EP.12 クロード城突入
「此処に何の用だ?」
「用がない者は去れ!」
クロード城の門兵二人が威圧的に言ってくる。こういうとこフィックス城と大違い。何様なんだか。
「ムサシを連れ戻しに来た」
まぁ普通に答えてやるか。
「誰の事を言ってるか知らんがここにはいない。去れ!」
「そうだ、去れ!」
去れしか言えないの? アホなの?
「武器庫、地下、拷問」
「なっ!」
「な、何故それを……?」
ムサシの状況を端的に言ってやると、明らかに狼狽していやがる。シラを切る事もできんとか教育がなってないな。
「やっぱり、いるんだな」
まぁ分かってた事だけど。
「う、煩い! いない」
「そうだそうだ」
今更何言ってるんだか。
「じゃあ武器庫の地下に案内しろよ。やましい事がないなら案内出来るよな?」
「黙れ! それ以上口を開いてみろ」
「どうなるか分かっているな?」
門兵二人が手に持った槍を構え今にも突き刺そうとしてきた。
「どうなるんだ?」
軽く挑発。
「こうする!」
門兵一人が突っ込んで来た。槍の矛先は俺の右肩だな。
カーンっ!
槍を弾く。右肩に気の重点移動させたので、傷一つ付かない。
「なっ!」
「このっ!」
突いた方はギョッと目を見開き、一瞬固まる。もう一人も槍で突き始めた。
やがて最初に突いた方も我に帰り、二人がかりならといけると思ったのか同時に突き始める。
カーン、カーン、カーン、カーン……。
その全てを弾く。
は~。めんど臭いな。こっちはボー立ちなのに傷一つ付かない時点で力量差を分かれよ。
「いい加減ウゼー!」
俺は右腕を外側に振るう。
ゴゴゴゴゴ……。
城の左尖塔が崩れ落ちる。
「な、何をした貴様ー!」
「爆発物でも仕掛けていたのか?」
「バカなの?」
今腕を振っただろ。それで気付けよ。
「なんだとー! このっ! このっ!」
「どんな手を使ってるか知らんが何もできんからボー立ちなんだろ?」
こいつらってバカ過ぎない? また槍で猛攻撃してきたぞ。全部避けるまでもないがうざい。
「ふんっ!」
今度は左腕を外側に振るう。
ゴゴゴゴゴ……。
城の右尖塔が崩れ落ちる。
「こっちにも何か仕掛けていたのか?」
「卑怯な奴めー」
いや左腕振っただろ? こいつら何言ってるんだ。
「なっ!」
「くっ!」
いい加減うざいので右手と左手の人差し指と薬指二本で、二人の槍をそれぞれ止めた。
「まだ実力差が分からんのか? 無能ども」
「ば、バケモノがー!」
門兵の一人が叫ぶ。
「前時代的な拷問をしてる奴らのが、よっぽど人として化物だと思うが?」
二人の門兵は必至に槍を引こうとするが、俺の指がそれを許さない。
「くっ! 煩い! そもそも資源を独占してる奴らが悪い」
「そうだ!」
そうやって踊らされているお前らが悪いと思ったが、このアホ共に言っても仕方ないな。
「ほれ」
門兵の一人を指で、そのまま放り投げる。
「くっ! 何を?」
尻もちを付きこちら睨む。
「下っ端に用はねぇ。クソったれ王を連れてきな。尤も所詮はクソったれ。どうせ逃げるんだだろうけどな」
嫌らしい笑みを浮かべてやる。
「後悔するぞ!」
その門兵は城に引っ込みだす。その際に城門を開けっぱなしで……。やっぱバカだ。ぶち破って突入する予定だったけど、必要ないな。そのまま入って行こう。
そう考え、もう一人の門兵の槍を放して歩き出す。
「このまま行かせるか!」
なんか後ろで騒いで槍で突いて来てるが無視。
索敵気法で、後ろを見なくてもどこを突かれるのか丸わかりなので、そこに気の重点移動すれば相手する必要もない。
まぁあまりしつこいようなら、後で潰すけどな。そうして俺は、城門を抜けゆったり城に入って行った……。
さて城に入ったは良いがどうしようかね。いやこの場合どうしてくれようかね、のが正しいかな。
居場所が分かってるし、ムサシをとっとと助けても良いけど、それだけじゃ腹の虫が収まらん。
ここのクソったれ王を恐怖のどん底に落としてやらんとな。ふふふ……。
どうしてくれようか考えると自然に顔が緩む。
「これ以上進むな!」
「貴様何者だー!」
なんかワラワラと兵達が集まってるが無視しよう。最初は全員ぶっ飛ばす予定だったけどやーめた。
クソったれ王だけを嬲ろう。うん、そうしよう。
「この! この!」
「くらえー!」
「クソ! 何故刃が通らない」
兵達がそれぞれの獲物で俺に攻撃してきてるが全て無視し、ゆったりと謁見の間に向かう。
何故刃が通らないかって? 君らの実力じゃ俺の気を突破出来ない、それだけなんだけどな。この世界の者は無力な奴ばっかだ。
いや、それなりの奴もいるか。
この大陸ではエリスちゃん、エーコちゃん、ナターシャちゃん、ルティナちゃん、エド、アル。
ああ、あとついでに治。俺が見た中でこの七人は、優秀だな。ロクームもギリギリ及第点にしてやれば八人か。
まぁユグドラシル大陸も入れるともっといるけど。そんな事を考えながら歩いていたら、謁見の間に到着したな。
じゃあ、玉座に座らせて貰おうか。
「このー! そこは貴様のような下賎な者が座って良い場所じゃない」
なんか吠えながら俺を囲って武器を振るっているな。いい加減無駄だって気付えよ。
「で? クソったれ王は?」
目の前で必死に剣を振るってる兵に声を掛けた。
「貴様のような下賎な者に王がお会いになると思うか? 身の程を知れ」
「ああ、そっかそっか。無能な王だもんな。朝はゆっくりで、まだベッドの中なんだよな」
あのクソったれ王だ。絶対あり得る。
「煩い! 貴様のような下賎な者にお会いになられないと言ってるだろ?」
もう少し待つか。索敵気法で城から出た者は、いないのは確認済み。
もし、あのクソったれ王が逃げるような捕まえるけどな。尤も所詮はクソったれ王。いざとなったら逃げるが、状況判断がまともに出来るとは思えない。
ああいうタイプは、絶対に様子も見に来て、何もしないくせに怒鳴り散らすのだろうな。
「は~」
にしても暇だ。欠伸が出てしまう。
「余裕でいられるのも今のうち」
「どんなカラクリはあるのか知らんが、何も出来ないからそこに座っているのだろ?」
「これだけの人数を相手に出来ると思うな!」
兵達も状況判断が出来ないのだな。何も出来ないのではなく、何もしないんだよ。
にしてもこれだけの人数ねぇ。二十人はいるだろうが、雑魚がいくら集まっても無駄なんだよなー。
「賊が侵入したらしいな! たかが一人だ。当然片付けたのだろうな?」
やっとクソったれ王が来たぞ。やっぱり、予想通り。様子見だ。頭が回る王なら、この状況で顔を出す事はないのにな。
「ぬ? 何をやってる? まだ片付けておらぬではないか」
「はっ! それが攻撃が一切効かないのです!」
「ええい! 御託は良い! さっさと片付けぬか」
やっぱり怒鳴り散らすだけだな。エドなら、こういう場面では率先して前に出るだろうに。
「やっと来たか、クソったれ王よ」
「き、貴様ー! わしを誰だと思っている?」
「はぁ? だからクソったれ王と言っただろ? お前、耳あるの? 耳あっても理解する頭がないの?」
「ぬぅぅぅぅ! 早くこいつを始末しろー!」
おーおー、顔真っ赤にしちゃってー。さーてそろそろ嬲るかね。
「ふん!」
玉座に座ったまま気を周囲に飛ばした。
「ぐは!」
「うっ!」
「ぬおー!」
クソったれ王だけを残して兵達が倒れる。と言ってもダメージは、ほとんどないだろうけど。
今の気の解放は、縁日などの射的のコルク玉より少し威力が高い程度。
「き、貴様ー! 今何をしたー!?」
「黙れ!」
「っ!!」
少し強力な殺気に気を乗せた威圧をクソったれ王に飛ばす。
「要求を告げる。ムサシを連れて来い」
「クソー!」
あ、ここで逃げるのか。まぁそうはさせないけど。
「よいっしょっと」
「なっ!? ぐはー」
一瞬で周り込んで蹴り飛ばし、玉座の方へ転がす。そして即座に玉座に戻って来て座り直す。
「な、なんだ? 今の速さは?」
「王になんて事をー」
「き、貴様ー!」
倒れた兵達が起き上がる。まぁダメージは、ほとんどないようにしたしな。
「もう一度言う。ムサシを連れて来い」
玉座の方に転がったクソったれ王を足蹴に再び要求を告げる。
「くっ! あやつを連れて来い!」
クソったれ王が命じると兵達のうち二人程が謁見の間からいなくなった。
他の兵達は、武器を構えるが動かない。当然だな。クソったれ王を足蹴にしてると言う事は実質人質にしてるしな。