摺ってしまったにてござる」
そう言って歩いて来たムサシには打撃痕が数ヵ所。何発か貰ったようだ。
「<中位回復魔法>」
エリスは中位回復魔法で回復を行った。
「かたじけないにてござる」
そうして進みだし、螺旋階段では同じくエリスが前に出てコウモリ達を退いて行った。
「さて、此処で最後にてござるな」
「大丈夫か?」
トロールで苦戦していたのだ。次のキラーマシンは、もっと厳しいだろう。と、エリスは考える。
「そうでござるな……この刀もだいぶ無理をさせて来たにてござるからなぁ」
刀を抜き、刀身を掲げる。
今にして思えば斬れ味が落ちていたからトロールを直ぐに倒せなかったのかもしれない。と、エリスは漠然と思った。
今のムサシの刀は、精霊大戦の時から使っていた。エリスの持つ聖剣ライトオブソードと名将の剣インバリットクイーンは、古代武器で、いつの時代に作られたものか分からない、現在では再現不能な武器なだけあり、メンテを確りやれば早々斬れ味が悪くなる事はない。
しかし、ムサシの刀は現在の名工が鍛え上げたもので、年々劣化してしまう。
「そこじゃないだろ!」
そう、そこじゃない。とエリスは、つい声を荒げて突っ込んでしまう。
「ぬ?」
「トロールに苦戦していたのだ。キラーマシンはもっと厳しいだろ?」
「やれるだけやるにてござる。まぁ行って参るにてござる」
そう言ってムサシはキラーマシンに向かって歩き出す。キラーマシンは、二刀流だけはあり、剣で攻撃を防がれる事が多い。
仮に胴体まで、攻撃が通っても硬くてダメージが入りづらい。ただ雷系に弱いので上位稲妻魔法一撃で終わる。
だが例の如く、魔法を封じる結界が張られているので、厄介この上ない。
「奥義・扇」
先制攻撃と言わんばかりにムサシから攻撃を繰り出す。それも奥義だ。
だがエリスはいつも思う。『奥義で扇とかふざけるな!』と。
ムサシの刀が上段から振り下ろす。キラーマシンは、それに対応すべく両手の剣をクロスする形で防御姿勢を取った。
だが刀は、まるで扇を描くように軌道を変える。
剣戟において曲線を描くように振るわれると見極めが困難で対応しづらい。
しかし、直線より遅くなってしまうので、余程の達人ではない限り奇策にしかならない。
ムサシのこの一撃は直線と同じ速さで曲線を描く一撃なので強力なのだ。単純ではあるが、それが絶大な力を発揮できる故に奥義なのだろう。
名前はどうにして欲しいがな。
……名前はどうにして欲しい。
大事な事だ。
三度言おう。
扇という名をどうにかしろ! と、内心ツッコミまくるエリス。
カーンっ!
胴体にヒット。予測通りというかなんというか。硬い胴体に弾かれてしまう。
次の手番はキラーマシンと言わんばかりに剣を振るう。それも右、左と時間差でだ
「秘儀・円」
カーンっ! キーンっ!
刀で円を描くように回し時間差で来た攻撃を弾く。
「秘儀・朧」
先程と同じく上段から斬り掛かる。キラーマシンも同く剣をクロスに構えて受けようとした。
しかし、ムサシの腕と刀がボヤける。次の瞬間。右から斬り掛かっていた。
朧は、幻を見せて実際には別方向から斬り掛かるものだ。はっきり言って、これが一番秘儀らしい秘儀だ。
今のとこ出していないが、秘儀・打が一番最悪だ。と、エリスは思う。
パッキーンっ! と、胴体に当たった瞬間、刀が折れてしまう。ムサシは、まるでそうなると予想していたと言わんばかりに即座にバックステップを数回踏み後退。
「かわ……」
……るか?
とエリスは言おうとしたが止めた。いや、言える雰囲気ではなかった。
ゴゴゴゴゴ……ッッ!!!!!
まるで地響きが起きてるのではないかと錯覚する程、エリスはムサシの背中から圧を感じた。闘気が大量に溢れているのだ。
ムサシは腰に差さっているもう一振りの刀を抜いて掲げた。
何だ? あの刀は? と、エリスは目を丸くする。漆黒の刀身だ。
「破律白銀よ! 拙者が新たな主としてお主を振るうにてござる」
サムライは形式美でこだわる。
愛刀があるうちは次の刀を愛刀にせず、新たな愛刀を使う際に今のような口上を言う。
つまりは、ムサシは次の刀を用意した上で、この決戦に望んだ。とは言え、武から貰いそのまま持っていただけの話であるが。
「秘儀・<破国>」
「え?」
ムサシは、キラーマシンから距離を取ったまま刀を上段から振い、エリスは間の向けた声を出してしまう。
間合いではないから空振るだろ? と、エリスは思ったからだ。だが結果は……、
ズサァァァァァーーーーっ!!
「っ!?」
エリスは目を剥く。
刀から何かが飛び出す。斬撃が飛んだというべきか。エリスやダークは闘気剣で斬撃を飛ばせるが、ムサシには出来なかった筈。
しかし、エリスが驚いてるのはそこではなかった。斬撃があまりにも大きいのだ。
キラーマシンが跡形もなく消えてしまう程に……。アルファードのオーラバスターと同等かそれ以上だ。
ただ破国は、刀に付与された能力で、ムサシの秘儀でも何でもない。完全になんちゃって秘儀だ。
「はぁはぁ……」
ムサシは片膝を付き息切れを起こす。相当無理をして放った一撃だったのだろう、とエリスは察する。
アルですら闘気を中心に長年修行をしたからこそ使える一撃必殺の技。
ムサシは、今まで使えなかったものが使えるようになったようだが、長年修行した訳ではないだろう。こうなってしまうのは当然なのかもしれない。と少し見当違いの事もエリスは考えてしまった。
当然だが、刀に付与された能力と言うのを知らないので無理からぬ事。
そこで再び懐で音が鳴る。エリスは通信機械を取り出し頭に装着。
≪こちらエドだ。聞こえるか?≫
「ああ、聞こえるぞ」
≪聞こえるわ≫
≪聞こえるよー≫
≪もしもし、聞こえるぞ≫
エリス、ルティナ、エーコ、アークという順番に応答する。
ロクームの奴、また出ないぞ。何やってるんだ? それにまたアークが意味不明な事を。と考えるエリス。
≪だからもしもしって何よ?≫
≪ルティナお姉ちゃんほっとけば良いよー。どうせくだらない事だよー≫
エーコが辛辣な事を言ってるのを聞いて口元が緩むエリス。
≪エーコ、酷いぞ≫
≪じゃあくだらなくないのー?≫
≪ぅぐっ!≫
「痴話喧嘩は後にしてくれ」
≪痴話喧嘩じゃないよー≫≪いや~照れるなー≫
アーク気持ち悪いぞ。と、今度は渋面になるエリス
≪……アーク、ナターシャお姉ちゃんに伝えておくねー≫
≪ご、ごめんなさい≫
≪あ、あー良いかね?≫
≪エド叔父ちゃんごめんねー。良いよー≫
≪こちらは到着した。皆はどうかね?≫
≪わたしはまだー≫
「私もだ」
≪俺も今到着した≫
これで到着したのはエド達、ルティナ達、アル達だ。
≪となるとエリス組とエーコ組に、まだ一度も連絡が来ないロクーム組だな。では各自健闘を祈る≫
そうエドが締めくって通信が切れた。
まぁエリス達もキラーマシンを倒したので、直ぐなのだが。
エリスは、通信機械を懐にしまい、ムサシの息切れが収まるのを待ち、先に進み出した……。