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EP.08 また同じ依頼。いい加減にしろ

≪六週目≫


 俺は来た道を戻った。つまり次元転移装置を潜る。再びラスラカーン世界に戻って来たのだ。


「<転移魔法(ラーク)>」


 転移魔法(ラーク)を使いパルサちゃんが取ってる宿屋の部屋に飛ぶ。


「タケル、お帰りサ。遅かったかしら」


 次元転移装置の監視をお願いしていたので、俺が帰って来たのに気付いていたのだろう。驚いた様子もなく声を掛けてきた。


「ああ。ただいま」


 しかし、もう一人見知らぬ奴がいた。モヒカン頭の筋肉質の奴だ。

 パルサちゃんが連れ込んだの間違いないだろうが、パルサちゃんってこんなモヒカン趣味でもあったのか?


「誰だ?」


 とりあえずそいつに視線を向け聞いてみた。


「あ、あ~……俺は、アルフォード=フィックス。お前がタケルか?」


 流石にこっちは驚いた様子で答えた。


「ああ。アルフォード? アルか? エドワード国王の弟の」

「兄貴を知ってるのか?」

「知ってるし会った。アルの事はルティナちゃんから聞いた」

「ルティナに? なぁ俺の世界は今、どうなってるんだ?」


 まぁ確かに気になるだろう。オドルマンの話はきっとパルサちゃんから聞いてるだろうし。


「その前に聞くが何でアルが此処にいる? 俺はパルサちゃんに、この世界に来た者は丁重に帰すよう頼んでいたんだがな」

「それはあたしが説明するサ」


 パルサちゃん言うにはどうやら、オドルマンの部下達が暴れているようだ。アルには、それの鎮圧の手伝いをして貰ってるらしい。

 俺がいなくなってからの71日間の事をざっと聞いた。にしても71日間ね……どうやらこの世界では正常に時間が流れているようだ。


「あっちの世界では時間逆行が起きているがこっちは正常らしいな」

「なるほどサ。それでタケルからの連絡がなかったかしら」

「時間逆行? 何だそれは?」


 俺の言葉をパルサちゃんは理解したが、アルは分からなかったようだ。


「待て。説明する前に計算する」


 俺はそう言って、中空にモニターとキーボードを出し、キーボードを弾き出す。

 どうやら星々の(スターライト)世界では最大16日間の時間逆行が起きてるようだ。


 一周目 俺が13日目にゾウを討伐したので16日前に

 二週目 俺が7日目に討伐したので10日前に。

 三週目 10日目にロクーム達が討伐したので13日前に。

 四週目 俺が13日目に討伐したので16日前に。

 五週目 13日目にルティナちゃんが討伐したので16日前に。


 つまり、俺が来る3日前まで時間逆行を起こしており、俺に取っては空白の3日間が出来ている。

 そしてアルは俺があの世界行った昼過ぎに、この世界に来ていたようだ。

 ほとんど入れ替わりなので71日間この世界で過ごしてるのだな。その辺りや星々の(スターライト)世界で起きてる事をアルに話した。


「なるほどな」


 腕を組み唸るように呟く。


「……なら戦力が必要だろ? 俺も戻ろうか?」

「今、戻って来られても時間逆行に巻き込まれるだけだ。アレを完全に討伐する道筋は立てた。キーパーソンのアーク次第だがな」


 治の記憶の中にゾウの倒し方があるかどうかが一番の問題だ。


「分かったぜ。だが何故アークは記憶を保持してる?」

「さぁな。まだ聞いてないから俺もわからん」


 俺は肩を竦める。実際何故、治がタイムリーパーになってるのか検討が付かない。


「なら、お前はどうなんだ? 話を聞く限り、お前も記憶を保持してるだろ?」

「気の応用」

「気? ……ああ、闘気か。だが闘気で、そんな事出来るのか?」


 つい()って言ってしまう。スターライト世界では闘気と呼ばれているのにな。


「闘気で体を硬く出来るだろ? ダメージを減らす為に」

「ああ」

「簡単に言うとそれを周囲に広げるんだよ。バリアを作るようにな。それにより自分の都合の悪いもの……例えば毒とかを弾く事が可能になる」

「そんな事が……」

「それにより世界の巻き戻しに抗えるんだ」


 考え込むようにアルが呟く。まぁ口で言うのは簡単だが、実際はかなり難しい。

 話を聞く限りアルも相当な気の使い手。良い教え手に巡り会えば出来るようになるだろうが、あの世界にそんな人はいないだろうな。俺も教える気はない。

 多少のヒントは良いが、あまり他世界の事を流出させるとバランスが崩れ、世界が崩壊する事もあり得る。そんなのは目覚めが悪いしな。


「それはともかく道筋が立てばアークがアルの力を必要とし連れ戻しに来るかもしれない。速くて2~3週間ってとこかな。最悪全部終わってから俺が呼びにくるかもしれないがな。後処理も考えて5週間後ってとこだな」


 治が確り戦力を考えれば良いのだがな。俺としてはアルの力は欲しい。

 気の応用で、相手の力量はある程度分かるが、アルは相当強い。恐らく精霊の力を取り戻したルティナちゃんに匹敵する程。

 あの世界のユピテル大陸で出会った者達でアルとルティナちゃんは上位の存在だろうな。ユグドラシル大陸も含めると少し落ちるかもしれないが……。


「二週間で呼ばれたいものだな」

「俺もさっさとアークには、アルを呼びに行って貰いたい……と言う訳で、もう少しパルサちゃんの手伝いを宜しく頼む」

「ああ、分かったぜ」


 その後、アルと模擬戦をやった。思ってた通り強かった。

 索敵気法(さくてきほう)や気の重点移動を完全にマスターしている。ますます最後の周回では欲しい人材だな。治に期待するしかない。


 そうして俺は再び星々の(スターライト)世界に向かおうとしたが、あっちの(・・・・)世界も気になり、次元転移魔法(ハイ・ラーク)で、様子を見に向かう。

 前に来た時に拝借した伝心魔道具(スマートシーバー)と呼ばれる携帯電話のような道具で、とある奴に連絡を取る。 

 この世界は時間の流れがおかしんだよな。三年ぶりに訪れるが、俺が前に来てからこの世界は、三年しか月日が流れていない。

 いや、これ事態はおかしな事はないのだけど、問題はコイツ(・・・)が此処にいる事なんだよな。時間の流れが滅茶苦茶だからこそ起きている現象だな。


「久しぶりだな、武」

「ああ。にしてもお前、三年で随分強くなってないか?」

「まあまだ修行中だけどな」

「ところでアレは、修復できたか?」

「まだだな」

「この世界の技術じゃ厳しいのか。だが、それだけ強くなればもう必要ないだろ? 返してくれ」

「欲を言えばまだ欲しいが、仕方ねぇ。サンキューな、武」


 俺は二振りの小刀を受け取る。

 その後、直ぐにラスラカーン世界に戻る。本当はあの世界もどうにかしないといけないが、その前にオドルマンだな。

 それにあの世界にはアイツがいる。今のアイツなら大抵の事はなんとかしてくれそうだ。それだけの気を感じた。いや、あれはもう気じゃないな。その上位の何かだ。


 続けて次元転移門をくぐり抜けて、スターライト世界にやって来ると毎週回の通りエルドリアの銀月と言う宿を取った。

 さて次の日、誰が来るかな? 三週目は治、四週目はエーコちゃん、五週目はナターシャちゃんだった。

 この周回は、治が余程の馬鹿でない限り、記憶を取り戻しに行ってるだろう……。

 そうなると治自身もこの周回は消化試合と思って切って捨てるかもしれない。そう考えているなら誰も来ないかもしれない。


 しかし、もし治が記憶を取り戻しつつ全員を救うなんて甘い考えを持っていたら、誰か必ず来る筈だ。

 だが、来てくれた方が確り記憶を取り戻しに行ったと確信出来るので、俺としては有難いが。ただしナターシャちゃんを除いて……。

 ナターシャちゃんが記憶を取り戻しに行ってる筈だから彼女が来てしまうと前回の周回がほぼ無意味になってしまう。


 コンコン……。


 宿の部屋にノックの音が響く。よし! 来た。

 二日目に誰かが訪ねて来た。さて誰だろうか?


「やあ。君がアークの友人のタケルかい?」

「………」


 予想の斜め上の人物が来たぞ。いや、順当考えれば、アークは頼れるのはこの人くらいか。だが、俺は一瞬思考が停止してしまった。


「えっと……」


 俺がだんまりだったので彼も戸惑っていた。


「あ、いや……確かに俺はアークのダチのタケルだが、まさか王が訪ねて来るとは思わなくてな」


 そう目の前にいる人物はエドワード=フィックス。フィックス領の国王だ。


「それは失礼した」

「それで国王自ら何か御用で?」

「アークに頼まれてな。ここにいる友人にロクリス救出の依頼をするように……と」


 またロクリスかよ。あいつは同じ事ばかりさせ過ぎ。確かに距離的に此処が一番近いけどさ。同じ事ばかりじゃ飽きるぞ。

 しかも今まで女の子と一緒だったから、まだしも今回は野郎とだぞ。やってらんねぇよ。


「……その様子だと引き受けてくれないかな?」


 俺の表情を読んだだろう。エドワード国王がそう言ってきた。


「と言うか肝心のアークは、何処にいる?」


 それが一番重要だ。


「何でも外せない用事があるとか。詳細は私も聞いていない」


 内心よし! と握り拳を作った。ちゃんと記憶を取り戻しに行ったようだな。


「それで俺にあの辺鄙(へんぴ)なとこへ行けと?」

「良く二人がいるとこが分かったね」

「俺もそれなりの情報筋があるからな」


 時間逆行による情報だけどな。嘘は言っていない。


「そうか。それで頼めないかい? 私に用意出来る物ならお礼に何でも用意しよう」

「そこは金をチラつかされるとかじゃね?」


 おっと思わず本音が出てしまった。だが、普通ここは金で雇うとこだろ?


「私は、君の事をアークの友人と言う事以外知らない。お金に困ってるのか、そうじゃないとかもね。そんな相手にお金で、どうにかしようと思わないよ。尤もお金が必要だって言うなら用意するがね」


 ほー。エドワード国王……いいや、エド。エドには関心してしまった。どこかのクソったれの王と大違いだ。


「報酬はアークの顔面を一発殴るで手を打とう。それで二人で行くのか?」


 ほんと同じ事を何度もさせて……一発殴らないと気が済まない。


「その報酬はアークと交渉してくれ。私は保障しかねる」


 苦笑しながら答える。だろうね。

 だが安易にそれで良いと言わないとこが気に入った。またこの王の好感度が上がったな。


「それと行って欲しいの君一人だ」


 まぁ一人のがとっとと終わらせられるから良いけど。


「分かった。じゃあ行って来るが船の用意は?」

「明日の早朝には」

「了解だ。エドワード国王……いや、エド」

「ははは……急に距離を詰めて来たね。まぁ私もそっちのがやり易いがね」


 こうして俺は一人でロクリス救出に向かった。一人だし何度も言ってる場所だし何事もなく救出。ただ退屈だったがな。

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