表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/563

EP.03 治との再会

 大陸中を情報収集しながら回ると明らかに怪しい物体を発見した。この世界に来て七日目の事だ。


「あれってゾウ……だよな?」


 何でゾウがいるんだ? 各地を回ったが動物はそれなりにいたがゾウはいなかった。それにこのゾウは足が六本あるぞ。怪し過ぎる。

 俺はそれを監視する為に近くで野営する事にした。


挿絵(By みてみん)


「日に日に大きくなってないか?」


 ゾウは一日毎にでかくなって行く。最初は普通のゾウの五倍くらいの大きさだったのに次の日は十倍くらいになっていた。


「だが、何であそこから動かないんだ? メシは?」


 疑問が尽きない。エサがないのに大きくなっていく。それに全く動かない。置物のように……。

 だが、この世界に来て十三日目で動き始めた。


「あれはまずいだろ?」


 山よりでかくなったのが動き始めたんだぞ。簡単に町なんて壊滅してしまう。これはオドルマンが関係してるのか?

 オドルマンの情報は全く入って来なかった。が、こんな不自然な生き物がいれば奴を疑いたくなる。


「とりあえず倒すか」


 俺が自分に決めたルールでは、なるべくその世界の者に対処させる事。しかし、その対処出来る者がいない。

 そもそも日に日に大きくなっていくなら軍隊なり何なり来るだろ? それが全く来ない。この大陸の連中は腑抜けか? と言うかどんどん人が離れて行く気配がするんだよな。

 仕方ないので俺が対処する事にした。


「まぁどんなにでかくたって頭を潰せば終わりだろ」


 そう思って頭をサクっと拳で潰した。次の瞬間、視界が暗転。


「あれ?」


 俺、何で洞窟にいるんだ? まさか……。


「……やっぱり」


 咄嗟に後ろに振り返り、肩を落としてげんなりしてしまう。次元転移門だ。

 つまり俺は、これをくぐって来た時間に引き戻されたのだろう。この世界は時間逆行していやがる。

 まぁまだそう結論付けるのは早計かもしれないが……。ゾウの特殊能力で、ここに飛ばされたって事もある。

 だが、俺の感と今までの経験が言ってる。時間逆行してると……。



≪二週目≫


 二週目は、一度彷徨った洞窟なので、すんなり出られた。直ぐに東にあるエルドリアに向かい夕方には到着する。今回はゾウが巨大化する前に潰してしまおう。

 成長しきると時間逆行させるのかもしれない。そう考えエルドリアで一泊すると直ぐに転移魔法(ラーク)で南に飛んだ。


「あれ? ……いない」


 この世界に来て二日目の夕方に一週目でゾウがいた場所に訪れたがいなかった。もしかして時間逆行なんかしていない? ゾウの死ぬ間際の特殊能力で洞窟に飛ばされた?

 まぁ七日目で見かけたしな。それまで様子を見ていればはっきりするか。そして、五日後。空間にヒビが入った。


「何だ?」


 やがてそこから徐々にゾウが現れた。つまり今まで空間の狭間に隠れていたのか。やっぱり時間逆行してた訳だな。めんど臭せぇ~。

 七日目で完全にゾウが姿を現した。つまり前の周回はゾウが現れた直後に発見出来たのか……。

 とりあえず予定通り潰すか。そう考え空間の狭間から現れたゾウをさっさと倒した。再び視界が暗転。



≪三週目≫


「は~」


 思わず溜息が出てしまう。俺は洞窟にいた。本当に時間逆行しているのだ。ゾウを倒すと時間逆行してしまう。

 かと言って放置すると六日後には山より巨大化して動き始める。これは時間逆行させずに倒す、もしくは無力化させる方法を考えないとな。


 三週目も今まで同じくエルドリアに向かった。夕方には到着し宿を取ると次の日、町にくり出す。

 一週目に十分情報収集したし物資調達以外特に目的があるわけではないが、どんなものが売ってるのか、思わぬとこに情報があったりしないか、一週目で気付かなかった些細な事もあるかもしれない。ほとんど物見遊山だが三日くらい滞在しようと考えた。


 そして二日目の夜、一週目の周回で行ったメシ屋に向かう。一週目で、たまたま入ったメシ屋はなかなか美味かった。パスタ類のメシ屋だな。他の町等も一週目の周回で回ったが、このメシ屋は特に美味かった気がする。

 そう思ってメシ屋に向かっている途中、知ってる奴の気を感じる。


「武?」


 やっぱり声を掛けられた。


「ん? 誰だあんた」


 ただ気になるのが、一週目のこの時間にこの場所を通っていた筈。その時は声を掛けられなかった。とは言え、俺が知ってる気に気付かなかったなんて事があるとは思えない。


「やっぱ武か? 少し成長してるように見えるけど……」

「だから誰だよ? あんたは」


 前回(・・)も少し言葉を強めたし、同じように強める。実は前に俺は治に会っている。それ故にコイツの気は覚えた。尤も今の(・・)治はそれを知らないのだけど。


「俺? 治だよ」

「はっ!? どう見てもおっさんだろ?」


 確か前に会った時に裏技を使って若返ったとかなんとか言っていた。まぁどっちにしろ俺が日本で最後に会った十七歳の頃より、老けているし、見た目が全然違うのだけど。


「だよねー。俺もどうせ転生するなら若い体が良かったよ」


 転生……だと? 何を言っているんだ? 前回会った時は、そんな事は言ってなかったぞ。転移したと言っていた。

 これはアレか、灰色髪の灰色目しておいて転移したと言っても、信用されないと思われたのかね。しかし、それらは全て置いておいて……、


「……また違った展開だな」


 思わずボソっと呟いてしまう。それに尽きるのだ。一週目でこの時間帯に此処を通ったのに治と出会わなかった。

 これは原因として二つ考えられる。

 一つは単純に俺に気付かなかった。一度知った気を見逃すとか有り得ないが、もしうっかりしていたなら、それならそれで良い。問題は無い。

 しかし、もう一つのパターン。治、もしくは治の近くにいる奴がタイムリープしてるパターンだ。

 最悪の場合、タイムリープしてる事に気付かずただの既視感程度に感じてる事。そうすると微妙に行動が変わってしまう。俺が把握出来なくなるので面倒だ。

 何が面倒かって? この時間逆行の起点がタイムリープしてる本人にある場合だ。本人が気付いておらず時間逆行させていたら、原因の対処がし辛くなる。

 まぁ起点は十中八九あの怪しいゾウなんだろうが決めつけは取り返しの付かない事になるしな。


「何か言ったか?」

「いや何でもない。それによりお前が治ってなら聞くが、俺の好きな漫画は?」

「カケラの魔人」


 前回同様即答だな。


「いつの時代だよ!? つうか懐いな」


 と、前回アイツに先回りして言われた台詞を言ってやる。

 マジで懐かしいな。俺は若い状態を維持している。なので、精神の年齢はもっと年季が入ってる。まぁ態々言及する事でもないので言わないけど。


「うーん……実は俺の記憶は十五歳までしかないんだよな~」

「十五歳か……それなら確かにカケラの魔人にハマってたな。よし! とりあえずメシ行くぞ。そこで詳しく聞く」


 とは答えたが、どう言う事だ? 治の記憶は十五歳までしかない? 

 もしかしたら、俺が前回会った治とは別のパラレル存在? たまにあるんだよな。同じ日本でも辿る道筋が微妙に違ったパラレルワールド。そのパラレルワールドの奴と出会うなんて事が。

 前にも地球の日本出身の転移者と知り合い色々話していたら、微妙に食い違うとかがあった。

 例えば、俺が知ってる日本を代表する電気メーターの名はSONAなのだが、それが存在しない日本出身だったりとか。

 他にも転生のデメリットで全ての記憶は引き継げない事もあると聞いた事がある……が、前回出会った治が嘘を言ってるのではければ、コイツは転移者なので、有り得ない。

 まぁいずれにしろ詳しく聞く必要があるな。それに何よりタイムリープしてるかどうか情報を引き出す必要がある。

 馬鹿正直に聞いて警戒されても困るから、治の方から言ってくれると助かる。それに治本人ではなく治の近しい奴がタイムリーパーの可能性もある。そうなると治には分からないから困ったものだな。


 そんな訳で一周目で美味いと感じたメシ屋に治と一緒に行く事になった。其処で思ぬ事を聞かされる。

 どうやらこの世界はフルダイブ型VRMMOのF(ファースト・)F(ファンタジー)O(・オンライン)と同じ世界らしい……いや、違うな。正確にはこの大陸(・・・・)が、と言うべきか。

 ただ、そのゲームにはユグドラシル大陸なんて登場しなかった筈。まぁ俺はプレイしていないので、細かくは知らないけど。

 そして治は、そのゲームキャラに転移した。とは言え、実のところこの話は前回会った時に聞いたんだけど。

 前回も思ったけど、こう言うゲームキャラに転移するケースなんて初めてなので、前回は平静を保つに苦労したな。今回はもう聞いた事なので、平気だけど。今まで色んな世界を回り、これまでの常識を何度も崩された。このケースもその一例だな。


「十九歳の時に治がいなくなったって事件になってたぞ」


 治は十九歳で転移した筈。俺とは十七歳の時から会わなくなったけど、事件くらい耳にしている。まぁ俺も直ぐその後に勇者召喚に巻き込まれたんだけど。

 しかし、本人は交通事故にあった十五歳までしか記憶がないようだ。が、前回会った時にそんな事を言っていなかったので、記憶が戻る事は確定している。……いや、俺が何かを働き掛ける事でそうなる? まぁ可能性としてあると頭の隅に置いておこう。


「増々同居してる人の言葉が真実味を帯びて来たな」


 同居人? そう言えば少し話していたな。俺もチラっとすれ違う程度に会ったナターシャちゃんって娘と、他にもう一人いるとかなんとか。

 治がもしタイムリープしてないのだとしたら、その同居人が怪しい。たぶん何週もしないとオドルマンに辿り着けないし、この世界を安定させられない。その何度も繰り返す中で調べる必要があるな。


「じゃあ何で、この世界に?」

「まだヒミツ」


 治にそう問われ俺は隠した。

 治がもし時間逆行の起点になっていたら、どこかでボロを出して警戒されてしまうかもしれない。隠せる事は隠しておこう。

 状況によっては、俺は時間逆行しても記憶を保持出来ると話しても良いのだが、今ではない。


「手伝ってくれない?」

「何を?」


 会話を続ける中で、いきなり武って強いかって聞かれ、それなりにはと答えると唐突に手伝ってくれと言い出したのだ。何をだよって感じだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ