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EP.36 マヌケを通り越して愚かでした

「衛兵! 衛兵!」


 それでもマヌケ王は叫ぶ。そして、アルフォンス兵達が集まって来た。最初にいた二人と合わせて八人増えた。

 てか、それでも八人かよ。手薄にし過ぎ。


「何をしてる? 余を助けぬか?」


 王が怒鳴り散らす。マジで状況分かってないよー。


「しかし、陛下……」

「黙れ! 賊はたった一人だろ? どうにかしろ?」


 は~~~。もうめんどくせ~。内心溜息が出てしまう。


「お前が黙れ!」


 再び首筋を軽く斬った。


「くっ! 余を誰だと思っているのだ?」

「だからマヌケ王だと言ってるだろ?」

「何が目的だ?」

「フィックスに連行する」

「フィックスだと……フィックスに雇われた殺し屋か?」


 微妙に違うな。殺し屋の体を奪った元引き篭もりですよっと。

 別にエドに雇われたわけではないが、いちいち説明するのも面倒だな。と言うか、連行するって言ってる時点で殺し屋とは違うだろ? やっぱマヌケ過ぎる。


「そうだと言ったら?」

「……三倍出す」

「何が?」

「金だ。いくらで雇われたか知らんが三倍の金を出す。貴様のような下賤な奴に大金を出してやるのだ。良い話だろ? しかも余じ直々に口を聞いてやっているのだぞ」


 何言ってるのだこいつは?


「本来なら貴様のような下賤な奴が口を聞ける相手ではないのだぞ。伏して喜べ」


 イラっ!


 ブスっ!


 小刀を右太ももにぶっ刺した。


「ぎゃーーーっ!!」

「煩い!」

「「「「「「「「陛下っ!!」」」」」」」」


 更にえぐる。兵達に焦りが見える。今の俺は血を見て吐いたり気持ち悪くなったりしない。

 何故ならVRMMO FFOはリアルで、しかも殺し屋のダークをプレイキャラに選んだのだ。人が死ぬとこをゲームで散々見て完全に慣れている。記憶をなくしていた頃とは違う。


「お前は俺を怒らせる天才か?」


 先程より鋭い殺気を……いや、闘気を混ぜて王を威圧した。


「……金なら出すと言ってるだろ?」

「誰が金で雇われたと言った? 雇われていたとしても、お前からも欲しいと言ったか? だからお前はマヌケ王だ」

「くっ! 何が目的だ」


 どこまでこいつはバカなのだ? さっき言っただろうが……。このマヌケ王を相手にすると疲れるな。


「フィックスに連行すると言っただろ?」


 仕方ないので再び同じ事を言ってやる。


「断ると言ったら?」


 プシュ!


 今度は左太ももを軽く斬った。


「ギャーー!!」

「自分の立場が分かっていないのか?」

「……分かった。だが貴様に斬られたせいで立てぬ」

「<下位回復魔法(リカバリー)>」


 下位回復魔法(リカバリー)で両太ももを治療してやった。昨日魔力を枯渇させたが、一日で回復していた。


「失われし魔法だと!? 貴様何者だ?」


 そういや魔法って失われしもの扱いなんだよな。使えるのは十一人の英雄の中でも精霊とのハーフのルティナ、魔導士の末裔の一族であるエーコとラゴスの三人は当然として、人工魔導士のエリス。

 他は精霊大戦の中で精霊と関わり、習得したのダーク、エド、ロクームくらいだったかな。ムサシ、ガッシュ、ユキは習得できずアルはそんなのいらねって突っぱねてた。

 それ以外では極稀にしか使える者はいない。ナターシャがその稀な者だな。


「何者でも構わない。ほら立て! フィックスに連れて行く」

「貴様、余に雇われぬか? 下賤な貴様にはありがたい話だろ?」

「………」


 どこまでこいつは俺を怒らせれば気が済むのだ?


「伏して喜べ!」

「……お前いい加減立場を考えろ。マヌケを通り越して愚かだぞ。愚王」

「……分かった」


 そう言って愚王は立ち上がった。その瞬間、愚王は前に転がる。俺と謁見の間に王座があるからな。これで逃げられると思ったのだろう……。


「今だ!」

「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」


 兵達が一斉に動きだす。まず一番遠くにいる二人にナイフを足に投擲。


「「ぐはっ!」」


 その後、真っ先に目の前に迫った兵の後ろに周り込んで利き腕を斬り咲く。一瞬で三人を無力化させた。


「まだやるのか?」

「「「「「クソー!」」」」」


 残りの兵が怯む。


「何をしてる? 相手はたったの一人だぞ」


 王が叫ぶが兵は硬直して動かない。俺は、ゆったり歩き王に迫る。


「来るな! 来るのではない! 余を……余を誰だと思ってる?」


 こいつは同じ言葉しか発せられないのか?


「だから愚王」


 そう言って小刀を愚王に向ける。


「別にお前を始末しても良いのだぞ? 命は助けてやろうってのに調子乗ってるなよ。ゴミが!」


 マジでキレそうだわ。こいつほんと人を怒らせる天才だ。


「余に向かって愚王などと……」


 まだ吠えているよ。俺は首筋に小刀を当てる。


「良い事を教えてやるよ。相手の力量が全く分からない奴は愚者としか言うんだ」

「………」

「見張りの兵が二人いる中で、お前の後ろに周り刃を当てた時点で敗北は目に見えている。それが理解できないとは愚かだ」


 それに尽きる。


「……分かった。従おう……伏して……」

「あーんっ!?」


 またふざけた事を言おうとしたので睨みつけた。


「いや……何でもない」

「何でもありません……だろ?」

「……何でも……ありません」


 そう言って愚王は項垂れ立ち上がる。


「じゃあフィックスに行くぞ」

「分かった」

「うん!?」


 再び睨みつける。


「ひっ! ……分かりました」


 怯えきってるな。あっ! 髪が白くなった。しかも失禁してるし。あまりにの恐怖に駆られると白髪になると聞いた事があるけど本当なんだな。

 こうして俺は愚王に刃を向けながら、愚王の襟首を掴み、前を歩かせ城の外に向かう。


「は~」


 思わず溜息が出てしまう。こいつらほんと愚か過ぎるだろ?


「おい後ろにいる奴! この愚王を殺したいのか?」


 気配がだだ漏れ。


「………」


 自分に声を掛けられたと思っていないのか、そのまま剣を構え突っ込んで来た。マジでめんどくせぇ。

 八人中三人しか無力化していないしな。後ろから迫っているのは二人か。


「ほれ受け取れ!」

「ぬわ~~」


 愚王を後ろに放り投げた。それを後ろの兵が慌てて受け止める。


「こいつ……目が後ろにあるのか?」


 ねぇよ! 気配で丸分かりなんだよ。


「だが、王から手を離せば……」


 言い終わらないうちに俺はそいつの後ろに周った。


「手を離せばなんだ?」


 そう言って小刀を首に回す。そうすると兵が黙り込み剣を下ろした。


「こっちのものだ!」


 しかし、もう一人の兵が斬りかかって来た。


「<下位稲妻魔法(サンダー)>」


 下位稲妻魔法(サンダー)を使いさくっと絶命させた。もといスタンガンくらいの出力にして気絶させた。記憶を失ったお陰で加減と言うのを覚えたしな。

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