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EP.35 アルフォンス王はマヌケでした

体調も戻りましたので連続投稿しました

「……これは酷いな」


 炭鉱の入口が完全に塞がっている。爆破するとか、あのメモ書きに書かれていたしな。

 そして、岩で塞がれた入口の反対側では、必死に岩をどかそうとしている気配が数人……いや。数体あった。雪だるま一族だな。


「おい! 反対側に誰かいるだろ?」


 塞がれた岩の向こう側に向かって叫んだ。


「ルマルマルマルマー」


 どうやら、ユキはいないっぽいな。ユキ以外だと会話ができないのは困りものだ。


「俺の名はアーク。雪だるま一族だな? ユキは近くにいるか? いないなら呼んで来てくれないか?」

「ルマルマー」


 返事が返ってくると数体いた雪だるまのうち一体が遠ざかる気配を感じた。確りユキを呼んで来てくれるようだ。

 やがて雪だるまが二体がやって来る気配を感じた。一体は最初にいた雪だるまで、もう一体は恐らくユキだろう……。


「ユキを呼んダルマ?」


 塞がっている入口の反対側からユキの声が聞こえた。


「俺はアーク。エドの知り合いだ」

「エドのルマ?」

「ああ。事情があってな、炭鉱が爆破されるのを知ったから来た」

「その爆破で出入口が塞がったルマ。そっちから開通させられるマー?」


 それが問題なんだよな。エーコなら中位火炎魔法(ギガ・ファイヤー)一発なんだろうけど。いや、やり過ぎると酸素がなくなってしまうか。

 まあ幸い反対側にいるのは雪だるま一族だ。それならなんとかなるかな。


「俺一人じゃ無理だな……合図したら吹雪をぶつけろ」

「分かったルマ」

「<下位火炎魔法(ファイヤー)>」


 俺は出入口を塞いでいる岩に下位火炎魔法(ファイヤー)を放った。ユキ達の気配を感じるとこまで約2m。そんな距離を岩で覆われている。それ全てを熱するのは厳しいな。


「はぁぁぁぁ……!」


 気合と共に魔力を吐き出す。俺の魔力量は少ない故に下位しか使えない。それでも完全に熱しないとな。

 どうせこの後、魔力を使う予定なんてないだ。全部使い切ってしまえ。


「今だ!」


 たぶんかなりアツアツの岩になった筈だ。いや、なってないと困る。俺の魔力は枯渇したしな。

 これでダメなら闘気剣クロス・ファングを使うしかない。だが、加減を間違えると崩落させてしまう。


「分かったルマー」


 ユキが返事をすると雪だるま達が同時に吹雪を発したようだ。俺が熱した岩を一気に冷される。


「もう良い! 下がってろ」


 だが、やり過ぎると岩が凍って意味がなくなる。吹雪が止み岩が冷え切るとユキ達の気配が遠ざかった。


「おぉぉぉらっっ!!」


 俺は足に闘気を籠めて岩を蹴り飛ばす。バーン!! っと、塞いでいた岩が弾け飛ぶ。


「ふ~……どうやら上手くいったようだな」

「助かったルマ。全員負傷者を運び出すルマ」


 ユキが他の雪だるま達に指示を出すと俺の方に近寄って来た。


「どうやったルマ?」

「ん? 熱したものを急激に冷ますとモロくなるんだよ」

「そうなのかルマー」

「それより頼みがある。明日フィックスとアルフォンスが戦争する。エドに加勢してくれないか?」

「それはできないルマ。ユキ達は魔物。人間達の情勢には関わらないルマー」


 そうなのか? 初耳だな。VRMMO FFOでプレイアブルキャラをユキかエドにしないと分からない情報なのか?


「だが、それなら何故精霊大戦に参加した?」

「それはもう人間達だけの問題ではなかったルマ」


 なるほど。


「なら問題ないな。これから再び精霊大戦が起きる」

「どう言う事ルッマー!?」


 めっちゃ驚いてるな。

 俺はエドに言われ、とある屋敷に忍び込んだ事を話した。ただタイムリープは話すとややこしくなるので、その屋敷で開戦日も知ったと言う事にした。


「……分かったルマ。それならエドに協力するルマー」

「それともう一つ頼みがあるのだが、フィックス城の北に洞窟があるらしいんだが知ってるか?」

「知ってるルマ」


 何で知ってるんだよ? 炭鉱に引き篭もってるんじゃないのか? まあ良いや。話が早く進むし。


「そこにアルが向かったんだけど帰って来ないんだ。だから、戦争終結後に迎えに行ってくれないか?」

「構わないルマ。ただ戦争って、そんな直ぐ終わるルマ?」


 ご尤も。圧倒的戦力差がないと直ぐに終わらないよな。まあ雪だるま一族が加わる時点で圧倒的戦力差になりそうだけど。


「そこは俺に策がある。だから今からツートックスに向かう」

「分かったルマ」


 はいユキ確保と。これでピースが一つ埋まる。上手くいけばアルもだな。この周回は今までにいない二人……いや、一人と一体が加わる。

 予定ではサラがガッシュを確保してくれる筈。人数がきっちり集まりそうだな。

 俺はユキと話を終わらすと、ツートックスに向けて全力疾走した。本来なら半日以上かかる距離だが、三時間たらずで到着。

 当然動物達が襲ってきても無視。そもそも俺には追い付けないしな。

 しかし、疲れた。もう深夜だし寝てないんだよな。それに昼に軽食を食べたっきり何も食べてないし。少し休もうと思い宿屋に向かった……。


「今回の戦争なんて楽勝だな」

「そうだな。こちらは人数が圧倒的に多い上にいきなりの襲撃だからな」

「何よりあの盾。どんな技術か知らんがフィックスより上だな」

「ああ。ギヒヒヒ……」

「そう言えばフィックス王は好色家って噂だな」

「良い女が沢山いるんだろうな。グハハハ……」

「食いまくるぜ。ダハハハ……」


 宿屋にある酒場では不穏な会話が聞こえて来た。下卑た笑いも聞こえイラっと来たので、この場で全員始末したくなる。

 しかし、ここはグッと堪えるべきだ。作戦が全部台無しになってしまうし流石に数の差で敵わないだろう。此処に五十人、外にも沢山いた。恐らく他の宿にも沢山いるだろう。

 それにしても明日の朝から戦争だってのに随分余裕だな。徹夜してハイテンションの状態で戦う気か?

 ついでに言わせて貰うとエドは老若問わず口説くが好色家じゃないんだよな。FFOをプレイしていてフィックス城のNPCの侍女が、世継ぎ必要だから早く王妃を迎えて欲しいとボヤいていた。

 って、エドのフォローなんてどうでも良いや。早く休もう。


「あの泊まりたいのですが?」


 アルフォンスの連中は無視する事に決め宿屋の従業員に声を掛けた。


「申し訳ございません。アルフォンスの方々の貸し切りになっております」


 だろうな。にしても今思ったが、ウエストックスならともかく、このツートックスはフィックス領だ。

 なのにアルフォンスの連中が大量にいて、尚且つ不穏な会話をしてるのにフィックス城に知らせがこないって事は、ツートックスの連中は買収されたな。全く此処の連中は最悪だな。

 元々ツートックスはウエストックスの一部だった。それがラフラカが暴れて大陸が分断され町もウエストックスとツートックスに分かれた。

 そのウエストックスが一つの町だった頃、ダークとダームエルがハメられ、ダームエルは死ぬ事になったんだよな。いや、生きてはいたがラフラカに回収され生体実験をさせられた。結果、第二次精霊大戦が勃発。

 それはともかくその時の町長はダークをハメた事で、当時のフィックス王によって断罪された。学習しないのかよ。

 この第三次精霊大戦が終わったらツートックスの町長も終わるな。バカ過ぎる。

 おっと思考が逸れた。これからの事を考えないとな。


「倉庫とかでも良いので空いてないですか? 食事とかいらないので素泊まりできれば結構です」

「それなら……宜しいのですか?」

「はい」


 と言う訳で、倉庫で素泊まり。布団を用意してくれただけマシだな。

 とりあえず何か腹に入れないと……。俺はレーションを口にした。不味い。

 そして早々に寝る。三時間くらいしか寝れないが、寝ないよりマシだな。

 早朝、再びレーションを口にする。マジでま・ず・い!!

 じゃあウエストックスに渡るか。渡り船で10分程の短い距離だ。この船をまず奪う。早朝と言う事もあり、見張りは少なかった……。


「何だお前は……うわっ!」


 とりあえず海にポイっと。じゃあ船頂きますよっと。

 そして、渡り船でウエストックス渡る。その後、一気にアルフォンス城に向かった。


「見張りは……いない!?」


 バカなの? 城門に見張りの衛兵が一人もいなかった。戦争でほとんど駆り出されたのだろう。守りを手薄にするなよ。

 所詮城が出来て一年も経っていないし、クロードと同じでアホ過ぎるようだ。楽々侵入。


「とりあえず謁見の間に向かうか」


 そこに王がいないのなら、寝室だな。寝室を探すのは面倒だから謁見の間にいてくれれば良いけど……。

 城の中も人が少ない。ダメだな。終わってるわ、此処の連中。気配を探り、少ないが人を避けて謁見の間に侵入した。

 警備してる兵が二人………………………………って、たった二人かよ!!

 王は……寝てるし。王座でうたた寝をしていた。

 これから戦争だってのに大将がのんき過ぎる。四、五十歳くらいのオッサンで口ひげを生やした王だな。

 俺は二人の兵を瞬時にすり抜け、アルフォンス王の後ろに周った。


「動くな!」


 王の首元に小刀を当て、兵二人に向かって叫ぶ。


「貴様ー! 陛下に向かって何をしてるっ!?」


 こいつらバカなの? 動くなって言ってるのにこっちに向かって来てるよ。俺は王の首筋を少し斬った。


「動くなって言ったぞ?」


 殺気に闘気を乗せ威圧する。


「くっ!」


 やっと止まったよ。と言うか、首筋を少し斬ったのに何故に起きない? 王もダメだな。終わってる。

 俺は空いている左手で王の頭をはたいた。


「ぬあ!? 何だ?」


 やっと起きたな。


「……状況は分かるか?」

「貴様……余を誰だと思っている?」


 お決まりの台詞キターーーー。


「マヌケ王」

「なんだとーっ!?」

「首に刃を当てられて叫ぶなんてマヌケ以外に何がある?」


 実際これにつきるな。

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